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習作の貯蔵庫としての

自分の楽しみのために書き散らかした愚作を保管しておくための自己満足的格納庫ですが、もし感想をいただけたら嬉しく存じます。

スポーツ漫画の系譜〜『キャプつば』を中心に〜

2019-07-21 15:51:51 | 漫画とアニメ
 私は、テレビのオンエアを積極的に見るということは最近はあまりなくて、オンエア中のテレビ番組というのは、私にとって録画予約の選択や録画したコンテンツの編集作業をしている合間に背景に映っているものに過ぎないのだが、そのときのホームポジションチャンネルはEテレにしている(※1)。

 なので、Eテレの番組の中には、気がついたら見ていてすきになったという番組もけっこうあって、アニメ『メジャーセカンド』はそうした一つである。同じEテレの元祖『メジャー』は見たことなくて、子どもたちのほうだけ見ているわけだが、『メジャーセカンド』は、たしかに左腕美少女エースが三振を取りまくるというような「いかにも漫画」な部分もありつつ(※2)、一方ではけっこうちゃんとしているとも思う。
 たとえば、『巨人の星』みたいに、あり得ない「魔球」は出てこないし。そして、『キャプつば』こと『キャプテン翼』みたいに、小学生の試合で巨大スタンド満員の大観衆とか、地方の小学校同士の対校戦(※3)に実況中継がつくとかいう現実離れはなく(※4)、リトルリーグとして当たり前のグラウンドで当たり前の数のギャラリーである。もちろん『キャプつば』みたいに地平線の彼方のゴールポストで地球の丸さを実感するということもない。

 というわけで、今回は、とくに必然性はないが、何となく『キャプテン翼』の話を、小学生編を中心につらつらと書いてみたくなった次第である。


(1)キャプつば、その驚異の世界(笑)


 スポーツ漫画というのは、多かれ少なかれ現実無視で、冷静になって読めば、ツッコミどころ満載なのが常だが、中でもとくに、『キャプつば』ほど、ツッコミどころ豊富というか、ツッコメないところを探すのが逆に困難というか、ツッコむこと自体がメインの醍醐味になってしまっているというか、そういう作品も珍しいだろう(チャー研?←さすがにチャー研と比べては、キャプつばに失礼(怒))。やや大袈裟に言えば、70年代生まれが三人よれば、いつでもどこでも、「ここが変だよ!『キャプテン翼』」トークができてしまう。
 たとえば、コンクリート壁にめりこむサッカーボールというのは、前出の地平線の彼方のゴールポストと並ぶ初級のツッコミポイントである。また、ボールが中空を飛んでいる間にいろいろと考えたり会話できちゃったりして、どれだけ滞空時間が長いんだというのもそうだが、それは実は『巨人の星』なんかも同じ。

 自分自身が小学生時代に読んでいた頃はよくわかっていなかったが、実は花輪のアクロバットサッカーのような、いかにもなトンデモプレイのみならず、たとえば日向の「相手をふき飛ばしながら突き進むドリブル」みたいなのも実際はあり得ないよね。そもそも、普通に力任せに相手を抜いたからって相手はふっ飛んではいかないし(笑)、仮にふっ飛んでいったりしたら、審判の笛が鳴ってイエローカードを貰うだろうから、そのままプレイ続行はできないんじゃなかろうか。
 そういえば、中学生編になって、やたらと名前つきの「必殺技」が増えるのは、たぶん連載当時、荒唐無稽な「必殺技」を出せば出すほど読者アンケートの人気が上がったから、麻薬みたいにひたすら依存し続けるしかなくなっちゃってたんだろうな(※5)。

 また、中西や早田、次藤(とくに次藤)の微妙すぎる方言。本来だったら、写植前にちゃんとネイティブのチェックを入れるべきところだったろうが、週刊連載では時間的に無理だったのだろうか。

 作画面では、そう、『キャプつば』といえば、誰もがツッコまずにいられないのが、キャラクターたちの体型、とくに「等身」である。
 そもそも、日向の体格はどう見ても小学生じゃない。少なくとも高校生の体格だ。日向以外は、たとえば三杉なんて体格的には華奢だが、小学生どころか大人でもあり得ないぐらい足が長いし。初期には寸詰まりでかわいい体型だった翼や岬君まで明和との決勝戦の頃には10等身ぐらいになってるし。初回から決勝まで、作中時間では数か月のはずだが、翼や岬君は、いくら成長期とは言え、どれだけ成長しているんだと言いたくなる(※6)。
 だいぶ後の話になるが、翼と早苗の結婚式の絵における各キャラの等身なんて、もはや、どう見てもデッサンが狂っているだろうというひどいレベル(※7)。担当編集者も、ここまで変な絵はちゃんとNGにしないといけないんじゃないか。


 それから、先述の「小学生の試合で巨大スタンド満員の大観衆と完全生中継」という異質さについてだが、これは、まあ、作中での説明はとくにないが、こういう解釈でどうだろう。
 『キャプつば』の世界というのは、とくに断られてはいないが、小学生サッカーが現実界の高校野球並みの社会的注目を集めているという設定のパラレルワールドなのだと(※8)。たしかに、小学生の競技で各チームにちゃんとした「応援団」がいるというまるで高校野球のようなあり得なさも、『キャプつば』パラレルワールドでは、少年サッカーがまさに現実界の高校野球にあたる国民的娯楽なのだと、強引に解釈すれば、一応わからなくもないか。まあ、それでも、やっぱり、全国大会予選リーグ初戦の明和戦(※9)で、試合開始直後に実況アナウンサーが、「さすがの沢田くんも、テクニシャン岬くんは抜けない!」なんて言っているのを見ると、初戦の段階で「さすがの沢田くん」とか「テクニシャン岬くん」とか、よく知ってるなあ(笑)と、ツッコミを入れずにはいられないものがあるが(笑)。


 また、作画や世界観以外の面ですごく変というか、つい気になってしまうのは、小学生の同学年同士の会話としてあり得ないような口のきき方をするところかな。
「若林さん!」
「どうだ、みんな気落ちしてないか。負けはしたが、森崎、今日の試合よかったぞ。明和相手によくがんばったよ、おまえ」
「はい!」
「俺が行くまで、これからも南葛ゴールを頼んだぞ」
「はい!がんばります!」
「ところで、翼はしょげてないか?え?」
「あっ、じゃあ今、かわります」
という若林と森崎の電話での会話なんて、同学年の小学生同士の会話じゃないよね。実業団の先輩と後輩の会話だろう(笑)。
 若林と森崎に限らず、若林と修哲メンバー、日向と明和メンバー、三杉と武蔵メンバー、松山とふらのメンバー、そして、あねごと南葛応援団員。どれも同学年の小学生同士のしゃべり方じゃないよね(※10)。


 以下、それ以外の些細なツッコミドコロの数々もランダムに挙げると・・・明和FCの県大会準決勝の相手は「南武FC」となっているが、埼玉県で「南武」はおかしいだろう。また、岬君が南葛小のメンバーたちに全国のいろいろな強豪クラブチームの情報を教える場面では、ここで紹介された「九十九里FC」、「博多SC」なんて、後でまったく出てこず、伏線はりっぱなしで忘れ去られている。一方、難波は止め絵で出てくるが、後に出てくる難波とはユニフォームもチーム名もチームカラーも違う。
 ユニフォームが違うといえば、明和FCは最初はユニフォームの色が違っていたし、武蔵なんて最初は「FC武蔵」だったのに、いつのまにか「武蔵FC」になっていた。また三杉が通っている小学校は「東城学園」という私立のはずだったのが、中学生編では三杉の学校は、日向の中学「東邦学園」と名前がかぶるからか(※11)、武蔵FCの名前に揃えたのか、東城学園中学ではなく、武蔵中学になっている(※12)。


(2)『キャプつば』熱


 さて。
 『キャプつば』が、ともかくも、80年代の小中学生の間でバイブルとなったのは、非現実的トンデモ必殺技の数々とキャラの魅力によるところが大なのは言うまでもないが、そのキャラクターについて。
 これは既にしばしば指摘されていることだが、タイトルロールの翼(※13)は、実は改めて考えると、本来、主人公向けタイプじゃないかも、と思う。つまり、翼というのは、天才型で、家庭環境も恵まれていて、不幸な要素がほとんどない能天気な存在で、それゆえ、劇画的には、むしろ日向のほうが星飛雄馬タイプで主人公向けではなかろうか。
 だからこそ中学生編は実は翼じゃなく日向のほうが主人公と言えなくもなかった。

 だいたい天真爛漫で無邪気だった小学生時代の翼と違って、中学時代の翼は傲慢であまり性格が良くないし。そう、何をかくそう、私が小学生編は愛読していながらも中学生編は実質的に途中脱落した理由は三つ。

(1)翼の性格がうざくなったから
(2)比良戸コンビがうざかったから
(3)単純に飽きたから

である(笑)(※14)。


 ちなみに、私は、けっこう移り気なたちで、小学生編におけるごひいきキャラの遍歴は、最初は俺様キャラの若林で、次に若林とは対照的におっとりしたやさしい岬君、それから「しつこい男」こと松山(※15)を経て、最終的には悲壮感が魅力の三杉君(※16)に落ち着いた。
 その他だと、中学生編でデビューした早田も意外と好きだが、なぜか翼ファンだったことは一度もない。上述の通り、弱さとか不幸とかかわいそうな感じとかがほとんどないからだろうか。普通は主人公にこそそういった要素がつきものなのにね。
 あとは、選手以外では、明和の吉良監督というのも、私はけっこうすきなキャラだが、かなりステレオタイプなキャラではあるな(※17)。そもそもカタキ役だから「吉良」って、フランス人だからナポレオンってのと同じくらい安易なネーミングだし(笑)(※18)。


 それから、女性キャラと恋愛模様についても少し触れておこう。
 意外と女の子キャラをかわいく描くのが上手いというのが、高橋陽一の特長である。高橋は、あまり美少女キャラの描き手として語られることのない漫画家だが、小学生編の「あの子はだーれ?」の回あたりで、実は既にかなりの美少女ペインターぶりを遺憾なく発揮している。
 『キャプつば』では中学生編から、女の子キャラ重視の恋愛重視でテコ入れの編集部方針になったのか(※19)、あねご改め早苗がご都合主義的にキャラを変えられたりー私は小学生時代の早苗のキャラクターのほうが断然よかったと思うのだがー、その早苗に恋のライバルの翼ストーカーが現れたり、早苗を狙うサッカー部外の生徒も現れたり(※20)と賑わいを増すが、一般的には一番人気は、空港のシーンが忘れがたいリリカルな印象を残した、松山の彼女の美子あたりか。

 私は、小学生編以来の古参キャラの青葉弥生(※21)と、この作品にしては珍しく相手と「対等」な感じがするサバサバキャラの真紀がお気に入りなのだが(※22)。


(3)最高試合


 かつて私が夢中になった、『キャプつば』小学生編。その中で、私がベスト試合を選ぶとしたら、迷うことなく、準決勝の武蔵FC戦である。
 『巨人の星』でいう熊本農林戦にあたる(※23)雨の準決勝(※24)。決勝の南葛VS明和でさえも及ばない。私の中では。そして三杉の4点目、最後のゴールは私の中では作中の全てのゴールの中でベストゴール(※25)。三杉のサッカー人生最高のゴールでもあったろう(※26)。

 それに次ぐのが明和VSふらのだが(※27)、他には武蔵戦と同じ雨天試合の県予選準決勝、島田小戦もいい。
 空中オーバーヘッドキック(※28)に象徴される超人プレイが珍しく全然出てこないので、明和FC戦や武蔵FC戦と違って、現実にあったとしてもおかしくない、普通にサッカーらしい名試合として、一般にも評価の高い試合のはずだ(※29)。
 トンデモ超人プレイがない普通に小学生らしい名試合という点で、実は『キャプつば』らしくない名試合。まるで『キャプつば』ブームに便乗した二匹目のドジョウ狙いの、悪く言えばパチモンでありつつ同時にーちょうど『巨人の星』に対する『キャプテン』のように(※30)ー超人技を売りにする『キャプつば』のアンチテーゼでもあった等身大の『がんばれ!キッカーズ』のような。・・・


 と、それはさておき、準決勝の南葛VS武蔵戦、明和VSふらの戦、いずれも読者にとっては、身も蓋もないことを言えば、勝敗はわかりきっていた試合だ。仮に万一、『巨人の星』のごとく(あるいは天下一武道会のごとく)、主人公のチームが決勝で負けるという展開はまだしもあり得ても、主人公のチームが準決勝で散るということは、当然ながらあり得ない(※31)。だから、武蔵FCの三杉がどんなに活躍しても、読者は、最後はどうせ南葛が勝つとわかっている。
 だからこそ、まるで武蔵が南葛に負けるのが自明であるかのごとく、三杉は南葛戦の前に「これが最後の試合だ」と何度も強調する。まるで、武蔵が南葛に勝利して、明和と決勝で戦うことなど最初から想定していないかのように。まるで、自分が所詮は主人公の翼にとって「二番手」のライバルでしかないと、第四の壁を破って自覚しているかのように(※32)。
 また、南葛の決勝の相手が明和の日向でなくふらのの松山になる(※33)、なんてことも絶対にあり得ないと、やはりわかっている。

 それゆえ、この準決勝の2試合は、読者にとっては、最終的勝敗はわかりきっていたわけで(※34)、そんな条件下で名試合を描かなければならない作者の重圧は、ある意味、決勝戦よりも厳しかったのではないか。
 

(4)されど、偉大な作品


 ただ、今さらながら、『キャプつば』の作品自体の優劣評価や種々のデタラメ描写へのツッコミとは別に、現実界の競技人気、競技人口に与えた影響(※35)という点について考えるならば、やはり『キャプつば』には、『巨人の星』も『ドカベン』も『タッチ』も、あるいは『タイガーマスク』も『あしたのジョー』も『エースをねらえ』も『YAWARA!』も『ああ!播磨灘』も『プロゴルファー猿』も『スクールウォーズ』も、そして『スラムダンク』でさえも遠く及ばないのではないか(※36)。

 ・・・それにしても、こんなに昔は『キャプつば』がすきだったのに、現実界では、Jリーグも全日本サッカーも一度たりとも興味を持ったことがないというのも実に不思議なことである(※37)。
 予備校時代のドーハは、翌朝、周りが騒いでいるのを聞いて、はじめて前夜日本中が大興奮・大失望していたということを知ったし、大学時代のジョホールバルは、友人宅でみんなでテレビを見ていて、一応周りの空気に合わせて喜んだ演技でみんなと一緒にバンザイしたが、実は内心ではドーデモよかった(※38)。


 さて。そんなわけで、ブックオフで懐かしい『キャプつば』小学生編を文庫で揃えなおしたことだし。今度はまた高橋亮子作品の発掘にでも精を出そうか。



(※1)
もちろん、内容が相対的にいちばんマシなチャンネルだからというのもあるが、もう一つ、嫌いな芸能人や嫌いな政治家が映る頻度が相対的に一番少ないチャンネルだからというのもある。


(※2)
『野球狂の詩』、『剛球少女』、『Karen』、『それいけ!!ちびっこライオンズ』、『勝利投手』など、漫画・アニメに出てくる女の子ピッチャーに左腕が多いのは、左利きの女の子に萌えるという属性の人が多いから・・・ではなく、パワーがなくてスピードがなくても抑えられる可能性があるのは変則左腕だからということだろう。実際に球の遅いヤクルトの左腕・安田猛が王キラーだったように。阿久悠が『サウスポー』のアイディアを思いついたのは、安田ではなくライオンズの左打者キラーの左腕投手・永射保を見てだったらしいが(でも、門田やソレイタやリーを完全に封じ込めた永射でも、さすがにバースにだけはかなわなかった、と記憶している)。


(※3)
そういえば設定上、南葛小は公立で修哲小は私立となっているけど、公立同士、私立同士の対校戦ならよくあるが、公立と私立の対校戦というのはあまりないよね。
そもそも対校戦というのは、普通は高校の行事であって、小学校の行事じゃなかろうに。


(※4)
もっとも実況中継つきというのは、高橋陽一に限らず、ゆでたまごも鳥山明も多用する『ジャンプ』のお家芸なのだが。


(※5)
『Dr.スランプ』にやたら「ウンチ」が出てきてたのも実は同じ理由らしい。


(※6)
よく同時期の『ジャンプ』では、アラレちゃんが連載初回に比べて寸づまりの幼児体型に縮んだと揶揄的にツッコマレていたが、ちょうどそれと真逆だね。


(※7)
15等身ぐらいあるのかな?ブラキオサウルスじゃあるまいし(笑)。


(※8)
ちょうど『咲』が、「麻雀が賭け事としてでなく競技として定着している」というパラレルワールド設定であるように。
ただ、もしそうであるならば、初期の回で、翼が転校前の小学校でまわりにサッカー好きの仲間がなく、なぜ日本ではあまりサッカーの人気がないのかと嘆く回想シーンは矛盾してしまうのだが。


(※9)
この試合が、『キャプつば』国内試合において、唯一、主人公の翼が負けた試合、ということになるのかな?


(※10)
ちなみにあまり関係ないが、作中人物同士の会話といえば、2018年リメイクの新アニメの志水戦でのあねごと弥生の会話がハルヒとミサトの会話に聞こえてしまった。石崎も浦辺も両方とも田中真弓または高山みなみに聞こえる。


(※11)
そういえば、小学生編のときには名前が出てこない東邦学園の女性スカウトは、なぜピッチの近くで観戦せずにわざわざ遠くから双眼鏡で観戦するのか(笑)。考えてみれば不思議なことである。
また、そもそもいかにスポーツに力を入れている私立校であっても、さすがに専業のスカウトなんているんだろうか。たとえば、大阪桐蔭とかに、スカウト専従の職員なんているんだろうか(・・・って、意外と本当にいたりして(汗))。


(※12)
なお実在する「武蔵中学・高校」は、戦前からの名門私立進学校で、サッカーが強いという話は聞いたことがないが、勉学はきわめて優秀なので、私立小学校からあえて受験したとしてもまったくおかしくはない。そもそも首都圏の私立小学校には、エスカレーター校としてではなく、受験進学校として選択されている学校もけっこうある。ちなみに「武蔵中学・高校」自身も大学付属の学校だが、やはりエスカレーター校としてでなく進学校として知られている。


(※13)
そういえば、私たちが小学生時代のリアルタイムで『キャプテン翼』を読んでいた頃、全国大会に若林が欠場することになって(新書判の単行本で4巻の後半)翼が代わりのキャプテンに選ばれ、実はそこではじめて『キャプテン翼」という名が体を表すようになったのだということに、改めて驚嘆したものだ。「ああ、そういえば、『キャプテン翼』っていう漫画なのに、実は、翼は今までキャプテンじゃなかったんだっけか・・・」と。
この題名と実態の乖離は、もちろん、『キャプテン翼』というタイトルが、もともと連載版以前の、世界観を共有しない単発読み切り作品のタイトルを流用したものだからだろう。


(※14)
改めて考えてみれば、中学生編は基本発想が小学生編の焼き直し・繰り返しでホンマに芸がない。
東邦学園以外は、南葛中、武蔵中、花輪中、ふらの中、難波中なんて具合に、活躍せずじまいだったところも含めて、みんな小学生編のクラブチームの名をそのまま中学校名にしただけ(ふらののみ小学生編でもクラブチームではなかったが)。そして、三杉が地区予選で敗退したのを除けば、どういう順番で消え、どこが残るかも、小学生編と大差はない。主要キャラもそのまま。ただ味方に岬君と若林がいなくなっただけ(たしかに次藤みたいな余計な(笑)新キャラはいたが)。
これじゃあ小学生編より盛り上がれと言われても無理。少なくとも私は無理だった。


(※15)
松山といえば、選手宿舎の食堂で日向にひっぱたかれたことを後々までずーっと根に持っていた、粘着質のしつこい男として有名である。


(※16)
小学生大会ベスト4の他の3キャプテン、翼と日向と松山がみんな10番なのに三杉だけ14番のところが何ともかっこいい!
また、主要チームで武蔵だけがフィールドプレイヤーのユニフォームに襟があるところがニクい(あ、よく見たら、ふらのもだ)。私は、現実界のサッカーにうといので、現実に襟つきユニフォームってのが、あるのかどうか知らないが、ある・・・んだよね?


(※17)
守りより攻めを重視、攻めて攻めて攻めまくれを信条とする無頼派監督、というキャラクターは、この頃に一世を風靡していた池田高校の故・蔦(つた)監督がモデルだろうか。丹下段平のイメージもだいぶ入っているだろうか(笑)。
あとは、『ベストキッド』のミヤギは、どうだろう。『キャプつば』とどっちが先だったっけか。


(※18)
あとは、安易なネーミングといえば、三杉淳は、おそらく元横綱・二代目若乃花(曲垣)の大関時代までの四股名「若三杉」からとったのだと思われるし、若島津健は、元大関・若嶋津(二所ノ関)そのままだし、松山光は北海道の人だからというだけの理由で松山千春にちなんだらしいし、中西太一というのは、もちろん巨漢の怪童つながりの連想で元ライオンズの四番サード、中西太からそのまんまとった名に相違ない。
(追記:この駄文をお読みくださった方から、三杉淳の名の由来は、若三杉ではなく、『赤き血のイレブン』の「美杉純」というキャラクターだと、ご指摘いただきました。いやはや、不勉強で、まったく存じませんでした・・・)


(※19)
あれ、この時期の『キャプつば』の担当編集者って、何でもラブコメにしたがるマシリトだっけ?と思ってしまいそうになるが、たぶん違うだろう。


(※20)
こいつがまた、全然中学生には見えないんだ(笑)。


(※21)
弥生といえば、中学生編での「あ、ごめん」のやりとりも微笑ましい好場面だが、やはりそれ以上に印象に残るのが、小学生編の準決勝前日に、翼に「翼くん、お願い。キャプテン(三杉)を勝たせてあげて!キャプテン、本当は心臓が弱くてサッカーができないの。だから、どうしても優勝させてあげたいの!」と懇願するシーンと、後でそれがバレて、三杉にひっぱたかれるシーンだろう。
たしかに、選手でないとは言え、スポーツチームの一員として、対戦相手に敗退行為を依頼するなどというのはもっての他だし、疾病というデリケートな個人情報を本人に無断で他の人に教えるのも大いに問題である。が、弥生の懇願が三杉を思うやさしい気持ちから来ていることは読者には痛いほどわかるだけに、三杉にひっぱたかれて涙ぐんでいる弥生の姿を見ると、やはりどうしても「かわいそうだなあ」と思ってしまう場面である。


(※22)
ああ、あと、名前は失念したが、『エース!』のヒロインも文句なしの美少女であった。


(※23)
なお、どうでもいい話ながら、若林が新幹線を見送るとき、歩道橋から見送るんでなく、ホームのはじで無言で勝利のVサインをしたら、『巨人の星』へのおもしろいオマージュだったんだがなあ、と残念に思う(ちなみに細かい揚げ足とりだが、若林が陸橋から新幹線車両を見下ろすシーンで、新幹線が本当なら左側通行でなければいけないのに右側通行になっている)。
と、それはさておき、若林が小学生編のサッカー大会でケガして全国大会では決勝戦しか出られなかったという設定の理由は、作劇の都合として考えてみると、よくわかるよね。
やっぱりスポーツ漫画は基本的に接戦じゃないといけないものね。若林がいたら、相手が点を取れないわけだから、もし翼が点を取りまくって大活躍、若林も無失点で大活躍、では、接戦どころかワンサイドゲームになっちゃうものね。翼を活躍させて点の取り合いのシーソーゲームを演出するためには若林にいてもらってはいけなかったわけだ。
若林が出場する決勝戦に備えて明和側に若島津健という対抗馬キーパーが加わったのも、やはりバランスをとって接戦にするためには必要なキャラだったからだろう。


(※24)
ちなみに『巨人の星』の甲子園大会は、主人公が負けて終わるという、スポーツ漫画のトーナメントとしては実は珍しい結末であった。
あとはまあ、スポーツ漫画ではないが、『ドラゴンボール』の天下一武道会も意外に悟空はなかなか優勝できなかったっけ。


(※25)
もし同様に日向の小学生時代のベストゴールを選ぶなら、決勝戦の1点目か。
じゃあ翼の小学生編ベストゴールはと言うと、武蔵戦のエース復活ゴールや対校戦の両ゴールも印象に残るが、ここはあえて、決勝の明和戦・・・ではなく、最初の予選での明和戦の手品のような1点目を挙げたい。実に見事だもの。
さらにちなみに、岬君のベストゴールはと言うと、小学生編に関する限り、花輪戦での石崎の汚名返上シュートのフォローや決勝戦土壇場での若林の運命のロングシュートのフォローなど、他者のシュートに仕上げ加工するプレイの印象が強く、その最たるものが武蔵戦での同点ヘディングだろうが、普通のゴールだと、予選のほうの明和戦での前半終了間際の同点左足シュートかな(そういえば、あまり『キャプつば』世界で利き足というのは問題にならないようだが、岬君は左なのかもしれない)。


(※26)
なお中学生編は私はそれほど熱心に読んでいないが、日向VS三杉の、小学生編にはなかった夢の対決は印象的であった。日向にとっては、三杉に対し「試合に勝って勝負に負けた」苦い一戦でもあったか。


(※27)
そういえば、ふらのと武蔵の3位決定戦というのはなかったんだろうか。私は少年サッカー大会の規則は知らんのだが、そりゃま、たしかにトーナメントに3位と4位の順位づけは不要か。甲子園にだってないものね。
まあ、武蔵VSふらのでは、三杉の体調さえ良ければ武蔵の圧勝かな。


(※28)
キャプつばを読んで、オーバーヘッドキック(バイシクルキック)とは2メートルぐらいジャンプして体操のように綺麗に着地する技なのだと勘違いした子どもは多かったはずだ(笑)。


(※29)
ちなみに、島田小との試合では、「あれ?岬くんは欠場だっけ?」と思っちゃうぐらいに、なぜか岬君の存在感がない。はっきり言ってベンチの若林のほうがよほど目立っている。


(※30)
余談ながら、私は実は子どもの頃、『一発貫太くん』というアニメがすきだった。
少年野球漫画にしては珍しく、エースではなくスラッガーが主人公の作品である。


(※31)
と言いつつ、私も読んだことなくて知らなかったのだが、『ドカベン』作中で何回か出場している甲子園のうち、1回だけ、かなり早くに敗退してしまった時があったらしい。本当なら、これなど、まさにトーナメント漫画としては異例中の異例だろう。
あとはまあ、一応最終的には全国優勝するんだが、実質的に「甲子園に出る」までにしか興味がない、甲子園で勝つことではなく、甲子園に出るまでが目的という『タッチ』も、何だか変な漫画だよね(でも、よほどの常連校じゃない限り、実はそれが当たり前かな?)。


(※32)
たとえば、現実的な考えであれば、後半のはじめで翼が自信をなくして落ち込んで、2点差がついた時点で、三杉は翌日の決勝を見据えて引っ込んでもいいはずである。現実なら。


(※33)
なお、『キャプつば』界での少年サッカーを現実界の高校野球に比定するなら、ふらの小はちょうど金足農業か。
静岡県の南葛SC、埼玉県の明和FCといったサッカーのさかんな地域の強豪チームに対峙した北国の田舎町の公立学校が大健闘し、そして最後は破れるというドラマ。まさに84年と2018年の金足農業、あるいは69年の三沢である。甲子園で幾度となく披露されてきた判官びいきドラマだ(当然ながら、判官は決して最後は勝ってはいけない。美しく散ってこその判官なのだ)。


(※34)
ちなみに、日向VS三杉と翼VS松山は、それぞれ中学生編で実現したが、三杉VS松山だけはなかったのかな。
小学生編で準決勝の組み合わせが仮に逆で、南葛VSふらのがあったなら、もちろん南葛。武蔵VSふらのなら武蔵。武蔵VS明和だと、史実通りに日向の体調が悪くて、逆に三杉の体調が良ければ武蔵だろうが、三杉も心臓の持病が出て消耗戦になったらどうか。また、若島津が試合のどのへんで登場するか、あるいはしないかにもよるか。


(※35)
石崎のおかげでオウンゴールという概念を知った者、三杉のおかげでオフサイドという概念を知った者は多い。私も含めて。


(※36)
もし対抗できるとしたら、かろうじて『サインはV』、『アタックナンバー1』ぐらいか。


(※37)
私の中では、『キャプつば』の小学生編が終わった時点でバーンアウトしたというか、自分の人生の中でサッカー観戦という関心は完結したということだったのだろうか。


(※38)
非国民と呼びたくば呼べw。
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2 コメント

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Unknown (JM)
2019-07-27 06:44:12
ときたま覗かせていただいております
「三杉淳」の名前の由来ですが相撲の人の名前が
高橋陽一氏の念頭のどこかにあったかもしれませんが
それ以前に『赤き血のイレブン』に「美杉純」という
キャラが出てきてますよ
たぶん「三杉淳」の名はそれへのオマージュでしょう
返信する
ご指摘ありがとうございます (miushin42871(筆者))
2019-07-28 09:55:30
お読みいただいて、そして、ご指摘をいただいて、
まことにありがとうございます。
ご指摘の件、まったく存じませんでした。
大変助かります。
返信する

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