習作の貯蔵庫としての

自分の楽しみのために書き散らかした愚作を保管しておくための自己満足的格納庫ですが、もし感想をいただけたら嬉しく存じます。

「人情」無し・「ふれあい」無し・「珍道中」無し!!(2)

2022-02-05 11:27:14 | テレビ


 で、私見としては、何だかんだで「3泊4日で路線バスと徒歩だけでゴールを目指す」という、「対決」スタイルでない、絶対評価勝負の元祖『バス旅』がやっぱり一番おもしろかったね、というありふれた結論になるわけだ。

 最近の「対決」シリーズのゲスト芸人によくいるような「故意に作られた足引っ張りキャラ」ではない、蛭子能収の先の読めない言動(とくに『旅バラ』になる前の元祖『バス旅』シリーズの頃に顕著だった、涼しい顔して平然と無礼すぎる発言をするあたりw)が何度見ても飽きないということもあり、私などは過去の『太川・蛭子の元祖バス旅』シリーズのDVDをいまだに繰り返し見ている。

 そして、繰り返し見れば見るほど、そのシンプルなルールの完成度と日本の路線バス事情の奥深さに舌を巻く思いがする。
 素人料簡だと本数が多そうで簡単そうな王道の東海道五十三次の旅が思いのほか難敵だったり、逆に難しそうな北海道が実は毎回楽勝だったりと、初めて見たときはその意外性に驚いたものである。
 やがて、何本も見て慣れてくると、
「路線バスはあくまで鉄道を補完する存在だから、東海道ルートや山陽ルートのような幹線鉄道に並行するルートでは、バス路線がなかなかなくて当然」、
「バス路線の許認可者の縄張りという観点に立てば、県境を越えるバスが少ないのはたしかに当たり前。であれば、逆に『県境』の存在しない北海道は、その弱点がないのだから、難しそうでやさしいのも実は道理だ。かくして、本数は少ないものの一回乗ってしまえば一気に距離が稼げて、案外徒歩が少なく済んで、それで毎回楽勝なのだな。北海道回に当たったマドンナは得したね」
という具合に、事情がわかってきて、行ったことがなくても「ローカル路線バス事情通」になれた気がして、何となく楽しくなったりする。

 また、北関東がなぜか妙にバス路線が少なくて難しいと知ったり、四国が一見難しそうで本当に難しいと知ったり、
「九州は難しすぎず簡単すぎず、おもしろい回になりやすいのに、絶対的回数が少ないのは、やっぱり予算の都合?」
なんて、どうでもいいことを考えてみたり、
「それにしても、遠藤久美子回での四国の宿は、『バス旅』史上最悪の宿泊施設だったわなあ。いまだにアレを凌駕する悲惨な宿はないよね」(←粉河(こかわ)は?)
と、しみじみ思ってみたり。


 思えば、この元祖『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』を改めて見直すと、『対決旅』シリーズに決定的に欠けているものが何かに、否が応でも気づかされる。

 それは、誰でも気づくだろうが、旧シリーズのタイトルにあった「人情」、「ふれあい」、「珍道中」である。

 青森の田舎の大衆食堂のおばちゃんの機転に助けられたり、東北の農家の人にスイカを貰って屋外で食べたり、同じく東北で一般人家庭に上がらせてもらったり、新潟の田舎の商店の変な親父になぜか威張られてカップ麺のお湯をこぼしながら歩いたり、北海道の田舎の喫茶店で大昔に太川が訪ねたことがあったという事実に驚愕したり、山陰で無銭旅行の若者にサイン色紙をプレゼントしたり、東北でバスの中で乗客に民謡の踊り方を教わったり、伊勢の喫茶店のケバいおばあちゃんに漫才師と誤認されたり。・・・
 蛭子がパチンコ店に寄り道したことが後で響いてくるなんていう、文字通りの「筋書きのない珍道中」ハプニングに出くわしたことも記憶に鮮明である。お世話になったバス案内所の人に蛭子が「ご恩は一生忘れません!」と言った直後にその人の名前を忘れていたというのも個人的にツボだった(笑)。

 ゲストマドンナもフレキシブルな活躍ぶりで、厳寒の僻地の闇夜に、田中律子が知人にSOSを求めた結果、無事にその日のネグラが得られたなんていうお手柄も忘れがたい。とともに、あれがなかったら一体どうなっていたか、空恐ろしい(そして、この時こんなに奮闘した田中律子が、ただ無為に飲み食いするだけのテレ朝『ニセバス旅』で、おそらく貧乏テレ東の『元祖バス旅』でがんばった時より高いギャラを毎回もらっているんだろうなと思うと、世の理不尽に首をかしげたくなるw)。
 個人的には、順不同で、中山エミリ回(第7回)、田中律子回(第14回)、藤田朋子回(第5回)、さとう珠緒回(第15回)、加藤紀子回(第12回)、芳本美代子回(第9回)、野村真美回(第18回)、ちはる回(第16回)、はいだしょうこ回(第23回)あたりがおもしろかった「当たり」の回と記憶している。世評と一致するかどうかは知らんが。
 田中律子回や野村真美回のスリリングな綱渡りファインプレーの連続、中山エミリ回の前述のパチンコ事件、加藤紀子回の太川・蛭子マジバトルとマドンナの見事な機転、さとう珠緒回での蛭子とマドンナの奇妙な意気投合と「魔の三日目」の早すぎる打ち止め、どれも忘れがたい。とくに、中山エミリ回、さとう珠緒回、ちはる回あたりはゴール自体は失敗した回なのに、「名作」であるところが掛け値なしに素晴らしい。


 このように改めて「人情」、「ふれあい」、「珍道中」満載の旧シリーズを見直せば見直すほど、今の「対決」シリーズで失われた要素が惜しまれてならない。
 すなわち、「人情」、「ふれあい」、「珍道中」の喪失が。
 何しろ、バス車内や食事中のゲストマドンナとの交流さえ、今はまともに存在しなくなったのだから、「対決」シリーズは、太川陽介が路線バスに乗るという以外、もはや完全の別の番組である。

 今では、沿道上やバス車中の一般人との交流はもとより、立ち寄りスポットで働く人との交流も、案内センターで働く人との交流も、宿の予約のドラマやその宿の人との交流さえも、もうロクに存在しない。
 コロナ渦のせい・・・というのは、もちろんあるだろう。実際、いつかあった一般人の家に上がらせてもらうなんて、このご時世では絶対に不可能だし。
 が、コロナウイルスは実は枝葉末節で、感染対策があろうとなかろうと、太川陽介が、あるいは番組スタッフが、もう「人情」にも「ふれあい」にも「珍道中」にも興味をなくし、ひたすら「勝負」しか眼中にない、いかに口三味線を弾いて相手をだまし出し抜くかしか念頭にない、というふうになってしまったから、番組自体そんなギスギスした世知辛いコンセプトのだしものに成り下がってしまったからということのほうが真相だろう。
 かつて、ゲストマドンナのために靴の買い替えを提案したり、マッサージ利用を提案したりした「気配りと気働きの太川」は、もうどこかにいなくなってしまったのか??
 立ち寄りは、ジップラインやジェットコースターの自撮りがひたすらワンパターンで繰り返されるだけ。とにかくもう、毎回毎回、ただただ「勝負」「勝負」「勝負」の一点張り。・・・

 「嫌ならば見るなよw」という常套句のツッコミは、まったくもっておっしゃる通り。
 たしかに、今はまだ惰性で見ているものの、「人情」なし・「ふれあい」なし・「珍道中」なしの現在の『太川対決旅』シリーズが、いずれわが家の飯どきバックグラウンドから外される日も遠くはないのかもしれない。
 基本ルールは旧シリーズと同じだけど、やはり旧シリーズよりもともと少なかった「人情」「ふれあい」「珍道中」成分がさらに減少傾向で、徒歩の過酷さばかりがやたら際立ってきてしまっている『羽田圭介と田中要次のバス旅Z』シリーズともどもに。
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「人情」無し・「ふれあい」無し・「珍道中」無し!!(1)

2022-02-04 17:49:35 | テレビ


 前に本ブログで書いた通り、私は地上波テレビのリアルタイム視聴というものをめっきりしなくなって久しいわけだが、もちろん、だからと言って最近制作された地上波テレビの番組を全く見なくなったという意味ではない。当然ながら、時には自分で録画して、時にはネットフリックスやTVerやhulu等の配信で、視聴することもある。
 後者の手段で見たのはー全話ではなくあくまで一部だがー『大豆田とわ子』、『きのう何食べた?』、『孤独のグルメ』あたり。そして、前者で欠かさず見ているのが、テレビ東京系列の太川陽介『バス旅』シリーズである。


 私が最初に『バス旅』シリーズをちゃんと見たのは、いつのことだったか明確には覚えていないが、昼間の再放送だったと思う。当時、まだ太川陽介と蛭子能収の旧シリーズの頃だったが、たぶん新作放送に合わせて前回分を再放送したという形だったのだろう。

 それで、すぐに「ハマった」わけではないが、気がつけば、オンエアまたはBSテレ東(当時BSジャパン)での再放送を録画しては、食事しながら流すのが習慣になっていた。
 そう、「一家団らんの食事どきのテレビ」なんて今どき古いスタイルだと躊躇なく言い切り、普段は音楽CDをかけたり、ベルリンフィルの「デジタルコンサートホール」を再生したりしながら食事している私とそれに付き合わされている私の家族だが、『バス旅』シリーズだけは、例外的に、「みんなで食事しながら視聴」の「昭和スタイル」をとり続けているのだ。
 たしかに、現代の地上波商業放送バラエティの常として、「この後、さらなる大ピンチが!」、「ゴールかリタイヤか、運命の選択はいかに!?」的な煽りCMの挿入は鬱陶しいことこの上ないので、リアルタイム視聴ではなく、もっぱら録画してCMをカットした上での視聴ではあるが、それでも、「食事しながら、家族みんなで見るテレビ」の形態は、わが家ではかろうじて『バス旅』シリーズだけで残り続けているというわけだ。


 しかしながら、これは世間の大半の人と同じ、ありきたりの感想になってしまうのだが、やはりどうしても太川陽介と蛭子能収のコンビによる、3泊4日の旧シリーズが一番、という結論にならざるを得ないか。

「規定出演者は太川と蛭子とゲストマドンナの計3人のみ(『番組後半で、何とあの大物女優が途中参戦!』なんて余計なギミックは一切なし)」、
「3泊4日でとにかくゴールを目指す」、
「バスのつながらないところは歩く(最初期だけタクシー可)」、
「4日目の終バスまでにゴールに着けないようなら『失敗』(なぜか最後だけは歩きでのゴールは認められない)」、
「電磁的情報収集は禁止」、
「宿泊も食事も『仕込み』なしで交渉も自分たち」
といった基本ルールのもとで展開される、「筋書きのない、どうなるかわからない旅番組」という元祖『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の企画趣旨は、まさに『田舎に泊まろう』や『家ついて行っていいですか』や『池の水ぜんぶ抜く』や『充電させてもらえませんか』と同様に、「弱点を強みにする」ーせざるを得ないーテレ東ならではの、資金潤沢な他局では決して思いつかないゲリラ発想の勝利と言い得る。


 が、ご案内の通り、この元祖『バス旅』シリーズが2010年代後半に、「もう行くところがない」ということで終了になって以降、「テレ東バス旅シリーズ」は、かなり迷走している。テレ朝の徳光の『ニセバス旅』がある意味ずっとブレないのと好対照に、落ち着くことなく迷走し続けている。

 正統な後継者は言わずと知れた『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』だが、田中要次のキャラがウザいーという第一印象を多くの視聴者に与えてしまったーせいか、羽田圭介が得体が知れなくて気味悪いーという第一印象を多くの視聴者に与えてしまったーせいか、何だかレギュラーが不甲斐なくてゲストマドンナばかりが頑張って引っ張っているチグハグなチームワークーという印象を視聴者に与える回がかつて多かったーのせいか、ことあるごとにコンビ解散・終了と主催者側から恫喝されているあたり、テレビ東京当局からは、少なくとも、太川の出るほうの後続『バス旅』派生番組群ほどには、大事にされていないのはたしかだろう。


 では、局から「大事にされている」ほうの、「太川シリーズ」の、元祖『バス旅』終了後の諸企画はどんなだったか。

 私の記憶をひもときながら列挙して振り返ると、蛭子能収の芸能界引退前のものも含め、現在までで、

・『太川と蛭子の鉄道旅/名所を見つけてお金を貰おう』シリーズ(今は無し)
・『太川と蛭子の鉄道旅/名所を見つけてルーレットで双六を進もう』シリーズ(今は無し)
・『太川と蛭子の新・プチバス旅/1泊2日または2泊3日でタクシーOKでゴールを目指そう』シリーズ(今は無し)
・『太川と蛭子のローカルすぎバスツアー』シリーズ(今は無し)
・『蛭子とつるの剛士の村おこし旅』シリーズ(今は無し)
・『蛭子の一人旅』シリーズ(今は無し)
・『バス対鉄道対決シリーズ』(蛭子がいた時代から現在まで唯一継続)
・『バス陣取り合戦対決シリーズ』(太川単独になってから始まり、現在も継続)
・『バス鬼ごっこ対決シリーズ』(太川単独になってから始まり、現在も継続)
・『バスビンゴ対決シリーズ』(太川単独になってから始まり、現在も継続?)

と、かなりのパターンがあり、いかに迷走しているかが、この羅列を見ただけでもよくわかる。中には、1回か2回しかやらなかったような「シリーズ」もある。が、いずれにせよ、結局「対決」タイプに絞られたという結論は明白である。

 現在も続く

・『バス対鉄道対決シリーズ』(太川軍VS村井美樹軍)
・『バス陣取り合戦対決シリーズ』(太川軍VS河合郁人軍)
・『バス鬼ごっこ対決シリーズ』(太川軍VS松本利夫軍)
・『バスビンゴ対決シリーズ』(太川軍VS高島礼子軍)

の4本で、何がおもしろいか、また今後も長く残るのはどれか、ネット上で玄人・素人ともに日々、百家争鳴、侃々諤々としているわけだが、相対的な私の好みでは、何と言っても断然「陣取り合戦」である。
 市町村を「陣地」に見立て、名所をクリアすることで「取る」市町村の数を競うというルールが単純明快・公明正大で、とにかくわかりやすくてシンプル・イズ・ベスト。画面上の市町村地図を見ながら、視聴者も作戦を一緒に考えやすい。
 それに比べると、『鬼ごっこ』は、基本ルールがわかりにくい上、途中のリードがあまり意味がなく、結局、最後のところで決まってしまうー最後しか重要ではないーきらいがある。(今後シリーズとして続くかどうか自体まだわからないが)名所を取り合うという趣旨では『陣取り』のバリエーションと言える『ビンゴ』も、『鬼ごっこ』ほどではないが、やはり戦況が見えづらくて、そのぶん感情移入しにくい。
 一番人気の『バス対鉄道』は、村井“鬼軍曹”美樹氏のキャラが良くて、われわれ旧シリーズ以来の糟糠のファンでさえ太川でなく村井軍曹のほうを応援してしまうのは彼女の人徳であろうが、そもそも、ルート選択も時刻も考えるまでもなく一目瞭然の鉄道と、現地に行くまでルートイメージがわからないバスとの「対決」というのは、やや無理がある。ただ単にゴールを目指すだけなら、明らかに鉄道が簡単だし早い。
 だからこそ、チェックポイントを駅からかなり遠いところに置くことで、「ハンデ」としているようだが、結果、鉄道チームが、悲惨を通り越して凄惨なまでの徒歩強行軍を強いられて、もはや見ている側も楽しめるレベルではないほどの厳しさになってしまっているのは、さすがにイカガナモノカ。・・・
(ま、それはそれとして、たまにー4回に1回ぐらいー太川が鉄道、村井がバス、とお互いのポジションを入れ替えての「特別編」をやってみたりすれば、新鮮でおもしろいだろうとも思うのだが、どうかなあ?)
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