習作の貯蔵庫としての

自分の楽しみのために書き散らかした愚作を保管しておくための自己満足的格納庫ですが、もし感想をいただけたら嬉しく存じます。

昨日の英雄、今日の・・・

2014-04-05 09:45:31 | 政治・経済・社会・時事
 世の中の多くの人がたぶんそうであるように、私は生まれながらに終始一貫して順風満帆な成功者よりも、下層階級の逆境から這い上がった人物ー明の洪武帝、松下幸之助、ジョン・メージャー、孫正義、他多数ー、あるいは順風満帆から一転して病気その他で一度は絶望の淵に立たされるも、そこから復活した人物ーベートーヴェン、フランクリン・ルーズベルト、他多数ーらの物語に関心を持つ。
 自分自身の人生が、あくまで順風満帆のまっさら無傷な成功を理想としつつ、全然そうではなかったからこそ。

 そんなわけで、私の中で「尊敬している」と言い切ってしまってよさそうな人物に、末次由紀がいる。漫画家の。
 作品そのもののファンなわけではとくにない。が、一度は再起不能なぐらいにドン底まで落ちていながら、一度は「死んだ」と言うほかない状況に陥りながら、よくぞ再び立ち上がったもの。見事に復活し、前以上の成功を勝ち取ったもの。常人ならそのまま自殺するが自暴自棄になってニート化したっておかしくないのに、よくぞまあ。
 と、その不屈のファイティングスピリッツに心からの敬意を表したい。


 そして、もしこの後、末次由紀氏と同じ道を歩んだら、同じように心からの尊敬を捧げるかも、と、そんな意味で私にとっての注目パーソンが理化学研究所の研究員の小保方(おぼかた)晴子氏である。
 そう。今年の1月末から2月はじめ頃に何とか細胞とやらの論文で一躍「時の人」になった後、3月から4月にかけて、今度はその論文の盗用だか捏造だかの疑惑で負の「時の人」に瞬時に転じたあの人である。

 まさに昨日のヒーロー、今日のヒール。「リケジョの星」から「女佐村河内」へ。めくるめく落差の変わりようである。転落である。本人からすれば、おそらくは驚嘆すべき「手のひらの返されよう」である。
 数か月前にテレビで「昔から彼女は他の人にはない光るものがある、ポジティブで情熱的な、非凡な女性でした」とか何とか言って、氏を自慢げに褒めていた早大の旧友が、今はテレビで氏を「昔から彼女はこういう姑息なやり方で注目をひこうとする目立ちたがりでした」なんて言ってたりして。見てないから知らんけど。
 そもそもこの人の場合、「理系女子の希望の星」とされたときに、まさに女性だからという理由で非専門マスコミから過大に興味本意の報道をされたのと、実は同じ関心の所在で、何だか必要以上に興味本意でバッシングされているように見えなくもなくて、正直、気の毒に思えてしまう。
 もしかしたら、私の大学の仲が良かったサークルメイトにも「理系女子」で、同時に「かわいい女の子(ルックス的にもキャラ的にも、同性にとっても異性にとっても)」な先輩がいて、かつファーストネームまでその先輩と同じだったりするところから、他人のような気がせず、余計に肩入れしている面もあるかもしれないが、まあそれはさておき。

 論文の盗用だかデータ改竄(かいざん)だかはたしかに問題には違いないが、だからといって、純科学的な興味ではなく、たとえば小保方氏がまるで「女」を武器に理研の男性上司を籠絡したみたいな書き立てられ方は、どう見ても下衆なイエロージャーナリズム的関心だろう。
 少数派たる女性が男性社会の中で仕事をするには、男性にそうやって取り入らざるを得ないという現実を社会学的な見地から論ずるとかならまだしも。

 もちろん、捏造とか盗用とかいうのが事実ならそりゃ良くないのは当然だが、もし氏が男性だったら、あるいは女性でももっと年配で地味な人だったら、こんなに騒がれていたか。こんなに執拗にプライベートや過去の経歴を根掘り葉掘り週刊誌に書き立てられただろうか。
 何てことはない、要するにもてはやされた理由もバッシングされた理由も同じである。若い女性研究者という奇異なー男性にとって興味を惹かれるー存在だから。今思えば、肯定的な時期の取り上げられ方も、何だか「理系だけど乙女なんデス」と、妙にそこばかり強調した取材が目立っていたような気もするし。
 このあたりも何だか障害者という理由で音楽作品としての本質と無関係に勝手に称えられ、そして一転してバッシングの対象になった佐村河内騒動と同じ性質である。


 そして、私は小保方氏が、自分を守ってくれなかった研究事業体組織と手のひら返しの男性社会に、どのようにリベンジをするかという「次の一手」に注目していたりする。「百倍返し」なるかという。
 それもまた興味本意の野次馬根性以外の何物でもないが、やはりひねくれ者の私は、「頭のいい女性が素晴らしい研究成果をあげました。彼女こそ理系女子の星です」てな綺麗事の物語より、アンチヒーロー、ダーティーヒーローのリベンジの話のほうが惹かれるのだ。
 そのリベンジも単なる「がんばって見返してやった」話より、研究所組織の上層部と刺し違えて組織を壊滅させるような、いわゆる「自爆テロ」的な非常かつ非情なものならさらにおもしろい。とそこまで言ったら、まさにこれこそ興味本意の野次馬根性だが。

 そんな勝手な思いもあって、「リケジョの星」時期には関心のなかった小保方氏に、今こそある種のエールを送りたいへそ曲がりな私であった。
 末次由紀氏のように捲土重来で世間を見返すその日まで。
コメント
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