長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

114.長島充 版画展 『日本の野鳥~The Birds in JAPAN~』 in 福島潟

2013-11-30 20:24:29 | 個展・グループ展

本日から始まった新潟市での個展のお知らせです。

・長島充 版画展 『日本の野鳥~The Birds in JAPAN~』 in 福島潟

・日時/11月30日(土)~12月23日(祝・月) 9:00~17:00(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)

・内容/国の天然記念物に指定されているオオヒシクイの渡来地、福島潟が一望できる施設のギャラリースペースで開催。日本の野鳥をモチーフとした銅版画、木版画、木口木版画作品50点を展示する。

・入館料/一般400円、小中高生200円

・場所/水の駅『ビュー福島潟』 5階展示室 新潟県新潟市北区前新田乙493 tel:025-387-1491 http://www.pavc.ne.jp/~hishikui/event/index./html

・ワークショップ『消しゴム版画で彫ろう!福島潟こども版画教室』 日時/ 12月14日(土) 13:00~15:00 対象/小学生以上 先着20名(参加費500円)

・長島は12月14日(土)ワークショップに合わせて会場入りします。その他、施設内ショップにて野鳥版画作品の販売もしています。

※福島潟は新潟市北区内に広がる内陸水面、湿地で、カモ科の大型ガン類であるオオヒシクイ(Anser fabalis)の日本一の越冬地となっています。毎年5000羽を超えるオオヒシクイがロシアのカムチャッカ半島より冬鳥として渡来する他、現在までに220種以上の野性鳥類が確認されている野鳥の楽園です。『ビュー福島潟』はその湖畔にある観光、交流施設です。設計は国内外のルイヴィトン店舗外装や青森県立美術館を設計した青木純氏。そして現在の6代目、名誉館長は「知床旅情」で知られる歌手の加藤登紀子さんです。

新潟近郊の版画ファン、野鳥ファンのみなさん、是非この機会にバーダーでもある作者が野鳥たちに愛情をこめて制作した版画作品の数々をご高覧ください。画像はトップが今展出品の大判木版画 『輝く朝(マガン)』 下が個展情報を掲載したチラシとイギリスのカモ類図鑑から複写したオオヒシクイの図版。

 

   

 


113.モローとルオー展

2013-11-26 21:24:17 | 美術館企画展

15日、東京、パナソニック汐留ミュージアムで開催中の『モローとルオー-聖なるものの継承と変容-展』を観てきた。

ギュスターヴ・モローと言えばオディロン・ルドンと共に19世紀フランスを代表する象徴主義の画家である。印象派などの当時新しい芸術運動が盛んなパリにあって、絵画の主題をこの時代としては古い聖書や神話などに求め、想像力豊かな個性的表現に昇華させたことで有名である。晩年は国立美術学校で教鞭をとり名教授としてルオーを始め、マティス、マルケなど優秀な後進を輩出したことでも知られている。

その一番弟子で絆の深いルオーとの師弟展である。かなり期待に胸を膨らませて会場に入った。展覧会の構成は「ギュスターヴ・モローのアトリエ」「裸体表現」「聖なる表現」「マティエールと色彩」「幻想と夢」というセクションに分かれて2人の作品を紹介している。今回特に「レンブラントの再来」と賞賛されたルオーの初期の作品『石臼を回すサムソン』や『死せるキリストとその死を悼む聖女たち』など、画集でしか見たことのない作品と出会うことができたことは大収穫だった。褐色系の画面に構成された古典的表現の絵画は圧巻で、20代のルオーの煌めく才能を確認することができた。

モローの弟子たちへの指導というのはそれぞれの個性を重視した自由なものだったようである。マティスのように先生の作風に拒絶反応を抱き、全く別のベクトルに進んでいった生徒とは異なり、ルオーという人は作風のみならず、その精神性にも強く影響された弟子だったと思う。それは二人の個性が完成した時代の作品を比較した部屋のモロー作『パルクと死の天使』とルオー作『我らがジャンヌ』という作品を見てもあきらかだが、主題にしても近代絵画のこの時代に2人共『聖書』に主題をとったということにも表われている。

『マティエールと色彩』の部屋に数点の気になるモロー作品があった。それは『エボーシュ・油彩下絵』と解説版にある一連の油彩画だった。一見して何が描いてあるのか解らない抽象画を想わせる作風である。荒々しい筆のタッチで色彩が躍るように自由に塗られている。以前、入手した仏語版の画集にも同様の連作が掲載されていた。いわゆる習作やエスキースとも違う。研究者たちによると「後に制作する作品に向けて、色彩の適正なバランスを判断するための試作」なのか、それとも「それ自体が自立した作品」と見るべきか議論されているものらしい。あるいはこの連作を「抽象絵画の先駆的表現」とする研究者もいるようだ。いずれにしても未完の美とでも言うのだろうか、不思議な魅力を持った作品群である。真相は天国にいるモローに尋ねてみなければ解らない。

会場は美術館企画展としては空いていて、ゆったりと師弟の個性を堪能することができた。展覧会は来月10日まで。その後、松本市美術館に巡回する。まだご覧になっていない方は、ぜひこの機会に。画像はトップがモロー作『エボーシュ』部分。下が同じくモロー作『パルクと死の天使』の部分とルオー作『我らがジャンヌ』部分。(以上展覧会図録より複写)展覧会看板。

 

     

 

 


112.東京・大阪の個展にご来場いただきありがとうございました。

2013-11-23 22:23:19 | 個展・グループ展

先月から続いた東京と大阪の個展も無事終了いたしました。

現在、来月から始まる2つの個展に向けて準備の真っ最中です。バタバタと日常に追われ、ご来場いただいたみなさんへのお礼がたいへん遅くなり失礼いたしました。東京銀座、青木画廊での絵画個展『伝説の翼』展、大阪高槻アートデアート・ビューでの版画個展『神話と伝説』展にご多忙の中ご来場いただいたみなさん、作品をご購入いただいたみなさん、展覧会関係者のみなさん、この場をお借りしてお礼申しあげます。会場ではさまざなな感想やご意見をいただき、また次回展への目標ができました。絵画、版画ともに少し見えてきたこともあり、少しづつですが内容も変化していくような気がしています。

また、しばらく地面の下にもぐって工房で引きこもりの制作が始まります。仕上げた作品をかかえて地上に出られた頃にまたお会いしましょう。その時はまたご意見、ご感想をお聞かせください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。画像はトップが東京、青木画廊絵画個展『伝説の翼』個展会場風景。下が大阪、アートデアート・ビュー版画個展『神話と伝説』個展会場風景。

 


111.古寺巡礼(一)・京都 東寺

2013-11-20 13:41:33 | 旅行

先週初め、大阪高槻の版画個展オープニングの翌日、京都に用事と買い物があったので立ち寄った。少し時間ができたのでどこか古寺を訪れようと思い立ち、JR京都駅から近い東寺に行くことに決めた。ひさしぶりである。いつも大阪や神戸に行くときに新幹線の車窓から見える五重塔を横目で見ながら、いつかまた行きたいと思っていた。

駅から案内板をたよりにテクテクと歩いていくと大宮通にたどり着き、しばらく行くと五重塔が見えてきた。すぐにそれと解る姿はこの町を代表するランドマーク建築である。横断歩道を渡って慶賀門から境内に入っていく行く。参拝自由の食堂をお参りして、拝観受付に着くと、この時期今年の『秋季特別公開』の期間にあたっている。何も下調べもしてこなかったのに運が良い。曇り空で少しポツポツと小雨も降っていたが、この方が伽藍が落ち着いた自然な色合いに見える。ところどころに植わっている木々の紅葉も美しい。

今回、東寺を選んだのには一つ理由があった。それは2年前に東京の国立博物館で『空海と密教美術展』が開催されたおり東寺の『立体曼荼羅』の一部が紹介されたが、その全貌を本家で久しぶりに見ようと思いたったことだった。講堂の歴史を感じる重い木製の戸を両手で押すと本尊の『大日如来』を中心に如来、菩薩、天、明王など21体の安置された仏像が出迎えてくれた。控えめな採光のほのかな光の中に浮かび上がった平安彫刻の傑作の数々は奥深く幽玄な空間を作り出している。 「やはり博物館で見るのとでは全く感じ方が違うなぁ…。」 順路沿いにお参りしながら、ゆっくりと見ていった。次は金堂である。こちらは天上の高い堂内に『薬師三尊像』が安置されている。本尊台座の周囲には桃山時代の名品とされる十二神将像が立ち並ぶ。そして五重塔に到着。内陣には心柱を中心に金剛界四仏と脇侍、そして壁面や側柱には絵画や装飾など華麗な彩色が施されている。

ここまで見て、かなり充実した気持ちになったので紅葉などをカメラに収めながら境内を散策した。その後、宝物館に立ち寄り特別公開の仏教美術や書の数々を見て、御影堂をお参りすると午後遅くとなってしまった。ここでタイムリミット。元来た道を京都駅までもどり帰路に着くことにした。新幹線の車中で何か見落としているように思いパンフレットを見直すと観智院というお堂にある伝・宮本武蔵筆の花鳥画『鷺図』をスルーしてしまった。残念。また次回のお楽しみということとなった。短い時間で足早だったが久しぶりに東寺を訪れることができ、密度の濃い時間を持つことができた。画像はトップが東寺・五重塔。下が桜の落ち葉と講堂の裏手。

 

   

 

 

 

 


110.長島充 版画展 『神話と伝説』 in 大阪  始まりました。

2013-11-12 16:16:19 | 個展・グループ展

10日(日)大阪府高槻市の画廊、アートデアート・ビューで始まった、『長島充 版画展 神話と伝説』のオープニングに行ってきた。東西世界の神話・伝説を主題にした連作版画作品、約30点の展示となっている。

朝、家を出て東京駅から新幹線に乗り京都駅で乗り換える。ここから20分弱で高槻駅に到着。チェックインにはまだ速いが今夜の宿であるホテルに荷物を預け、徒歩で画廊に向かう。アーケードや繁華街を抜けていくと、静かで落ち着いた雰囲気の地区となる。昭和の匂いがする民家がところどころに登場し、ちょっと嬉しくなってついカメラを向けてしまった。ゆっくり歩いて5分ほどで画廊に到着した。ここも古民家を改造した画廊なので玄関をくぐって声をかけると、なんだかひさびさに親戚の家を訪ねてきたような不思議な気分になってしまう。まだ午後速い時間帯なので、お客さんは来ていない。中からオーナーのSさんの明るい声が聞こえてきた。

2年前に『日本の野鳥』を主題とした連作版画の個展を開いていただいた。明るく親切なSオーナー夫妻が控えの小部屋から登場すると、まだ2回目なのになんだか懐かしく、ホッとしてしまった。前回は初日にアーティスト・トークを行ったが、今回はラフに作家を囲むお茶会をするという。画廊の中央のテーブルでそんな事前打ち合わせをしていると、ポツポツとお客さんが訪れ始めた。ほとんどがリピーターの方で絵を前にSさんとお話しできるのを楽しみに来ているようす。この地域のサロン的な役割も担っている空間になりつつあるようだ。

3時になりお茶会の時間となったころ、お客さんも次々と増えてきて京都方面から3人の画家仲間も駆けつけてくれた。前回に続き京都からお出でいただき3点の作品を購入される方もいた。多くの絵描きがそうであるように、人前で話すのは得意なほうではない。さて、どんな話題から話そうか…版画を始めた頃からの主題の変遷を話すことに決めた。20代後半からバブル経済を挟んで40代初めまで、世の中の豊かさとは裏腹に、社会への疑問が強く「反物資文明」をスローガンに人間風刺的なテーマを長く続けていたこと…40第後半から現在まで主題もアンチテーゼの強い内容から「共生」へと変化してきたことなどをトツトツと語った。質問も多く少し戸惑ったが、穏やかな雰囲気に助けられて無事終了。

会場で記念撮影を済ませ、二次回は有志で近くの海鮮飲み屋になだれ込む。画廊では話せなかったいろいろな話題が飛び交い、あっという間にお開きの時間。最後に残った5名と、Sさんお勧めのジャズのライブハウスに移動し三次会。残念ながらライブ演奏はちょうど終了したところだが、薄暗い照明の雰囲気のあるお店で歓談に花が咲く。高槻市は神戸市を抜いて全国で一番のジャズ・フェスの開催される町だということだ。今度はフェスに合わせて訪れてみたいなぁ。ここでほんとうにタイムオーバー。残った人たちと再会を約束する握手を交わし、一人宿へと戻った。展覧会は18日(月)まで、僕は会場にはいませんが、京阪神地域の版画ファン、アートファンのみなさま、この機会にぜひご高覧ください。画像はトップがお茶会のようす。下が個展会場のようすと昭和の匂いのする高槻の民家。

 

   

 


109.長島 充 版画展 『神話と伝説~The Myth and Legend~』 in 大阪 

2013-11-08 14:09:33 | 個展・グループ展

東京での絵画新作個展が終了したばかりだが、続いて来週初めより大阪で版画の個展を開催します。以下、個展情報となります。

・タイトル:長島 充 版画展 『神話と伝説~The Myth and Legend~』

・会期:2013年11/10(日)~11/18(月) 11:00~18:00 (11/12(火)休廊 最終日17:00まで)

・会場:アートデアート・ビュー 大阪府高槻市北園町13-30 阪急高槻駅徒歩3分 JR高槻駅徒歩6分 tel:072-685-0466 http://www.artdeart.jp.

・内容:東西世界に分布する神話や伝説などを主題とした銅版画、木版画、木口木版画などさまざまな版画技法による大作から小品までの版画作品約30点を展示します。

※10日(日)15:00~17:00 作家を囲むお茶会(参加費500円ドリンク付) 作品や版画、野鳥などについて作家と気楽に話しましょう。

今展が大阪での5回目の個展でアートデアート・ビューさんでは2年ぶり2回目の発表となります。京阪神地域の版画ファン、神話・伝説ファンのみなさま、この機会にぜひご高覧ください。よろしくお願いします。画像は個展DMの裏表。

 

 

 

 


108.青木画廊での絵画新作個展も無事終了しました。

2013-11-07 13:18:54 | 個展・グループ展

東京銀座、青木画廊での新作絵画個展『伝説の翼~The Wing of Myth and Legend~』も今月1日に無事終了いたしました。ご多忙の中、ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

会期中は台風が接近するなど天候に不安がありましたが、祈りが通じたようにコースもそれて、とても多くの方々にご来場いただきました。画廊の方のお話では芳名帳に記帳されなかった方も含めると400名以上は来ているだろうとのことでした。また会場では多くの方に励ましや賞賛の言葉をいただき感謝しています。今回作品をご購入いただいた方の半分が初めて僕の作品を購入されたということも驚きでした。そして作品を通じて楽しんでいただけたこと、何かを感じて反応していただいたこと、絵を通じてさまざまなコミュニケーションができたことが何よりも嬉しいことです。

美術家というのは個人差もありますが、個展を開催するのに最低2年間ぐらいは仕事場に籠って制作します。そして作品が数十点たまると1週刊から2週間の1瞬に発表し、仕事が完了します。このことをたとえていうなら、セミの幼虫が長い年月土中生活をし成虫になったと思ったら、わずか1週間ぐらいで必死に鳴いて恋をし、産卵して、1生を終えるようなものです。このサイクルを何十回と繰り返していかなければなりません。

個展最終日、展示終了後に画廊のA夫妻と雑談を交えながら、おいしいお酒を一杯やりました。この時に次回の個展のテーマなどもお話ししました(内容は、まだ秘密です)。しばらくは今回ご好評いただいたネパール紙の作品を続ける予定です。また、しばらくの間は土の中にこもり制作に精進努力してまいります。

次回展もどうかまたご来場ください。よろしくお願いいたします。画像はトップが青木画廊個展の看板。下が会場風景。