長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

172. 2014年 一年間ありがとうございました。

2014-12-31 12:56:02 | 日記・日常

ブロガーの皆さま、今年一年間お立ち寄りいただいた方々、FB、mixy、twitter の方々、友人知人の方々、2014年一年間お付き合いいただきありがとうございました。コメントでの励ましのお言葉やアドバイス、いいね!をいただいた方々、感謝しています。

自分事になりますが、今年は個展やグループ展も開催回数が少なく、とにかく作品制作に集中した一年でした。何か特別新しいことを始めたり表現の可能性を広げるというよりも『今まで継続してきた技術や内容(テーマ)をさらに掘り下げ、深めて行くこと』に集中しました。それでも新たなうれしい出会いもあり充実した展覧会となりました。今後もしばらくはこのペースで続けて行くと思います。みなさまにとってはどんな一年間だったのでしょうか。

来年から再来年にかけて個展とグループ展が続きます。特に来年の秋以降は版画の個展を各地で予定しています。また会場でみなさんにお会いし、作品を前にお話しできることを楽しみにしています。またブログの方も継続していきますので変わらずお付き合いください。

2015年が、みなさんにとって明るく充実した一年になりますようお祈りしております。良い新年をお迎えください。画像は当工房の近くにある印旛沼の冬の日入り風景。


171. 『第九』を聴かなきゃ師走じゃない。

2014-12-27 20:36:29 | 音楽・BGM

今年も残すところ、あとわずかとなった。例年12月に入るとベートーヴェンの『第九交響曲』のCDを毎日のように聴くことが習慣になっている。こうすることで変化の少ない日常に師走のムードを盛り上げているのだ。ついでに「ベートーヴェン月間」と自分で勝手に銘打って、師走の慌ただしい最中に交響曲に限らず協奏曲、室内楽曲などを聴きまくっている。

第九に限って言えば、LP時代よりカラヤン、ベーム、イッセルシュテット、小澤など名指揮者と一流のオケによる数々の名盤を聴き続けてきたのだが、ここ数年のお気に入りはN響の名誉指揮者として我が国でもお馴染みのヘルベルト・ブロムシュテットの指揮でオケはシュッターツカペレ・ドレスデンによる1970年代録音の盤と巨匠レナード・バーンスタイン指揮で6か国合同オーケストラにより「ベルリンの壁 崩壊」の開放記念コンサートとして1989年に演奏録音された盤の2枚である。

前者は1970年代の冷戦時代の吹き込みで東ドイツ側が当時クラッシク王国であった西ドイツに張り合って録音された「ベートーヴェン交響曲全集」のうちの一枚である。その正攻法・伝統的スタイルの演奏は国際的にも高く評価された。後者は説明したとおりである。世界中が歓喜に震えたあの瞬間、1989年11月9日から10日にわたるベルリンの壁崩壊。その年の12月25日、東ベルリン、シャウシュピール・ハウスにおいてライヴ・レコーディングされたものである。オケはヨーロッパ6か国から選ばれた生え抜き演奏家、声楽家による合同オケであり、このような場面ではバーンスタインのような大コンダクターでないと収めることはできない。全楽章から東西ドイツ開放のパワーが地響きのようなサウンドとして聞こえてくる感動のライヴ録音だ。そして「フォト・ドキュメント 1989年11月9日 ベルリンの壁崩壊」というモノクロ写真集の中に挿入されていた。あれからもう25年も経っているんだねぇ…。

この2枚を気に入って選んだのは偶然である。一枚は冷戦時代の東西の競争意識で録音され、一枚は東西の世界の解放の喜びを曲に込めて録音されたもの。同一作曲家の同一曲なのだが聴き比べていると伝わってくる内容が微妙に違っていて不思議である。2015年を迎えるその瞬間まで聞き続けていくことにしよう。

画像はトップがベートーヴェンの肖像画。下が左からブロムシュテット盤ライナー、バーンスタイン盤ライナー、ベルリンの壁崩壊のモノクロ写真集から2枚を転載。

 

      


170. 『高野山の名宝』展

2014-12-25 21:17:55 | 美術館企画展

今月某日。個展の在廊の合間をぬって都内のサントリー美術館で開催されていた『高野山の名宝』展を観に行ってきた。

和歌山県の高野山は「一度参詣高野山無始罪障道中滅(高野山に一度上れば、生前からの罪が消滅する)」と昔から語り継がれてきた標高900m前後の山上盆地に広がる宗教都市でる。そして恐山(青森県)、比叡山(京都府、滋賀県)と並ぶ日本三大霊場の一つである。平安時代、弘仁七年(816年)、弘法大師空海によって真言密教の奥義を究める修業道場として開かれ、2015年に開創1200年を迎えようとしている。その節目の記念もあってなのだろう、この3年ぐらい博物館や美術館企画による名宝展が幾度か開催されている。

今回、サントリー美術館で開催された展示は高野山の長い歴史の中で大切に守り伝えられてきた多くの至宝の中から空海ゆかりの宝物、密教の教理に基づく仏像、仏画など国宝、重文などを含む60件を選りすぐり展示されていた。地下鉄六本木駅より地下通路沿いに歩いて会場に着くと、すでに入り口には来場者の列ができていた。保存のために明るさをかなり絞ったライティングの会場に入ると、最初の部屋からお宝の数々で眼が離せない。この美術館は大きさはないがとても落ち着いた雰囲気で展示物が鑑賞し易い。仏具や書、絵画と順を追って観ていくがハイライトは何と言っても鎌倉時代、仏教彫刻界に新風を吹き込んだ仏師・運慶による国宝『八大童子像』である。そして八体そろって鑑賞できることはなかなかないとのことである。

以前、別の仏教美術展のレポでも書いたが、僕は鎌倉彫刻にとても心を魅かれている。その写実性と表情の豊かさは他に類例をみない。この大日如来の使者とされている八大童子像もすばらしい写実表現の像である。八体そろった部屋で眺めていると今にも動き出しそうな錯覚をおぼえてしまう。天才仏師、運慶の技量にささえられたこの時代の精神性の高さに感動せざるを得ない。上野の博物館に比べて会場は小さいが仏像との静かで充実した時間を共有することができた。画像はトップが美術館の入り口。下が地下のアプローチ途中に設置された大理石の抽象彫刻、八大童子から「恵光童子像」の顔、「こんがら童子像」の顔のアップ(展覧会図録より)。

 

      


169. 長島充 版画展 『日本の野鳥』 in 本郷 ご来場いただきありがとうございました。

2014-12-15 20:43:34 | 個展・グループ展

今月3日からスタートした版画個展、『日本の野鳥』 in 本郷も13日に無事会期が終了しました。師走のご多忙の中、ご来場いただいた方々、版画作品をご購入いただいた方々ありがとうございました。感謝します。

今回、東京での版画個展としてはひさびさで、初めての画廊ということもあり、会場にできるだけつめたのですが連日来場される方は途切れることがなく、個展リピーターの方のみならず初めて僕の作品を観るという方々や飛び込みの方々も多く、刺激的で楽しい会期を過ごすことができました。これも機会を与えてくださった25年来のお付き合いとなるギャラリーのTオーナー、そして気持ちよく在廊させていただいたスタッフのみなさんのおかげだと思っています。Tさん、以前からお声をかけていただきながらタイミングが合わず初個展開催までこんなに時間がかかってすみませんでした。

画家でも版画家でも発表に向けて作品を作り続ける行為は土中のセミの幼虫に似ていると常々思っています。長い時間をひたすら耐えて制作し、いざ発表したかと思うと会期は一瞬にして時の流れに過ぎ去っていきます。このことは卵から7年間という長い歳月を過ごし、ようやく成虫に羽化したかと思ったら盛夏のわずかな時間を精一杯生きて燃焼していくセミの姿にどこかイメージが重なるのです。

来年は夏からまた絵画と版画の発表が東京、新潟、大阪と続きます。夏までまたカフカの『変身』の主人公のようにセミの幼虫に変容しつつ、コツコツと土の中にトンネルを掘るような制作の毎日が続きます。ブログをご覧のみなさん、またいずこかの画廊空間で作品を通した一瞬の素敵な出会いを楽しみにしています。では、それまで。

画像はトップが外の通りからウィンドウ越しに見た会場。下が左から会場中央からの展示壁面、臼にガラス板を乗せた独特のテーブルの中に展示した木口木版画の版木と道具、帰り道に東大キャンパスを抜けて上野駅まで歩く途中に観た不忍池の夜景。

 

      


168.長島充 版画展 『日本の野鳥』 in 本郷 開催中。

2014-12-09 20:56:26 | 個展・グループ展

今月4日(木)から東京本郷のギャラリー愚怜で版画個展がオープンした。初日が少し天候が悪く寒かったことで来場する人の動きが心配だった。今日でちょうど折り返し点を過ぎたところだが、おかげさまで連日、版画コレクター、野鳥好き、画家、版画家、友人、知人、画廊関係者、飛び込みの方々などで人が途切れることがない。初めての会場でありがたいことである。

特に今回、画廊が東京大学の赤門の斜め前という地理的条件もあって東大の博物館に務めている方々や大学教授などの方などもいらしたりして新たな出会いがあることが嬉しい。日頃、仕事場に籠りっぱなしの生活なので個展会場では作品を通してのコミュニケーションを楽しみにしている。作品の感想から始まって版画の技法や野鳥との出会いのこと、話に夢中になるとどんどん脱線して果てしなく話題が広がっていったりする。励ましや共感の言葉はとても元気をいただく。それもこれも個展というあらたまった空間と時間のなせる業だと思っている。

あと4日。明日3日は6時ごろから、4日が2時過ぎから、6日最終日も2時過ぎから在廊予定ですのでまだご来場いただいてないブロガーの方々、この機会にぜひご高覧ください。落ち着いた雰囲気の会場でおいしいお茶と共にお待ちしています。画像はトップが個展会場の様子、下が今回の画廊の外観、新作木口木版画を展示した壁面、赤門から見たキャンパス内のイチョウの黄葉。