長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

419. 『GOOSE CALENDAR 2021・長島充 木版画の世界』

2020-11-30 19:39:31 | 書籍・出版
今月の初め、昨年より自然保護団体から依頼を受けて制作していた木版画を原画とする2021年のカレンダーが完成した。

このオリジナル・カレンダーのタイトルは『GOOSE CALENDAR 2021・長島充 木版画の世界』という。カレンダーの内容は日本に生息するカモ科の雁類6種をモチーフとして制作した木版画6点により構成されている。つまり2か月ごとに1点の木版画が割付られているのである。依頼主となったのは宮城県内に本部を置く雁類の保護団体「雁の里親友の会」でスポンサーとなっていただいたのは「(株)ネクスコ・エンジニアリング東北」である。

日本産の野性鳥類である雁類は秋冬期に冬鳥として越冬のために渡来する種類がほとんどだが、そのうちマガン、コクガン、カリガネ、ヒシクイ、シジュウカラガン、ハクガンの6種をセレクションし、それぞれに割り当てた季節の環境、風景の中でカレンダーとして構成した。画家・版画家の僕が制作するので、もちろん印刷物の受注イラストレーションとしてではなく全て写実絵画(版画)作品として時間と労力をかけて制作しその後の展覧会に出品することを前提としている。
制作を進める中、秋冬に生息する野鳥なので本来、雁類がいない季節の初夏と盛夏の風景をどうするかに苦労をしたが、そこは考え工夫をして夏季に過ごすであろう繁殖地の風景を想定し、その季節に観られる植物や水面等をバックに配することで何とかカヴァーした。僕自身の制作も春から真夏にかけてのコロナ禍の中での木版画制作となった。真夏に冬の雪景色の中のハクガンを彫っている時には、さすがにちょっと妙な気分にもなったのだが、制作そのものに集中していくことで気にならなくなっていった。

実はこの企画、来年の2月に宮城県内に国内外の雁類研究者が集い、雁類保護活動のための国際シンポジウムが開催される予定だった。そしてそれに合わせて県内ホテルのイベント空間で、この雁類木版画(原画)の連作を中心とした僕の『野鳥版画」の個展が開催され制作にまつわるアーティスト・トーク等も予定されていたのだがコロナ禍の影響により全てが中止となってしまった。カレンダーだけではなくこの展覧会に重きを置いていたので、とても残念でならないのだが、この状況下では仕方がない。
今年ももうすぐ師走である。10月中旬ごろから北海道等の集結地に集まった雁類は例年通りだと日本の各地に南下し分散している頃だろう。そして完成したこのカレンダーも北海道のネイチャーセンターでの配布をはじめ、さまざまな方法で多くの人々の手に渡っている最中である。企画を担当した方や印刷をしていただいた印刷会社の方からも「たいへん好評をいただいている」というメールでの連絡が入った。僕もようやく肩の荷が下りてホッとしているところである。

なお、このカレンダーは一般的な販売物ではなく、自然保護団体の普及・調査活動の一環として制作配布されるものなので、カレンダーを希望される方には送料500円と任意の額のご支援金を合わせていただいている。ご支援金は全て、世界的な希少種であるカモ科コクガンの繁殖地(ロシアの北極圏)の生息状況調査を行う「2021年度 コクガン調査支援」の保護活動資金として活用させていただくことになっている。

最後に意義深く素敵な企画にお誘いいただいた「雁の里親友の会」のI氏と会員の皆様、そしてスポンサーとなっていただいた「(株)ネクスコ・エンジニアリング東北」様、そして美しい印刷によりカレンダーを仕上げていただいたA社と担当のN氏に心から感謝をいたします。みなさん、ありがとうございました。

画像はカレンダーの中で描く季節に割り当てられたの6種の雁類たち。