なぜ「不正会計」は永遠になくならないか
プレジデント
1月7日(木)10時15分配信
なぜ「不正会計」は永遠になくならないか
■権限を強化してもトップには逆らえない
歴代3社長の辞任に発展した東芝の不適切会計問題。
監査の仕組みが幾重にもはりめぐらされていたのに、
なぜ発見が遅れたのだろうか。
不正のチェックに関して強い権限と責任を持つのが
監査役だ(東芝は委員会設置会社なので監査委員)。
監査役は会社法で定められた機関で、
株主に対して取締役の職務執行をチェックする責任を負う。
権限は強力で、違法行為を見つければ、
取締役会で承認されていることでも、
その行為を差し止めることが可能だ。
一方、取締役会の中では、社外取締役が
第三者によるチェックの役割を担っている。
社外取締役は法律で義務化されているわけではないが、
東証は昨年6月から適用したコーポレートガバナンス・コードで、
独立性が高い社外取締役を2人以上選ぶことを
上場企業に求めている。東芝にも
4人の社外取締役がいたが、
どうしてこれらの監査は機能しなかったのか。
弁護士・公認会計士の樋口達氏は、
「あくまでも一般論」と前置きしたうえで、次のように解説する。
「監査役や社外取締役は株主総会で選任されますが、
株主総会に選任の議案を提出するのは取締役です。
そのためトップが関与している不正に異を唱えようとすれば、
議案の名簿から名前を外されて、
いまの地位を失いかねない。そうした構造が、
よほどの確証がない限り不正の指摘に二の足を踏ませてしまうのです」
監査役や社外取締役でさえ機能しづらいのだから、
社内の1部署にすぎない内部監査部門は
なおさら期待できない。東芝の会計監査部も、
不適切会計の可能性を認識していたが、
指摘は行わなかった。
不適切会計をチェックする複数の監視システム
■外部の会計監査は情報が不足
では、監査法人などが行う会計監査はどうか。
社内に比べてしがらみは少ないが、ネックは情報の少なさだ。
「帳簿を分析して不自然な点が見つかれば、
監査法人は当然、説明を求めます。
ただ、会社から『こういう理由で、この数字になった』
とウソをつかれると、その説明を覆せる
客観的な証拠を握っていないかぎり、
それ以上の追及は難しい。同じことは、
社内に情報源を持っていない社外取締役にもいえます」(樋口氏)
監査側に情報という武器を持たせるには、
内部通報制度を整えることが重要だ。
東証のコーポレートガバナンス・コードでは、
制度の独立性を保つため、
通報窓口を社外取締役と監査役の合議体にすることが求められている。
その点では一歩前進だが……。
「結局はトップしだいです。
トップのコンプライアンス意識が低ければ、
通報者は通報することで
自分が不利益を受けるのではないかと不安になり、
通報をためらうでしょう」(同)
制度を整えても、機能するかどうかは
トップの意識に左右される。
東芝は昨年9月からの新体制で社外取締役を7人に増やすなど
再発防止策を打ち出した。
トップの本気を見極めたい。
文=ジャーナリスト 村上 敬
答えていただいた人=弁護士・公認会計士 樋口 達
図版作成=大橋昭一
【関連記事】
「東芝不適切会計」第三者委員会報告書で深まる混迷
http://president.jp/articles/-/16024
東芝エリート「不正に目をつぶって高収入・出世」の何が悪いのか
http://president.jp/articles/-/15903
社外取締役は日本企業をダメにする
http://president.jp/articles/-/15703
大きすぎる「内部告発」のリスクとは
http://president.jp/articles/-/9514
不正会計リスク -会計士の職業的懐疑心の発揮で問題は解決するのか?
http://president.jp/articles/-/7895
プレジデント
1月7日(木)10時15分配信
なぜ「不正会計」は永遠になくならないか
■権限を強化してもトップには逆らえない
歴代3社長の辞任に発展した東芝の不適切会計問題。
監査の仕組みが幾重にもはりめぐらされていたのに、
なぜ発見が遅れたのだろうか。
不正のチェックに関して強い権限と責任を持つのが
監査役だ(東芝は委員会設置会社なので監査委員)。
監査役は会社法で定められた機関で、
株主に対して取締役の職務執行をチェックする責任を負う。
権限は強力で、違法行為を見つければ、
取締役会で承認されていることでも、
その行為を差し止めることが可能だ。
一方、取締役会の中では、社外取締役が
第三者によるチェックの役割を担っている。
社外取締役は法律で義務化されているわけではないが、
東証は昨年6月から適用したコーポレートガバナンス・コードで、
独立性が高い社外取締役を2人以上選ぶことを
上場企業に求めている。東芝にも
4人の社外取締役がいたが、
どうしてこれらの監査は機能しなかったのか。
弁護士・公認会計士の樋口達氏は、
「あくまでも一般論」と前置きしたうえで、次のように解説する。
「監査役や社外取締役は株主総会で選任されますが、
株主総会に選任の議案を提出するのは取締役です。
そのためトップが関与している不正に異を唱えようとすれば、
議案の名簿から名前を外されて、
いまの地位を失いかねない。そうした構造が、
よほどの確証がない限り不正の指摘に二の足を踏ませてしまうのです」
監査役や社外取締役でさえ機能しづらいのだから、
社内の1部署にすぎない内部監査部門は
なおさら期待できない。東芝の会計監査部も、
不適切会計の可能性を認識していたが、
指摘は行わなかった。
不適切会計をチェックする複数の監視システム
■外部の会計監査は情報が不足
では、監査法人などが行う会計監査はどうか。
社内に比べてしがらみは少ないが、ネックは情報の少なさだ。
「帳簿を分析して不自然な点が見つかれば、
監査法人は当然、説明を求めます。
ただ、会社から『こういう理由で、この数字になった』
とウソをつかれると、その説明を覆せる
客観的な証拠を握っていないかぎり、
それ以上の追及は難しい。同じことは、
社内に情報源を持っていない社外取締役にもいえます」(樋口氏)
監査側に情報という武器を持たせるには、
内部通報制度を整えることが重要だ。
東証のコーポレートガバナンス・コードでは、
制度の独立性を保つため、
通報窓口を社外取締役と監査役の合議体にすることが求められている。
その点では一歩前進だが……。
「結局はトップしだいです。
トップのコンプライアンス意識が低ければ、
通報者は通報することで
自分が不利益を受けるのではないかと不安になり、
通報をためらうでしょう」(同)
制度を整えても、機能するかどうかは
トップの意識に左右される。
東芝は昨年9月からの新体制で社外取締役を7人に増やすなど
再発防止策を打ち出した。
トップの本気を見極めたい。
文=ジャーナリスト 村上 敬
答えていただいた人=弁護士・公認会計士 樋口 達
図版作成=大橋昭一
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