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セルフレジが普及しないのはナゼ

2013年10月14日 00時00分32秒 | 学習支援・研究
セルフレジはなぜ人間に勝てないか
記事
By FARHAD MANJOO
Updated 2013年 10月 08日 13:31 JST


[image]Bloomberg News
スーパーのセルフレジが人間のレジ係にとって代わる日はまだ遠い

コンピューターは多くの業界で人間に取って代わりつつあるように見える。
そして私たちは、そのことをとても心配している。

だが、もし楽観できる材料が欲しければ、
地元のスーパーマーケットに行ってみることだ。
セルフレジは人間とは比べものにならず、その欠陥は
コンピューターが人間のスキルをまねようとする際の
限界をきっちりと示している。

人間のレジ係は、ほとんど全ての面で自動レジより優れている。
より速く、感じが良く、インターフェースのバグは少ない。
人間のレジ係なら、私に処理コードを覚えておくことを要求したり、
探させたりすることもないし、商品を袋に入れてもくれる。
それに、機械と違って、トイレットペーパーを盗むようなそぶりがないかと警戒してもいない。
しかも、客がそこに立ってぼうっと携帯電話を眺めている間に
全部やってくれる(私は普通こんな感じだ)。

人間のレジ係には1つだけ問題がある。供給不足だ。
近くにある郊外型の大型スーパーでは、店員のいるレジは長蛇の列で、
セルフレジの前には人がほとんどいないのが普通だ。
セルフレジを使ったことのない客は、
列が短いのは人間より効率がいいためだと考えるかもしれないが、
大きな間違いである。

私の知る限り、セルフレジの列が短いのは単に、
機械があまり良くないためだ。

機械はいざというときには十分活躍する。
例えば、ほんの数品しか買わないときや、青果が少ないとき、
クーポンを持っていないときなどだ。だが、通常は大きな苦痛だ。
皮肉な言い方をすれば、セルフレジにとって短所は
最高の長所だといえる。つまり、
大半の場合は役に立たず、客の列が短いため、
人間より速いように見えることだ。

たいがいの場合、私は人間ではなく
機械を使う機会が与えられた方がうれしい。
私は生身の銀行員よりATMが好きだし、
空港では愛想のない係員より
自動チェックイン機の方が効率的だと思っている。
こうした機械の作業は、コンピューター化が進んだ工場の組み立てラインで
行われている繰り返し作業と似ている。
作業の範囲が非常に狭く、具体的で、繰り返しで、
力仕事はほとんど不要、認識面での柔軟性はあまり要らない。

スーパーのレジ打ちは、あまり訓練の要らない低賃金の仕事で、
ロボットの侵略に弱いように思える。だが、
食品の清算には考えて処理する能力が必要で、コンピューターにとっては
非常に難しい課題となっている。そういう意味で
スーパーのレジは、コンピューターが今のところ人間の能力を
あまりうまく代替できていないために
人間に太刀打ちできずにいる分野の代表だ。

スーパーのレジでコンピューターによる認識が難しいのは何か。
レジ係経験者数人に聞いたところ、そろって果物や野菜を挙げた。
商品コードが記載された小さなシールの貼られた商品もあるが、
貼られていない商品が多い。緑色のレタスと青ピーマンを見分け、
正しいコードを思い出すのはレジ係の仕事だ。

10代の頃にレジ係をした経験のあるサム・オルメさん(30)は
「レジにやってくる商品の大半を調べなくてもいいようになるまで、
3、4週間かかった」と述べた。

やはりレジ係の経験を持つケン・ハスケルさんは、
この仕事を数カ月経験した後でも、なかなか
思い出せないことが多かったと説明した。
「たまにパパイアやマンゴーが来ると、本で
コードを調べる羽目になった」と語った。

エコノミストのフランク・レビー、リチャード・マーナン両氏は、
最近の調査リポート「Dancing With Robots」で、
コンピューターが人間の代わりになれるのは
2つの条件を満たしたときだけだと指摘している。
1つは、任務を実行するのに必要な情報が、
コンピューターに理解できるフォーマットで入っていること。
もう1つは、その任務が、一連の公式によって
表せるぐらいの繰り返し作業であることだ。

スーパーのレジは2つめの条件こそ満たしているものの、
1つめの条件を満たしていない。人間がするように
仕事をこなすための適切な情報が不足しているのだ。
言い方を変えると、ものの見分けがつかないということだ。
セルフレジは野菜や果物を見分ける代わりに
カートの中にある緑の葉っぱそれぞれ対する
コードを入力するよう要求する。
多くの場合、客は画面でコードを探す羽目になる。
レジ係が客にカート中の黄色い楕円(だえん)形の果物が何かと聞いたら、
その客は上司を出せと言うだろう。

この欠点はレジ前の列よりずっと大きな問題だ。

レビー氏は「1960年代には、数年以内に
コンピューターでエックス線やCTスキャンの図を
読めるようになると思われていた」と述べた。
「だが、それには到底及んでいない。コンピューター処理で
単純化した画像もあるが、コンピューターが
本当のCTスキャンを読めるというにはほど遠い。
ルッコラを見分ける作業も同じだ」。

スーパーのコンピューターについて、
識別プロセスを簡単にする方法をいくつか想像できるかもしれない。
例えば、青果全てに電子式のIDタグをつけることもできる。
だが、インフラ面で多大な負担になりそうな割に、
得られる成果は疑わしい。

セルフレジ大手NCRの担当者は、顧客がセルフレジは
通常のレジより速いと考えているとの調査の結果を示した。
だが、私はこうした見方を疑っている。
実際にセルフレジがレジ係に追いついたとき、
レジ係の動きが大幅に加速するとの論文がある。
あるいは地元の店に行けば、人間が
どんなにスピーディーかがわかる。

コンピューターは人間を負かせるか。
いつかはそうなるが、その日が近いとは思えない。
それにもう一つ――。自分で
精算する見返りにそれなりの値引きをしてくれないなら、
誰がわざわざ手間を増やそうと思うだろうか。

http://jp.wsj.com/article/より