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企業価値の向上事例-Uアローズ社その1

2013年05月03日 07時00分00秒 | 学習支援・研究
ユナイテッドアローズ社・社長のスピーチより

東京証券取引所が2012年度に創設した
企業価値向上表彰において大賞を受賞した
株式会社ユナイテッドアローズ・代表取締役
社長執行役員の竹田光広氏が
「ニッポンの企業力 -『企業価値を考える2013 』-」(2013年3月15日開催)で
スピーチを行った。
また、ユナイテッドアローズの経営方針について聞いた。


経営理念の浸透
‐「5つの価値の向上」を目指して‐


当社は「店はお客様のためにある」を社是とし、
その究極の目標として
「世界に通用する新しい日本の生活文化の規範となる価値観の創造」を
経営理念に掲げています。
この経営理念・社是に基づき、
創業から現在に至るまで、
「お客様がどう思われるか」ということをすべての経営判断の基軸とした、
一貫した経営を行ってきました。

創業時から社会に開かれた上場企業となることを目指していましたが、
株式公開が実現した際
(i)お客様、
(ii)従業員、
(iii)取引先、
(iv)社会、
(v)株主の
「5つの価値」を高めることを「社会との約束」として掲げることにしました。
私どもでは、これら「5つの価値」の中でもとりわけ
「お客様価値」を高めることによって、
残りの4つの価値を高めることができると考えています。

当社では過去数度、業績の低迷期を経験しましたが、
業績低迷のほとんどの要因は自社内部にあると捉えています。
この経験から、業績回復および安定的な成長のためには
「経営理念」という目標を、
全従業員が「ぶれず」に共有することこそが
必要不可欠であると考えています。

経営理念や社是の浸透に向け、
当社では「理念ブック」という経営理念の解説書を作成しています。
「理念ブック」は
�経営理念体系などを記載した「VISION」、
�従業員の声を集めた「VOICE」、
�従業員から募った写真を集めた冊子:「VISUAL」の3冊で構成されていますが、
この内容は全従業員で共有しています。
昨年秋に改訂を行ったのですが、
改訂にあたって従業員の「声」を聞いてみたいと考えました。
その際、当社を「ひとつの国」と捉え、
約3,000名の従業員にアンケートをとるという、
いわば「国勢調査」を行いました。
この「国勢調査」の結果は「VOICE」の中で取りまとめられています。
一部をご紹介すると、「あなたが働いている中で一番の喜びは何ですか?」という質問に対して、
「当社のショップバッグを手にされたときのお客様の笑顔」や
「自分が提案した商品がお客様のライフスタイルの一部になったと感じたとき」など、
従業員の「声」が収められています。
良いことばかりではなく、
従業員が抱えている悩みも「理念ブック」の「VOICE」には集約されているので、
他の従業員が同様の境遇に直面した際、
解決策を見出すための参考となればよいと考えています。

当社では、これらの「理念ブック」を活用して、
「理念ミーティング」や「理念研修」を実施しています。
「ユナイテッドアローズという会社は何のために存在するのか」
そして「自分は何のために働くのか」など、
何度もディスカッションすることで、経営理念、社是そしてお客様価値を
はじめとした5つの価値創造の浸透を図っています。
近年、当社の業績は安定推移し、高水準なROEを維持していますが、
経営理念の浸透から生まれる
お客様満足の向上を店頭で具現化した「結果そのもの」と認識しています。


企業価値向上に向けた取り組み

「お客様価値」の向上が
他のステークホルダーの価値向上の起点になると考えているため、
「お客様価値」の向上を目指した様々な数値目標を設定しています。
売上や売上総利益のほか、
商品の消化率、買上率などの重要な指標をKPIとして設定し、
日次・週次・月次の単位で管理しています。
従業員はKPIや生産性に関連するものなど、
各自の業務に関連する数値目標で業務の進捗管理を行います。
定量的な数値管理だけではなく、
「サンキューレター」というお客様から当社の販売員にいただいたお礼のお手紙も
個人の評価につながるような評価体系を導入しています。
このような態勢をとることにより、
従業員一人ひとりの目標達成が
最終的に経営計画の達成につながっていると考えています。

人事制度面では、
2007年当時在籍していたアルバイトスタッフのうち、
希望する者は原則全員を正従業員に変更することとしました。
この結果、正従業員数は変更前に比較して約1.7倍となり
人件費も大幅に増加しましたが、
中長期的な視点においては、
接客サービスの向上に伴うお客様価値の向上や変更に伴う
「従業員価値」の向上が図れ、
競争力の向上につながったと確信しています。

また、当社では効率的な資本活用を図るため、
�社内で設定した高い資本コストを
割り引いても一定の年数で投資回収が可能かどうかを新規出店時に精査し、
�業績低迷時には約10のブランドを撤退することで
残ったブランドへ経営資源を集中させるなど、
定量的な投資判断・事業撤退基準を設けて適用しています。

株主価値の創造については、
第一に業績目標の着実な達成に伴う株主の皆様の価値向上を目指しています。
常に安定した水準の株主還元を目指し、
業績好調時には業績連動による配当を、
業績が不安定な時期には株主資本配当率(DOE)を基準に配当額を設定し、
その基準についても開示を行ってきました。

最後に、改めて今回の受賞は当社を支えていただいている
すべてのステークホルダーの皆様、
そして創業から
さまざまな困難を乗り越えて成長拡大を推進してまいりました創業メンバー、
および全従業員の功績によるものと考えています。
今回の受賞を励みに、
引き続きお客様を始めとする
ステークホルダーの皆様の価値向上を目指してまいります。
引き続き変わらぬご指導・ご鞭撻をいただけますよう、
なにとぞよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。


プロフィール
株式会社ユナイテッドアローズ
代表取締役 社長執行役員
竹田 光広氏(たけだ みつひろ)

1963年4月13日福岡県生まれ。
1986年4月、
兼松江商株式会社(現 兼松繊維株式会社)入社。
大阪、イタリア、東京各支社・拠点にて、
国内外大手アパレル企業や
株式会社ユナイテッドアローズを含む
小売企業に対する原料・製品の供給、
同社関連会社経営などを経験。
2005年9月に株式会社ユナイテッドアローズ入社。
2008年7月、同社上席執行役員に就任。
2010年6月、同社取締役 常務執行役員に就任。
2011年4月、同社取締役 副社長執行役員に就任。
2012年4月、同社代表取締役 社長執行役員に就任。


http://ps.nikkei.co.jp/tseaward/0801.htmlより

次号へ続く

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