375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●LIVE体験記(4) パム・ティリス(An Acoustic Evening w/Pam Tillis)@SOPAC

2012年03月15日 | LIVE体験記



2012年3月10日(土曜日)、NJ州サウスオレンジ駅前の劇場SOPAC(South Orange Performing Arts Center)で行なわれた待望久しきPam Tillisのコンサートを聴きに行った。

Pam Tillisはアメリカの音楽ファンなら誰でも知っている女性カントリー歌手。父親Mel Tillisの才能を受け継ぐ親子二代のスーパースターとして、1991年から1997年頃にかけてのカントリー・ヒットチャートを賑わせていた。特に第2アルバム『Homeward Looking Angel』(1992年)と第3アルバム『Sweetheart's Dance』(1994年)は連続してミリオンセラーを記録。1993年にはカントリー音楽の最高栄誉であるCMAアワードの最優秀女性ヴォーカル賞も受賞し、名実ともにカントリーのトップシンガーとして活躍していたのである。

自分がPam Tillisの音楽に出会ったのは、彼女の「商業的な全盛期」ともいえる1995年頃で、今はすでに倒産したタワーレコードの売り場で偶然『Homeward Looking Angel』を手にとり、そのジャケットに惚れ込んだのがきっかけだった。いわば完全なジャケ買いだったわけだが、これが見事な「当たり」で、親しみやすいメロディラインとソウルフルな歌声にすっかり魅了されてしまったのである。それからというもの、当時発売されていた4枚のオリジナルアルバムを通勤バスの中で繰り返し聴く毎日が続いたものだった。

彼女の商業的な人気は1990年代がピークで、2000年代に入ると以前のような大ヒットには恵まれなくなったが、その代わり、大手レコード会社(アリスタ→CBS)の制約を受けることなく、自身が立ちあげたレーベル(STELLAR CAT)でマイペースに活動できるようになった。もともとファンとの親密な交流を好む彼女は、北米大陸の津々浦々をツアーでまわりながら、50歳を越えた今でもまったく衰えることのない歌声を贈り続けている。

彼女の魅力をひとことでいえば、カントリー音楽が本来持っているアコースティックな味を基本にしながらも、ロック、ジャズ、R&B、ラテンミュージックなど幅広いテイストを味わえる懐の深さにある、ということになるだろうか。声量で圧倒するのではなく、表情豊かに変化するデリケートなニュアンスが持ち味なので、どちらかといえば大がかりなコンサート会場よりも小規模のライヴハウスのほうが向いている、といえそうだ。アメリカの女性には珍しく「強さ」よりも「優しさ」を実感させてくれるのもうれしいところで、自分にとっては日々の疲れをそっと包み込んでくれる「癒しの音楽」として無くてはならないものとなっているのである。

さて、この日は初めて観る念願の単独コンサート(以前ニューヨークの「Botom Line」というライヴハウスで複数ライヴは観たことがあった)ということで、ステージに登場する瞬間はドキドキものだった。そしてその期待通り、わが心の歌姫Pamちゃんはやってくれた。代表曲「Mi Vida Loca(My Crazy Life)」、「Shake The Sugar Tree」をはじめとする往年のヒット曲を新しいアレンジで聴かせる。「Meybe It Was Memphis」、「Put Yourself In My Place」、「Let That Pony Run」、「Spilled Perfume」等々、懐かしい名曲がかつてアルバムで聴いたオリジナルとは少しづつ違った形で出てくるのでとても新鮮だ。それにしても、カントリーというひとつの分野だけで、これだけバラエティに富んだ名曲を揃えている歌手もそうそういないような気がする。

しかもコンサートが終わったらそれで終わりではなく、サイン会のお楽しみがある。ファンのひとりひとりと握手し、直接言葉を交わす。彼女自身、それを何よりも楽しみにしているようだ。写真を撮りながらゆっくりと順番を待ち、やがて自分の順番が来ると彼女は親しみをこめて笑いかける。以前から知っている友人のように、何の抵抗もなく、ソファーのとなりに寄り添い、この日購入したニュー・アルバム『Recollection』のブックレットにサインしてもらう。自分が日本人だとわかると「以前、クマモトに行ったことがあるのよ」という話になった。あとで調べてみると、1993年に熊本カントリーゴールドのゲストで参加していることがわかった。その後は2007年に横須賀で行なわれたイベントで来日。公式訪問としては2回来日していることになる。話し方もキュートで優しく、ユーモアにあふれているので、いつまでもそばにいたくなる。ほんとうに素敵なキャラの持ち主だな、と思った。

日本盤のCDは出ていないので、一般の日本の音楽ファンには馴染みがないだろうけど、彼女の音楽、そして親しみやすい人柄は間違いなく日本人の心の琴線に触れるはずだ。特に「カントリー音楽は取っつきにくい」と思って聴かず嫌いになっている人には、ぜひお勧めしたい。「こういう歌手もいるのか」と目から鱗が落ちるかもしれない。誰も日本の音楽ファンに紹介する人がいないのなら、自分がぜひ紹介したいと思う。


★NJ州サウスオレンジ駅前にあるSouth Orange Performing Arts Center。


★この夜のプログラムを伝える電光掲示板。


★コンサート終了後、サイン会に登場した歌姫。


★ファンのひとりひとりと笑顔で交流。まったく距離感を感じさせないところがいい。


★家宝になりそうな、サイン入りのブックレット。


★3週間前にリリースされたばかりのニュー・アルバム『Recollection』の裏ジャケット。
かつてのヒット曲を新たなアレンジで新録音しており、これからPam Tillisを聴こうという人にもお勧め。

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