池波正太郎氏が『男の作法』の中でこんなことを言っています。「余裕を持って生きるということは、時間の余裕を作っておくということに他ならない。一日の流れ、一月の流れ、一年の流れを前もって考え、自分に合わせて、わかっていることはすべて予定に書き入れて余分な時間を生み出す…そうすることが、つまり人生の余裕をつくることなんだよ。」 もっともですね。数年後には自分はこうありたい、と考える。それに到達するには、今年のうちに何をしなければならないか?今月中に何をしておきたいのか?そして、今日どこまで達成しておくべきか?こんな風に長期計画を練ってみるのもいいと思います。特に若いうちは。私のように50代に突入する者には、年中行事や学会の予定などでその年の予定がほぼ決まっていて、それに流されてしまうことが多くなってしまいます。しかし、この歳になっても、夢は持っています。それを目指して今何をすべきかを常々考えて、実行を試みてみています。それから、私は40代になってから、目の前にある要件だけでなく、植物や動物すなわち自然の美しさに目がとまるようになりました。そして、日本そして中国の歴史や文化にも大いに興味を抱くようになりました。井上靖氏も高齢になってから初めて穂高への登山を経験し、梓川の美しさに胸をうたれ、日本の風景の素晴らしさにあらためて感動したそうです。そして、毎年海外旅行を重ねるごとに、日本の自然の美しさを再認識する思いが増していったと語っています。年とともに、心に余裕が生まれると同時に、外界に対する感受性も変わってきます。そのとき、そのときを一生懸命やって、時間の余裕をつくり、その中でその歳にあった人生の楽しみを謳歌できれば最高です。