四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成14年4月28日(阿波・第2日目)

2005-06-28 09:47:20 | 第1回(阿波編)
平成14年4月28日(日曜日)
(第2日目・ 歩行距離33.4km・ 歩数49,372歩)

 5:30分に目を覚ます。さあ、今日からは本格的にお遍路だ。
天気は良さそうだ。昨日買っておいたパンとお茶で朝食を取り、
朝食用のおにぎりを昼に食べることにする。

 5:55分、ばんどう旅館を出発する。
 人気のない板東の町を歩く。狭く細い道がうねうねとつづく。
ひんやりとした空気が気持ちいい。空には青空が広がっている。
一路、大日寺を目指す。大日寺までは4.5キロほどある。7時までには着きたい。
 
 歩き出して40分ほどするとヘンロ路へ行く標識を見つける。
ここからは車道と分かれて、山道のヘンロ路を歩く。
 山道を抜け畑の中を曲がりながら進む。ヘンロ路は土の道で足には優しい。

 ほどなく愛染院の境内に出る。おばあさんが一人で庭掃除をしている。
境内を見た後、山門から出る。山門の両側には古くて大きな草鞋がかかっている。
 ヘンロ路が車道につながるともう少しで大日寺だ。
 前を歩いているお遍路がいる。若い男の人だ。手にゴミ袋を提げている。
どうやら道に落ちているゴミを拾いながら歩いているようだ。挨拶して追い抜く。

 やっと大日寺が見えてきた。
山門前の駐車場には車の前にブルーシートを広げ朝食を取っている人達がいる。
 

第4番札所 大日寺

7:00分、予定どおりの時間で大日寺に着く。
大日寺は、沢の一番奥にあり、両側に山肌が迫っている。
その山陰を通して境内に日が当たり出しウグイスが鳴く中でお参りをする。
境内にはほとんど人影がないので、すがすがしい気持でお経を唱える。
大師堂をお参りした後に本堂へ続く回廊の中にある仏像を見る。
納経を済ませると、次の地蔵寺へ向かう。地蔵寺までは2キロだ。
今日は11番まで行かなければならないので、ちょっと急ぐ。
地蔵寺までは、今来た車道をまっすぐに降りるだけだ。

 地蔵寺の手前で五百羅漢に入る。
 境内には人影もなく、辺りはシーンとしており、
ウグイスや鳥の声が境内に響く。

入館料5百円を払い、五百羅漢のあるお堂へはいる。
お堂の中は薄暗く、空気が冷たくひんやりしている。
なるほど、いろいろな顔をした羅漢さんがいる。
妻の父に似た羅漢さんを見つける。思わず笑ってしまった。

 五百羅漢を出て階段を下りると、すぐに地蔵寺の本堂横に出てしまった。


第5番札所 地蔵寺

 7:40分、地蔵寺の境内に入る。
 さて、お参りをと思ったら、団体遍路の人達がいる。
息のあった読経が静かな境内に響く。団体さんのお経の後で、
私も、ゆっくりとお経を唱える。
今回は、一昨年の経験が生きているのか、お経を唱える時にあまり周りを
気にすることなく唱えられる。これも経験のなせる技か?

8時丁度に地蔵寺を後にする。次の安楽寺までは5.3キロ、約1時間かかる。
途中で、別格1番大山寺への案内石柱を見つける。
今回は、別格へのお参りは道中にあるものだけと思っているので、
横目で石柱を見て通り過ぎる。

上板町の町を通り、松島神社を過ぎると、安楽寺は近い。
 9:05分、安楽寺に着く。


第6番札所 安楽寺

竜宮城のような山門をくぐり境内に入る。
ここで、ちょっと小休止、足も痛くなってきた。
今回は、お遍路用に靴を新調してきた。軽登山靴でちょっと細身だが
クッション性もよく気に入っている。
細身の靴なので大きめの靴を購入してきたし、多少は履き慣らしたつもりだ。
しかし、長くても1時間程度を歩いただけなので、こんなに長時間を
履いたのは今回が初めて。
まあ、ぶっつけ本番に近い状態だ。
したがって、靴が合わなくて足が痛くなるのは覚悟していた。
今のところ、右の小指が少し痛い程度で、快調に歩いている。

足と気持ちが落ち着いたところで、次の十楽寺へ向かう。
十楽寺までは1キロほどの距離しかないので、気持ちも楽だ。


第7番札所 十楽寺

 9:45分、十楽寺に着く。
 山門の中に、見覚えのあるお地蔵さん達がいる。
水子を祀ってある地蔵さん達だ。
大小の地蔵さんが二重三重に重なり祀られている。
ここで手を合わせ、境内へ進む。
 
 4番と5番は2キロ、6番と7番は1キロ、8番と9番の間は2.4キロと近く、
5番から6番は5.3キロ、7番から8番は4.2キロと距離がある。
ちょっと頑張って歩くと、おまけのように次のお寺があるという
お大師様の粋な計らいだ。

 次の熊谷寺までは約4.2キロ、今度はちょっと頑張らなければいけない順番だ。
熊谷寺は、前回来たときに中山門の屋根瓦を寄進したお寺だ。
思いで深いお寺なので頑張って歩く。


第8番札所 熊谷寺

熊谷寺に近くなってきたところで「たみや旅館」を見つける。
「たみや旅館」は、俳優の萩原健一などが泊まっていた旅館で、
女将さんが有名な人だ。
「たみや旅館」を右に曲がると坂の上の方に熊谷寺の総門が見えてきた。
懐かしいので写真を撮る。

総門をくぐり、10:50分、熊谷寺の納経所に着く。

 さすがにこの時間になると納経所も人であふれている。
 本堂と大師堂はここからまだ上のほうにあるので、
荷物をベンチに置かせてもらい本堂へ向かう。
駐車場の横に参道への入り口がある。 
本堂へ向かう参道は、行き交うお参りの人達で込み合っている。
今までは静かな雰囲気だったのが、一変してにぎやかだ。

 中山門には建設用の覆いが架けられており使用できなくなっているため、
参道は脇にある車道を利用するようになっていた。
寄進した瓦屋根を見ることが出来なくて残念だった。
 人の多い境内を眺めながら、こちらも本堂と大師堂へお参りをする。

 境内の片隅で、今度は本堂の屋根葺き用銅板への寄進を勧めている
お婆さんがいる。
一昨年のお婆さんかと思い顔を見たが違っていた。

 納経所に戻り、納経を済ませたところで、ベンチに座り昼食を取る。
足も痛いところが出来てきたので、靴を脱ぎ素足になって点検する。
足の指を1本ずつもんでみる。指を広げるように動かすと気持ちがいい。
両足の小指が痛いがマメは出来ていない。
念のためにサビオを張り、テーピングしておく。

 昼食は、ばんどう旅館で朝食用に作ってくれたおにぎりを食べる。
3個のおにぎりと漬け物もたっぷり入っているので、
1個を残しおいしくいただく。

 ここまで来ると、やっと今日の行程の半分を終了したことになり、
今日中に11番の藤井寺まで回る目処が立ってきた。少し気持ちに余裕が出てくる。

 ゆっくり休んだので、11:30分、法輪寺へ向かう。
法輪寺までは2.4キロほどだ。
 法輪寺への道は、前回、迷ってしまった道だ。注意して進む。

 法輪寺の駐車場が見えてきたときに、後ろからギュンギューンという
金属的な排気音が聞こえてきた。
振り向くとBMWの大型バイクが2台、横をすり抜けていく。

 駐車場に停まったバイクを見ると、私よりは遙かに年上のお爺さん達だ。
ナンバーを見ると水戸ナンバーときたもんだ。
自走してきたのならばたいしたもんだとバイクを見る。
バイクはよく手入れされピカピカに磨かれている。


第9番札所 法輪寺

 11:55分、法輪寺に着く。
本堂と大師堂にお参りをして納経所の方を見ると納経所前に
長い列が出来ている。
なんと、15~16人は並んでいるようだ。おまけに、その列が全然進まない。
並んでいる人に聞いてみると、中では3人が書いているようだが、
団体の納経がどっと置かれているので全然進まないとのこと。

 しばし待つこととし、山門前にある売店でジュースを買い、一休み。
この間を利用して明日の宿の予約をする。植村旅館に電話してOKをもらう。
やっと納経を済ませ、次のお寺切幡寺へ向かう。切幡寺までは3.8キロだ。

 法輪寺を出て少し行ったところで前を行くお遍路を見つける。
大きな男の人の後ろを小柄な女性が歩いている。
大きな人は足を痛めているようだ。
追い抜きざまに挨拶すると、大きな人は何と若い外国人の男性だった。
足を痛めているようで片足を引きずるように歩いており、ちょっと痛々しかった。

 切幡寺へ向かう交差点に来ると、お土産物屋さんに入るお遍路さんや
駐車場への車の出入りで、にぎやかだ。 
交差点を右に曲がり、両側のお土産物やさんを見ながら切幡寺に向かう。


第10番札所 切幡寺

 13:05分、切幡寺の山門をくぐる。
この山門はひどく傷んでいる。羽目板の下の方がボロボロになっている。
本堂は、ここからまだまだ山の上の方にあるため参道を登っていく。
上の方から沢山の人が下ってくる。

 駐車場を過ぎて少し行くと上から降りてきた男の人が「あんたもう来たのかい?
歩いているのだろう。」と話しかけてきた。手に掛け軸を持ってる。
どうやら、法輪寺で私を見かけていた車遍路の人らしい。
「早いね!」とビックリされたが、何と返事をしていいのか分からず笑っていた。
 切幡寺は、駐車場から延々と階段を上がらなければならず、
境内でも納経所が込んでいたため、歩き遍路が車遍路に追いついて
しまったということらしい。

「是より333段」「234段」と延々と続く階段も快調に登り、
本堂の前に立つ。
境内の中は、団体遍路や車遍路の人でごった返している。
今日一番の込みようだ。

 本堂からはこれから行く藤井寺がある対岸の山がぼんやり見える。

切幡寺を終えると、あとは今日の宿がある藤井寺だけだ。
しかし、藤井寺までは今日一番の長丁場、約10キロを歩かなければならない。 
吉野川を挟んだ対岸にある山裾まで歩かなければならないが、
予定より早く歩けているので、気持ちはすごく楽だ。
 
13:40分、切幡寺を立ち、藤井寺に向かう。

 藤井寺に向かい歩いていると、あちらこちらの電柱やガードレールに
藤井寺と書かれ赤い矢印のある標識が目に付く。
へんろ路保存協力会の標識とはちょっと違うような気がする。
標識を張っている箇所が多く、ちょっとうるさい感じがする。

 道標については、あまり有りすぎると「分かっているよ」という気分に
なりうるさい感じがする。
さりとて、あまり道標が見あたらないと道を間違えているのではないかと
不安になる。
この辺の微妙な心理に対しへんろ路保存協力会の道標は絶妙というしかない。
程良くつけられている。
でも、オリエンテーリングではないのだから、標識を捜し地図を見て歩けば
いいというものではない。
道に迷ったと思えば聞けばいい。
その行為から地元の人との触れ合いが生まれるし、得るものもある。

 八幡の町中にあるお店の前に、中学生が数人たむろしている。
横を通り抜けようとすると「頑張ってください。」と声が掛かる。
「ありがとう」と答えると、後ろで笑い声が聞こえた。
中学生から声が掛かると思っても見なかったし、
向こうもからかい半分で声を掛けたら思わない答えが返ってきたので、
笑ってしまったということか。

 吉野川の堤防にぶつかる。
1本目の潜水橋を渡ると、そこには広大な土地に畑や水田が広がっている。
そこは農作業の真っ最中である。のどかな田園風景が広がる。
水田に田植えをしている人、人参畑で収穫中の人、いろいろな人が働いている。
 水田の中で田植機を動かしている人がいる。
ちょっとおぼつかない動きをしており、それを見守っているご夫婦がいる。
初めて田植機を運転する息子を心配しながら見守っているようだ。

 収穫中の人参畑の横を通ると人参の匂いがしてくる。
収穫中の人参畑を見ていて、ふと、人参好きな息子が、小さい頃、
畑の人参を洗わずに食べたことを思い出す。

向こうから走ってきた車が止まる。
窓から顔を出したお爺さんが、「藤井寺までの地図を持っているか」と
聞いてくる。
「持っています」と答えると、「そうか、気をつけて!」と言って走り去る。

 2本目の大きな潜水橋を渡った堤防の上に道がある。
堤防の上からは、今日歩いてきた吉野川の左岸が目の前に広がる。
 潜水橋というのは、1車線の橋で途中に対向車がお互いに交差できる
待避場があるが、欄干はなく、洪水の時には橋自体が川の中に
飲み込まれてもいいような構造となっている橋だ。

 足もだいぶ痛くなってきた。 堤防に上がり、階段の上で一休み。
靴を脱いで足の指を見る。左足の親指と第2指が痛い。
両方の指にはマメが出来ている。
サビオとテーピングをする。
残っていたおにぎりを食べると元気が出てくる。
目の前には吉野川が見える。
吉野川は、水量も豊富だ。満々の水がとうとうと流れている。

潜水橋の向こうからお遍路が一人歩いてくる。中年の男性だ。
挨拶をして少し話をすると、広島から来た人で、
88番大窪寺から10番の切幡寺までを歩いてきたようだ。
どうやら私のように順を追って歩くのではなく、自分の日程に合わせて
88カ所の中から、歩きやすいところを選び、そこをお遍路をしているようだ。
 
藤井寺に向かって二人で歩き出し、途中まで一緒に歩く。
ほどなく、国道らしい交通量の多い道路に出る。広島の人とはここで別れる。

 この先は、静かな住宅街の中を歩き、最後に山道を少し歩くと、
「民宿ふじや」の横に出た。

16:00分、藤井寺に着く。


第12番札所 藤井寺

 曇り空で少し肌寒くなってきたが、今日の目標である藤井寺に着いた。
山門をくぐり境内にはいると、右側に見覚えのある藤棚がある。
しかし、藤の花はもう終わりに近いようだ。ほとんどの花が散っている。
日が落ちて少し暗くなってきた境内には、まだ数人のお遍路がいるものの、
納経所も電気を灯し、その電球の明かりが何か物寂しい感じを増幅してくる。

本堂、大師堂に今日最後のお経を唱え、
今日一日、無事に歩けたことに感謝する。
 16:20分、民宿ふじやに入る。

 ふじやでは、埼玉県から来ている杉村さんという62歳の男性と
8畳ほどの部屋で相部屋になる。
話してみると温厚な人だ。

 今日一日着ていたものを洗濯し、風呂に入る。
体にまとわりついていた汗を流し、足をマッサージすると生き返る気分だ。
部屋にもどり洗濯物を干すが、明日まで乾くのか心配だ。

 6時から夕食となる。 夕食会場の座敷には中年の男性が私を含め6人、
男性1人と女性の若い3人組、若い女性が1人、途中で追い抜いた
外人の男性と女性のカップル。 年齢もいろいろで多彩な顔ぶれだ。
 
 話題の中心は、もちろん、明日の焼山寺までの「遍路ころがし」だ。
 向かい側にいる老人は10年ほど前に区切り打ちで一巡しているようで、
今回は喜寿を記念して出来れば通し打ちをしたいと話している。
通し打ちをするのはこの人ほかに若い女性が1人いた。

それぞれの思いを胸に秘め、テレビの天気予報を見ながら食事を終える。
 明日の天気予報は、徳島県の北部は曇りとのこと。

 足の手入れをしていると、もう隣の部屋は電気が消えている。
まだ8時なので就寝時間には早いけれど、こちらも寝ることにする。

 今日一日は本当によく歩いた。
足の指は痛いところがあるが明日も頑張らなければいけない。

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 菅傘はとても便利なものです。
菅傘の代わりに帽子をかぶってもいいのですが、菅傘の方が数段優れています。
まず、傘と頭の間が離れているので、始終風が通り抜け熱がこもらない。
日差しをしっかりと遮ってくれる。
大きめの傘なら首筋に日差しが直接当たらないので熱射病の予防にもなる。
雨が降っても、菅傘があれば顔が濡れることはない。
この点は、メガネをかけている人にとってはとても助かると思います。
ただ一つの欠点は、風に弱いということです。
特に、横風が吹くと傘が吹き飛ばされそうになります。

 菅傘にはもう一つ大事な意味があると思います。
それは、遠目で見たときに菅傘を見るとお遍路さんであるということが
一目で分かることです。
この目印としての効用はとても大きなものがあります。
たとえば、遍路道から外れて歩いていたりしても、めざとい人が
傘を見つけて正しい道を教えてくれたりします。
ですから、いろいろなことを考えると、
帽子よりは菅傘をかぶって歩くことをおすすめします。

ただし、売っている菅傘は傘を顔に結ぶ紐が1本で
顎の下に結ぶ形のものが多いですが、
これですと、ちょっとした横風で吹き飛ばされそうになるので、
補強して使うことをおすすめします。
工事現場でよく使っているヘルメットのように、耳の前後を半円級に囲んだ
ものからアゴ紐を出すようにすると、横風にも強くなります。


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