四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成14年5月2日(阿波・第6日目)

2005-07-04 09:24:36 | 第1回(阿波編)
5月2日(木曜日)
(第6日目・ 歩行距離32.2km・ 歩数48,982歩)

 5:00分、起床。
Kさんと誘い合って「うさぎ茶屋」で朝食を取る。
ママさんから昼食用にばら寿司をおにぎりにしたものをお接待される。
記念に写真を一枚撮らせても貰いたいとお願いする。
「送ってくれますか。」といわれたので、「送ります。」と答えると、
名刺をくれた。
朝食の代金も5百円と安い。

 外へ出ると曇り空で強い風が吹いている。寒いのでフリースを着る。

 6:45分、立江を出発する。

 途中で中年女性二人連れのお遍路を追い越す。
立江寺の宿坊に泊まっていたようだ。

 昨日の安息日が効いているのか足の調子も体の調子もすこぶるいい。
Kさんも離れずに着いてくる。体が温まると自然にピッチが上がる。

 7:30分、萓原の分岐点に着く。
分岐点でも休まずに先へと進む。
沼江大師への分岐点手前で5分ほど小休止。
その後も快調なペースで進む。

やがて道は大きなT字型の交差点にぶつかる。
この交差点を左に曲がり国道123号沿いに進む。交通量はどんと増えてくる。

 8:45分、国道から鶴林寺へ向かう西山の分岐点に着く。
そのまま進むと、ほどなく左側に大きな白い建物が見えてきた。「金子や」だ。

 金子やのところで何回か一緒になっていたおじさんが休んでいた。
カメラを出しているので、「金子や」をバックに一枚撮ってあげる。

 金子やを左側に曲がり、これからいよいよ鶴林寺への登りとなる。
道は住宅の中を急な坂道となりどんどん登っていく。

やがて両側はミカン畑となる。
緑色の葉っぱの中に白い花が咲いている。
ミカンの花だ。初めて見た。
前回来たときにはミカンの花は咲いていなかった。
きれいな白い花がちょこっと顔を出している。

 道は、急な坂道となるが、道幅一杯を使ってジグザグに登り
ペースを変えないようにする。
後ろを振り返ると、もう、「金子や」があった集落は、
随分、目の下となっている。

 9:25分、水飲大師に着いたので少し休む。
水を飲んでみるが、あまり冷たくはない。
北海道で湧き水というと喉がしびれるほど冷たいのが普通だけれど、
四国に来てから飲んだ湧き水は、それほど冷たいとは思わないものが多い。
これも風土の違いか?

 10:00分、鶴林寺の山門に着く。


第20番札所 鶴林寺

 こんなに早く鶴林寺に着くと思わなかった。
でも目の前にあるのは間違いなく鶴林寺の山門だ。
結構急な登りだったけれど息は苦しくなかった。
見覚えのある二羽の鶴に迎えられる。
 これで、「一に焼山、二にお鶴」と言われている2番目にきつい
遍路転がしを登ったことになる。

 鶴林寺では少しゆっくり休みを取る。
「民宿ちとせ」で一緒だったご夫婦もいる。

本堂への急な階段を上り、本堂でゆっくりと般若心経を唱える。
大師堂でもお経を唱え、納経所へ向かう。

 納経を済ませて休んでいると、団体遍路がやってきて、
息のあったお経を唱える。

 今日は太龍寺を下ったところにある坂口屋に宿を取ってある。
あと半分の行程なので急ぐことはない。
おまけに、ここからは、急な下り坂で一気に400mを下り、
さらに太龍寺まで400mを登る過酷な道だ。足を十分に休める。

 10:55分、鶴林寺の宿坊の左側からヘンロ路を下る。
太龍寺までは6.5キロだ。 
階段状に整備されたつづら折りの道が続く。どんどん下る。
一緒に下っている小坂さんは下りの道に弱いので、「先に行って待っているから」と声をかけてどんどん下る。

 途中で、先に下っていたご夫婦のうち、ご主人に追いつく。
奥さんは先に下っているとのこと。
ちょっと太めのご主人には急な下り道は苦手のようだ。奥さんに追いつく。
話しながらさらに下ると、大井の集落に着いたようだ。
八幡神社が見えてきた。

 11:30分、八幡神社に着く。
奥さんはここで主人に待つように言われたという。
私もここでKさんを待つことにした。

八幡神社は、こじんまりとした社だが、何か風格を感じさせる神社だ。
 
 ほどなく、Kさんと、ご主人が降りて来る。

 少し休んだ後に、太龍寺を目指して歩く。

大井の集落を抜け、那賀川に架かっている橋を渡る。
川の水がきれいで、魚がはねているのが見える。
カヌーで遊ぶには丁度いい流れのように見えた。

川を渡ると道はまたどんどん急な坂道になってくる。
相変わらず快調なピッチで登っていく。

 途中で、下ってくるお婆さんに挨拶する。小柄で細いお婆さんだ。
手には何か山菜でも採っているのか、緑色の草のようなものを持っている。

 初老の男性を一人追い抜いてさらに登る。
道は急になっているが、この道を、急なところはジグザグに
曲がりながら登っていく。

ヘンロ道が急に車道に変わる。
少し歩いて、前を見ると太龍寺の山門が見える。

 13:00分、太龍寺の山門に着く。


第21番札所 太龍寺

 太龍寺は大きなお寺だ。こんな山奥にあるお寺だが境内は広く、
きれいに整備されている。
この山にはロープウェイがあり、大半のお遍路は、そのロープウェイで
登ってくる。

 本堂にお参りしようと歩いていると、納経所の前に「ふじや」で一緒だった
大阪の人を見つける。
聞くとSさんもここにいるようで、時間があるので舎心が嶽を見に
行っているとのこと。
 
 本堂をお参りした後、大師堂へ向かう。
大師堂は、山門の方へ戻った左手の杉の大木に囲まれた一番奥にある。
この大師堂の佇まいが好きだ。
大きな杉の木が参道の両側にあり、その一番奥に大師堂がある。
きれいには掃き清められた参道を歩き、大師堂でお経を唱える。

 納経所に戻り、ベンチで休む。
 ちょっと遅い昼食となったが、うさぎ茶屋のママさんからいただいた
おにぎりを食べる。ばら寿司の酢が口の中に広がりおいしい。

 このまま坂口屋までしか行かないのはもったいない気がして、
平等寺へ迎えに来てくれるというみゆき荘へ電話をしてみる。
あいにく、今日は予約でいっぱいとのこと。
あきらめて、私たちも舎心が嶽でも言ってみようかと話し、
Kさんとのんびりしていた。

 先ほど追い抜いた初老の男性に「やあ、若い人は早いですね。」と
話しかけられる。
この男性は神戸からちょくちょくお遍路に来ているようだ。
「先ほど下っていったお婆さんはいくつぐらいに見えました。」と言われ
「70歳は過ぎているように見えました。」と答えたところ、なんと82歳だという。
おまけに、鶴林寺から来て太龍寺まで来てさらに鶴林寺へ戻るところだという。
これにはたまげた。
80歳を過ぎてあの山道を往復する元気がどこにあるのだろう。
そんなことを微塵も感じさせない小柄なお婆さんだったことを思い出す。

 この神戸の男性は、香川県の札所にはお参りしていないと言う。
「友達から涅槃の道場には行かない方がよい。」といわれたので
香川県のお寺が一番近いのだけれども、そうしているとのこと。
初めて聞く話だ。

そのほかの札所も神戸からは近いこともあって何度も訪れているとのこと。
「それでは頑張ってください。」と挨拶され、先に山を下っていった。

 納経所のベンチでぼんやりしていてふと閃いたことがある。
みゆき荘のほかに平等寺まで迎えに来てくれる宿がないのだろうかということだ。
もう一度みゆき荘へ電話してみる。
「今日は予約でいっぱいだ。」と、先ほどと同じような返事をされる。
そこで、「平等寺まで迎えに来てくれる宿がほかにありませんか。」と
聞いてみた。
すると、「清水旅館なら迎えに行くかもしれない。」とのこと。
さらに図々しく、清水旅館の電話番号も教えて貰う。
みゆき荘さんごめんなさい。

 清水旅館に電話する。
「お遍路をしているものだけれど、平等寺まで送迎していただけるかどうか」
聞いてみると、「いいですよ。」との返事、さらに今日はまだ空きが
あるとのこと。
一応予約をして、今度はKさんが坂口屋に電話し、今晩の予約を取り消す。
 さあ急に忙しくなってきた。
急なことではあるが、予定を変更して平等寺を目指すことにした。
阪口屋さんごめんなさい!

 14:20分、あわただしく太龍寺に別れを告げる。 

 平等寺までは、約12キロの道のりだ。途中に大根峠という峠もある。
納経所終了時間までに平等寺に行き着くか微妙な時間だが、
私には、間に合うという自信があった。
何の根拠もないけれど、おそらく5時には着けるだろうという妙な確信があった。

 駐車場へ下りる裏側の道を二人でどんどん下っていく。
下り坂の苦手なKさんも、この程度の下り坂なら遅れることなくついてくる。

 山を下り終えて少し進むと、目の前に白い大きな建物が見えてくる。龍山荘だ。
龍山荘の前を過ぎると、道はT字型の交差点に出る。
交差点の右側に坂口屋がある。坂口屋さんも大きな宿だ。
この交差点を右に曲がり、ここからはしばらく車道を歩くことになる。

 15:50分、阿瀬比にあるガソリンスタンドで小休止する。
自販機からジュースを買って飲む。冷たいジュースが喉にしみこむ。
 ふと前を見ると、ヘンロ小屋と書かれた茶色で三角形の小さな建物が見える。
思い出した。これは、歌さんという人が建築を進めているヘンロ小屋なのだ。

道を渡り、ヘンロ小屋をのぞく。
屋根があるのみで、壁もないけれど雨露はしのげる。
でも、宿泊するにはちょっと狭いかなという印象の小屋だ。

 阿瀬比からはいよいよ大根峠への山道となる。
また杉林の山道を進むが、鶴林寺や太龍寺への登り道と較べると
なんていうことはない。
二人でどんどん登っていくと、目の前が明るくなり峠らしい場所を通る。
この先は下っているのでここが大根峠らしい。 

16:15分、大根峠に着く。

 ここからは山道をゆっくりと下っていく。
空が曇っているので、林の中は少し薄暗くなってくる。

 目の前が少し明るくなってきたと思ったら、どうやら山の道は終わりのようだ。
目の前に水田が広がり、畜舎が見える。畜舎の中には数頭の牛がいる。
 ここからは、あと2キロ弱だと思うが、5時までは20分くらいしかない。
ちょっとピッチを上げて歩く。
 
 山を回ると左手の向こうに平等寺が見えてきた。
どうやら間に合うようだと思いさらに歩いていくと、何と、道路工事で道は
迂回路を通らなければいけない。
ちょっと焦ったが、平等橋を渡り、平等寺に滑り込む。

 17:00分、丁度に平等寺に着く。


第22番札所 平等寺

 真っ先に納経所へ向かい、納経をお願いする。
その後、ゆっくりと本堂へ向かう。本堂への階段には一円玉がたくさん
落ちている。
これは、願掛けで置いているお賽銭だ。
本堂へ続く階段は男性の願掛け用で、本堂から右側にある階段が女性用だ。
それぞれの階段にお賽銭が上げられており、歩くときにそのお賽銭を
踏まなければあがれないところがある。
お金を踏むということにちょっと抵抗感を覚える。

 夕闇が迫り薄暗くなってきた。
納経を済ませたので清水旅館に電話して迎えに来て貰う。
「10分くらい待ってください。」とのこと。
山門前の階段に座り靴を脱ぎ足を休めながら迎えを待つことにした。

10分ほどすると、軽のワンボックス車が来た。清水旅館の車だ。
ご主人らしい白髪の老人が運転している。
車に乗ると、平等寺からはどんどん離れた方へ走っていく。
着いたところは、JR桑野駅だ。
この駅前に清水旅館がある。
ヘンロ地図では、この辺の位置関係が全く分からない。
 でも、なかなか良さそうな旅館で、建物の規模も大きい。

 2階の部屋へ案内される。風呂もついている。
湯船が三角形の変なお風呂だ。
洗濯機のある場所を聞いた後、お風呂にお湯を入れる。
案の定、三角形の湯船は足を伸ばせるほどのスペースがないので窮屈だ。
でも洗い場が広いので、足の指やふくらはぎをマッサージしたりするには
良かった。

 夕食ですとの案内を受けたので、1階にある食堂へ行く。
すると、植村旅館で一緒だった広島のYさんや埼玉の青シャツの人がいた。
Yさんの宿は確か坂口屋に取っていたはずだけど、ここまで足を延ばしたようだ。
そのほかにも初めて会った2人のお遍路さんがおり、総勢6人のお遍路が
今晩は清水屋でお世話になっている。
朝食は6時半からとのことで部屋に戻る。

 明日はどこまで行くか、まだ決めかねていた。
今の足の調子だと薬王寺までは約20キロほどなので問題なく行ける。
鯖大師までだと国道経由で約40キロとなる。足は何とかなるだろう。
また、鯖大師まで進んでおくと、次の最御崎寺は室戸岬にあるが
ここまでの残り距離が約60キロほどとなるので2日で十分行ける距離となる。
 予定より大幅に進んでいることもあり、徳島で1泊して徳島市内を見学しようか、京都へ行って延暦寺へ行ってみようか、いろいろなことが頭の中を
グルグル巡っている。
 テレビの天気予報を見ると、明日は夕方から雨になるようだ。
 ここでやっと心を決めた。

 明日は鯖大師まで行くことにして、徳島で人形浄瑠璃を見て、京都へ行き、
千日回峰行を行っているお坊さんのいる比叡山の無動寺へ行ってみることにする。
理由はいろいろあるが、明日の歩きが20キロでは物足りないこと、
一度は40キロを歩いてみたかったこと、そして、何といっても、
鯖大師で行っている朝の護摩供養は、一見の価値があると聞いていたので
これを見てみたかったためだ。

Kさんに鯖大師まで行くことを話すが、Kさんはこの先もあるのだから
30キロほどを目安に歩いていくほうが体にも楽なので、
牟岐町辺りまでとすることをすすめる。


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 一日の歩行距離を何キロにするかは人それぞれです。
でも、数日歩いていると自分にあった距離数が分かってきます。
私は、30キロを目標にしていましたが、この距離だと少し早めに宿には
いることが出来るので、余裕を持って歩けました。
 私の歩く速度は、1時間に5キロ強、1時間歩いて5分から10分休んでいたので、それらを含めても時速5キロほど出歩いたことになる。
そうすると30キロの距離だと約6時間で歩ける計算となります。
この時間に昼食で1時間、お寺でお参りすると最低30分がかかるので、
これらを組み合わせて次の日の予定を立てていました。

 最初は少し物足りないくらいの距離で足慣らしをすると、
そのあとの歩きは随分楽になると思います。

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