銀の人魚の海

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僕とぼく 妹の命が奪われたあの日から 川名壮志

2024-08-18 | 本、雑誌

先日読んだ、20年前、佐世保市少女殺害事件。

同窓生に教室で殺された少女、小学6年の父は、

毎日新聞記者だった。

父の部下、75年生まれの川名が書いた事件本、2冊目。

19年、新潮社、書下ろし。

「僕」は、長男。「ぼく」は、次男。

交互に2人の語り。3時間で読める。

被害者の兄弟が、どのような心境だったかが、

半分はわかる。すべては到底わからないほど重い。

当時、長男は四国の大学生、次男は中学2年生。

大人は心は一応成長しているが、まだ若い二人の

兄と弟は、事件で父に言えないことが山ほどあった。

もう1つ不幸は、母が6年の闘病後、ガンで亡くなったこと。

長男だけが、ガンで余命が少ない事を知らされていた。

積極的で明るい母。体は大きいが無口な父、

しばらくもぬけの殻になった。

母が他界後は、父、妹、次男と3人で社の3階に住んでいた。

決まった日常、父は家事をしっかりしてくれ

帰宅が遅くてもお弁当を作り

決まりきった3人の毎日が過ぎていった。

そんなとき、6年になった妹が、家にも来たことがある生徒に、

カッターナイフで殺害された。

その後、次男は父の転勤で長崎に引っ越す。

次男は佐世保にいたかったが、

父の強い頼みで長崎へ、だった。

父はつらく、一人暮らしはできなかったのだろう。

長男は四国で一人、大学生活を満喫していた。

2人の兄弟は性格が正反対。これほど違うのか、と思うほど。

長男は、妹が加害者に悪口を言ったというメディアの

記事を読み激怒、悪口でなく、子どもが普通にいう程度なのに

まるで加害者と同じように書かれている。

長男は怒りを表面に出す。

父はこれ以上メディアを煽ってはダメだととめた。

次男は心にこの事件を閉じ込めた。泣かない、話さない。

父は母が亡くなった時以上にもショックを受け

葬儀後、一段落すると、記者たちが家に来て

日々飲酒で過ごした。長男も仲間に入り

殺害から少しでも遠くへ気持ちをという大人の飲酒だった。

次男は妹が加害者とネットトラブルがあったことをしり

秘密にしていた。これも次男が心を閉じる1つだった。

次男は高校へ入るが3か月で退学。なにもできない日々、

カウンセリングを受け、精神科へも通院。

別の単位制高校へ入りなおす。そこではまあ友人もでき

卒業。大学へ進んだ。

まだ気持ちは晴れない、わだかまりがあったが、ある友人が

支えてくれた。

長男は、大学でのバイトから未来を見据え

過激な生き方を選ぶ。

これには驚く。知りたい人は読んでみて。

彼はその後、支えてくれた女性と結婚、子供が生まれる。

女児だった!父が妹の変わりのようだと、喜んでくれた。

母がガン闘病時、一緒にくらし家事をしてくれた

祖母もこの誕生には歓喜!

ラストは、15年経過後の残された家族が

きっとこれからは、死を少し脇におけるか・・忘れはしないが。

未来を感じる。

事件での苦労は、加害者のかそ”く、被害者とかそ”く。

読みやすかったが、重さも十分感じられた1冊。

2人のきょうだいの語りを本にまとめてくれ

貴重な事件後の書物になった。

 

 

 



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