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みち草・・・・神経系

2013-04-01 09:00:00 | colloidナノ
機能との関連における代謝

活動しているニューロンが必要としている化学的条件

活動しているニューロンの生化学的な展望は、詳細な点についてはまだぼんやりしているが、少なくともはっきりと指摘されるような二つの問題については、このようにして、明らかにされ始めてきた。

ニューロンが生存しつづけるためには、

①例外的なほど速やかなタンパク質合成能に関連して、永続的で自己複製的な高分子の構成、
②栄養的な低分子物質の恒常的な補給が必要である。

どうしてこれらの二つの必要条件がニューロンの生命と機能の存続に特別重要なのかを簡単に考察してみることにしよう。


みち草・・・・神経系

2013-03-31 09:00:00 | colloidナノ
インパルス伝送物質

1949年に、A.L.ホジキンと協同研究者の輝かしい研究によって、神経インパルスを生じさせ伝送するうえで、イオンの移動がきわめて重要であることが明らかにされた。

ナトリウム・イオンが入り、カリウム・イオンが出ることが、脱分極とその回復の波の基本的な決定要因で、これが神経伝達を形成している。
その後、ナトリウム・イオンは放出され、カリウム・イオンがもう一度入ってきて、以前のイオンの配置にもどる。

この最終的な回復には、代謝によって供給されるエネルギーが必要で、それは、静止状態の細胞膜の分極化した状態を維持するためにも必要である。

髄鞘のある繊維では、このイオンの変化が、ランヴィエ絞輪のところだけ起こり、、ある絞輪での脱分極で、次の絞輪へのインパルスの跳躍的な伝導が起こるように思われる。

髄鞘の脂質の絶縁的な性質は、このきわめて効果的な伝導形式にとって絶対必要なことである。

エネルギーがイオンの濃度勾配と膜の電位を維持するために利用されて消費されるときのからくりは、現在もはっきりしていない。
しかし、高エネルギー・リン酸結合を含む化合物が、このエネルギーの直接の貯蔵体として関係しているという証拠がかなり存在している。

P.J.ヒールドの研究は、分極状態を回復するうえでリンタンパク質が関与している可能性に、また、この維持と回復の過程と呼吸と解糖によるエネルギーの供給との関係に、関心を向けるうえでとくに有効であった。

高エネルギー・リン酸結合が、不断の栄養物質の供給に依存していることは、フォスフォクレアチンとアデノシン三リン酸が、虚血後きわめて短時間で脳から失われることを見出したM.シュナイダーによって、明確な形で強調された。


みち草・・・・神経系

2013-03-30 09:00:00 | colloidナノ
興奮性物質と抑制性物質
シナプス伝達物質


これらの物質の作用は、今世紀になってから、T.R.エリオット、O.ローウェイ,H.デール、J.C.エックルズその他の人たちによって発見された。
これらの特異的な物質は、シナプスの場所で放出され、そこで別のニューロンを興奮させたり抑制したりする。

これらの同一の物質は、また、いろいろな器官内の軸索の末端でも放出され、そこでも、これらの物質は、ニューロンから他の型の細胞への活性化や阻害作用を伝達する役を果たしている。

これらの伝達物質transmitterには、アセチルコリン、アドレナリンとノルアドレナリンが含まれている。
最近の研究は、これも大脳に存在している5-ヒドロキシトリブタミンも、神経組織に特異的な作用のある、この一群のホルモンに属していると示唆している。

体内で合成された物質が、このようにニューロンの正常な機能に関して、この細胞にきわめて特異的な作用を及ぼすことができる。また、これらの物質はニューロンの異常作用malfunctionをひこ起こし、神経症の原因となることがある。

1952年に、オズモンドとスマイシーズは、メスカリンという薬剤が、精神分裂病に似た中毒を起こすことがあることを示した。
オズモンドとその協同研究者は、また、アドレナリンから酸化反応によってつくられるキノンのアドレノクロムが、メスカリンによって起こるものによく似た幻覚をひき起こすことを見出した。

体内での異常な代謝からの逸脱によって体内で合成される、自然に存在する「幻覚原因物質hallucinogen」かもしれないという考えを提示している。

したがって、精神病が有害な産物の蓄積をともなう代謝上の欠陥によって決定されているという可能性は、これまで謎に包まれていた心の異常への研究にとって、挑発的な道標となったのである。

この考えは最初、トウデエイクムによって明確にとらえられたものである。



余滴
愛情ホルモンには、よく知られたドーパミン、エンドルフィン、アドレナリン、ノンアドレナリン、テストテロンなどが知られていますが、幸せ!ホルモンとも言われるセロトニンとかオキシトシンも忘れられませんね!!

みち草・・・・神経系

2013-03-29 09:00:00 | colloidナノ
呼吸と解糖の場

神経細胞内部で低分子物質の代謝の起こる場は、細胞の高分子物質による構造の一部をなす細胞内の酵素の配置によって決定されている。

ポール・エールリッヒによる1885年の大脳組織内でのインドフェノール合成の明示が、脳内で活性を示す酵素の所在についての最初の洞察を与えた。

H.M.ヴァーノンは、1911年に、この酸化反応が「インドフェノール・オキシダーゼ」という酵素によるもので、この酵素が灰白質にとくに多く、また活発に呼吸している他の組織にも存在していることを示した。

後に、D.ケイリンは、エールリッヒのインドフェノール試薬を青色化する酵素は、実際には、チトクロム・オキシダーゼであることを確かめた。

この酵素は、還元型のチトクロムを酸化型のチトクロムに酸化し、そしてこの後のほうの物質がインドフェノール試薬をキノノイド型のインドフェノール・ブルーに酸化する。

ポール・エールリッヒも大脳がはっきりと(メチレン・ブルーを含めて)いくつかの色素を無色型に還元する能力を示すことを認めていたのだが、大脳の灰白質によるメチレン・ブルーの活発な還元は1905年にC.A.ハーターによって発見された。

1912年にジークフリート・グレーフは、インドフェノール・オキシダーゼの作用によって形成されるインドフェノール・ブルーの顆粒は、神経節の細胞の細胞質内に沈着し、核内ではないことを見出した。

また、彼は梗塞による神経細胞の死で、酸化作用のある顆粒が消失することも示した。

最後に、1919年に、ゲオルフ・マリネスコが神経細胞内のインドフェノール・オキシダーゼの所在について完全に記述した。

彼はインドフェノール反応によって選択的に灰白質全体の輪郭が描かれることを示した。
下オリーブ核内などのはっきりと限定された灰白質は、エールリッヒのインドフェノール試薬で試験管内で(in vitro)処理すると、反応性のない無色の白質を背景としてきわだってみえる。

事実、マリネスコが述べているように、灰白質が、「驚くべき明確さで」きわだたせられている。
彼は、また、この顕著な区別は、インドフェノール・オキシダーゼが細胞体と樹状突起に存在しているが、軸索には欠けていることにもとづくことも明らかにした。

マリネスコの啓発的な論文は、大脳の代謝において樹状突起が支配的であることを初めて指摘した。また、マリネスコは、インドフェノール・オキシダーゼがミトコンドリア中に存在しているという考えを最初に言い出した。

このように、彼は神経細胞の細胞化学の創始者の筆頭の1人である。

切り出した組織での代謝についてのハンス・ウィンターシュタインとオットー・ワールブルクの先駆的研究につづいて、グルコースを含んだリンゲル液にひたして、薄片にしたりこまぎれにした脳の代謝上の活性が多数研究された。

E.G.ホームズは、灰白質のほうが白質よりも酸素を多量に消費し、乳酸を生成することを示した。
そこで、灰白質のどの部分がこの高い代謝活性の原因となっているかという問題が浮かび上がってきた。
つまり、この活性は細胞体の中かそれとも樹状突起の中に局在しているのであろうか?

ニューロンがいちじるしく長いために、細胞の一部分だけについての代謝を研究することができる。
この原理は、E.G.ホームズによって1932年にはじめて適用された。

彼は、ガッセル神経節(ここには細胞体が含まれているが、シナプスも樹状突起も含まれていない)が、白質のように挙動し、呼吸も解糖の速度も低いことを示した。
したがって、彼は、脳の灰白質の高い代謝活性は樹状突起とシナプス内での反応にもとづくものであると結論した。

しかし、(ガッセル神経節のような)知覚神経節は、灰白質の1種であるが、神経節での代謝の観察からの結論を、大脳皮質の挙動には適用するのが正当でないほど、この種の神経節は高等な中枢とは異なっていると主張することもできる。

それでも、大脳皮質では、大部分の細胞体が関与しないようにして、先端樹状突起を含む組織の代謝活性を測定することができる。
大脳の表層を面に平行に薄片に切るとこの目的を達することができる。

これらの薄片は、主として、錐体細胞pyramidal cellの羽毛状plumateの樹状突起(と神経繊維の末端)とでできていて、細胞体は比較的わずかしか含まれていない。

これらの表層部の薄片での解糖の速度は、ニューロンの細胞体と核が豊富に存在しているもっと深層部にくらべて、小さくないばかりでなく、実際には、わずかにそれより大きいことが見出された。

したがって、呼吸と同様、解糖も、脳の主要な代謝上の成分である樹状突起とシナプスの中で主として起こっているようである。

樹状突起内部やその分岐中に豊富なタンパク質には、おそらく、樹状突起の代謝の多数の反応に関係したいろいろな酵素がたくさん含まれているのであろう。

海馬の皮質hippocampal cortex、視覚野皮質と運動野皮質のいろいろな層での個々の酵素の分布についての研究も、樹状突起が大脳の代謝全体の中で大きな割合を占めていることを示している。




















みち草・・・・神経系

2013-03-28 09:00:00 | colloidナノ
糖の利用と解糖

1917年に、ハンス・ウィンターシュタインは、エルゼ・ヒルシュベルクと協同して、神経組織が糖を利用できる能力を発見した。
ヒルシュベルクとウィンターシュタインは、カエルの脊髄によって、保温しておいた液に加えたグルコースが消失することを示した。

また、これらの研究者は、グルコースの消費量が電気的刺激で増加し、エタノールやウレタンの添加によって減少することを見出した。
グルコースの利用についてのこの先駆的な研究は、この問題についての最近の考察では無視されることが多い。

1922年に、F.C.マンとT.B.マガスは、肝摘出ののち、血液中の糖の急速な消耗のために、イヌが意識を失うことを示した。そのうえ、糖を与えると意識が回復することが見出された。

1923年に、J.J.R.マクラウドは、インシュリンの注射で、同様に低血糖の昏睡が起こることがあることを発見した。

こうして、グルコースが脳に不可欠な栄養であることが認められた。生存中、ヒトの脳でのグルコースの連続的な利用は、とくべつに優美なやり方で、ハロルド・ヒムウィッチとその協同研究者によって例証された。

この人たちは、脳の「動脈と静脈の間の酸素量の差」を酸素利用度を見積もるために用いた。
この差は、低血糖で少なくなりグルコースを与えると回復する。
このことから、もっと合理的に、グルコースが生きている脳の主要な栄養であると結論を下した。

1924年、オットー・ワールブルクと彼の協力者は、ネズミの大脳皮質の薄片は、酸素が存在しない条件で、速やかにグルコースを乳酸に変え、この解糖は酸素によっていちじるしく低下することを発見した。
大脳皮質によるグルコースの分解を減少させる、酸素のこの効果は、のちに、大脳皮質の薄片によるグルコースの分解を直接に測定して証明された。
このように灰白質はパストウール効果を示す。
これは生きている組織に広く認められる性質で、酸素は炭水化物の消費を減少させ、それで栄養物質の不必要な損失が防がれる。
酸素の存在しない条件で、速度の高くなった大脳皮質による解糖は、嫌気的呼吸という経済的でない過程から十分な自由エネルギーを得ようととの無益な試みというようにたとえられてきている。

このように、グルコースは主要な脳の燃料である。一時的な酸素欠乏の間に、乳酸への解糖というグルコースのこの嫌気的な分解で利用できるようになるエネルギーは、神経の活動をつづけさせておくためにはおそらく不十分であろうが、神経細胞の生命を維持するために十分な自由エネルギーをしばらくの間供給できるかもしれない。
この理由のために、意識の正常な過程は、大脳の神経細胞でのある一定の水準での自由エネルギーの放出の速度に依存していると考えられた。
この水準以下では、昏睡が起こる。

ヒトと動物での大脳の虚血は、7秒とう短時間内で速やかに意識を喪失が起こっているが、大脳の神経細胞の回復不能な傷害は通常、虚血が数分つづかないと起こらない。
永久的な傷害に対する短時間の猶予は、組織内に存在しているグルコースの嫌気的分解による、低い速度でのエネルギーの連続的な供給に依存しているのであろう。
このように、嫌気的解糖は、ごく一時的には、不可逆的な損傷を妨げるに十分な程度に高いが、神経機能を維持するには不十分な速度で、エネルギー供給を提供しているのであろう。
大脳皮質は、比較的短時間の虚血によって不可逆的に損傷されるが、延髄など低次の中枢は、血液供給が一時的に停止しても、もっと長い時間生き残ることができる。酸素とグルコースの双方の連続的供給に対する極端な大脳皮質の依存性は、皮質での高い解糖の速度と関連し、また、この特別傷つきやすい組織に必要なエネルギーの高い要求を反映するものであろう。

大脳組織でのグルコースの炭酸ガスと水への酸化の実際の反応段階は、ルドルフ・ペータースとその協同研究者の啓発的な研究によって明らかにされた。

ペータースは、ピルビン酸がこの過程の中間代謝物質であり、ビタミンB1の欠乏で、ピルビン酸から先の反応による利用が妨げられて、ピルビン酸が蓄積することを発見した。

また、ペータースは、フルオロ酢酸の酸化的代謝によって生成されるクエン酸から先への代謝が妨げられることを示した。
したがってフルオロ酢酸の毒作用下の動物では、クエン酸が蓄積し、脳に大量に検出された。

このように、ペータースは、クエン酸回路による酸化が、大脳組織による炭化水素の好気的分解に欠くことのできない部分であることを確かめた。





みち草・・・・神経系

2013-03-27 09:00:00 | colloidナノ
低分子物質とその代謝
栄養的な低分子物質

酸素の利用  大脳の機能が、脳への酸素の連続的な供給に依存していることは、早くから認められていた。

19世紀半ばまでに、ウィリアム・ストークスは、大脳の虚血が錯乱と昏睡の原因となるという考えを提示し、一方、チャールズ=エドワード・ブラウン=セカールは、大脳の組織が酸素欠乏で損なわれやすいこと、および酸素欠乏の脳が酸素を含んだ血液で再生することを確かめた。

1880年に、M.リッテンは、ウサギの腹部大動脈の1時間に及ぶ圧迫で、下肢の永久的な麻痺と尿の失禁が起こることを示した。

リッテンは、これらの無能は、脊髄の虚血性の損傷の結果であるという考えを提案し、大多数の組織にくらべて虚血性の損傷をうけやすいい腎でさえ、骨髄ほどには虚血によって速やかに傷つけられないことに気づいていた。

1884年に、エールリッヒとブリーガーはリッテンの研究を追試し、腸部大動脈のこの圧迫で、実際に脊髄の前角細胞が死んでいることを示した。

エールリッヒとブリーガーはまた、虚血の脊髄の灰白質のほうが、白質よりも前に顕微鏡的な損傷の証拠を示すことを見出した。

こられの観察は、神経細胞が酸素欠乏で著しく傷つきやすく、細胞体と樹状突起のほうが軸索よりももっと感受性が高いことを意味している。

1885年に発表された立派な論文の中で、ポール・エールリッヒは大脳の灰白質の強力な還元力を強調している。

彼は、生きている灰白質ではアリザリン・ブルーは速やかに無色の化合物に還元されるが、虚血のために死んだ脊髄の灰白質ではこの還元を果たすことができないことを示すことができた。

エールリイッヒは、灰白質が酸素を必要とすることを認め、さらに脳が酸素を吸収し、活発に利用することを確かめた。

このような酸素の作用を明示するために、彼はウサギに、ジメチル-パラフェニレンジアミンとα-ナフトールを注射して、これらの物質が脳によって酸化され濃縮されて、インドフェノール・ブルーを形成して暗青色の顆粒として沈着することを見出した。

エールリッヒは「生体によるインドフェノール合成」の概念を記号で表現しょうとして次の化学式を与えた。略

彼は、脳と心臓が生組織内での酸化の能力を最高の程度に具えていることを示した。

気体状の酸素を直接消費する中枢神経組織の能力は、ハンス・ウィンターシュタインによって1906年に最初に例証された。

彼は、カエルから取り出した脊髄が酸素を吸収し、この酸素消費が電気的刺激によって増大することを示した。
ウィンターシュタインの研究は、トウーンベリのミクロ呼吸計を神経組織の呼吸の研究に利用した点で注目に値する。

酸素欠乏によって生じる神経細胞の損傷についてのもっと徹底的な研究は、ルーマニアの偉大な神経病理学者のゲオルフ・マリネスコによって1896年から後ずっと行われていた。

1909年に出版されたマリネスコの「神経細胞」の中で、彼は、灰白質が酸素欠乏による損傷にとくべつ感受性が高いことを強調し、それを彼は神経組織の構造と機能の双方を維持するために必要な激しい酸素の利用と関係づけた。

マリネスコは、腹部大動脈の結緊後3時間以内に脊髄の前角の細胞中で、細胞の周辺部からニッスル物質がいちじるしく失われること(周辺部好染部溶解)を明示した。

細胞の呼吸による神経細胞の酸素吸収の能力と、連続的な酸素供給へのその依存性は、このようにして、20世紀初頭までに十分に認められていた。
その後、大脳表皮の薄片を、酸化される基質を含んだリンゲル液を分散すると酸素を呼吸することが確かめられた。


みち草・・・・神経系

2013-03-26 09:00:00 | colloidナノ
白質の脂質

1812年に、ヴォークランは、白質のほうが灰白質よりも脂質が多いことを認めていた。

白質中のこの過剰の脂質は、そこでの有機繊維の含量が高いことを反映したもので、事実、シュヴァンが指摘したように、それが外見白く見えることの原因である。

ミエリンには、現在、もともとトウデイクムによって発見されたスフィンゴミエリンとセレブロシドと遊離の形の(エステル化されていない)コレステロールを含めて、いくつかの特徴的な脂質が含まれていることが知られている。

事実、これらの脂質は、髄鞘物質の化学的性質を明確にするために多くのことを果たしたR.J.ロシターと彼の協同研究者によって「ミエリン脂質」と名づけられた。

有髄繊維でみられる、きわめて効率の高い神経のインパルスの「跳躍」型の伝導に必要な絶縁は、ほとんど間違いなく髄鞘中のこれらの特別な脂質成分に依存しているのであろう。

これらの物質の物理的性質が神経の活動に最高に重要であるというトウデイクムの考えは、実際予言的なものであった。

ミエリンの物理的性質は、最近C.W.M.アダムズによって再び強調されたが、彼は、正常なミエリンは好水性のまたはミセル型の脂質だが、ワラー変性で形成される脂質の粒は謙水性または液滴性の脂質であることを示した。

トウデイクムはまた、彼に特徴的な先見で、脳の脂質のコロイド状態の変化が、病気においてきわめて重要であることを強調している。

1954年に、ベテイー・ベン・ゲレンが、末梢の神経のミエリン鞘が、軸索のシュヴァン細胞への陥入invaginationとそれにつづいてシュヴァン細胞が軸索のまわりに薄層に平になってラセン状に巻きついて生じることを発見したときに、ミエリンの脂質は、新しい意義をもつことになった。

それでは、おそらくミエリンはほとんど純粋な形で細胞膜が圧縮されたものからできていることになる。
したがって、ミエリンについての化学的および光学的研究から、付着したタンパク質の膜を伴う脂質のミセルが一定に向いた薄層で、細胞膜ができているという考えのみごとな確証を与えた。

みち草・・・・神経系

2013-03-25 09:00:00 | colloidナノ
灰白質の脂質

灰白質は、白質よりも脂質の含量は低い。しかし、その灰白質でさえ、脂質を含む器官の中ではかなり含量の高い部類に位置づけられている。

灰白質の脂質には、ガングリオシドとストランデインのほかに、レシチンとケファリンが含まれている。

前の二つは、もともとトウデイクムによって分離された脳内の塩基性物質のスフィンゴシンを含むスフィンゴ脂質である。
今日の脳の化学の論文で最初に名がいかにたびたび引用されるかはきわだったことである。

これらの脂質は、細胞体と樹状突起の中に分散して存在し、中性脂肪とはちがって、スダン色素で染色できる油滴の形になっていない。
これらはミセル型脂質と名づけてよいであろう。

しかし、灰白色には、スダン色素の染色で染色される、凝縮して小滴状になった脂質も含まれている。
これはリポフスチンで「利用しすぎてくたびれて生じたwear and tear」色素である。この物質は、神経細胞の細胞体内の、黄色がかった顕著な顆粒として存在している。

神経細胞中のリポフスチンは19世紀に発見されたのだが、その意義はまだ不明瞭である。
マリネスコは、彼の大著「神経細胞」の中で、この色素を含む脂質は、年齢の増加とともに量が多くなることに気づいていた。神経細胞は取り換えられることがなく、その代謝活性は生涯つづく。

したがって、何か分解されにくい産物(おそらく神経細胞の膜成分に由来したものであろう)が、何年もの期間の間に、はげしい代謝の起こっている狭い空間の中で蓄積したとしても驚くにあたらない。

これらの小滴状の脂質の粒は、それらを分散する機能を果たしていた物質が分解されるとともに、やがて凝縮してくるであろう。
このように、残存する物質の最終的な量にくらべて大過剰に存在している、大量の神経細胞の細胞質の永続的な分解から生じた不活性な残渣としてリポフスチンは存続しつづけるのかもしれない。

神経細胞内のこれらの顆粒の性質の一つで、その細胞内の位置をきわだった形で明らかにするものは、可ヨウ素酸-シッフ法の処理で、それが示す強いバラ色がかった虹色である。

リポフスチンの沈着の中には、ジールーニーセン法で染色したときに酸に耐性を示し、紫外部に強い蛍光を示すものがある。
この点で、ラルス・アイナーソンが、ビタミンEを与えられていない動物の神経細胞で発見した、神経細胞内のおびただしい量の脂質に似ている。

その時以降、アイナーソンは、ビタミンEを利用できないで、その結果生じる脂質の自己酸化のために、老齢の神経細胞内にリポフスチンが蓄積するのであろうという考えを提示している。

このようにして形成されたリポフスチンは、後に神経細胞内のリソソームによって包み込まれることもある。

みち草・・・・神経系

2013-03-24 09:00:00 | colloidナノ
タンパク質

タンパク質性の物質は、脳の中で最初に、フルクロアによって1793年に見つけ出された。

すでに述べたように、ヴォークランは、灰白質のほうが白質よりもタンパク質が豊富あることを示した。
このことは、トウデイクムによって、広範な定量的研究によって確かめられた。

ヘルドは、1895年に神経細胞内でのタンパク質の位置を示すために、ペプシンで処理するという細胞化学上の新しい方法を利用した。
脳の灰白質内でのタンパク質の分布についてのもっと最近の研究は、樹状突起とその分岐中にタンパク質が多いことを強調している。

ダニエリのテトラゾウリムシ法によって染色されてた大脳皮質の錐体細胞を示したものである(写真5割愛)。

組織中のタンパク質に含まれる芳香族基のあるアミノ酸がこの方法で証明できる。(写真5から)、細胞体、頂点からの樹状突起とその分枝に、これらの反応基を含んだタンパク質が多いことは明らかである。後に述べるように、これらのタンパク質の大部分は酵素であろう。

相互に近接した神経細胞が、そのタンパク質含量でいちじるしく異なっていることがある。

1966年に、E.V.カウドリーは、色素による染色され方が異なっている好染色性と非染色性の二種類の神経細胞を記述した。

アイナーソンと、後にハイデンも、好染色性は細胞内のタンパク質とRNAの濃度に依存していることを確立した。
彼らは、好染色性は、その直前の神経細胞の活動に逆比例した形で変化し、タンパク質とRNAは、激しい活動のために、神経細胞から消失することを見出した。
(写真6は)小脳皮質内の非染色性と好染色性のプルキニェ細胞内のタンパク質含量(サラザルのタンニン酸鉄法で検出された)の相違を示したものである。

タンパク質含量の高い軸索漿axoplasmは、一日0.2mmの速さで絶えず神経繊維の先端の方へ流れている。軸索漿のこの流れは、J.Z.ヤングとワイスとヒスコーの研究によって明らかにされた。
これらの研究者は軸索を圧縮し、その場の上方で軸索漿がせき止められて軸索がふくれ上がることを見出した。
この軸索漿は繊維のすべての場所へタンパク質を送っている。

ワイスとヒスコーは、神経におけるアンモニアがタンパク質の脱アミノ化によって生じるものと仮定に立って、タンパク質の供給の速度はこのアンモニアの生成速度を十分説明できると計算した。

タンパク質のこのような形の利用のためには、細胞体と樹状突起の中で、RNAの影響のものに、絶えずタンパク質を合成することが必要になる。
軸索とその末端で要求されているタンパク質の合成は、このように、核の近辺でおこる。

ワイスとヒスコーは、核付近からのタンパク質の連続的な流れが、軸索でのタンパク質の連続的な損失をもとにもどすために必要なのだという考えを提示した。

軸索を活性を維持するために必要なエネルギーは、最終的にはこの軸索のタンパク質から供給されるというのがありそうなことに思われる。

軸索でのタンパク質の流れについてのこの考えは、神経に不可欠な栄養は脳から補給されるというウィリスの考えの目ざましい復興である。

さらに、細胞体と樹状突起で産生された軸索漿の連続的な流れで、ワラーが仮定したように、なぜ細胞体が繊維の栄養の必須の中心であるか、また、ワラー型の変性で繊維が栄養タンパク質源から切断されるとなぜ繊維が死んでしまうのかを説明できる。

みち草・・・・神経系

2013-03-23 09:00:00 | colloidナノ
核のデオキシリボ核酸

フォイルゲンとローゼンベックは、1924年に、細胞内のデオキシリボ核酸(DNA)を証明するための古典的な方法を提示したが、かなりの期間は、DNAの生物学的な役割について、ほとんど生化学的な関心が寄せられることはなかった。

フォイルゲンは、DNAは核の中にだけ存在することを強調した。

カスペルゾーンの研究から、RNAが細胞質のタンパク質の産生に必要であるとちょうど同じように、DNAは有糸分裂の際の核の遺伝子的タンパク質の合成に責任をもっているという考えが示された。

有糸分裂のできない成熟した神経細胞では、DNAの重要性はおそらく、神経細胞に強く要求されているRNAの産生に不可欠な形で参加していることにあるのであろう。

カスペルソーンとハイデンは、核小体の付着している染色質は、核小体にとくに豊富なRNAの細胞内での合成に関与しているとも考えた。

1933年という早い時期に、ラルス・アイナーソンは、神経細胞のニッスル物質の染色性物質は核小体の周囲で形成されて、その後細胞質中に拡散してゆくという輝かしい考えを提案した。

成熟した神経細胞はもはや分裂はしないが、遺伝子型の完全な1組に由来する2倍体量のRNAが含まれている。

雌のネコの神経細胞についての細胞化学的観察から、雌の二個のX染色体のDNAは、雌の対応する1本のX染色体と1本のY染色体の中のDNAとは違ったやり方で分布していることが最初に指摘された。

この分布の差の結果として、バー、バートラム、リンゼーが雌の神経細胞で発見した、DNAの多い核小体の側の衛星体perinucleolar satelite
が存在している。
神経細胞のDNAについての研究は、このように、基本的な細胞学上の原理を先触れすることとなった。