ヘンリーカウへの道の、いよいよ最終回。
今までの「道」シリーズは、ファーストアルバムから始まって、アルバムの発売順に道をたどるものでした。いわば時の流れに乗って、川を下るようなもの。
今回は、たまたま最初に聞いたヘンリーカウがWestern Cultureだったので、ラストアルバムから1stへと、川の流れを遡るものでした。
いや、しかし、川を遡るのが、こんなにたいへんな事だとは思いませんでした。
でも、川を上ってたどり着いた源流は、とても素晴らしい世界が待っていました。
ヘンリーカウの1stアルバム。Legend(Leg end)には、とても若々しくて、ういういうしいヘンリーカウの姿がありました。それはまるで、5月の光のようにまっすぐで、明るい音です。
1曲目はフレッド・フリスの「Nirvana for Mice」。管楽器のきらびやかさと、スピード感。Western Cultureの重っ苦しいイメージは全くありません。フリスの書く曲は、なにげに覚えやすく、印象に残ります。1stアルバムの1曲目に相応しいと思います。
2曲目「Amygdala」はチープなオルガン(?)の音から始まります。
記憶の中に微かに残っているZNRは、こんな感じゃなかったかと思います。
そこから、ほのぼのとした曲が展開します。
このほのぼの感こそ、カンタベリーの音。
リチャード・シンクレアも、デイブ・スチュワートもいないけど、これはカンタベリーの音です。
(いやいや、ジョン・グリーブスのグリグリベースもいいですよ)
それがはっきりするのが、3部に別れたTeenbeat。
特に3つめのRepriseのスピード感は、見事です。
カンタベリーの名曲だと思います。
ラストは、メンバーによるコーラスによる「Nine Funerals od the Citizen King」。
決してうまい歌じゃないのですが味があります。
でも、コレ聞くと、ヘンリー・カウがダグマー・クラウゼ獲得に動き出したのが、わかるような気がします。
ヘンリー・カウ史上最高に明るく、楽しいヘンリーカウ。
Leg endを傑作という人がいるのも解るような気がします。
ちなみに、Legendという不思議なアルバムを作り上げたエンジニアは、トム・ニューマン。
Nirvana・・・(と2ndアルバムのRuinsも)マイク・オールドフィールドがエンジニアとして参加しています。
1.Nirvana for Mice/ねずみの涅槃(Frith)
2.Amygdala/扁桃核(Hodgkinson)
3.Teenbeat Introduction(H.Cow)
4.Teenbeat(Frith/Greaves)
5.Extract from "With the Yellow Half-Moon and Blue Star"/"黄色い半月と青い星とともに"より抜粋(Frith)
6.Teenbeat Reprise(Frith)
7.The Tenth Chaffibch/十羽目のあとり
8.Nine Funerals of the Citizen King/市民の王の九つの葬式(Hodgkinson)
それにしても、カウの日本語タイトルのセンスというのは・・・
Personel
Geoff Leight: Saxes,Flute,Clarinet,Recorder,Voice
Tim Hodgkinson: Organ,Piano,Alto sax,Clarinet,Voice
Hohn Greavs: Bass,Piano,Whistle,Voice
Fred Frith: Guiter,Violin,Viola,Piano,Voice
Chris Cutler: Drums,Toys, Piano, Whistle,Voice
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さて、ヘンリー・カウの道も最終回なので、まとめにかえて、ヘンリーカウ入門者に送るアルバム一口メモ。
Leg end:
とにかく初々しいヘンリーカウ。カウの原点がここにあります。おすすめ。
Unrest:
なんといっても名曲Ruins。ヘンリー・カウらしいアルバムだと思います。
In Praise of Learning:
ダグマー・クラウゼのボーカルが素晴らしい。いちばん分かりやすいヘンリー・カウ。
Concerts:
ダグマー・クラウゼの参加したRuinsは、スタジオ版とまた違った味があります。
初心者向き(Disk1)からマニア向き(Disk2)まで、ナガーく楽しむ事ができます。
Western Culture:
「なに、こいつら!?」度が最高。頭の中、かき混ぜられます。
ということで、おすすめは2枚組のConcerts・・・かな?
どれも、はまると味が出るのですが、それぞれ個性的だから、なかなかお薦めしにくいバンドです。
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とにかくこのあたりはわかりづらいです。
それこそ頭の中ぐしゃぐしゃになっちゃう。
わらえました!
お薦めしにくいバンド!・・・NICEです!
どうぞ、どうぞ。
原則的にオープンにしたページは、リンクフリーです。
> お薦めしにくいバンド!・・・NICEです!
紹介しといて、お薦めしにくい、もあったもんじゃないのですが、好き嫌いの別れる音だと思います。
クリス・カトラーのドラムはいいですよね。
> デスパレイトストレイツでのクリスカトラーのドラムに
私も似たようなものです。
ダグマー・クラウゼの突き抜ける声と、カトラーの硬質な(というイメージあります)ドラムが気に入りました。
ヘンリーカウの本当の入門はデスパレイトストレイツのような気がしています。
あまりに好きなバンドで、私の人生にも小さく関わってきたバンドでもあるので、論評がかえって難しいです。
ということでここは「逃げ」の一手の唯物的なお話をひとつ。
このアルバムのCD、レコードのすべてのバージョンを聴いたわけではないのですが、私にとって謎があります。
ヴァージン盤にはUK盤とUS盤がありますが、UK盤の表ジャケットには靴下だけ、US盤のジャケットには左上に「HENRY COW」とバンド名が入っています。ともに初回は白黒のロジャー・ディーンデザインによるレーベルですが、US盤の方はUK盤と音が微妙に違うように思います。UK盤の素直さ(にしても少しヘンではあるのですが)に比べ、US盤はコンプレッサーを強度にかけてあるようなヘンな音で中域が引っ込み低域、高域が耳に付く音です、アメリカで売るために処理を施したのでしょうか?UK盤はそんなに売れていないレコードとは思いますが、マトリクスが二種類あります。ひとつはマシンタイピングのもので、EMI系のレコードによく見るもの、もうひとつは手書きのものです。私の経験上、手書きのものが一般的に多く流通していて、マシンタイピングのものはあまりみかけません。このようにマシンタイピングのものと手書きのものが両方存在するものでは、ヴァージンではかの「チューブラー・ベルズ」がそうです。一般的にはコレクターの間ではマシンタイピングが初期プレス、手書きが少し後のプレスと認識されているようです。ヴァージン・レコードは当時はインディペンデント系でしたので、カッティングは外注だったと思われます。想像すると、カッティングスタジオを持たないヴァージンは(意外にも?)初期ロットを出荷し終わって、再入荷依頼を受けたヴァージンはなぜかEMI系カッティングに頼まず、独立系(?)のカッティングスタジオに少量再生産用に依頼したといったところでしょうか。
ファーストでの「ヘンな音」に対し、セカンド「UNREST」は普通にイイ音で録られています。「IN PRAISE OF LEARNING」ではまた「ヘンな音」になってしまいますが... クリス・カトラー氏自身は音質にはうるさい人だったので、 今から考えるとこの二枚についてどう考えるか尋ねてみたいようにも思います。
Legend(ちなみに、レコメンから出ているCDのアルバムタイトルは「Leg End」となっていますが、VirginのLPは「Legend」でしたよね?)の解説によると・・・CD化のいきさつはいろいろ書いてありますがLP時代の話は何も触れられていません。
さすがレコヒロさん、詳しいですね。
> クリス・カトラー氏自身は音質にはうるさい人だったので
Virginとカウの確執は、こういうことも原因の一つなのかもしれないですね。