1. Out - Bloody - Rageous
2. Facelift
3. Esthers Nosejob
a. Pig
b. Orange Skin Food
c. A Door Opens and Closes
d. Pigling Bland
e. 10:30 Returns to the Bedroom
Mike Ratledge: keyboards
Hugh Hopper: bass
Elton Dean: alto sax / saxello
Robert Wyatt: drums / Voice
デビッド・アレン、ケビン・エアーズのいたころを「神話」の時代とするならば、Volume1と2はその「神話」を説き広める広報活動のようなものでした。やがて「神話の時代」から時を経るに従い、「人の国」としてのソフトマシーン作りが始まります。ソフトマシーンが新しい国として選んだのは、ジャズロックという国でした。3rdアルバムは、そんな新しい国造りの宣言ととらえることができると思います。
さて、Live at the Promsですが、形の上では以前紹介したTurns on Paradisoにエルトン・ディーンが加わっただけ。しかも録音が1年しか違わないのですが、内容は全く違っています。Turns on Paradisoが「神話」の説法であるのに対して、こちらは全くのジャズロック、新しい国造り宣言となっています。
収録曲を見ると1曲目と2曲目が3rdからのもの。3曲目はParadisoにも収録されているが、エルトン・ディーンがリードをとることによって見事なジャズロックに変身しています。
2曲目Faceliftも3rdアルバムに収録されたものよりも力強く、明快な演奏になっていると思います。3rdに比べてホーンセクションが抜けた分、エルトン・ディーンが大活躍。ヒュー・ホッパー、マイク・ラトリッジのミニマルミュージック的な繰り返しリズムの上に、サックスのフリーブローが乗っかるという、その後5thまで続くソフトマシーンのフォーマットが、ここで既にでき上がっていたことがわかります。
このアルバム、ほとんど文句の無いできなのですが、若干の不満もあります。録音の都合か、意図的なものかわからないのですが、ロバート・ワイアットのボーカル(というよりボイス・パフォーマンス)がほとんど聞き取れず、不思議な空白の時間帯ができていたりします。そのため、せっかく緊張感のある演奏が、間延びしたものに聞こえてしまいます。
とはいえ、3rd,4thではゲストミュージシャンが参加と5thの録音にはロバート・ワイアットが参加していないということもあり、この4人のメンバーのみで演奏されたソフトマシーン。非常にすっきりとしたアレンジで、かつ力強い。3rdアルバムがどちらかというと実験的であったがゆえに退屈と感じた方はこちらのライブをお薦めしたいです。
この時期のオリジナルアルバム
3rd: 1970
4th: 1971
5th: 1972
3rd:
LP2枚組の実験的な大作。前作までのサイケデリックポップロック的な部分を残しつつ、全体的にジャズロックに向かって歩み出した記念碑的な1枚。マイク・ラトリッジという人、音楽的な背景がどのようなものなのか詳しくないのですが、ミニマルミュージックのような短いフレーズの繰り返しが好きなようです。ヒュー・ホッパーのベースもリフの繰り返しが多いので、この二人のバッキングを聴いていると、現代音楽のような雰囲気があります。ソフトマシーンが、ちょっと知的なジャズロックに聞こえるのは、このふたりのセンスに因るものではないでしょうか。
この3rdアルバム、世間的にはソフトマシーンの傑作アルバムと言われているようですが、前述したように実験的な部分が大きくて、ちょっと退屈になることがあります。実験が全て成功しているわけでも無くて、LP2枚組大作というボリューム全体が一つにまとまっているとは言い難いと思います。まだバラバラ部分も残っていますが、ソフトマシーンというバンドの性格付けができ上がったということで、新たな一歩を歩み出したアルバムというルと思います。
実はソフトマシーンにとって、この「新たな一歩」というのが大きな意味を持っています。どのアルバムを聴いても、前作と似ていて、必ず違った部分が付け加えられています。同じところに立ち止まらず、常に移動し続けていること、それがソフトマシーン。そこに留まるバンドメンバーも、追いかけるファンも大変です。
1. Facelift
2. Slightly all the Time
3. Moon in June
4. Out-Bloody-Rageous
Mike Ratledge : organ and piano
Hugh Hopper : Bass guitar
Robert Wyatt : Drums and vocal
Elton Dean : Sax and saxello
Rab Spall : Violin
Lyn Dobson : Flute ans soprano sax
Nick Evans : Trombone
Jimmy Hastings : Flute and bass clarinet
4th:
1曲目Teethなんて、カッコいいです。ゲストミュージシャンが沢山参加しているので、全体的にビッグバンド的な音作りになっています。正式なメンバーとなったエルトン・ディーンの影響が強くなったのか、フリージャズ的な要素も強く出ています。
しかし、このアルバム聴くたびになんとなくもの悲しい気分になります。ジャケットの写真のせいでしょうか。ロバート・ワイアットが、脱退してしまったせいでしょうか。
1. Teeth
2. Kings and Queens
3. Fletchers Blemish
4. Virtually Part 1
5. Virtually Part 2
6. Virtually Part 3
7.Virtually Part 4
Hugh Hopper - Bass guitar
Mike Ratledge - Organ and piano
Robert Wyatt - Drums
Elton Dean - Saxophone and saxello
Roy Babbington - Double bass
Mark Charig - Cornet
Nick Evans - Trombone
Jimmy Hastings - Alto flute and bass clarinet
5th:
黒字に黒文字で大きく5と書かれたジャケット。一見真っ黒けのこのジャケットに惹かれて最初に買ったソフトマシーンがこのアルバムでした。
ドラムはロバート・ワイアットに代わってA面はフィル・ハワード、B面はジョン・マーシャルという変則的な組み合わせ。しかも、録音直後にエルトン・ディーンが脱退するという、バンドとしては最低(?)の状態。にも関わらず、こういうときに傑作が生まれるのが世の常。このアルバムも、新しい国造りを薦めてきたエルトン・ディーン/ヒュー・ホッパー帝国の完成形といって良いでしょう。
この時期、ジャズロックバンドの目指したものは、電化マイルスバンドだったのだと思います。マイルス・デイビスがビッチズ・ブリュー以降の電化の中で、よりファンキーなもの近づいていったのに比べ、ソフトマシーンはよりクールな物を追い続けていたのではないでしょぅか。5thでは、エルトン・ディーンのフリーブロウが前面に出てきていますが、幻想的でよりクールな世界を作り上げています。ソフトマシーンが辿り着いた幽玄の世界。何物にも束縛されないユートピア音楽であることは間違いありません。
1. All White
2. Drop
3. MC
4. As If
5. LBO
6. Pigling Bland
7. Bone
Elton Dean - Alto sax, saxello, electric piano
Hugh Hopper - Bass guitar
Mike Ratledge - Organ, electric piano
Phil Howard - Drums
John Marshall - Drums
Roy Babbington - Double bass
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参考: SOFT MACHINE
その1
その3