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タイムマシンをつくろう! / ポール・デイヴス

2006-01-29 06:03:44 | 最近読んだ本
著者のポール・デイヴスはオーストラリアのマッコリー大学の自然哲学の教授だそうです。自然哲学といっても物理学者。理論物理の先生のようで、一般向けの物理学書も何冊も書いているそうです。

本書では作ろうとしているタイムマシンは、ドラえもんのタイムマシンのように時間を自由に行き来できるものではなくて、宇宙の中に、たとえば「入り口出口で100年の時間差を持ったトンネル」を作るというものです。マシンというイメージではなくて、構造ですね。宇宙の土木工事。タイムマシンの作り方の説明でまるまる1章を使っています。地球規模の大金持ちのスポンサーがつけば、小さなタイムマシンを作る事もできるかもしれません(ほんとうか?)。

他の章では、時間とはなんぞや? 時間の中を移動するにはどうしたら良いか? 何故タイムマシンの研究を行うのか? ということを説明しています。タイムマシンについてのQ&Aのなから「なぜタイムトラベルを研究するのか?」という質問がありました。この質問の箇所を読んでいるのを、横から見ていた子どもが、そのまんま「なぜタイムトラベルなんて必要なの?」と聞いてきました。「アインシュタイン(のように、宇宙のなりたちを理論的に研究している人たちが居るでしょ。そういう人たちが、理論を重ねていって、タイムマシンを作る事ができるか? もしできるとしたら、今までの理論におかしな事が起きないかを調べなくては成らないし、もしできないとしたらできない理由をちゃんと考えなくては行けない。そうやって、今ある理論が正しいものかどうなのかを考える必要があるんだよ」と説明したら「あ、そうか」と納得していました。
つまり、そういう本です。

最初「パラドクス」と「自己矛盾」の区別がつかなかったのですが、論理的な矛盾が自己完結的なもの(つまり自己矛盾)であるのならば、理論全体としてはたいした問題ではない。タイムマシンの出現によって、逆説的な二つの結論のどちらもが正しいようなパラドクスを起こすようなことがあれば、理論上の危機となる。ホーキングが提唱している「時間順序保護仮説」というものがあるそうです。自然の中に存在する何らかの作用により、時間の順序は乱す事ができないとする仮説。パラドクスが起きない(起きていない)ことを考えると、この仮説に頼らざるを得ないのかもしれない。が、しかし、それで全てが説明されて「タイムトラベルはできない」と科学的に結論付けられるのもつまらないですね。つまらないけど、何によって時間の流れが保護されているのかも気になるところです。「時間順序保護仮説」については、多いに議論してもらいたいと思います。