経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

民主党政権は左翼・ファッショ政権か?(2)

2009-10-02 23:44:05 | Weblog
  民主党内閣は左翼・ファッショ政権か?(2)
 
 前のBlogで主な主張はできたと思う。補足する形で意見を追加する。
1 民主党政権は首相の鳩山氏と幹事長の小沢氏の二頭政権と言われる。この組み合わせはある意味で絶妙だ。宇宙人(空疎な理念に走りやすいことになる)鳩山首相と壊し屋(政策の目標はなんでもいい、ただ権力の行使のみが目的となる)小沢氏の組み合わせだ。また鳩山内閣の17人の閣僚のうち7人が連合傘下にある。(注1)加えて市民運動出身の菅氏、さらに連立与党の社民党の存在、日教組出身の参院実力者、このような布陣は旧社会党の亡霊が蘇ったに等しい。宇宙人と壊し屋のコンビを取り巻く重厚な左翼的人事配置。コンビが迷走暴走しやすい分、周囲は彼ら二人を容易に操作できるだろう。ここにこの政権の危うさがある。深刻な危うさだ。
2 社民党の存在に着目しよう。日本の社民党は特異な存在だ。ドイツの社民党などと同列には論じられない。そもそも細川政権から村山政権への移行において、旧社会党のメンバ-はほとんど現在の民主党に移った。残った連中が土井隆子氏を擁して社民党を結成した。その過程で幹部は女性になった。率直に言えば社民党はフェミニストの政党だ。
フェミニズムとは何か?フェミニズムは究極的な共産主義だ。共産主義は財産の平等を主張した。その結果は惨憺たるものだった。フェミニズムは性の平等、性差の無差別否定を主張する。(注2)これは婚姻秩序の否定であり、その影響はかっての共産主義の比ではあるまい。繰り返すがフェミニズムは究極的な共産主義だ。社民党の本質はそこにある。そしてその政策は一見して優しそうに見える。現体制下に抑圧されているとかの、女性の権利云々と言えば、女性そして民衆に優しく、彼らの味方のように聞こえる。しかし社民党が性差の無差別否定を介して、社会の根本的な転覆を図っているという事は忘れるべきではない。民主党はこの社民党と友党関係にある。民主党は社民党が表にかもし出す、雰囲気を利用して、それを自らの人気の中に取り込んだ。その点では宇宙人鳩山首相は適役だった。いずれにせよ民主党は社民党と意図的に、つまり単なる数合わせという以上の意味で連携している。社民党の得票数は300万、民主党の広告塔としてなら充分に意味のある数だ。
3 亀井静香氏率いる国民新党も同様だ。この党は郵政民営化に頑強に反対する。国営化を目指すという事は大きな政府を志向する事だ。ここでもこの党は民主党と一致しうるし、民主党の広告塔になりうる。
4 宇宙人と壊し屋の提携、そして彼ら二人を取り巻く重厚な左翼包囲陣。鳩山小沢の両氏が共産主義者だとは思わない。しかし左翼・共産主義者には共通のやり口がある。歴史に範を求めてみよう。ロシア革命でボルシェビキ(共産党)は単独で政権を取ったのではない。始めはむしろ少数派であった。他党、特に社会革命党などと提携して政権を取り、その後に分派活動をし、他党を駆逐するのみか、粛清してしまった。中国共産党もしかりだ。日中戦争は、主として日本軍と蒋介石の国民党軍との間で戦われた。(注3)共産党は、日本が連合軍に降伏し、国民党軍が弱体化した隙に付け入り、国民党を駆逐して政権を取った。鳩山小沢のコンビは共産主義者にとっては最も利用しやすい組み合わせだ。
5 前blogで民主党政権のやり方はトップダウン方式が目立つと言った。亀井氏の中小企業の借金帳消し云々、また厚労省の派遣社員の禁止、などがその典型だ。(注4)中小企業が困っている事は解る。また派遣社員という制度が必ずしも良いとはいえない。しかし金融制度にせよ雇用慣習にせよ、それを上から見て駄目と判断し、一方的に即中止というのは、権力の過剰行使だ。現実の制度慣行はなるべく現実の推移に任せ、部分的にのみ補修する。それが穏健な政治というものだ。権力により、民間の慣行を一気に変更する、これは独裁であり、ファッショだ。なぜ独裁がいけないのか?全体を見回し、絶対正しい判断をする、どこかの国の将軍様のような、人間はいない、と謙虚に思うからだ。上から見て正しい判断を絶対できると思う事は、それ以上に間違った判断を醸成する。だから人間は不必要に介入せず、人の手の触れえない部分は神の手に任せる、という謙虚さが必要なのだ。神様の手も当てにならないことも多多あるが、それは仕方がない。このような態度を真のリベラリズムと言う。
6 財界への苦言も言っておこう。円高円高とあまり騒ぎなさるな。円高は仕方がない。それだけ日本の経済力が強いという事だ。円高のメリットを充分生かせばいいのだ。円高になれば、輸出も輸出産業の利益も落ちる。同時に燃料や食料の値は下がり、生活はしやすくなる。生計費が下がれば、賃金も上げなくていい。円高のうちに必要なものを輸入すべきだ。知的財産(特許)など、日本でもまだ足りないものは、研究者や専門家という人的資本といっしょに、今のうちに輸入すればいいのだ。M and Aなどもどんどんすればいい。 どうしてもしんどいのなら、政府は輸出奨励金を出すか、法人税の減税に踏み切ればいい。私は5年以内にドル=70円までには行くと思う。
7 中国の経済をあまり過大評価しないことだ。中国経済の発展は外国資本と外国技術に支えられている。中国が提供したのは労働力だけ。だから中国経済は外資とそれが伴う技術により、労働力を賃金に変換して肥った。さすがにマルクス主義の国ではある。これで真の経済発展があるのかと疑わざるを得ないが、私見では中国経済には重大な弱点がある。労働が資本や技術と有効に結合しない。従って産業の有機的構成の度合が低くなる。それをあえて結合させるためには政府による強圧が必要になる。なお日本の技術貿易(特許収入)は年間約1兆円前後だが、知的財産の被害はほぼ同額だ。加害者の圧倒的大部分が中国なのだ。
(注1)
労働組合は必要だ。しかし労組があまり働きたくない人達の擁護機関である事も事実だ。だからパイを大きくする事より、パイの分配に与ろうとする。目下世界経済は危機にある。その中でゆっくりパイを切っている閑があるのかどうかが、私の深刻な疑問だ。
(注2)
前世紀ソ連邦が衰退し、世界的に左翼勢力が後退した。労働者はマルクスが言うような、失うものは鉄鎖以外にはないような存在ではなくなった。ここで左翼の主張の力点は、労働者から次の三つのものに移った。緑と平和と女性である。環境保護は大切な事だ。しかし産業の発展を止めるわけには行かない。平和も大事だ。しかし自国が他国に侵されても平和平和と言うわけにはゆかない。女性の解放?何をどこまで解放するのか?フェミニズムの問題は重要なので、多分後に体系的に考察するであろう。
(注3)
国民党軍と日本軍の戦いは10年近く続く。しかし最初の短い期間を除くと、激しい戦闘はほとんど無い。上海事変、南京攻略、徐州作戦、そして武漢攻略くらいが主な戦闘だった。後はゲリラ討伐戦だけだった。それも中国共産党が言うように派手なものではなかった。なお中国が執拗に言う、南京事件は、虚構である。
(注4)
加えて新政権は政策の連続性を否定しすぎる。