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(元ネタ)中村猫整体院
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今日は、最近読んだマンガの感想です。

黒博物館 ゴースト&レディ 上

黒博物館 ゴースト&レディ 下
最近、あんまりマンガも読んでいない私ですが、それでも「この人の描いたのの新刊が出ていたら、問答無用ですぐレジに持っていく」という作家さん、そのお1人が、この作者「藤田和日朗」さんですな。
代表作は「うしおととら」「からくりサーカス」等々。
どの作品も大好きです。
ジャンルとしては、少年漫画で、しかも直球的な主人公と直球的な物語に一見感じられますが、なんかそれだけ、じゃないんだよねぇ、この人の。
直球、っていうのは、主人公がわりと正義感の強い直情型でワンパク型で誰にでも好かれそう、っていう感じで(あ、でもからくりの勝はそうでもないか、でもこれ勝と鳴海としろがねのトリプルヒーローっていう感じの話だからなぁ)そしてテーマも「努力、友情、勝利」的な感じが結果だけ見ればしない気もないんだけど、読んでる最中はそんな予定調和的なラストを全く感じさせられず、主人公たちの危機に一緒におののき、一緒に頑張ろうっていう気になって、ラストは爽やかな感じ・・・に浸るんだよねぇ。
そういう展開っていうのがわかっていながら、引き込まれるっていうのか、そうなるのが予定調和では決してなくて、主人公たちの努力と心意気、諦めない気持ち、そういった「正」のエネルギーが満ち溢れている感じの作品なんですな。
そして、それがイヤミでもわざとらしくもない、っていう。
で、この「黒博物館」は、少年誌ではなくてもう少し大人向け連載だったらしいけど、私はいきなり一気にまとめて読みましたが・・・
あぁ、まとめて読んで良かったよぉ~!、と思う(笑)
これが、途中までだったら、それこそ「待てねーよっ!!!」っていう感じ^_^;
黒博物館とは、ロンドン警視庁の犯罪資料館で、ゴースト&レディのゴーストは17世紀か18世紀あたりらしい時代に「決闘請負人」というやさぐれたその日暮らし的な仕事をしていた若者がとある劇場で、とある事情で亡くなって、そのままその劇場にゴースト、幽霊となって居座っている、そしてレディっていうのが、なんとフロレンス・ナイチンゲール!!!なんですよ!
19世紀にクリミアの天使、ランプの淑女、という名前で有名になりました。
看護師が「白衣の天使」って形容されたのは(今はあんまり聞かないけど)このナイチンゲールのイメージがあるんだろうなぁ、と思うくらいです。
でも、実際のナイチンゲールはかなり堅物の理論家っていう感じの人だったようでございますが。
以下、ちょっとどっかにネタバレ入っちゃうかもしれないので、まだ未読で知りたくない人は読むのを要注意!です。
ナイチンゲールは、元々は良家の子女であり、社交界なんかで暮らすような世界の女性でありました。
が、ある日、慈善事業の一環として(良家の子女はそーいうのも教養的に求められたんだそうな)貧しい人々が暮らす困窮した病院や地域を、お供付きで視察したそうな。
普通の良家の子女だったら「あらまぁ、可哀想に・・・私のお金を使って頂戴。」っていうことで、少し寄付して、あとは心の中で「あー、臭かったわねぇ。」とかと思いながら再びそこを訪れる事はない、っていうのだけど、彼女は違った。
彼女は、「私の一生をかけて行うべき仕事はこれである!」と、天から神からの啓示をその、困窮する人々の健康回復のために一生を捧げる事を決意してしまい、看護師になる事を決意します。
看護師は、当時、まだまだ下等な下賤な女性が片手間に行う雑用的な扱いで、良家の子女がそれを仕事にしたいなんて言語道断!
と、彼女と両親との間には、大きな確執が生じてしまいます。
神から託された自分の使命が行えない、わかってもらえない事で、絶望にかられたナイチンゲールは、ある日、その幽霊のいる劇場に足を踏み入れます。
彼女は、何故か元々幽霊とかが見えるんだそうな。
で、幽霊に会って頼むのです「私を殺して下さい」と・・・
っていうのは、彼女はクリスチャンなので自殺は神に背く行為なので、出来ない。
他人に殺してもらおうとしたら、その殺した相手が地獄に落ちてしまうので、出来ない。
そこで、もうとうに死んでこの世で神の恩恵からは無縁にしている幽霊だったら、殺してもらってもOKでは?っていう事で、幽霊に頼みにきたというわけなんですな~。
で、ナイチンゲールには普通の人にはみえない幽霊が見えるのですが、それ以外に「悪霊」というか人々の悪意や殺意や敵意が形になった「生霊」というものも見えるんですな。
そして、ナイチンゲール自身の頭上にもこの生霊がいるんですが、その生霊が彼女自身を切り刻んで傷つけているんですね~。
普通、人間の誰もが持っているこの「生霊」は、敵対したり、憎らしかったり、そういう相手、その相手の生霊を知らず知らずのうちに攻撃をあたえ、それが本体である人間の心理的ダメージに換算されている、っていう感じの設定らしい。
このあたりは、もしかして読み違いかもしれんが・・・
ナイチンゲールの生霊が、本体を攻撃しているっていうのは、彼女の意思=生霊となっているため、の意思に従えずに両親や周囲の見識に逆らえない自分自身の不甲斐なさ、それが許せずに自分を傷つけている、という事なのだと思うんですな~。
この辺の設定がうまいなぁ~と、本当に思った。
で、彼女に「殺してくれ」と頼まれた幽霊のグレイは、彼女のその面白さっていうか何かを感じて、「彼女が本当に絶望した時に殺してやるから、それまで付きまとう」という約束で彼女と行動を共にする事に。
で、これで「死ねる」というお墨付き(?)を得た彼女は、ダメ元というか、完全に全力で、本気をさらけ出して両親を説得するんですね。
で、両親の生霊、「彼女を認めないぞ!許さないぞ!」という生霊に対し、ついつい幽霊グレイは攻撃してしまって、それを一時消してしまうのだ。
何故か幽霊の攻撃は生霊に有効で、生霊を殺されたというか消された人間は、一時的にふわ~と腑抜け状態になって、要するに精神的に負けた、折れた、という状況になるみたいだね。
で、両親の生霊が倒された=ナイチンゲールの主張が通った、という事で、彼女の道は開けたわけだが、まだまだ苦難の連続・・・
で、「大変だし、そうそうに絶望して死にたくなるだろー」と、タカをくっていた幽霊は、かなり長期間に渡り、彼女の頑張りを見守るハメになってしまう、という感じ。
ナイチンゲールの生涯は伝記としてもかなり有名だし、それなりに知ってはいましたが、こういった「幽霊」とか「生霊」とか、いかにも藤田ワールド的な異世界的な設定と、現実の、歴史上の有名人ナイチンゲールの生涯が、ほんと違和感なく溶け込んで語られているのがお見事!!です。
ナイチンゲールはか弱い女性ではあっても、その意思は「うしおととら」のうしおだっり真由子だったり、からくりサーカスのリーゼだったりとか、いろいろ思い起こされる感じでございましたなぁ。
そして、「生霊」の設定がとても面白い!と思うのですが、後半、それが薄れてくる、というか幽霊であるグレイとそのライバルであるデオン、これがそういった異世界的パートを担い、ナイチンゲールは悪霊ではなく、官僚主義や事勿れ主義や、そういった無理解や偏見と現実的な戦いを繰り広げるんですな。
で、最初は読みながらせっかくの面白い設定である「生霊」、これをもっと全面に出せばいいのに後半も、って思ったんですが・・・
まぁ、それもあまり気にならないくらいの全体的な物語の勢い、面白さはあったのではありますが。
でも、最後の最後で、分かりましたよ!何故、後半に生霊の存在を何気なくさりげなく「薄く」していったのか?
気にならなくしていったのか?
全てはラストのナイチンゲールの行動に結びつけて、その時に一大爆発!させるためだったんですね~、上手いっ!!!
まさしく、パチパチパチパチと、スタオベしたくなりそうな物語でしたよっ!!
うーん、やはりこの人のマンガは素晴らしいですねっ!!
余談ですが、この「生霊」の設定、私自身でもすごく共感を個人的に感じるところがありましたよ。
どうも相性が悪い、というか私が一方的にそう思ってるのかは不明ですが、どうもぎくしゃくしている相手がいまして、私は夢の中でもよくその人と会ったりとか話したりして、いろいろなシチュエーションがあってもいつもなんか「気まずい」ていうか重い雰囲気、いや~な感じになるんですね、夢の中なのに。
また、そーいう夢、その人がかなり高頻度で夢に出てくるんですよ。
という事は、かなり自分の無意識下でもその人との関係が問題視されている、っていう事の現れだと思っておりました。
で、先日、ついに(?)結構その相手と本格的にぶつかって、私も今までは「大人げないからなぁ・・・」と思い、黙っていた思うだけにしていたその気持ちを直接ぶつけました(まぁ、かなり弱くでございますが・・・)
このマンガでいえば、初めて自分の生霊で相手の生霊に反撃してみた!っていう感じですね!
そしたら、相手は「あなたがそう思っているのなら、これからはそういう方法は止めよう」と言ってくれたんですな~。
いや、本当にその相手が悪気があったとか悪意があった、というわけじゃなくて、誰もがそれなりに使っちゃいそうな心理的圧迫を私に特に与えていた、っていう事なんだけど、「そーいうのは私は好きじゃない」とは今まで言えなかったんだよね、私の方に非があるのもわかってたし。
私にとってはかなり心理的な圧迫だったんだけど、それを与えている本人からすると、全然そんな気は今までなくて普段的な行動であったんだとは思うんだけどね~。
まあ、このあたりはなんんつか私がそれを感じてしまう、わかってしまうっていうのが悪いっていうのもあるけどね。
で、話は長くなったが、その生霊で反撃を食らわして(爆)から、私の夢にはその人は出てこなくなったんですよ!
いやぁ、イド(=無意識)から、その人の影がほぼ消えつつある、っていう事なのかもしれません。
なので、このマンガを読んでただの面白い設定以上に、なんか納得しちゃえたなぁ~というこのマンがでございました。