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星組中日公演「愛するには短すぎる」

2011-02-26 01:19:57 | TAKARAZUKA
名古屋、中日劇場での星組公演
ミュージカル「愛するには短すぎる」
原案:小林公平
脚本・演出: 正塚晴彦

これは、湖月わたるさんの退団公演の再演もの。
亜蘭けいさんが親友の劇作家の卵、アンソニーを、白羽ゆりさんがヒロイン、バーバラを演じたのが2006年。
DVDで観ていますが、さよなら公演ということもあり、演者の持ち味もあり、しっとりとした大人なスト―リ-という印象でしたが、今回のちえてるねねトリオでの再演はまた違った味わいが・・・。

ストーリーをひろっていきますので、ネタばれがお嫌な方はここまでで^^

大富豪の養子、フレッド・ウォーバスク(柚希 礼音)と親友アンソニー・ランドルフ(凰稀かなめ)は、ロンドン留学からニューヨークへ帰る船旅の途中。
豪華客船での4日間、フレッドは偶然、幼馴染のバーバラ・オブライエン(夢咲ねね)と再会し、恋に落ちる。
船のアトラクション・ダンサーであるバーバラにアンソニーも関心を抱いていたが、彼はふたりの真剣な思いを察して見守る側にまわる。
秘書(花愛瑞穂)と浮気をしながら妻(万里柚美)に頭の上がらないスノードン卿(英真なおき)、バーバラに横恋慕するバンド・マネージャー、フランク・ペンドルトン(夢乃聖夏)、突如勃発する連続宝石泥棒事件など、様々な出来事に矢のように過ぎゆく日々。
お互いの気持ちを確かめ、深めあいながら、養父の決めた婚約者と仕事を捨てられない立場のフレッドと、母親の介護のために女優の夢を捨てて故郷に帰るバーバラはそれが船の上だけの終わりのある恋だと知っている・・・という設定。

主役3人がまずとても良い!

まずはちえてる

最初、親友二人が船室でワインを傾けながら、過ぎ去った青春の日々を歌う「バイバイUK」
ここ、二人で腕を組んだ状態でテーブルに長い脚を投げ出して杯を傾ける、といったシンクロした振りがあるのですが、もう、無茶苦茶合っていて楽しい!
初演のお二人は体格差がありすぎて、このシーン、大変だったのではないかしら?
ちえてるだと身長もほぼ同じで年も近いので、親密な雰囲気が一層盛り上がります。
柚希さんのダークヘア-の短髪に、リアル男子な上品なグレーの三つ揃えのスーツ、濃いブルーのシャツにアイボリーリネンのスーツ、ネイビーブルーのダブルのス-ツにアスコットタイ、といった、育ちの良さそうなお坊ちゃんルックが新鮮。
かつ、とてもキュートで魅力的でした。大人な落ち着きが勝っていたわたるさんよりも、バイタリティのあるエリートなのに、純粋でおっとりした部分もあるフレッドは若さゆえの暴走もまたカワイイ。
対するアンソニー、かなめ姫は金髪にしているので、黄色などカラフルなスーツがさほど浮かず、フレッドとのコントラストもキレイ。とうこさん同様、オープニングで船の紗幕の向こうから、現れて、開演の挨拶にかぶるように歌い始める・・・というので、ドキドキしてしまいましたが、今回歌は本当に安定していて、柚希さんと掛け合いのように歌うシ-ンも声量で負けることもなく、その成長ぶりに2年弱のの歳月を思ったことでした・・・。とはいえ、亜蘭けいさんの歌はちょっとレベルが違うので、この語りはファン目線ということでご容赦ください^^;
頭の回転が速く、洞察力もある劇作家志望のアンソニーを基本攻めの姿勢で軽妙に演じつつ、ところどころでフレッドに甘えるところなど、普段の二人が見え隠れしてまた乙なもの。
正塚先生には、二人の関係は素でやってください、との指示があったそうですが本当に自然で良かったです!
「アンフェア」
これもまた最高!
バーバラへの恋心をアンソニーに指摘されてうろたえるフレッドがかわいい。
でも、婚約者のナンシーを持ち出されて、フェアじゃないと責めるフレッド、恋なんてもともとアンフェア♪
16日の昼夜、17日の夜、そして24日の千秋楽を観ましたが、17日の夜の二人のハモリが完璧でした。
ちょうどこの日の昼夜、カメラが入っていたそうなので、DVDはここかしら?楽しみです^^
ふたりで、ウェルカムパーティに出るときも、最後、舞台上の盆がまわってそこから降りて掃けるのに、二人で顔を見合わせてにこっと笑いあって肩を組んで一緒に飛び降りるところなど、本当に仲良さそうで可愛くて見逃せません

そしててるねね

ウェルカム・パーティでのパフォーマンスで真っ赤なロングドレスで艶やかに踊るバーバラに目を付け「いいね、あの子」とフレッドに耳打ちするアンソニー。
フランクに迫られたバーバラを救い、話の流れで6才の頃将来を誓い合った幼馴染だと気づき盛り上がったフレッドが招待したランチの席で、猛アタックするアンソニー。
当然フレッドは必死で遮ろうとするのですが・・・。
ここでフレッドのジェラシーを指摘する執事ブランドン(未沙のえる)の台詞まわしが絶妙!
盗難事件の調査で中座させられたバーバラをアリバイ証明で救いに行くフレッド。
そこで借金を持ち出して横やりを入れるフランクに対し、きざなまでの男前っぷりで小切手を切ってその場を収めるアンソニーの演技が緊迫感とともに笑いを誘ってワクワクさせられます。
その上に、前夜バーバラに援助を申し出て断られたフレッドが、アンソニーにしゃしゃりでるなと制止したのに、バーバラがお礼をいってきょとんとするところもおかしくって・・・。

その夜の仮装パーティで、バーバラを見つけて突進するドラキュラ伯爵の扮装のアンソニーが可愛い。
ここで、かなめ姫とねねちゃんのダンス・・・となるのですが、この二人、本当に並びがきれい。
二人ともスラリと長身、小顔で、同じ血筋を感じさせますね。従兄のお兄さんを慕う妹のような存在、という感じ。
可愛くてたまらない風に甘い笑顔でねねちゃんを見つめるかなめ姫。ねねちゃんも愛らしい笑顔で応えて・・・いや~目のお正月ですね、ここ。
本公演では白華れみちゃんとのカップリングが多かった凰稀さんですが、大人顔のれみちゃんより、更に長身でソフトな身体のラインと可愛らしい顔立ちのねねちゃんの方がより似合うみたい。
いつか、TOPになって娘役さんとコンビを組む時には是非夢咲ねねちゃんのような人にお願いしたいなぁと思うと、今、そういう娘役さんっていないんですよね、タカラヅカに。
そう思うと、ねねちゃんって逸材かも?と突然、わたくしの中で夢咲ねね株急上昇

あと、フレッドを当てもなくデッキで待つバーバラを見かけたアンソニー。
その時には彼はフレッドのバーバラに対する気持ちを確かめているし、察しの良い彼なので、バーバラの気持ちもわかっている。
自分の気持ちは押しかくして「待ってて、呼んでくるよ」と爽やかに言うところも素敵ですが、いいの、というバーバラに自分の本当の気持ちは?と目の奥を見つめて諭すところもまた男前。
「君みたいな人は初めてだ・・参ったな」と語り始めるアンソニーを「言わなくていい」と制するバーバラ。
告白される予感とそれを封じる感じがリアルでちょっとドキドキするところですね。
アンソニー、いいなぁ(極私的目線)
この二人がしっかりと組んで芝居をするところもあまり今までなかったかも・・・ですが、とても良かったと思います。
もっと観たかったなぁ・・・

そしてちえてるねね

3人の並びを堪能できるシーンもしっかりと用意されていて。
愛人秘書との仲を疑う妻の疑惑をそらすため、フレッドに協力を持ちかけるスノードン卿。
断り切れず巻きこまれて、バーバラに誤解されたと思ったフレッド、走ってバーバラを追いかけます。
ここ、ちょっと個人的にツボでした。
ひとり物思いにふけるバーバラのもとに息を切らせて現れるフレッド。
この、「恋心ゆえに走る若い男の子」ってイイですよね。
古くはジェラ―ル・フィリップの「肉体の悪魔」での雨の中恋人のもとに走ってくる場面。濡れて乱れた前髪と長いまつ毛が・・・!
または、「アントワーヌがまた走っているわ」、とかつての恋人たちが窓から見やってホホ。。と笑いあうアントワーヌ・ドワネルもの、永遠の恋する青年を主人公にしたフランソワ・トリュフォーの5部作最後の「逃げ去る恋」などの名場面が蘇ります。

盗難事件を独自に調査するアンソニー。
ドラキュラ伯爵の扮装のまま、怪しい船員を尾行中、逢い引き中の二人に割って入り、自論を説明しながら巻きこみます。
「推理」で、3人がコミカルに歌い踊るシーンが楽しすぎる!
チャーミングで芝居心に溢れた3人が「かもね?」「かもね!」と言いあう様は、この場面終わらないで!と願うほど。

いい加減長いですけど、まだ続きます(笑)

後半、その推理をもとに、事件解決に至る流れを主にアンソニーが、執事のブランドンの助けを借りて、船長らの見守る中牽引していくのですが、その場にいながら二人だけの世界のフレッドとバーバラ。

そう、ラスト、圧巻なのは

ちえねね

部屋のデスクまわりでブランドンが鑑定した指輪をもとに仮説を披露するアンソニー。
ふとソファのあたりにスポットが当たると、バーバラの涙を指でそっとぬぐうフレッド。目と目で見つめ合いながら手を握り合う二人。
「はて、面妖な。なぜあそこだけ明るいのか・・・」とぼけたブランドンの台詞で盆がまわって場面が変わります。

あと一日、が短すぎる。
船上で起こる色々な事件・・のひとつに、新進女優ドリー(早乙女わかば)が有名プロデューサー・マクニ―ルさん(鶴美舞夕)を誘惑して、自殺騒ぎを起こし、交換条件で次回作のヒロインを射止める、という挿話があるのですが、ここで本当は彼女の恋人なのに、売り出すために一計を案じるマネージャー・デイブを麻央侑希くんが。長身小顔で早くから抜擢されてきた若手ですが、スキルが伸びないのと身体を絞れないのとで、あまり評価されていないイメージがありましたが、今回少し痩せた?のと、フェイスシャドーを上手に使った舞台化粧で、確かに見栄えがするなぁと再確認。この調子で頑張って欲しいです。鶴美さんのマクニ―ルは最初っからだまされそうな良い人でした^^;わかばちゃんは美人さんですが、ドリーのローズピンクのミニドレスは陽月華ちゃんのカリッと細身の長身にこそ似合ったのになぁとちょっと思ってしまいました。

そんなこんなに邪魔されつつも、出来るだけ一緒にいよう、と決心する二人。
「いくら覚えても覚え足りない」と見つめ合い、手を取って頬ずりし、涙を流して美しい夕陽を観、
フェアウェル・パーティの花火を観、過ぎゆく二人だけの時間を惜しみながらデッキで過ごす。
そこに、かぶる歌声は意外なボーイ・(?)ソプラノの鶴美さんから始まり、グッとトーンダウンした麻央くん、(ここ、主役の台詞がかぶるので敢えて小さな声で歌っているのかと好意的に解釈したのですが・・違いますか^^;
麻央くん、わかばちゃんのデュエット(がんばれ・汗)そして、最後は夢乃さんで締める、という構成。
ここ、名歌手で歌い継いだらさぞ・・・の盛り上がるシーンなのですが。

ただ、ラスト、夢咲ねねちゃんの本気の涙と柚希さんによる主題歌で、すっかり感動してしまいました。
素晴らしい。前段の楽しさと後半の切なさ・・・。

舞台左右に分かれて上手でブランドンから、コートと帽子、旅行鞄を受け取るフレッド。
下手でダンサー仲間のリリー(妃咲せあら)から同じく一式受け取り、手渡されたハンカチで涙を抑えるバーバラ。
このときのせあらちゃんがやさしく女の子らしい仕草でとても好感度大。
彼女も美人さんなのに、今まではカルメンのミカエラ、愛旅のスーザンなど、あかぬけない婚約者ポジで今一つ魅力を発揮できていなかった感じだったのが、今回の公演では素直に可愛らしい拵えで愛らしい持ち味を発揮できていて良かったと思います。

別れがたい二人。
笑うまで行かない。じゃ、笑わない。
さっと駆けより、フレッドの顔に手を当てちょっと口角を上げさせて走り去るバーバラの背に
「元気で、仕事頑張って、幸せになれ~!!」とちょっと涙声で叫ぶフレッド。

アンソニーが現れて、「ときどき様子を見に行って報告するよ」と。
「純粋な意味で言ってるんだよ」とチャラいようでいて思いやりも。

今生の別れのようでいて、そうでないかも・・・でも、今の立場や人生を投げ捨てることはできない・・・という微妙なバランスとリアルさ。
主役二人の生命力溢れる若さが前面に出る持ち味と相まって、大人の選択をした若者の切なさが伝わる良い芝居でした。

この脚本、改めてとてもよくできている、と思いました。
と、同時にこの劇場のサイズとも丁度合うのかも、とも。
大劇場だとこうはいかなかったかもしれませんし。

正塚先生もこんなバランスの良い小洒落た作品を書いていた頃があったのですね・・・
そろそろ、孤独な情報機関の男を主役に据えた、男だけの芝居を切り上げて次の魅力を見せてほしいかも・・・です。






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