◆2021年3月6日(土)の日本経済新聞の文化欄に紹介された作品名は「クララとお日さま」である。買い物ついでにイオンモールの大型ショッピングにある書店に行くとクララであろうかわいい表紙のその本が新刊として並べられていた。・・・買わない。今後、この路線の内容の本が多く出るだろうなぁ、SFではすでにそのようなのがあったけれどと書いたのは僕のブログの818回(その16)にであった。◆紹介文:「人工知能(AI)を主人公に、最先端の科学が不平等を生み出すジレンマを描く。人はいかに生きるか。魂とは、愛とは何か。<科学が生む残酷な不平等>・・・思考や感情の実験 小説を通じて・・・>」◆詰まるところ、人工知能や遺伝子情報の編集などができるようになって、人様は大きな次元の思考の、感情の、愛情と呼ばれるものなどのすべてにおいて、人という生き物の「思考」が変わって行くかもしれない、と。「・・・人を人たらしめるのは条件とは何か。私たちには魂のようなものがあるか。十分なデータさえあれば同じ性格や個性をもった存在を複製できるのか、そんな問いを改めて投げかける時に、我々は来ているのではないか。」「私は、AIについてはあまりおそれや懸念を感じていません。太陽光がエネルギー源のクララは太陽に全幅の信頼を寄せ、決して希望を棄てようとしない。それは人間と神の関係に似ている。いずれ機械にも宗教に似た感情が芽生えるんじゃないかという想像はとても魅力的で、小説のタイトルを『クララとお日さま』にしたのも、それが理由です。」とカズオ・イシグロは述べる。・・・◆僕のその作品への創作活動の原動力とその悪戦苦闘の思考を推察できる、それはあの時代、学生運動が終息しつつもまだ、かなりくすぶっていた時代に大いに彼の文章に鼓舞されたが、後にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎という作家が、カズオ・イシグロを読めばどう言うだろうかと思った次第。あくまで≪小説の方法≫を追求してきた大江であり、僕のような者が推測できるようなストーリーなど通俗的であると述べるのではないだろうか。そこが又、僕らの知的刺激を受ける理由でもあるのだが。しかし、また結局の落とし所は、世界の文学は娯楽小説とはちがって、もともと、やはり『そちらの方面』(魂のありようや創造されし「人とは何か」)ではないのかと思うのだ。
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