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電脳アニメパス

アニメ及び周辺文化に関する雑感

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #07

2007年12月06日 | アニメ
頭、尻尾、餡子、鯛焼きの全てを胃袋に入れた少女、食い逃げ王・月宮あゆ。彼女が逃げ際に放った一言は人々を鯛焼き屋の屋台へと駆りたてた。
「ボクの宝物? 欲しくてもあげないよ。探さないでよ。ボクの思い出の全てがそこにあるんだもん」
人々は三ツ星の鯛焼き屋を目指し、夢を追い続ける。世はまさに大鯛焼き時代!

(ま、今回の元ネタは言うまでもないでしょう)


 第7話「家出と仔猫の遁走曲~fuga~」

【ストーリー雑感】

 懲りもせず祐一の部屋を襲ってる真琴。「あは」って笑い声はかわいいけど、成功率0は今回も続いて、祐一に待ち伏せされてる始末。持ってた鋏を疑われて紙飛行機を作るって言い放ち、目に留まったノートを切ってるんだけど……それは提出用の宿題だったって話。
 ま、自分でやった宿題ならともかく名雪のを写したって話だから祐一も自業自得ね。真琴も当初の目的とは違ったけど祐一にダメージを与えられて良かったね。

 朝。うれしそうに苺ジャムの歌を歌ってる名雪。お母さんの苺ジャムがあったらご飯3杯は食べられるって……おまいは苺ジャムでご飯を食うんかいっ! それでも謎ジャムは食えないのね。
 そこに秋子さんに起こされてきた真琴。保育所のバイトの初日ってか。働かざるもの食うべからずって言ってる祐一だけど、そういうおまえだって働いてないだろうに。
 で、バイト初日の記念にと秋子さんが出してきたのが例の謎ジャム。名雪と祐一は当然ながら遠慮するけど、知らない真琴は秋子さんのなすがままに食わされる運命。例によって一口かじっただけで絶句。ま、水瀬家の通過儀礼のようなものだからねぇ。
 すがるような真琴に目をそらす名雪。涙にあふれる真琴の表情。それに笑顔で追い討ちを掛けてる秋子さん……壮絶な試練だな。

 登校途中で猫を見掛けた名雪。目を細めて近付こうとするけど、かわいげが無いと言い放つ祐一に思いっきり反論。猫アレルギーなのに近付こうとする名雪を必死で止める祐一もご苦労さんね。
「ねこ~ねこ~」って目を細めて理性を失ってる名雪の表情が良いね。
 結局、祐一の手を振り切ったおかげで涙が止まらなくなったってか。大変だね。

 また病人のクセして寒空の校庭をうろついてる栞。祐一に雪だるまの約束を確認してるけど……今回の出番はこれだけか。

 佐祐理と舞との昼食会。さりげなく魔物の話を尋ねる祐一だけど、佐祐理さんは蚊帳の外。
 しかし、出る出ないって話題だからって女の子相手に食事の最中に「お通じの話」は無いだろ。普通は誰だって怒るところだけど……確かに否定されないと話を振った方が慌てるだろうね。悪意が無いただの冗談の場合は。

 放課後になってようやく涙が止まったという名雪。そのまま部活に行ったのか、祐一は例によって別行動で町を徘徊。すかさず後方からあゆが激突。
「ボクがここに来る目的はひとつだよ」
「食い逃げか」
 鯛焼き屋のおじさんも大変ね。

 ゲーセンの前でプリクラの機械を眺めてる真琴。
「あの殴り心地の良さそうな後頭部……」
 いったいどんな後頭部じゃい。こういう発想って普段から平気で人を殴りまくるやつの発想なんだろうな。祐一はこっちでは猫を被ってるけど、地元では相当なワルだったと見たけど、さて。こっちに転校して来たのだって本当はそっち方面で原因があったんじゃないのか?
 そんな祐一と真琴を遠くから見つめてる謎の少女、天野美汐。真琴シナリオのキーパーソン、(声は無いけど)ついに登場ね。プリクラにいた女の子たちは美汐が自分たちの方を見てるって勘違いしてたみたいだけど……

 保育所の仕事はちゃんとれやれたという真琴。祐一とは一緒に帰りたくないと去っていくけど、気付けば祐一の後を尾行してる様子。いたずらの機会を狙ってたというより、ツンデレみたいに本当は祐一と一緒に帰りたいってところか。
 そんな真琴にじゃれ付いて来た今朝の猫。通学途中の民家の塀と町の中じゃずいぶん場所が違うと思うんだけど、よく同じ猫だと特定できたものだね。最初は猫を怖がってた真琴だけど、祐一に進められるままに抱いたらまんざらでもない様子。でも、どっちかというと真琴の方が猫にじゃれられてる感じね。
 豚まんを買ってもらった真琴だけど、いざ食おうと思ったら猫が強奪。必死に追い掛けようとするところを祐一のチョップで止められてるけど……

 歩道橋の上で猫をどうするか語りかける祐一に、豚まんを食えたからもう要らないとあっさり言い放つ真琴。どうせ動物は用済みになれば捨てられるものだと、なんかめちゃくちゃ荒んだ価値観だな。
 人に飼われるより野に放した方がって言ってるけど、猫ってそりゃ中には野生に帰った猫もいるだろうけど、元から人間に飼われるように品種改良され続けてきた動物だから、野良猫も含めて人間社会から離れたところで生きていくのは困難だと思うぞ。犬や猫をそこらの野生動物と一緒に考えてもねぇ。
 ま、真琴の発言は自己経験に基づくものだろうけど……
 いきなし手を離して歩道橋から車道に猫を落とす真琴。たまたま通り掛ったトラックの屋根に乗っかって無事だったみたいだけど、衝突してたらただじゃ済まないところ。
 当然ながら怒る祐一に悪びれも無く口答えする真琴。ま、真琴の感情は、自分が昔好きだった祐一に捨てられたと思って、それが絶望感に繋がってる悲しみなんだろうけど、だからって無垢な子猫をいたぶるようなことをしなくてもね。ま、野生の動物だったらこの程度のことは別にどうってことないだろうけど、犬や猫は違うからね。

 晩御飯になっても戻ってこない真琴を探しに出掛けた祐一だけど、心当たりがあるわけでもなく……だからって舞に訊きに行くのもどうかと思うけど、それに答えてる舞もなんだかねぇ。
 舞の言葉に従って町を見下ろす物見の丘に向かった祐一。そこには星明りの中で猫に豚まんをあげてる真琴の姿が……疲れたからってそのまま寝ようとする真琴だけど、真冬の雪国、しかも寒風に晒されてるだろう丘の上で眠ったりしたら、なんか完璧に凍え死んでしまいそうだね。(人間なら)
 真琴を背負って丘を降りる祐一を見てるキツネの姿。伏線といえば伏線なんだろうけど……東映版の頃みたいに前知識無しで見てた頃に戻りたいね。

 目覚めたら丘の上じゃなくて慌ててる真琴だけど、水瀬家の自分の部屋だとはすぐに気付かないのか?
 秋子さんに夜食を作ってもらってる真琴だけど、こいつ、小遣いで豚まん買って食ってたんじゃないのか? 底なし胃袋みたいだな。祐一や名雪の家族団らんの光景に、これまでと違う何かを感じたような真琴だけど……


【サブタイトル解題】

 遁走曲(フーガ)はカノンと同様、旋律の繰り返しを特徴とする曲です。カノンが比較的新しく、同じ旋律を厳密に繰り返し、楽曲そのものは無形式なのに対し、フーガはそれより古くから存在し、繰り返しの旋律にも自由さがある一方、楽曲全体に決まった形式が存在します。
 遁走曲という邦訳は旋律の繰り返しを追いかけっこで逃げてる様子に見立てたものでしょうが、カノンの邦訳が追複曲で追いかける方に主眼が行ってるのと対照的なのが面白いところです。
 「家出と仔猫の遁走曲」というのは、名雪との登校時、夕方の真琴との帰り道、そして家出した真琴がいた物見の丘と、繰り返し子猫が現れてる光景をフーガに見立てた感じでしょうか。さらに「遁走曲」の逃げるというイメージを真琴の家出に見立ててもいるようです。


【使用BGM】

01.「the fox and the grapes」
  真琴の襲撃失敗
02.「Last Regrets」
  OP
03.「彼女たちの見解」
  水瀬家の朝食~謎ジャム
04.「雪の少女」
  名雪と祐一の登校
05.「2 step toward」
  踊り場の昼食会~放課後の昇降口
06.「生まれたての風」(アレンジ版末尾)
  真琴を見つめる美汐
07.「the fox and the grapes」(アレンジ版)
  真琴の尾行~猫
08.「pure snows」
  夕焼けの歩道橋
09.「霧海」
  怒る祐一~真琴の捜索
10.「凍土高原」
  物見の丘の真琴と猫
11.「残光」
  真琴の居場所
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 「生まれたての風」は『recollections』からですが、使用箇所は末尾にくっついてる次のトラックへの渡しのような中間曲の部分です。こんなの使うなよという感じで、サントラ盤のメロディーしか頭に無いと、まずたどり着けませんね。
 今回から本格的にヒロイン毎のシナリオに入ったって感じで、BGMも各ヒロインのテーマを均等に散りばめた感じとは違って、より物語の展開に密着した音楽が選曲されてきてるようです。


【天の声を聞く舞】

 この前は祐一に真琴の傍にいてやれと言ったり、今回は真琴が物見の丘にいると言って祐一を強引に真琴シナリオの方に進めさせてる感のある舞。普段と違ってなんか普通にしゃべってるのが違和感いっぱいですが、これは舞のように見えるけど、本当は天の声のようなものなんでしょうね。
 当人に真琴のことに勘付くような感覚があったら、何より自分が無意味な魔物狩りを延々と続けてるようにも思えませんし、そもそも舞が担う役割とも思えません。
 これが無けりゃ祐一はあのまま連日舞の魔物狩りに付き合って、東映版と同じくまっすぐ舞シナリオに進んでたはずですが、無理やり真琴シナリオの方に捻じ曲げた理由は何なんでしょうね。やっぱり東映版と同じにはしたくないってことなんでしょうか。
 展開上、あゆ&名雪シナリオは最後に持っていかざるを得ないし、そうなれば残る3人のシナリオの順番ですが、栞シナリオは栞の誕生日の件があるのと、学園ものという設定上、貴重なクラスメイトのキャラである香里をあまり早々と退場させたくないって点から真っ先には持って来れない。そこで真琴シナリオが選ばれたってところでしょうか。
 確かにキャラとしての神秘性は舞が一番なのは確かだけど、やっぱり舞にしゃべらせたらまずいでしょうね。


【物見の丘はどこ?】

 ……と言っても、具体的な現実の地名とかいう話じゃありません。祐一たちの住む町から見て、どれだけの距離感のところにある丘なのかってことです。
 普段、町の中の光景なんかでは近くに小高い丘があるような描写はまったくありません。町の規模がどれだけなのかは知りませんが、水瀬家のすぐ傍がもう郊外になってて、すぐに物見の丘に繋がってるって感覚はまったく無いんですね。
 一方、舞の話ではこの町を一望に見下ろせるくらいの高さのある丘のようだし、実際、丘の上からは町の明かりが結構遠くに広がってる感じです。この様子ではかなり距離は有りそうだし、夜中に気軽に登っていけるような場所とも思えないんですが。

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #06

2007年10月05日 | アニメ
 ボクはあゆ。祐一くんの親友だよ。
 ね、みんな知ってる? 「およげ!たいやきくん」を歌ってるとこ、ビデオに録ってテレビ局に送ると、子門真人がやってきて、一緒に歌ってくれるんだって!
 でも、それ、5人1組でないとダメで、人数が1人足りなくて困ってたんだけど、秋子さんが一緒に歌ってくれたの。

(今回は某妹アニメ第19話の冒頭モノローグから)


 第6話「謎だらけの嬉遊曲~divertimento~」

【ストーリー雑感】

 今回のナレーションは飯塚雅弓か……。どうも早口っぽいのは飯塚雅弓みたいね。それにしても短いナレーションで即OPって、気の早い始まり方だな。

 あゆあゆのとこに走ってきた幼い祐一。二人で鯛焼きを食ってるけど、前に一緒に鯛焼きを食って再開の約束をした次だな。自分ひとりを置いて母親がいなくなったって言ってるあゆあゆだけど、こいつ、母親に捨てられたのか? それを聞いて再びあゆあゆと遊ぶ約束をしてる祐一だけど……

 また夜中に祐一の部屋を襲撃してる真琴。部屋の中でネズミ花火って……火事にでもなったらシャレにならんぞ。とっさに廊下に放り投げてる祐一もすごいね。それにしても、あれだけ大量の目覚まし時計で起きないクセして、ネズミ花火だと起きてくるのか?<名雪。ま、眠りの深さの問題だと言えばそうだろうけど……
 翌朝、また水瀬家で朝食を食ってるあゆ。日曜日だというのに秋子さんもご苦労ね。で、完全に無視してる祐一を起こって引き止めようとするあゆ。秋子さんに映画館の招待券をもらったからって誘ってるんだけど……何で昼間に行かずに5時の約束なんだ? おまえらどうせ暇だろうに。それとも夕方からしかやってない映画館なのか?
 なんかあゆの正体を知ってそうな素振りの秋子さん。あゆが玄関先でこけた音で起きて来たという名雪。寝ぼけながら納豆をかき混ぜてるのは良いけど、それ腐ってないか? で、祐一に「食うか寝るかどっちかにしとけ」と言われたら、即座に寝るかいっ!

 起きてきた真琴をひっ捕まえて、仕事をしろとバイト情報誌を見せる祐一。どうでもいいけど、真琴の場合、年齢制限とかで引っ掛からないか? それに、バイトだって履歴書を書かせるところもあるだろうに。それにしても、よく秋子さんが了解したな。
 真琴を見送った後、名雪の様子を見に学校に来てる祐一。よっぽど暇なのね。で、名雪には会えずに、遭遇したのは栞。栞が風邪だと信じ込んでる祐一は無闇に出歩いてる栞を叱ってるんだけど……
 学校に来てる理由を訊ねる祐一を、例によってはぐらかそうとしてる栞。そうこうしてると5時の鐘の音。あわててあゆとの待ち合わせ場所に急いでる祐一だけど……
 デートだからあゆが着替えてくるのを期待してた祐一だけど……そいつは着たきりすずめだからそんなの期待するのは無理だと思うぞ。
 映画館でやってたのは『恐怖の目』とかいう怖いと評判のホラー映画。あまりに怖すぎて上映禁止になったとこもあるとか言ってるけど……。完璧怖がって、コートに隠れたままスクリーンを見ようとしないあゆ。なんか人間が次々に破裂して血を吹きまくってる映画みたいだけど……
 映画の音で登場人物が叫びながらボンボン炸裂して行ってるのとシンクロして、「うぐぅ」「うぐぅ」と怖がってるあゆの反応が最高だね。平然と「うぐぅ」のバリエーションを楽しんでる祐一は酷いなぁ。しかし、どんな映画か見てみたいものだね。
 喫茶店であゆに、カチューシャを取って髪の毛を短く切ったら小学生ぐらいの男の子と間違われるんじゃないかと言って苛めてる祐一。おいおい、それ、最終回辺りで見れる光景じゃないか。
 夜道をなかなか1人で帰れず、ずっと祐一についてきてるあゆが良いね。

 ウェイトレスのバイトは面接中に居眠りしたから追い返されたという真琴。結局、秋子さんの知り合いの保育所を手伝うことになったんだけど……大丈夫か?
 例によって夜中に学校に出掛ける祐一。しかし、舞はしばらくここに来なくて良いから、真琴の傍にいてやれと言う……いや、ただでさえ無口な舞が、そんなこというようなキャラじゃないだろと思うんだけど、逆にそれが説得力あるのか? 東映版だとこのまま舞シナリオに突入だけど、なんか強引に真琴シナリオに持って行ってるって感じだな。
 順番を入れ替えても特に他のシナリオへの影響は無いと思うんだけど、何か原因があるとしたら声優さんのスケジュールぐらいか。

 帰宅した祐一が風呂に入ろうとしたら真琴が出て来たところ。で、中は湯船いっぱいの味噌汁……ま、飲めたものじゃないだろうけど。そんな真琴を見て舞の言葉を思い出す祐一だけど、訳わからんだろうね。
 真琴は祐一にいたずらしてるつもりなんだろうけど、どう見ても秋子さんに迷惑掛けてるだけのようにしか思えないのがマヌケね。


【サブタイトル解題】

 嬉遊曲(ディヴェルティメント)というのは貴族の団欒や社交場、祝宴等の場で気軽に楽しむために演奏された室内楽曲です。現在の軽音楽みたいな感覚のものだったようですね。
 「謎だらけ」というのは舞に絡んでだろうけど、ひとつは従前の舞の魔物退治のこと。そしてもうひとつは舞が真琴のそばにいてやれと言ったこと。どちらもまだ本格的な進行状態じゃないから軽い感じで「嬉遊曲」という感じでしょうか。


【使用BGM】

01.「約束」
  真琴の声による夢の光景。
02.「Last Regrets」
  OP
03.「冬の花火」
  あゆあゆと幼い祐一
04.「冬の花火」
  あゆあゆとの約束
05.「the fox and the grapes」
  真琴のネズミ花火
06.「日溜まりの街」
  祐一を映画に誘うあゆ
07.「彼女たちの見解」
  真琴とバイト情報誌
08.「笑顔の向こう側に」
  出歩いてる栞を叱る祐一
09.「日溜まりの街」(アレンジ版)
  喫茶店で恐怖から回復するあゆ
10.「2 step toward」
  真琴の面接結果
11.「the fox and the grapes」(アレンジ版)
  味噌汁風呂
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 「日溜まりの街」と「the fox and the grapes」のアレンジ版はどちらも『anemoscope』『recollections』の両方に入ってますが、共に微妙にアレンジやミキシングが双方で違ってます。今回はどちらも『recollections』の方が使われてるっぽい感じですが、確信はありません。「日溜まりの街」は曲の途中(ピアノが入る部分)で編集されてるみたいですし……


【あゆと祐一が見た映画】

 あゆが秋子さんからもらった映画の招待券。映画は何をやってるかわからなかったところを見ると、新聞の勧誘でおまけにくれるような地元映画館の招待券か、秋子さんの職場に回ってきた株主優待券とか、そんなところでしょうか。
 映画代を節約するために金券ショップで買ってきたって可能性もありますが、有効期限ぎりぎりになってあゆに渡したり、やってる映画を知らなかったりすることはないと思うので、何かの折にたまたま手に入ったものでしょうか。秋子さん自身が買ってきたなら誰と何を見に行くつもりだったのか興味がありますが……まさか祐一と2人でホラー映画を見に行こうとか思ってたんじゃ……
 本当は名雪と祐一を行かせるつもりだったのかもしれませんが、名雪が部活に行ってしまったから仕方なくあゆにくれてやったという可能性も。いや、秋子さんのことだから、あゆの怖がりを知っててわざとホラー映画を見せたって可能性も否定できませんが。

 あゆと祐一が実際に出掛けたら、怖いと評判のホラー映画しかやってなかったのがあゆにとっては災難ですね。ま、あゆのことだからデートって言ってもハードな恋愛映画なんか期待してたとは思えないから、ほんわりとしたファミリー向け映画とか、アニメやファンタジー映画を楽しみにしてたんじゃないかと思われますが……
 ま、あえてホラー映画を選んで、怖がる振りして彼にしがみついたり、あるいは彼女のしがみつかれたりというイベントを期待するのも、遊園地デートのお化け屋敷同様のテクニックなわけですが、あゆの場合はそこまで思い至るという以前に祐一にしがみ付きさえ出来ずにフードに隠れてうずくまってますからね。
 R15とはいわないまでもPG12ぐらいは指定受けてそうな映画みたいですが、あゆといえば精神年齢は7年前のままのはず。何か完璧にひっかっかっちゃってますが、こりゃトラウマになりそうですね。

 肝心の映画の内容ははっきりと描写されてないからわかりませんが(DVD版だと変わってるのかな?)、どこかに入っていった一行のメンバーが次々に体が内部から破裂して死んでいくって内容みたいです。
 ま、『スキャナーズ』みたいなのを昨今のCG技術で本格的な大量虐殺のホラーに仕立て上げたのかって想像も出来ますが、単にケンシロウに経絡秘孔を突かれた悪人たちだったとしたらお笑いです。


【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #05

2007年09月11日 | アニメ
 むかし昔……と言っても、ほんの少しだけ明日に思えるかもしれない昔。草原の夢の国から、一人の女の子がやってきました。夜の学校に出没する魔物を討つというのがその目的のはずでしたが、はてさて、どうなることやら。
 そうそう、その女の子の名は、川澄舞、と言いました。

(今回の元ネタは……ヒントは不要ですね)

 第5話「魔物たちの小夜曲~serenade~」

【ストーリー雑感】

 今回の冒頭ナレーションは田村ゆかりか……。何か毎回ダメ絶対音感を試されてるみたいだな。
 廊下で見かけた舞に声を掛ける祐一だけど、それを無視して何かに斬りかかる舞。
「私は魔物を討つ者だから……」
 いきなしそんなこと言われても理解不能だろうけど。魔物って何なんだ?

 あっさり帰ってきてる祐一。何か呆気に取られて状況を理解しないまま、とりあえず帰ってきたって感じだな。ま、夜の学校で剣を振り回してる上級生なんて、普通は相手にしないわな。どう見ても危ない人だし。
 名雪に風呂が沸いてると言われて入る祐一だけど、そこにはすでに真琴が入浴中。
「よぉ!」
 目もそらさずに混浴しようとするか? 相手が真琴でも(名雪や秋子さんもいることだし)それはまずいだろ。さすがに悲鳴を上げて飛び出してる真琴だけど……普通は物を投げたり湯を掛けたりして祐一の方を追い出さないか? この騒ぎで名雪や秋子さんが出て来ないのもどうかと思うけど……
 しかし、飛び出したは良いが、そのまま悠々と祐一が入浴している間、廊下でタオル1枚で震えてる真琴って……。雪国だから家の中は暖房完備ってわけでもないよな、水瀬家は。
「同じ家で暮らしてるんだから、そんなことぐらいあっていいだろ?」
「あってたま……くちゅん」
「まこぴー語か?」
 まこぴー語って……
「見たいテレビがあったら、今晩中に見てなさい!」
 今夜はテレビを壊す気か?>真琴。
「魔物を討つ者って十回言えるか?」
 早口言葉のネタかいっ!
 夜中に祐一を襲おうとしたところを、また気付かれて待ち伏せされてる真琴。毎度毎度懲りないね。

 朝起きたら、平然と食卓でお代わりしてるあゆ。偶然通り掛っただけで朝ごはんをご馳走してくれるのか、秋子さんは。
 教室で熟睡したまま放課後を迎えてる名雪。その名雪を部活に見送って、例の廊下で舞と会う祐一。祐一が何を訊いても無口な舞。しかし、返事だけでもしてくれと言われて素直に「はい」とだけ答えてる舞って……
 そこにやってきた佐祐理。祐一が舞から愛の告白を受けてたと聞いてきょとんと立ち尽くしてるけど……そこはツッコミ返さないとダメだろ。しかし、祐一から見た佐祐理のアングルって、完全にゲームの画面だな。ま、その前に名雪を見送ってるところもそんな感じだけど。ゲームじゃ普通でも、アニメでこれをやると違和感あるな。

 祐一を昼食会に誘ってる佐祐理。放課後に昼食って……半日授業なのか? 3学期なんて始まったら即座に全日授業って気がするけど……。それより、真冬にそんな場所で昼食なんて寒くないのか? まさか学校の中は全館暖房とかいうわけじゃないよな。地元の人間には慣れてるのかも知れないけど……
「合格」
「何に合格なんですか?」
「俺の嫁」
 お前か、「こなたは俺の嫁」とかいうフレーズを広めたのは。
「食べたいものがあれば、取ってやるよ」
 舞をしゃべらせれば勝ったような気分になるからって、弁当を全部自分の前に並べて、舞が口に出さない限り食えないようにしてる祐一……意地悪なやつだな。
「タコさんウインナ」
 タコさんウインナで勝利宣言できるのか。安っぽい勝利だな。

 また校庭に来ていた栞。苗字を訊かれて内緒だと言ってるけど……ま、祐一が姉と同級生らしいことに気付いてるから名乗れないんだな。
「俺のことは遠慮なくお兄ちゃんと呼んでいいぞ」
「うん、そうするね。お兄ちゃん」
 祐一もあざといけど、それに付き合ってる栞は性格良いなぁ。その後で恥ずかしがってる様子も良いね。
 祐一に雪だるまを作らないかと誘ってる栞。大きなのは自分ひとりで作れないって言うけど……全長10メートルって、そこらの雪だけじゃ足りないだろうし、だいたいクレーンでもなけりゃ組み上げられないぞ。札幌の雪祭りでも高さ10メートルのオブジェなんて作れないだろ。
 とりあえず風邪だと信じてる祐一に帰されてるけど……本当は祐一に会いに来たわけではないだろうに。

 帰宅途中でお使いに向かう途中の真琴と出会ってる祐一。ついでにエロ本を買って来いって……。これ、原作や東映版じゃ、自分も本屋にいて反応を見て楽しむのが目的だったんじゃないのか? 1人でお使いに出掛けた真琴に買わせてるって、ちょっと手口が陰湿な気がするぞ。
 で、速攻で帰ってきた真琴。案の定、祐一に怒鳴り込んでるけど……大口開いた真琴の犬歯だけちょこっと見えてるのがかわいいね。昔、『うる星やつら』の流行ってた頃はこういうのが良くあったけど、最近は見掛けないからねぇ。
 祐一の食ってた豚まんに興味をそそられてる真琴。臭いしか嗅がせてくれないからって自分で買いに出掛けてるのは良いけど……なんか所持金みんなはたいてきたって感じだな。しかも、マンガに夢中になってる間に買って来た豚まんを祐一に食われてるのが悲惨だね。
 豚まんが無くなってるのに気付いて祐一に怒鳴り込む真琴だけど、そこに豆腐のことを聞いてきた秋子さん。どうやら豆腐を買う前にエロ本を買おうとしてそのままだったみたいね。しかも、そのお金を使い込んで豚まん買ってきたのか。
 それにしても、秋子さんは甘いね。

 部活から帰ってきた名雪と入れ違いに出掛ける祐一。ま、舞のことを見に夜の学校に向かってるわけだけど……時間的にはそんなに遅くないんだよな。定時制のある学校だったら定時制の授業中なんだけど、このセキュリティが杜撰で誰もいないこの学校には定時制なんて無いんだろうね。
 舞に差し入れを持ってきたといってコンビニのおにぎりを取り出そうとしてる祐一の背後から、白い影……。すわ、魔物かとばかりにとっさに斬りかかってる舞だけど……真琴が祐一を脅かそうと付いてきてただけってか。
 いきなし真剣で斬りかかってこられたら、そりゃびびるわな。そんな真琴の頭を撫でてる舞だけど……なんか本能的に真琴の正体に感付いてるみたいだな。
 真琴が怖くて1人で帰れないからって、連れて帰ることになった祐一。舞シナリオの進展はまだ先になりそうだな。


【サブタイトル解題】

 セレナーデの音楽的意味というのは時代によっていろいろと変遷しているようですが、元々はある特定の人物を称えたりするために、夕方に屋外で演奏される音楽だったみたいです。そこから転じて、宵の口に恋人の部屋の窓の外から歌で語りかけるようなイメージが生まれてきました。しかし、本来のクラシック音楽でのセレナーデはそんな叙情的なイメージよりも熱情的な音楽だったみたいですね。
 「魔物たちの」と付いても、現時点で魔物は舞にしか見えていないもので物語の中心的な話題になってるわけでもありません。ただ、舞が夜中に魔物退治をしてるとか、そこに真琴がイタズラしようと現れたとかいうくらいです。そんなわけで、魔物も実際の魔物をイメージしてるわけでもなく、セレナーデと言ってもここでは恋愛感情なんか関係なく、夜中に外で騒いでるといったイメージなのかもしれません。


【使用BGM】

01.「約束」
  舞の声による夢の光景。
02. 「兆し」
  夜の廊下で剣を振りかざす舞。
03.「Last Regrets」
  OP
04.「2 step toward」
  祐一の帰宅
05.「the fox and the grapes」
  風呂から飛び出す真琴
06.「木々の声と日々のざわめき」(アレンジ版)
  あゆに驚く祐一
07.「彼女たちの見解」
  屋上の踊り場での昼食会
08.「pure snows」
  校庭で待っていた栞
09.「the fox and the grapes」
  怒鳴り込む真琴(エロ本編)
10.「the fox and the grapes」
  怒鳴り込む真琴(豚まん編)
11.「the fox and the grapes」(アレンジ版)
  舞に斬られかかって驚く真琴
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 「木々の声と日々のざわめき」のアレンジ版は末尾しか使われてませんが、ちょっとテクノっぽいアレンジ。市販のCDには入ってなく、ゲームの初回限定版に付いてたCD『KANON オリジナルアレンジアルバム "anemoscope"』から。(この曲のチェックのためだけにゲームの初回限定版の新品中古を買ってきました。意外とあっけなく手に入ったのですが、そんなにレアなものじゃないのでしょうか?)
 今回は「The fox and the grapes」の多様が目立ちますね。真琴が怒ったり驚いたりするたびに使ってますから。ある意味、ゲーム音楽らしい使い方といえばそんな感じです。
 今回は映像面でのキャラのバストショットのレイアウトとか、この真琴の音楽の使い方とか、アニメというよりはゲームっぽい作り方が印象的です。(演出を見たら『らき☆すた』で監督を降ろされた人みたい)


【真琴とエロ本】

 この作品の序盤での真琴に対する一番のお楽しみネタがこのエロ本イベントなんですが、意外にも京アニ版では直接描写を避けてきましたね。直接描写って言ったってエロ本の中身を描いたりするわけではなく、本屋さんでそれらしい行為をするだけなんですが。
 確か東映版やPS2版では祐一と一緒に本屋に行っての話(名雪も一緒にいたかな?)で、祐一はそのリアクションを楽しもうとしてるという感じなのですが、真琴1人に本屋に行かせるというのは性格悪すぎです。
 ま、飯塚雅弓の声で「エロ本ください」ってセリフは東映版等で聴けるわけですけど、京アニ版でそれが避けられてるというのはちょっと寂しいですね。
 その代わり、怒って帰って来た真琴の、ちょっと恥らったように赤くなってる表情が何ともいえないくらい良いです。この表情は他では味わえません。


【肉まんと呼ぶな、豚まんと呼べ】

 祐一が買って来たのを真琴が欲しがって、豆腐の代金を使い込んで買って来た中華まんのことです。あすかの実家のある町では名産品の牛肉を混ぜたものも売ってるみたいですが、普通はほぼ100パーセント豚肉しか使ってないはずです。
 京アニもビジュアルアーツ(Key)もれっきとした関西企業なんだから、牛肉が入っていないのに「肉まん」などと称する不埒な習慣を追随してはいけません。ちゃんと「豚まん」と言わせなさい。
 ……ということで、真琴の好物は「豚まん」です。ちなみに中国で売ってるのは「ダンボールまん」です。


【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #04

2007年08月31日 | アニメ
「手を突き出しても、祐一に届かない拳」
「あたしの手を離れて、遠のいていく鯛焼き」
「人はいつもそんな夢ばかり追い求めて惰眠をむさぼってしまいます」
「そして、いつしか魔物を追って……」
『これは、そんな私たちの一冬の物語』

(今回の元ネタは某子供と大人が入れ替わる作品)

 第4話「休日の奇想曲~caprice~」

【ストーリー雑感】

 今回も冒頭の夢の声は真琴みたい。時間が無いから早口であっという間に終わってるって感じ。

 7年前、泣き止まないあゆに困ってる祐一。その脇を走ってる市電……これって舞台のモデルは函館あたりだったか?
 泣いてた理由は空腹。お腹の鳴る音に恥ずかしそうなあゆの表情がなかなかいいね。で、祐一が鯛焼きを買いにいったって話。あゆが鯛焼きにこだわってるのは祐一との思い出があるからか。しかし、このガキの祐一は何か生意気でえらそうだな。
 で、翌日も鯛焼きを食う約束をしてるけど……実は名雪がスーパーで買い物をしてるのを待ってる約束をすっぽかしてた時の話だったってオチかい。
「うそつき」
 この私服セーラーの名雪もなかなか良いね。

 気付かれてるとも知らずに祐一の部屋に忍び込んできた真琴……夜這いかい。カエルの柄のパジャマ着てるのは名雪のお古なんだろな。
 いきなし祐一に飛び起きられてびっくりしてる真琴。いたずらに使おうとしたコンニャクを生のまま食わされる羽目になってるとは、哀れね。で、その騒ぎに起きてきた秋子さん。まだ夜食を作らされてるとはご苦労さんね。

 朝から段ボール箱の山を見てる祐一。こいつ、引越しの荷物、まだ片付けてなかったのか。
 弁当を忘れて部活に出掛けた名雪に届けに行く祐一。振袖姿の女性がすれ違ってるけど、冬休み明けだから初詣ってわけじゃないな。成人式か何かだっけ?
 陸上部は体育館で練習してるけど、雪国はこの季節じゃ外で走れないのか。しかし、見学していって良いかって……女子の練習見てるのって、絶対下心あるわな。昨今の世相じゃ、不審がられないか?
 帰るところで部活にやってきた香里と出くわしてるけど……ほんと、いったい何の部活やってるんだろ? 並大抵の文化系じゃ休日に部活なんかないだろうから、やっぱし体育系なのか? でも、そんな感じはしないんだけどね。ま、本人も言ってるように、家にいたら栞のことで辛くなるから、気晴らしに出て来てるようなもんなんだろうけど。
 それにしても、部活中のポニーテールの名雪がなかなか。

 商店街で秋子さんと出くわして、米を運ばされてる祐一。ご苦労さん。ま、どこぞの母親と違って、水瀬家は確かに米は要るだろうからね。
 そこにやってきたあゆ。祐一と激突して米の下敷きにでもなるのかと思ったら、その前に勝手に道でこけてるかい。想像の斜め前を行くやつだな。
 秋子さんに起こしてもらってるあゆ。互いを紹介する祐一だけど、あゆの名前を聞いたとたんに怪訝な反応を見せる秋子さん。ま、この人は7年前の事件のことも知ってるだろうからね。
 祐一の荷物の片付けに水瀬家に付いて来てるあゆ。玄関でまたこけてるあたり、ドジっ子属性全開だな。で、2階からその様子を恐る恐る眺めてる真琴。あゆを紹介するとか言われて、結局のところ祐一の片付けを一緒に手伝わされてるとは災難ね。
 祐一が荷物を取りに行って、部屋で二人きりになった真琴とあゆ……なんか微妙な空気だな。ま、それを鯛焼きで解消してるあたりがあゆらしいというか、真琴は食い意地が張ってるというか……
 それにしても、真琴と並べるとあゆって本当に良い子だな。真琴の方は人見知りするって感じで、途中で引っ込んでしまってるけど……

 貸したノートを返してもらいにやってきた名雪だけど、祐一は学校に置き忘れてるって話。明日学校で返すと言う祐一に、今晩宿題をしないといけないと言い張る名雪。宿題なんか超越してるという祐一と、そんなわけにはいかないという名雪。女の子らしいというか、几帳面だな。
 結局、もう暗くなってるのに学校まで取りに行くと言ってる祐一。そうなればそうなったで何だかんだと引き止めようとする名雪だけど、今晩中にノートが必要なら取りに行くしかないよな。

「すごい星だな」
 満天に銀河の見える夜空……大阪の夜空なんか見上げても月と金星ぐらいしか見えないからなぁ。
 意外とあっけなく夜の校舎に侵入してる祐一。目的を果たして帰ろうとしたところで、月明かりの差す廊下で剣を携えた舞に遭遇してるけど……いきなし祐一に向かって剣を構える舞。こりゃ、びびるわな。


【サブタイトル解題】

 奇想曲とは、軽快で自由な器楽曲とのことですが、嬉遊曲なんかとどう違うのかが良くわからないところです。ま、嬉遊曲は目的を指した分類で、奇想曲は性格を指した分類というところかな。軽快で自由って言ったってクラシック音楽の世界の話ですから、ポピュラー音楽の感覚で捉えても違和感があるかもしれません。
 サブタイトル的にはまだまだ本筋には入ってないというところで、休日のヒロインたちの快活な日常を描いてるってところでしょうか。


【使用BGM】

01.「約束」
  真琴の声による夢の光景。
02.「Last Regrets」
  OP
03.「冬の花火」
  泣いているあゆあゆ。
04.「約束」ピアノアレンジ版
  あゆと鯛焼きを食べる約束
05.「the fox and the grapes」
  祐一を襲う真琴
06.「雪の少女」
  陸上部の部活をしてる名雪
07.「日溜まりの街」
  あゆと秋子さん
08.「木々の声と日々のざわめき」
  あゆと真琴
09.「2 step toward」
  名雪のノート
10.「少女の檻」
  夜の校舎にいる舞
11.「風の辿り着く場所」
  ED
12.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 今回は栞の登場無しで、代わりに他の4人のテーマ曲が揃い踏み。特に舞のテーマである「少女の檻」は4話目にして初使用。ま、舞のテーマといっても佐祐理さんと弁当食べてるような普段の舞には使えない曲ですからね。
 物語の構成上、アニメでは使いにくいかと思った「雪の少女」だけど、とりあえず使える場所があって良かったですね。物語が進むにつれて使いにくくなってくるのは確かだとは思いますけど。

 「雪の少女」というと、サントラ盤では隠しトラックに普通のロックバンドのインストゥルメンタルを使ったアレンジのバージョンが収録されてますが、これ、「雪の少女」だと気付かない人が多いのか、サントラ盤のレビューを載せてるうちの別のブログのアクセス解析を見たら、それ目当てと思える検索フレーズでのアクセスがコンスタントにあったりしますね。
 これ、けっこう良い曲なんだけど、鉄琴系の寒色音が主体のサントラの他の曲と比べたらあまりに世界が違いすぎますから、作品中で使われることは無いでしょうね。


【香里の部活を探せ!】

 今回は謎多き、美坂香里の部活を考察してみます。やはり謎ジャムと同様、『Kanon』を語る上では避けて通れない大問題です。
 成人の日と思わしき休みの日に、陸上部の練習に出てる名雪に弁当を届けるために登校した祐一が、帰りに登校してきた香里と出くわしています。その時の様子では、休日にわざわざ出てくるような部活ではないけど、家にいたくないから出て来たという感じでしたね。
 一般的に運動系の部活は拘束が厳しいから、休日とはいえ出ても出なくてもいい活動なんてのはあまり無いでしょう。ま、香里が自主的に練習しに来ただけって話もありますが、そういう自由度は文化系の部活の方が大きいと思われます。
 ただ、文化系の部活の場合、学校にもよるだろうけど、きちんと部室が割り当てられてる部もあれば、活動の時だけ教室を借りてやってるような部も多いと思われます。かの北高では文芸部にも専用の部室がありましたが、多くの学校では文芸部なんて部室の無い部活の筆頭のような気がします。休日にわざわざ出てきて活動できるということは、きちんと部室のある部活の可能性が高いでしょう。
 また、祐一の転校初日の放課後、校内で迷子になったところを助けてくれたのは香里でしたが、用事があると言って部室に行ってたはずの香里が現れたのは校舎の中でした。ま、その先に体育館があってそっちの方から来たという可能性が無いわけではないですけど、普通は運動部の部室は教室のある校舎とは別棟にあると思います。他に教室に用事があったんなら別ですが、別棟の部室に寄ってから校舎の中に戻ってくることはあまり無いと思われます。やはり運動系よりも文化系という感じですね。

 香里は祐一のクラスの委員長をやっていて、名雪たちの人望は厚そうです。正確もきっちりしてる感じです。(きっちりしすぎてるのが物語上では問題になってるわけなくらいですが)
 では、そんな香里がやってそうな、専用の部室が存在する文化系の部活とは何でしょうか? 放送部とか新聞部とか、その責任感において社会的使命を発揮できそうな部活も存在しますが、香里のタイプからすればそんなものを部活に求めたりはしないと思います。科学とかの実験をするのも違いそうですね。特に部活の道具を持ち歩いていないところを考えたら音楽バンドとか美術系でもなさそうです。

 香里が休日にわざわざ出て来てるのは部活としての活動としてよりも、家庭の件の気晴らしだということですから、そういう精神的効果のある部活だと考えた方が良いかも知れません。
 宗教系の学校なら直截的に神に救いを求めたりするような部活もあるかもしれませんが、そういうのは考えないことにしておきます。普通の高校にある部活で、どちらかというと精神面の修養を目的としてるものといえば、茶道とか華道の類でしょうか。華道は花の用意がないと出来ないから、休日に手ぶらでやってきて出来るなら茶道の方が現実そうですね。
 香里の落ち着いたキャラから考えても、茶道部というのはいかにもありそうな話だと思います。ま、物語は始まったばかりなのでこの先、矛盾する描写が出てくることがあるかも知れませんが、その時はまたその時ということで……

(いや、実は香里の部活はエクストリーム同好会で部員1名とかいうネタで引っ張ろうかとも思ったんだけど……声からしたら真琴向けのネタだからね)


【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #02

2007年07月04日 | アニメ
 彼女の名は月宮あゆ。ごく普通のけなげでかわいらしい少女のようでいて、実はうぐぅ星から来た逃げる鯛焼き泥棒である。なぜうぐぅ星から来たのが鯛焼き泥棒なのかは瑣末な問題に過ぎない。物語とは往々にして開始と同時に問答無用の奇怪な設定が突きつけられるものだ。
「あっ、どいて、どいて!……うぐぅ。ぶつかっちゃったよ」
 ところで、逃げる鯛焼き泥棒と言って置きながら、なぜ今、唐突にこの俺にぶつかってきてるのか、それは普段彼女が地元商店街を逃げ回っていて、たまたま通り掛った俺が避け損ねてしまったからだ。
「おい、こらぁ~~~~、そこの女の子!」
「おい、あゆ。お前、また鯛焼きを食い逃げしてきたのか?」
「うぐぅ。またお財布が無かったんだよ!」
 羽根リュックを背負ったよくわからないコスチュームで意味無く偉そうに答えるあゆ。その切羽詰った逃避行に、またしても俺は巻き込まれてしまった。
「おまえ、いい加減ちゃんとお金を出して鯛焼きを買えよ」
「うぐぅ。ボクも最初はそのつもりだったんだよ」
 今や彼女はこの商店街では知らぬ人はいない食い逃げの常習犯として、地元の鯛焼き業者からは警戒される存在であった。がんばれ、あゆ。去年出来た大型デパートの食品フロアの鯛焼きを食い逃げして、地元の鯛焼きを制覇するんだ……

(元ネタはある有名な作品の冒頭なんだけど、さて?)


 第2話「雪の中の入祭唱~introit~」

【ストーリー雑感】

 あゆの声による意味深な夢の光景。意味ありげに見えてどこまで意味があるのかよくわからないところだけど、原作ゲームでも1日の始まりはこれだから、ある意味お約束なんだな。ま、あゆルートや舞ルートだとそれっぽい感じもするんだけど、栞ルートなんかだと全然関係ない気がするし……

「あさ~~~、あさだよぉ~~~。あさごはんたべて~~~がっこうへいくよ~~~」
 名雪の目覚まし……東映版に比べてゆっくりすぎ。それが名雪っぽいといえばそうかもしれないけど。どうせなら録音時間オーバーして途中でぶち切れるくらいでもいいと思うけど、実際にはそういうのが多々あって何度も録音しなおしたんだろうなぁ。
 余計に眠くなるというのは確かにそうだろうけど、名雪がわざわざ自分の声を吹き込んだ目覚まし時計を渡してるってところに祐一の自覚が無いというのもねぇ。
 一方、隣の名雪の部屋では大量の目覚まし時計の大合唱。これで寝てられるというのは確かに凄いね。こういうところを東映版と違ってちゃんと実感できるように見せてくれてるのが京アニならではってところか。ぶち切れて時計を止めまくってる祐一が良いね。
「祐一、ジャム付けないの?」
「俺は甘いの苦手なんだ」
「甘くないのもありますよ」
 秋子さんの言葉を聴いたとたんに危険を察知して逃げるかのように出掛けようとする名雪。謎ジャムの登場ってか。何も知らずに名雪の分のトーストまで謎ジャムで食わされる祐一……ご愁傷様。空間が歪んで秋子さんの声にエコーが掛かってるってのが怖い。相沢祐一というより、ハルヒ絡みの事件に巻き込まれたキョンだな。
 名雪に声を掛けられて脱出のチャンスをもらった祐一。残念そうな秋子さんが何ともいえない……。

「毎日こんなに寒いのか?」
「今日は暖かい方だよ」
 ま、確かに暖かそうな陽差しではあるね。でも気温は氷点下ってところか。
 登校時の光景に見覚えあるか訊ねる名雪だけど、祐一の記憶は無いまま。
「ファイトだよ!」
 いや、それで思い出せるようなものでもないだろ。思い出せないのならそれでも良いという祐一に、そんなのは寂しいよと抗議する名雪。ま、幼馴染も思い出が無ければタダの知り合いに過ぎないからね。
 転校初日からチャイムぎりぎりの登校。ま、まだ予鈴なんだろうけど。そこにやってきた香里と北川。
「お前は昨日の荷物持ち」
 野郎の名前なんか1日では覚えないわな。ま、速攻で香里のカバン持たされてるあたり、荷物持ち以外の何者でもないのも確かだと思うけど。

 名雪たちと同じクラスで、席は名雪の隣。ま、この手の作品のお約束といえばお約束だろうけど、実世界で実現するには相当に確率低いと思うぞ。
 おや、香里がクラス委員なのね。
 今日は始業式だけだからこれで終わりって話だけど、その後、ノートとかをカバンに入れてる祐一。おいおい、そのノート、いったいいつ使ったんだ?
「祐一、放課後だよ」
 これ、『To Heart』みたいな昼休みは何する、放課後は何するってタイプのゲームなら区切りの意味があるんだけど、この作品でこんな事務的な挟み方してどうするんだろ?
 名雪は部活だと言ってるけど、香里は単に部室に立ち寄るだけみたい。香里が何の部活やってるかってのは原作ゲームでも明らかになってなかったと思うけど、何をやってるのかねぇ。

 新学期初日から部活で大変だろうという祐一に、走ることしか取柄が無いという名雪。そんなことは無いという祐一だけど……昨日今日やってきて出せるようなものは浮かばないわな。ま、典型的な美辞麗句に本気になって質問返してる名雪が意地悪というか何というか。で、出て来たのが立ったまま寝るってことかい。
 自分が名雪の家に居候してるってことは言うなという祐一だけど、
「ごめん、手遅れ……」
 登校前に口止めをしてなかった祐一がバカだな。
「今日の朝、みんなに言っちゃった」
 みんなにというのが名雪の付き合いの広さと言うか、豪快なのか……。そういって走って逃げようとする名雪だけど、階段で踏み外して、転落。その目の前にいたのが舞と佐祐理。2人とも災難だね。
 しかし、こうして2人と名雪を1画面で見たら、制服のスカーフの色が学年によって違うのが一目瞭然だな。しかし、転倒してめくれあがった舞のスカート(の中)に目を取られてる祐一……。舞とのファーストコンタクトだけど、こりゃ完全に警戒されてるな。

 すること無いからって学校を見物してる祐一。名雪の心配どおりに迷ってるってのが何とも。ま、ここで香里と出くわして助かるってのが原作通りの展開だけど……
 屋上に続く階段の踊り場でレジャーシートを見付けてるけど……言うまでも無く舞と佐祐理のだな。しかし、置きっぱなしにしてられるって、本当に誰も来ない場所なのか?
で、屋上の雪で遭難しそうになってるけど……この状況で自由に出入りできるようになってるってのが珍しいね。
 あちこち教室を開けてみてる祐一だけど……裸体デッサン中の美術室はまずいわな。ま、裸婦じゃなくておっさんだったけど。
 で、何とか香里に助けられたって展開だけど……
「振り返れば、美坂香里が立っていた」
 えらい美人じゃないのか……ま、完全にハルヒのあのシーンを意識した台詞だろうけどね。
 祐一のことを以前から名雪に聞いていたという香里。ま、祐一がこっちに来ることになってからだとは思うけど、7年前に会って以来のヤツのことをよくそんなに覚えてるものだね。(祐一みたいに完全に忘れてるのは別としても)
 香里が祐一を助けた代わりに置き去りに忘れられてる北川、哀れね。
「美坂香里か、クールな女だな」
 これは香里が挙動不審な祐一のことをどこかの工作員か何かだと思ったって台詞に掛けてあるんだろうけど、違和感ありまくり。

 で、お約束の鯛焼き泥棒登場。
「どいて、どいて~~」
「よし、箸を持つほうに避けるんだ!」
 どうでもいいけど、相手が左利きの可能性は考えて無かったのか?……って、本当に左利きだったのか。てっきり慌ててたからどっちが箸を持つほうかわからなかったってオチかと思ったけど。
 例のごとくあゆに引っ張られて逃げてるのは良いけど、道に迷ってしまった祐一。今日は災難続きだね。
 祐一が昨日引っ越してきたばかりだけど7年前には来てたと聞き、祐一のフルネームを口にしてるあゆ。同時に祐一もあゆのことを思い出したみたいだけど……。再会を喜んで飛びつこうとするあゆをとっさに避けてる祐一。で、あゆは木に激突……哀れ。
「もしかして、全然痛くも痒くも無かったとか?」
「すっごく、痛かったよぉ~~~!」
 こりゃ祐一が相当に酷いんだけど、なぜかあゆにだけは許されるんだな。これ、他のヒロイン相手にやったら完全にお終いっぽいんだけど。

 で、その激突の衝撃で落ちてきた雪に埋もれる被害に遭った悲惨なのが美坂栞。おまけに謝りに来た祐一とあゆの漫才をきょとんとして見せられるはめになってるし……
 何とか散乱した落し物を回収して、自分の家はこちらだと帰ろうとする栞を慌てて引き止める祐一。ずいぶん深刻そうな表情だから何かと思えば……
「帰り道を教えてくれ」
 そういえば、こいつら迷子の最中だったな。
 指切りして祐一とまた会う約束をし、走り去っていくあゆ。連絡先を聞きそびれてる祐一だけど、昔からそういうやつだったってか。7年前もどこのガキか知らずに遊んでたって話ね。

 そんな祐一の様子を伺ってる怪しい人影。
「やっと見付けた。あなただけは、許さないから!」
 いきなしマントだか毛布だかを脱いで祐一に殴りかかってくる真琴。ま、緊迫感とか雰囲気的なものは確かにこの方が良いんだけど、東映版のダンボール箱の印象が強いからねぇ。真琴の登場シーンはあれでやってもらわないと物足りないなぁ。
 しかし、攻撃が全然祐一に効かないのが悲しいね。真琴はテーマ曲が一番かっこいいんだけど、キャラがこれじゃあねぇ。で、腹が空いてるからってあえなくダウンってのがマヌケ。


【サブタイトル解題】

 「入祭唱」とはカトリックのミサの始めに唱えられる、式次第のような文言。音楽的にはレクイエムの最初に置かれる導入的な音楽のことですね。ここでは宗教的な意味合いはまったくないから、儀式の初めとか、物語の導入部とか、その程度の意味でしょう。
 前回と同じく、「雪の中」ってのも登校のところと、栞が埋もれたところぐらいだから、雪国の町ってことを表してるぐらいでしょう。「前奏曲」と「序曲」をすでに使ってるから「入祭唱」なんて言葉を無理やり探し出してきたって感じですが、とりあえず舞、栞、真琴の3人も祐一の前に一通り出てきたから、次回から本格的に物語に入っていくというところでしょうか。


【使用BGM】

01.「約束」
  あゆの声による夢の光景。
02.「Last Regrets」
  OP
03.「2 step toward」
  サブタイトル~水瀬家の朝食
04.「pure snows」
  登校途中
05.「彼女たちの見解」
  転入生の自己紹介~放課後
06.「木々の声と日々のざわめき」
  迷子の祐一
07.「日溜まりの街」
  あゆとの激突
08.「約束」ピアノアレンジ版
  再会
09.「笑顔の向こう側に」
  栞登場
10.「約束」ピアノアレンジ版
  あゆとのゆびきり
11.「the fox and the grapes」
  真琴登場
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告


 栞と真琴はテーマ曲を伴っての登場ですが、舞はサービス的な登場ってこともあってか曲無しです。ま、こんなところで舞のテーマ曲出して来ても違和感あるだけだし。
 「約束」のピアノアレンジ版はゲームのサントラではなく『AIR』とカップリングのピアノアレンジアルバム『Re-feel』から。


【謎ジャムの研究】

 さて、謎ジャムです。やはり『Kanon』を扱う以上、この問題を避けて通るわけにはいきません。今後もあゆや真琴が犠牲者となると思いますが、あまり引っ張るような問題ともいえないので最初に取り上げておきましょう。

 まず、謎ジャムとはどんなものかですが、画面から見るに普通に黄色いジャムのようです。見た目、マーマレードとそう変わらないような気がします。
 問題は味です。一説には「甘くない」から砂糖は使われてないとか言われていますが、常識的に考えてこれは程度の問題であって、甘いのが苦手な人でも難なく食べられる程度に甘さを抑えたものだと解釈するのが適当でしょう。まったく甘味が無いんならジャムとは言えません。実際、賞味した人のコメントからは確かにずばり「甘い」という感想は無いものの、甘さを否定するような感想もありません。甘さを含んだ上での「独創的な味」ということでしょう。

 最大の問題は不味いのか、そうでないのかというところです。まず押さえておくのは秋子さんの料理だということです。そんじょそこらの料理の苦手なヒロインが作った凶悪メニューってわけではありません。自他共に料理が得意だと認める秋子さんが自信作だというジャムなのです。けっして不味いというわけではないのでしょう。
 そりゃ、秋子さんに面と向かって不味いとは言えないにしても、本当に不味いのなら陰口で不味いというはずです。しかし、誰一人はっきり不味いとは言っていないのです。

 それでは、いったい何が謎ジャムを口にした人を恐怖に陥れるのでしょうか?

 おそらく、それは風味でしょう。普通、ジャムといえば材料に果実を使うものですが、秋子さんはそうじゃないものを原料に使ったために、その原料独特の風味がでてしまって、それに馴染めないものに恐怖を与えてしまってるのではないかと思います。
 とはいっても秋子さんに効いても「企業秘密」だと言って教えてくれないので、想像するしかありませんが、秋子さん自身は自信作だと言って(おそらくは)平気で食べられてるものなので、あまり変なものは使われてないはずです。

 可能性が高そうなのは黄色いパプリカってところでしょうか。緑のピーマンほども癖が無いから適量の砂糖で煮詰めればそれなりの甘くないジャムにはなりそうな気はします。ま、ジャムにするには硬い外皮の部分は削って肉質の部分だけを用いる必要があると思いますが……
 パプリカだけなら容易に判別が付くって気がしますから、複合素材という可能性もあります。パプリカの苦味を押さえるためにキャロット(ニンジン)を用いるというのはありえそうですね。
 で、味はともかくとして、パプリカとニンジンの混ざった風味のするジャムが出来上がるわけです。どんなものかは作ってみないとわからないけど、ピーマン嫌いやニンジン嫌いには敬遠したくなるような代物でしょうねぇ。


【その他】

 学校で迷子になってる祐一ですが、この学校、いったいどれだけ広いのやら。でも、麻帆良学園みたいな巨大学園都市ならともかく、前回見た外見からは普通の学校ぐらいにしか思えないから、単純に一定方向に歩けば出口に突き当たりそうに思うのだけど、祐一の話では曲がり角だらけっていうから、いったいどんな幾何学構造をした校舎なんでしょうかねぇ。
 クライン管構造になってて奥に進めば進むほど無限につながってるとか、トポロジー異常が起こっててどこがどこに繋がってるかが一定でないとか……なんか謎ジャム以上の謎ですね。

 迷子といえばあゆと逃げた道もそうだけど、こっちは単純に適当に走ってきたら知らない場所に来てしまっただけみたいですが。
 しかし、7年ぶりの感動の再会とか、栞の件とかのドサクサに紛れて、結局、鯛焼きの食い逃げを謝りに行ってないな、こいつら。もうこの町で鯛焼きは食えないぞ。

 どうでもいいけど、おっさんの裸体デッサンは嫌。美術部と思うけど、悲惨な部活だな。ま、高校の部活じゃ裸婦のモデルは雇えないだろうけど。かといって自分がモデルになるというような殊勝な女子部員もいないだろうし。なんか悪夢に出てきてうなされそうだな。

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #01

2007年06月20日 | アニメ
 ま、タイトルは「けろぴーと苺サンデーをめぐる冒険」でも「ぴろと豚まんをめぐる冒険」でも「魔物と牛丼をめぐる冒険」でも「ショールとアイスクリームをめぐる冒険」でも何でも構わないわけですが、とりあえずこれから24回掛けて京アニ版『Kanon』を見ていきましょう。

 第1話「白銀の序曲~overture~」

【ストーリー雑感】

 吹雪の中を進む列車の中の祐一。そして駅前のベンチで誰かを待ち続けてるけど……そこに現れた名雪。雪が積もってるという名雪に、2時間も待ってるからと答える祐一だけど、近くに屋根のある場所があるんだからそこで待っとけよ。
 互いの名前を確認しあう名雪と祐一だけど……「花子」とか「次郎」とか、もうちょっとそれらしい名前の方がって気がするけど、それじゃ名雪が冗談言ってると気付かないだろうからね。
 東映版と違って、ちゃんとしたOP付き。『AIR』と同じくゲーム版のOP曲をそのまま持ってきてるんだけど、これってビジネス的にはどうなんだろうね。普通はアニメ版独自の主題歌を作ることで曲そのものの著作権問題の解決とか、商品展開による製作資金の回収とかを図るんだけど……。ま、Keyとの契約しだいではJASRAC管理外の曲ってことで著作権使用料が発生しないならコストの削減にはつながってるのかもしれないけど。

 あゆの声で語られる夢だか回想だかのシーン。ま、ゲーム版と同じく祐一の夢って解釈で良いんだろうか。ま、これがある限り、あゆがプライマリヒロインって路線は変わらないんだろうねぇ。
 祐一が起きて来たら、名雪が制服が無いって騒いでるところ。秋子さんが洗濯してたって言ってる祐一だけど……学校の制服って自宅で水洗いできるのか。社会人になったらスーツはクリーニングに出すのが普通だからねぇ。
 陸上部の部長だからって、冬休み最後の日に練習に出掛ける名雪。どこぞの探偵アニメの女子空手部の主将みたいに名前だけで全然部活動してる様子が無いキャラと違って、ちゃんと部長の務めは果たしてるのね。
 名雪を見送る祐一の前に、怪しげに湯の入った鍋を持って現れる秋子さん。祐一はびびってるみたいだけど、空鍋じゃないから大丈夫だろ。 ^_^;
 何のための鍋かと思ったら、門扉の取っ手に熱湯をかけて、凍てついてるのを融かすためか。雪国の生活の知恵だね。
 水瀬家の前の雪掻きを手伝う祐一。さては、この労働力のために召還されたか。ここでとってつけたように秋子さんの紹介が入るけど、同時に名雪が祐一の従姉妹だともわかる仕掛け。設定知ってたら全然不要なんだけど、これで初めて見る人間もいるだろうからねぇ。
 部活から帰って来て祐一に町を案内するという名雪。7年前までちょくちょく来てたんなら不要って気がしないでもないけど、この7年の間に再開発とかで町の様子が変わったりでもしたのか? ま、案内にかこつけてデートしたかっただけかも知れないけど。
 どうでもいいが、雪国は違反車のレッカー移動の通知も雪の上に書くんかい。「すべりどめ砂」ってのは雪が融けて車がスリップして動かなくなった時に使うようなものなのかな。
 そして学校。新校舎の建ってるところは昔は麦畑だって言ってるけど、これは舞シナリオへの伏線だな。ここで祐一たちが去った後に舞と佐祐理がさりげなく登場。舞が野良犬をかまってたところに佐祐理がやってきたって状況だけど、最後で舞が祐一たちが歩いていってる方を向いてるのが細かいなぁ。これ、気をつけて見てないと、どっちがどっちの方向かわからないんだけど……
 校舎の向こうに見える病院を指差してる名雪。いうまでもなく、あゆが入院してる病院なんだけど……その病院話題の間にさりげなく美坂姉妹がすれ違ってるって展開。名雪が香里に気付いてないのは祐一との会話に夢中だったってことだろうけど、香里の方も名雪に気付かなかったのか? ま、名雪が男を連れてたから、彼氏とデートかと思って気を遣って声を掛けなかったって可能性もあるけど。それにしても、この頃はまだちゃんと仲の良い姉妹だったのね。
 ……と思ってたら、その後、ビル街で香里と北川が声を掛けてきてるって……それじゃ、栞と一緒にいたのは香里じゃなかったのか。しかし、登場早々香里の荷物持ちでこき使われてる北川って……。東映版では学校での登場が最初だから、基本的に私生活で北川の出番は無かったよな。しかし、香里のキャラがずいぶん存在感アピールしてるな。
 ビル街に林の光景を見てる祐一。ラストへの伏線だけど、こんなとこに出して来ても誰も覚えてないだろうなぁ。

 丘に登って町を見下ろしてる名雪たち。昔よく登ったという名雪だけど、祐一は覚えてない様子。しかし、町からずいぶん離れてる感じがするのに、夕方になってからよく登ったものだね。
 キツネを見付けて近寄ろうといてる名雪。さてはこれが真琴か。しかし、こんな人里近くに珍しくも無くキツネが出てくるのか?
 スーパーの前で名雪が買い物するのを待ってる祐一にぶつかってきてる鯛焼き泥棒。しかし、何で祐一の手を引っ張って逃げるかなぁ。
 喫茶店に逃げ込んだら、鯛焼き屋のおじさんが追いかけてきてる様子。不審に思う祐一に事情を話すあゆだけど……話に出て来た猫って、ピロか? しかし、あゆを追いかけてきてるおじさんだけど、ずいぶん走って来たように思うけど、屋台を置き去りにしてて良いのか? ま、鯛焼き屋の売り上げなんて知れてるから、現金はすべて身に付けてるのかもしれないけど……
 最近は物騒だから、ちょっと眼を離したら屋台ごと盗まれてるって状況もありえるけど、たかが鯛焼き数個を食い逃げされたからって追い掛けてたくらいで商売道具全部盗まれたらシャレにならんだろうなぁ。
 それにしても、あゆって自分が羽リュック背負ってることに気付いてなかったのか? ま、浮遊霊(生霊)が実体化したようなものだし、それも祐一がこの町に帰って来たのがきっかけみたいなものだと思うから、おそらく意識が生まれた時にはその格好のままでいたってことだろうけど……
 あゆに振り回されて名雪との約束をすっぽかしてしまった祐一。鯛焼きの金は出さされるわ、名雪には怒られるわ、散々だな。そういえば逃げ込んだ喫茶店も何も注文せずに出て来たとも思えないし、あゆは無一文だから祐一が払わされたんだろうねぇ。
 結局、昨日の名雪の2時間遅刻とで帳消しってことで、名雪の怒りは収まったけど……届いた荷物を開けるのが面倒だからって、名雪に目覚まし借りたのが運の尽きだな。
 その夜、祐一が見た夢。7年前にも同じようにスーパーの前で名雪を待ってる間にあゆと出会ってたってことか……

【サブタイトル解題】

 毎回のサブタイトルには音楽用語が組み込まれています。第1話だから「序曲」なのは妥当としても「前奏曲」じゃないのは、事前にパイロット版的に発売されたDVDに『プレリュード』が使われてるからでしょうか。
 しかし、一般的に「序曲」は単独の独立作品として大きな存在であるにに対し、「前奏曲」は前座的な小品といった感じがします。どっちを選べといえば、パイロット版を「序曲」、第1話は「前奏曲」の方がしっくりする感じがしますね。
 その「序曲」の前に付けられた「白銀」はいうまでもなく、北国の雪景色を現しています。もっとも、「白銀」にふさわしい雪景色は、あんまり物語の中心的な光景ではなかったみたいですが……

【使用BGM】

01.「夢の跡」
  雪の中、駅前のベンチで名雪を待つ祐一 ~ 名雪との再会
02.「Last Regrets」
  OP
03.「約束」
  冒頭のあゆナレーションの夢のシーン
04.「2 step toward」
  サブタイトル ~ 名雪の着替え
05.「彼女たちの見解」
  祐一の雪掻き
06.「雪の少女」
  町を案内する名雪
07.「pure snows」
  Bパート冒頭、町を見下ろす丘
08.「日溜まりの街」
  あゆ登場
09.(『パッヘルベルのカノン』)
  逃げ込んだ喫茶店の中のBGM
10.(「日溜まりの街」スローバージョン)
  鯛焼き屋に謝罪 ~ 背中の羽
11.「2 step toward」
  怒ってる名雪 ~ 仲直り
12.「冬の花火」
  夢の光景
13.「風の辿り着く場所」
  ED
14.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 あゆと逃げ込んだ喫茶店内のBGMが『パッヘルベルのカノン』というのが笑わせてくれますが、後はオーソドックスなところ。あゆはあゆ、名雪は名雪とストレートにテーマ曲が掛かってます。

【その他】

 東映版では後日談を描いた特典ディスクの『風花』で初めて触れられてたという香里と北川の関係ですが、京アニ版は最初っからくっつけてますか。
 2クール続けるならクラスメイト等のサブキャラの充実も必要なんでしょうが、メインキャラ以外はこの2人以外はろくに設定がありませんから、この2人を深めるという選択をとったと思われますが、どうなんでしょうか?
 京アニといえば『涼宮ハルヒの憂鬱』でクラス全員分の設定を一応作ってたみたいですけど、さすがにこれはそこまでやってないでしょうし。

 『涼宮ハルヒの憂鬱』といえば、祐一の声が東映版と違ってキョンの声に変わってるのはものすごく違和感ありますね。原作ゲーム(PS2版)ではプレイヤーキャラだから声が無いので、別に拘る必要が無いと思ったのかも知れませんが……

 それにしても、雪の降り積もる中を2時間もベンチに座り続けたという祐一。確かに絵にはなるんだろうけど、現実的な行動としてはどうかと思いますね。そりゃ、見渡す限りの平原で雪をしのぐ場所がどこにも無いというならわかりますが、そこ普通に駅前の広場だろ。近くに雪を避ける場所はいくらでもあると思うのですが……
 ま、幼い頃に別れたままの名雪の顔を見分ける自信がないから、ずっと待ち合わせの約束の場所にいたってことかもしれませんが、そんなのその付近にやってくるそれらしい人影をチェックしてりゃ済むと思うんですか……


検証:ヤマトVSホワイト・ベース もし戦わば

2007年01月17日 | アニメ
 ヤマトとホワイト・ベースが戦えばどっちが勝つかって、富野監督の話。ずいぶん昔のインタビューか何かの発言なんですが、最近ネットで割と頻繁に引っ張られてることが多いからちゃんと検証が必要ですね。いや、まさかホワイト・ベースが勝つだなんて本気で信じてる人はいないと思いますが、最近のガキ若いのはヤマトなんか知らないだろうから。

 富野監督の話ではヤマトなんか波動砲の一撃をかわしてしまえばホワイト・ベースが勝つに決まってるということなんだけど、はっきり言って論拠にも何にもならない杜撰な話ですね。波動砲なんか使わなくても、ヤマトの主砲はメガ粒子砲なんかより射程距離も長くて威力も大きいし、何より連発が可能。艦の装甲自体もヤマトの方が頑丈なのはそれぞれの作品を見れば一目瞭然。普通に1対1で戦ったらホワイト・ベースに勝ち目なんかまったく無いのは明らか過ぎます。
 だいたい恒星間航行用の宇宙戦艦と、たかだか月軌道あたりまでしか活動範囲の無い強襲揚陸艦を差しで戦わせるのが無理というものです。

 そこで、舞台にミノフスキー粒子を張り巡らせ、レーダーは利かないというガンダム世界の条件を付け加えてみましょう。ヤマトのコスモレーダーも使えないと仮定して、近接戦闘に限定します。
 これでも目視で主砲を打ち合う限りではヤマトの方が有利です。どう考えてもヤマトのパネルスクリーンの方が解像度が高そうだし……そもそも艦の設計の前提となる活動空間の広さの違いが出てくるから、これはいくらホワイト・ベースを贔屓目に見てもどうにもならないでしょう。
 そこで今度はショックカノン砲とメガ粒子砲を封じてみます。ヤマトの方は主砲も副砲も使えないことにします。ミノフスキー粒子が効いてるから煙突ミサイル等の誘導ミサイルも使えないってことで、これも封印。もちろん条件は同じにしないといけないからホワイト・ベースの主砲やミサイルも封じます。
 この状態だと艦同士で出来るのは対空砲火、パルスレーザーの打ち合いってことぐらいでしょうか。しかし、どう考えても対空砲の数はヤマトの方が多いし、やはり艦の装甲が違いすぎます。ホワイト・ベースがいくら弾幕張ったってヤマトはほとんど傷付かないんじゃないでしょうか。そりゃ第一艦橋を直撃すれば話は別でしょうけど……。
 この時点でもヤマトの方はまだ機雷や波動爆雷を落としたり、ロケットアンカーをぶち当てるとか他に有効な手はいくらでもあったりします。

 仕方が無いから次に艦載機戦を考えてみます。ま、いくらなんでも通常宇宙空間でコアファイターとかでコスモタイガーと戦えというのはあんまり。ここはミノフスキー粒子がある空間でモビルスーツを出すとします。
 コスモタイガーはレーダーが利かないけど、作品を見てたらほとんど攻撃目標は目視確認して攻撃してるから、そんなに不利ではないでしょう。ただ、モビルスーツの機動は通常の航空機の機動とは違うから、慣れた戦法で戦えないという点では困難さが伴うびは確かです。
 一方、ガンダムから見ればコスモタイガーは相対速度が速すぎて攻撃しにくいのが現実です。もっとも、通常の航空機の機動を考えればニュータイプのパーロットなら撃ち落せるかも知れません。でもガンダムは1機だし、使えるニュータイプのパイロットもアムロ一人。ガンキャノンは支援程度しかできないだろうし、ガンタンクは標的になるだけだから出さない方がマシ。
 ガンダム一機でどれだけコスモタイガーを落とせるかって話かというと、そんな簡単な話でもありません。ヤマトの艦載機はコスモタイガー隊だけじゃありませんから。コスモタイガーがモビルスーツを引き付けてるうちに中型雷撃艇がホワイト・ベースに攻撃仕掛けるって作戦だってありです。
 ま、艦載機同士の戦いではガンダムが勝ち残ったとします。しかし、ガンダムがヤマトに取り付いて破壊できるかといえば、多分絶望的です。そりゃヤマトに取り付いてしまえばビームサーベルの一撃で第一艦橋をばっさりってことも(ビームサーベルがコスモナイトやコスモテクタイトを切り裂くだけの威力があれば)ありだろうけど、ヤマトの速度はガンダムなんかよりは桁違いに速いです。艦載機を出してるからそれに合わせて速度を落としてるにしても、ガンダムが全速で飛行したって追い付けないでしょう。せいぜい擦れ違いざまにビームライフルを撃ったって当たるかどうかは疑問だし、当たったところでヤマトにとっては石ころが当たった程度にしか感じないでしょうね。
 ヤマトが静止していればガンダムだって取り付けるかもしれないけど、そもそもそこまで速度が違うということは作戦行動圏の範囲が違うってことです。ヤマトが艦載機戦闘空域の外に控えているとすると、それはガンダムにとってはとうていたどり着くことの出来ない遥か彼方の宇宙空間ってこと。ヤマトの世界とガンダムの世界じゃ、そもそも認識できる空間の広さの概念が違うのです。
 ミノフスキー粒子下の艦載機戦という範囲では、その状況に特化したモビルスーツを有するホワイト・ベース側に有利に働く側面があるけど、それはあくまでその範囲に特化した話であって、たとえガンダムがヤマトの艦載機を全滅させたところでヤマトを沈めることは出来ないということです。

 最後に究極の決戦方法、白兵戦を考えましょう。
 ま、ホワイト・ベースにサイド7の難民がいたら足手まといになってどうしようもないし、ヤマト側に肉弾戦闘専門の空間騎兵隊がいたら圧倒的に有利だから、その辺のハンデはなくしておきます。ホワイト・ベースはジャブローから宇宙に上がった後の状態、つまり難民はいなくて、現地徴用の素人たちが十分に軍人として育ってから。一方、ヤマト側はテレザート星に向けての地球発進時ぐらい。定員に対して約半数ぐらいのクルーしかいないけど、ホワイト・ベースだって正規の搭乗員数は足りないまま現地徴用兵でまかなってるんだから、これで五分五分の条件ってところかな。
 白兵戦と言ったって『銀英伝』みたいに斧で殴りあいながら血まみれになる戦いをするわけじゃありません。艦内で銃器をぶっ放すという危ない戦い方です。
 ヤマトの白兵戦戦績というと、イスカンダルからの帰路でのデスラー戦、白色彗星帝国戦時のデスラーとの決着、ラジェンドラ号を追って太陽系に侵入してきたダゴン艦隊の一隻との戦いぐらい。(いや、彗星都市帝国内部での戦闘や都市衛星ウルクでの戦闘も白兵戦には違いないけど、艦同士の戦いではないから除外)
 一方、ホワイト・ベースはというと、グフを失ったランバ・ラルがギャロップを使った追撃戦で乗り込んできたのが唯一の例でしょうか?
 ヤマトの場合、最初のデスラーの時は放射能ガスでまともな白兵戦にはならずに一方的にやられてた感じで、コスモクリーナーの発動でデスラーを追い返したってところだから通常の白兵戦とは言えません。その次のデスラーとの白兵戦は主力が空間騎兵隊だったからやはり参考にはならず、唯一正規の乗組員だけでまともに白兵戦やったのはダゴン艦隊の時だけ。この時は厨房まで戦闘に巻き込まれて古代の同期である平田が戦死してるんだけど、どうにか敵は撃退してるから、放射能ガスとかの特殊な要因が無い限りは普通に戦闘できる態勢はあるって感じにょ。
 ホワイト・ベースの場合、乗り込んできたランバ・ラル隊が小数過ぎるし、アルテイシアと出くわしたランバ・ラルが戦意を喪失して去っていったようなものだからまともな戦闘にはなってないけど、画面を見る限りじゃあまりに無防備すぎって感じです。マ・クベに補給を横取りされずにもうちょっとランバ・ラル隊に戦力があれば、ホワイト・ベースは確実に落ちてたところだと見たけど、どうでしょうか?
 ま、ホワイト・ベースは元々サイド7出航時の現地徴用の素人が多く、ろくに射撃訓練も受けてないのが大半だろうから、肉弾戦専門ではなくても正規の兵員教育を受けてきたヤマトの乗組員相手にはまともに戦えないのが正直なところかと思います。

 そういうわけで、波動砲なんかなくてもヤマトがホワイト・ベースなんかに負ける可能性は万が一ぐらいしかありえないでしょう。
 ヤマトの作品をちゃんと見てる人ならわかる話なんですが、ヤマトの強さは波動砲なんかじゃなくて、その驚異的な装甲の頑丈さと主砲の命中精度なんですね。そもそもホワイト・ベース1隻相手にするのに波動砲を使うなんて効率の悪いことは絶対にしません。

涼宮ハルヒの突撃 それゆけ!宇宙戦艦スズミヤ・ハルヒ(後編)

2006年08月18日 | アニメ

 すっかり掲載するのを忘れてた…… ^_^;

   ☆ ☆ ☆

 現在のところ両軍の残存戦力を比較すると、SOS団チームは古泉艦隊が全滅、俺の艦隊が半壊、ほぼ無傷なのはハルヒ艦隊、長門艦隊、朝比奈艦隊で3.5。しかし、朝比奈艦隊は戦力外だし、長門艦隊も策敵に専念しているから攻撃に使える戦力は1.5しかない。一方のコンピ研部長+エスタナトレーヒチームの方は御堂艦隊と松明屋艦隊に大きなダメージを与えたものの残りの部長艦隊、山本艦隊、白鳳院艦隊はほぼ無傷で戦力は4.0。まともに戦っては勝ち目が無いのは確かだ。
 もちろん、長門艦隊を攻撃に転用したり、朝比奈艦隊の指揮を長門に任せるという奥の手もあるが、それは最終手段。現状で勝ちに向かうにはやはり敵の大将である部長艦隊を集中的に叩くことしかないのだが、ハルヒの目には山本洋子の映ってないらしい。
「向こうが来ないのなら、こっちから攻め込むまでよ! さあ、敵陣に乗り込むわよ! みくるちゃん、逃げてばかりいないで前に出て盾になりなさい!」
 ハルヒは朝比奈さんの艦隊を盾にして敵陣に突撃するつもりらしい。何とも強引で自分勝手な指示である。
「ひぇ~~、そんなのできませ~ん」
 泣いて逃げ惑う朝比奈さん。だいたい、このまま突撃しても当たるのが山本艦隊とは限らない。下手すれば敵の総戦力に包囲されて袋叩きにされる危険もあるのだ。
「ハルヒ艦隊右舷後方に白鳳院艦隊接近!」
 古泉艦隊を全滅させた白鳳院綾乃の艦隊がここまで回り込んで来たらしい。
「うるさいわねぇ。キョン、回り込んで挟み撃ちにするのよ。露払いに葬り去ってくれるわっ!」
 俺はハルヒの指示にしたがって自分の艦隊の進路を変えて、白鳳院艦隊の側面を突くコースに転じた。ハルヒは艦隊を反転させ白鳳院艦隊の正面から迎え撃つ態勢に入ったが、接触寸前に白鳳院艦隊は大きく進路を変えてハルヒ艦隊から逃げる構えを見せた。
「逃がすものですか。追うわよ、キョン!」
 そう言って追撃に転じるハルヒ艦隊は大きく釣り出された形になった。
「まずい」
 俺は序盤で御堂艦隊に釣り出されたことを思い出した。いや、あの時と違って今は長門の斥候用の分艦隊がハルヒ艦隊をカバーしてるはずだ。敵が待ち伏せしてるなら最初に長門のレーダーに掛かる。

「ハルヒ艦隊左舷前方に松明屋艦隊接近!」
 案の定、アウトレンジ攻撃に特化した空母主体の松明屋艦隊が待ち受けていた。いや、それだけではなかった。
「ハルヒ艦隊右舷前方に御堂艦隊接近!」
 どうやら敵はこちらの大将であるハルヒ艦隊を集中的に攻撃して一気に決着を付けようとしているらしい。戦力比は約1.5対2.0。こちらが不利である。例えここをしのいでもダメージが蓄積されたところを無傷の山本艦隊に襲われでもしたら万事休すだ。
「有希、あんたも戦闘に加わりなさい!」
 ハルヒは索敵に専念中の長門艦隊を攻撃に加わらせようとした。確かに長門艦隊が加われば当面の敵に対する優位には立てる。しかし、斥候用に広大なマップの各地に分散した分艦隊をすべて呼び戻すには時間が掛かるはずだ。それに、長門艦隊の斥候部隊を引き上げれば優位にあったはずのこちらの情報収集能力を自ら放棄してしまうことになる。
「全艦隊を戻してたら時間が間に合わない。近傍の分艦隊だけ集結させ、残りは索敵を続行させる」
 長門はそう言ってハルヒ艦隊の比較的近くにいる艦隊だけを集結させ始めた。集結して減った分艦隊の数だけ索敵継続中の分艦隊を分割し、ルール上での分艦隊の上限数を維持し、それで索敵能力の低減を補おうとしていた。もちろんそんなことすればひとつの分艦隊の戦力はどんどん小さくなっていくから、敵艦隊と接触すればたちまち壊滅の憂目を見る危険性が高い。

 敵の待ち伏せに突っ込んでいく形のハルヒ艦隊は、それでも進路を反転しようとはせずに白鳳院艦隊の追撃を続け、長門艦隊の到着を待たずして松明屋艦隊の艦載機部隊に接触した。それでも追撃をやめないハルヒは対空砲火で何とかしのごうとする。
 松明屋艦隊の戦力もすでに半減しているとはいえ、一撃必殺の大艦巨砲主義に徹底したハルヒ艦隊は艦載機からの攻撃に対する反撃能力は低い。大艦ならではの装甲の厚さによって辛うじて耐え忍んでる様子だ。目に見える被害は出て無いとはいえ、相当に拙過ぎる状況である。俺が行って何とかしてやりたいところだが、俺の艦隊の目の前には御堂艦隊が迫っていた。
 しかし、気になるにはハルヒが追ってる白鳳院艦隊だ。こいつが逃げている間は松明屋艦隊にしろ御堂艦隊にしろ個別に対処すればいい。しかし、味方が戦場に到着した今、いつまでも逃げ続けるとは思えない。こいつが反転して反撃に転じてくればこっちの状況は苦しくなる。
 ともあれ、当面は目前の敵、御堂艦隊を叩くしかない。こいつの性格はわかっている。ハルヒと同じ突出型の指揮官だ。ならば、正面からぶつかるのは愚の骨頂。俺は艦隊を二手に分け、それぞれ左右に迂回させて御堂艦隊との正面衝突を回避、両側面から包囲態勢に入る。この作戦は成功し、御堂艦隊の戦力は瞬く間に半減した。悔しがるおでこの姿が目に見えるようだ。
 これが個別の艦隊戦ならそのまま艦隊を反転させ、御堂艦隊の残存戦力を叩きに向かうところだか、そんなことしている場合ではない。一刻も早くハルヒ艦隊に追い付いてサポートしてやる必要がある。

 相変わらず松明屋艦隊艦載機のアウトレンジ攻撃を浴び続けてるハルヒ艦隊だったが、さすがの大艦巨砲主義思想による分厚い装甲も耐久力の限界が来て次々と被害が現れ始めていた。
「うるさいハエどもねっ! キョン、何とかしなさい!」
 やれやれ。こいつは目指してる敵以外自分で何とかしようとは考えないのか、まったく。ハルヒ艦隊の左舷前方からアウトレンジ攻撃を仕掛けていた松明屋艦隊だったが、まったく相手にしようとせずひたすら白鳳院艦隊を追い掛けてるハルヒ艦隊に引き摺られる形になっていて、ハルヒ艦隊を追い掛けてる俺の艦隊との距離もいつの間にか縮まっていた。おまけに、松明屋艦隊の虎の子の艦載機戦力はハルヒ艦隊の攻撃に掛かりっきりになったままだ。これはチャンスである。俺は防御力が手薄になった空母主体の松明屋艦隊を叩くため、進路を転じ、全速力で松明屋艦隊に向かった。
 一方、一目散に追い掛けて来るハルヒ艦隊を釣り出した形になっていた白鳳院艦隊はマップの中心の障害物のあまりない広大な空間にたどり着くと、おもむろにその進路を反転させた。最初からハルヒ艦隊を釣り出したところで反転し、側面から迫ってた御堂艦隊、松明屋艦隊と共に挟み撃ちする作戦だったのだ。しかし、そうは問屋が卸さない。俺の艦隊に叩かれた御堂艦隊は反転して追撃してくるだけの戦力は残って無いだろうし、松明屋艦隊の前には俺の艦隊が立ちはだかってる。
 残るは未だ戦線に加わっていない山本艦隊と部長艦隊だが、部長は危険を冒してまでまず出て来ないだろう。問題は山本艦隊の消息であるが、長門の探索に関わらず現時点で引っ掛かっていないというところを考えれば、当分は直接的な脅威と考えなくて良いだろう。
 松明屋艦隊の艦載機攻撃を受け続け、その被害が出てるとはいえ、ハルヒ艦隊と白鳳院艦隊の戦力差はそうないはずだ。1対1の艦隊戦になればハルヒ艦隊の大艦巨砲主義が効果を発揮してくれるだろう。山本艦隊の心配はその後で良い。俺はそう考えた。
 現実時刻の一四〇〇、運命の戦端が開かれた。松明屋艦隊を有効射程距離に捕らえた俺の艦隊は艦載機の出払った無防備な敵空母を次々に撃沈していく。もちろん、松明屋艦隊にも巡洋艦や駆逐艦の護衛部隊があるが、それらは主に航空攻撃からの防御に特化した編成であり、強力な打撃力のある艦隊戦での対応は想定されていないようだった。艦載機が出払ったところを叩かれるとは思ってもいなかったのだろう。
 それとほぼ同時にハルヒ艦隊と白鳳院艦隊との戦いも開始された。戦力はほぼ互角と考えた俺だったが、どうやらそれは間違っていたらしい。突進したり撃ちまくるしか能の無いハルヒとは違って、白鳳院艦隊の動きは頭脳的だった。ハルヒ艦隊自慢の強力な砲火もあまり被害を受けないように巧妙にかわし、一方でハルヒ艦隊の弱点を付くような細かい攻撃を仕掛けてきたのだ。
「なんかムカつく攻撃ね!」
 ハルヒはまるで薮蚊の大群を払い除けようとするかのように主砲を左右に散らして応戦するけど、白鳳院艦隊は散っては集まり散っては集まりを繰り返し、拉致が開かない様子。それでも互いの艦隊が真正面からぶつかってるのだから双方共に被害は甚大になる。
 これは不味いと俺は思ったが、そこに吉報が届いた。転進してきた長門の艦隊が白鳳院艦隊の背後を突いたのだ。いかに白鳳院艦隊が善戦しようとも、猛烈な速度でコマンドを打ち込んでる長門艦隊の攻撃を背後に受けてはハルヒ艦隊への攻撃を続けられない。白鳳院艦隊はたまらず進路を変えて退却のコースをたどり始めた。
「逃がすものですかっ!」
 たちまち追撃に向かおうとするハルヒだけど、自分の艦隊も満身創痍なのはお構い無しらしい。
「自分の艦隊を立て直そうとか思わないのか?」
 俺は頼むから敵に釣り出されるのはやめてくれるようにとのことを婉曲的に言ったのだが、その真意をハルヒが理解したようには思えなかった。
「叩けるときに叩いておく。これが勝利の鉄則よ!」
 ハルヒがやられたらその時点で俺たちの負けは確定するから少しは自重してくれと言いたいところだが、言っても無駄だろう。幸い、長門の艦隊が援護に回ってるからそんなに心配は要らないのかも知れないと思ったのだが、すべては二重三重にも計画された敵の巧妙な罠だったのである。

《右舷、第13水雷戦隊壊滅!》
《右舷、第65駆逐戦隊壊滅!》
《第4戦隊、戦闘不能!》
 突如としてハルヒのコンソールに次々に表示される被害状況。
「な、何よ、いきなり!」
 突然のことに慌てふためくハルヒ。
《第34ミサイル艦群大破!》
《第1防空戦隊通信途絶!》
「有希、敵の接近に気付かなかったの!?」
「レーダーには何も映ってない」
 長門がポツリと答えた。しかし、いきなりハルヒ艦隊の至近距離に現れた敵部隊はヒットアンドアウェイ攻撃を繰り返し、着実に大きな被害を与えている。
「しゅ、瞬間物質移送機……」
「ま、まさか。デ……いや、相手の隠し機能ですか?」
 俺と古泉が顔を見合わせた。
「いや、それは無い」
 長門はあっさり否定した。
「敵は細かく分けた分艦隊を順番に、こちらの索敵圏外からピンポイントでワープさせて攻撃してきている」
 つまり、こちらの艦隊の位置は交戦中の敵艦隊からは明らかであるから、それを利用して一気に勝負をかけてきたのだ。これが今まで姿を現さなかった山本艦隊の秘策だったのである。艦隊がワープするには一定時間以上、エネルギーを蓄積する必要がある。向こうがワープで仕掛けてきたからってこちらも簡単にワープするわけには行かない。
「ムカつくわ! こんな攻撃であたしを倒せると思ってるの、山本洋子!」
 強がるハルヒだったが、どう見ても被害は拡大していく一方だった。ハルヒを援護しようとする長門艦隊だったが、新手の分艦隊はことごとく長門の手の届かない場所に出現してハルヒ艦隊に攻撃を加えていく。いくら長門のコマンドオペレーションが早くてもシステムに規定された以上の艦隊速度は出せない。
 もはや敗北は必至だった。俺の脳裏には猫目の少女の勝ち誇る姿が浮かんだ。

 しかし、勝負は意外なところで決着が付いた。逃げまくってるあまり誰からもその存在を忘れ去られていた朝比奈さんの艦隊がマップを大きく迂回してたどり着いた先でたまたまコンピ研部長の艦隊と遭遇し、どういうわけだか奇跡的にこれを打ち破ってしまったのだ。いくら山本洋子が圧倒的に優位な戦いを繰り広げていても自軍の大将を守れなかったらそれでお終いである。勝負はSOS団チームの勝利に終わったのだ。
 俺はその時に知ったのだが、長門が懸命にキーボードを叩いていたのはハルヒ艦隊の援護のためじゃなく、朝比奈艦隊のコントロールに介入して部長艦隊と戦っていたのだ。
「みくるちゃん、よくやったわね」
 何も知らないハルヒが朝比奈さんを褒めていたが、朝比奈さんの方も何がどうなっていたのか理解できてない様子だ。

 自分が原因で敗れた部長はぐったりとうなだれていたが、助っ人のエスタナトレーヒチームの4人はさばさばとした様子だった。
「惜しかったなぁ。あと少しやったのに……」
「あたしがあれだけ犠牲出してるのに、あんた出てくるのが遅いのよ、ヨーコ!(キラ~ン)」
「初めてでしたけど、なかなか奥の深そうなゲームでしたわ」
 それぞれに感想を述べてる3人。そして最後に猫目の少女が言った。
「なかなか楽しませてもらったわ。あんな形で終わってしまうのは不本意だったけど、またお手合わせ願えるかな? 今度はあたしたちのフィールドで」
「もちろん! 望むところよ!」
 ハルヒはまるで自分が実力で勝ったかのように、自信満々に受けていた。しかし、向こうのフィールドということは向こうが圧倒的に自信を持ってるジャンルということだぞ。対戦型格闘ゲームか、対戦型シューティングゲームか、それが何なのかはわからないけど、この『THE DAY OF SAGITTARIUS IV』でこれだけ苦戦してたらとても敵う相手とはとても思えないのだがな。

《つづく?》

涼宮ハルヒの突撃 それゆけ!宇宙戦艦スズミヤ・ハルヒ(前編)

2006年07月15日 | アニメ
「我々が屈辱の敗北を味わって早1ヶ月あまりになる。だが、この間、無駄に時を浪費していたわけではない。コンピューター研究会の復興とSOS団への復讐、この宿願を果たすためであった。
 諸君、宇宙は広大である。必ずや我々の新戦力となるべき人材は発見されるであろう。コンピューター研究会は偉大であり、コンピューター研究会の栄光は永遠に不滅なのだ。ゆえに揺るぎ無い準備を整え、コンピューター研究会を再び北高文化部の盟主とするのだ。
 これより、私はコンピューター研究会部室に一目別れを告げた後、人材確保への旅に立つ!」

 俺たちの知らないところでコンピ研の部長がそう宣言したのは今から約1ヶ月ばかり前のことだった。それ以来、学校から姿を消していた部長が再びその姿を現したのは1週間前のこと。例のインチキゲーム『THE DAY OF SAGITTARIUS III』にさらに改良を加えた新バージョン『THE DAY OF SAGITTARIUS IV』を引っさげ、再び我がSOS団(というか、ハルヒ)に挑戦状を叩きつけてきたのだ。
「本日より7日後、ネットカフェ『七色星団』において艦隊戦力の決戦を申し入れる」
 前回の敗北の原因のひとつをネット環境の問題だと思ったのか、対戦場所を校外に変えてきたようだ。もちろん、向こうから場所を指定してきたということは事前に何らかのインチキを施してくることは容易に想像できたのだが……
「こんなのもう相手にしないわよ」
 ハルヒは完全に興味なしである。前回の対戦でさえハルヒ自身はそれほど好奇心を持っていたようには見えず、もっぱらはまっていたのは長門だったからだ。だから、コンピ研部長がSOS団のメールボックスに送り込んできたビデオメールによる挑戦状は即座にゴミ箱に捨てられようとしていた。
 しかし、アイコンをドラッグしてるハルヒの手がふと止まった。コンピ研が助っ人に呼んで来たというメンバーに何か心当たりがあるようだった。

「挑戦を受けるわ! 必ず通らなければならないSOS団の試練なのよ。必ず勝ってイスカンダルまでたどり着くのよ!」
 急にやる気を出してそう言い放ったハルヒ。俺はハルヒに言われて、その文言を一字一句間違えないように返信メールにしたためて送信させられた。やれやれ。しかし、イスカンダルって何だ?

 そして1週間が過ぎ、対戦の日がやってきたのだ。
 ネットカフェ『七色星団』は北口駅前の一角にある古ぼけた雑居ビルの中にあった。事前の調査によれば、案の定、コンピ研OBが経営する店のようだ。ここを貸切状態にして対戦会場にしたらしい。
「みんな、必ず生き残って勝利を味わうのよ!」
 なぜかハルヒの発案で水杯を交わすことになった。
「ゲームごときで命を落とすわけでもあるまい」
「気分よ、気分! もう少し雰囲気を楽しみなさいよ、キョン!」
 俺はハルヒにどやされながら、いつものように付き合うしかなかった。
「キョンくんも楽しみましょう」
 そう言って俺を慰めようとしてくれる朝比奈さんだったが……前回もひたすら逃げまくってるだけの人に言われてもなぁ。
 そうやって会場にたどり着いた俺たちSOS団チームを待ち受けていたのは、コンピ研部長が助っ人に掻き集めた敵チームのメンバーだった。

「こちらが、諸君の相手を務めるエスタナトレーヒ・チームの面々だ」
 そう言って部長が紹介したのは4人の女子高生だった。それぞれ、山本洋子、御堂まどか、白鳳院綾乃エリザベス、松明屋紅葉と名乗った。この4人と部長本人を加えた5人が俺たちの相手チームということらしい。
「あなたが北綾瀬の最終兵器ね」
 ハルヒはいきなり山本洋子と名乗った子にそう言った。何か良くない予感がするのだが、敵対意欲満々な感じである。
「いかにも、そうよ」
 相手も不敵な笑みを返してきた。
「何だ? 北綾瀬の最終兵器って」
 俺の疑問に答えたのは古泉だった。
「機関の調査によるとゲーマーの世界では有名な方みたいですよ。涼宮さんが急にやる気を出したのも、あの山本洋子という方に対抗意欲を掻き立てられたようですね」
 ちなみに山本洋子は猫目の表情、御堂まどかはおでこが広く、白鳳院綾乃エリザベスはお嬢様風で、松明屋紅葉はどこか馴染みの深い関西弁のキャラだった。

 顔合わせが終わった俺たちは、それぞれチーム別にパーティションで区切られた部屋に別れ、対戦準備を始めた。
 向こうで用意した会場と機材であることをいいことに、何世代も前の恐ろしく処理速度の低い旧式パソコンでも押し付けられるのかと思ったが、そんな小細工はしていないようだった。最新機種とはいえないものの、どれも1年以内に発売された一般的な処理速度のCPUを搭載したマシンである。
 もっとも、パソコンに小細工してないとはいえ、他も公平な条件になってるかどうかの保証にはならない。いざとなったら長門頼みという状況には変わりない。
「あたしは自分の手で山本洋子を叩くわ。他の連中は邪魔だからあなたたちで引き止めておきなさい!」
 相変わらず戦略もクソもなく勝手に作戦を指示しようとするハルヒであるが、このゲームは相手の大将を倒すのが目的だろ。敵の大将でもない艦隊を叩きに大将自ら突出してどうするんだ? ま、ハルヒの突出は前回も同じだったけどな。
 とりあえず、練習時間の間に長門にプログラムのチェックをさせておく。インチキゲームで勝ったって、敵も部長以外の4人は納得しないだろうからな。

 両チームともウォーミングアップが終わったところで開戦。例によってハルヒは各人の艦隊名を適当に名付けていたのだが、それはまどろっこしいのでここでは普通の名前で呼ぶことにする。
 長門の話によれば、今回はプログラムにズルは無かったみたいだ。あの助っ人の4人に絶対の信頼を寄せて、負けは無いと思い込んでるんだろう。
「みんな、作戦通りに行くわよ!」
 あの杜撰な思い付きのいったいどこが計画なんだという俺のツッコミも虚しく、案の定ハルヒ艦隊は山本洋子の艦隊を求めて突出していく。山本洋子を叩く云々はともかく、敵の位置関係が全然つかめていない状況で大将の艦隊が突出するのはあまりに無謀だ。
 俺は慌てて自分の艦隊をハルヒ艦隊の前に展開し、その進路を阻んだ。
「ちょっと、キョン。何するのよ!」
「ハルヒ、頭を冷やせ。敵の配置状況もわからないまま大将のおまえが突出してどうするんだ? おまえが真っ先に敵艦隊の待ち伏せを食らってやられてしまったら、即、俺たちの負けだ。別に山本洋子が逃げるわけじゃないだろ。敵の状況がわかるまで我慢しろ」
 俺は何とかハルヒを抑えた。しかし、だからと言って何もしなければ敵の状況もつかめない。斥候部隊を率いる長門艦隊の働きに期待するしかない。
 ちなみに開戦時のSOS団の陣形はマップの本陣中央にハルヒの司令艦隊。その脇に俺の遊撃艦隊がいて、両翼に雷撃戦能力を強化した朝比奈さんの艦隊と、砲撃戦能力を強化した古泉の艦隊。そして、マップ上の障害であるアステロイドベルトの向こうに長門の強襲偵察艦隊が配置された状況だった。本来なら両翼の朝比奈さん艦隊と古泉艦隊はハルヒ艦隊より前面に出て先に戦線に触れる配置をするはずなのだが、自分の艦隊での突撃に拘ったハルヒが後ろに下がらせたという形なのである。

 案の定、敵艦隊と最初に接触したのは長門の斥候部隊だった。マップの左前方10時の方向からその艦隊は現れた。しかし、その出現は予想より早過ぎた。高速艦で揃え脇目も振らずに突進してくるハルヒのようなバカじゃない限り、この時点で接触することはありえない。
「敵艦隊の指揮官判明。御堂まどかの艦隊」
 長門の報告に、俺は光るおでこを思い出した。どうやら向こうにもハルヒ同様の猪突猛進バカがいるみたいだ。
「山本洋子じゃないのね。じゃ、みくるちゃん、頼むわ」
 自分の望む相手ではないと知るとハルヒは朝比奈さんに振った。確かにこのまま進めばマップ左方に展開してる朝比奈さん艦隊の守備範囲なのだが、いきなしハルヒに振られた朝比奈さんは案の定パニックを引き起こしてる。
「ぜ、全艦、空間じゅ、重魚雷、発射用意!」
 敵艦隊がまだ有効射程距離どころか自分の策敵範囲にも入ってないのに攻撃しようとしてる朝比奈さん。まずい。このままだと敵が有効射程距離に入ってくる前に全弾撃ち尽くしてしまいそうだ。
「待ってください、先輩。あの艦隊は俺が叩きます」
 俺が側を離れるとハルヒが勝手に突進して自滅する危惧があったが、やはり朝比奈さんの方も心配だ。俺は自分の艦隊を左に移動させた。
「何、勝手なことやってるのよ、キョン」
 ハルヒが怒るが、俺は構わずに艦隊を進めた。御堂まどかの艦隊はそのまままっすぐ突っ込んでくる。それにしても速い。こりゃ相当に攻撃力や防御力を犠牲にして速度だけに特化させた艦隊だな。俺の艦隊の速度では出会い頭の一撃がギリギリ。それをしくじれば朝比奈さんの艦隊が危ない。
「御堂まどか艦隊、有効射程距離まであと5000!」
「全艦、凝集反陽子砲発射準備。目標、御堂まどか艦隊!」
「ターゲットスコープ、オープン!」
「電影クロスゲージ、明度20!」
「目標、有効射程距離内に突入!」
「発射10秒前!……7……6……5……4……3……2……1……」
「凝集反陽子砲発射!」
 俺の艦隊から一斉に放たれる主砲の軌跡が御堂艦隊に突き刺さった。次々に大破炎上していく御堂艦隊。壊滅には程遠いものの痛手を負った御堂艦隊はそれ以上の突進を諦めて反転した。俺は迷わず追撃を開始する。

 しかし、それが罠だったのだ。勢い余って御堂艦隊を追撃していく俺の艦隊だったが、高速艦を中心に編成された御堂艦隊との差は一向に縮まらず、いつの間にか深く釣り出されてしまっていた。
 星間物質が充満し、視界が限りなく制限される暗黒星雲空域に差し掛かったとき、いきなりどこかから攻撃を受け、炎上する俺の艦隊。よく見ると無数のステルス爆撃機による攻撃を受けていた。
「この艦載機の大群は……」
 そこに長門からの報告が入った。
「気を付けて。近くに松明屋紅葉の艦隊がいるわ」
 そう、それは宇宙空母を中心に編成された松明屋紅葉艦隊から発進してきた艦載機だったのだ。高速の御堂艦隊を突出させ、迎撃に出た相手の艦隊を釣り出し、暗黒星雲に差し掛かったところを待ち伏せしていた松明屋機動艦隊の無数の艦載機で叩く。これは明らかに計算された攻撃だった。

「何やってるのよ、キョン!」
 俺が万事休すと諦めかけたとき、後方からやって来たハルヒの艦隊が暗黒星雲に隠れた松明屋紅葉の機動艦隊に集中砲火を浴びせ始めた。もちろん、ハルヒだけでは視界に見えない機動艦隊の位置は性格にはつかめない。長門の斥候部隊の一部が暗黒星雲に潜り込んで状況を送り込んできていた。
 さすがに防御力の弱い空母中心に松明屋紅葉艦隊は、とにかく攻撃力だけは集中的に強化したハルヒ艦隊の猛攻の前に音をあげて撤退を始めた。ハルヒはそれを追おうとするが、罠に懲りた俺はそれを引き止めた。敵はもう一段罠を仕掛けていそうな気がしたからだ。
 俺の艦隊が相当にダメージを受けたとはいえ、敵も御堂艦隊と松明屋艦隊に相当なダメージを与えてるはずだ。緒戦はSOS団に有利に進んでるように思えたのだが……

「古泉艦隊、全滅」
 長門の報告に俺たちは驚いた。どうも御堂艦隊と松明屋艦隊は巧妙に仕組んだ陽動作戦で、我が軍の関心がこちらに集中してる間にマップを大きく迂回した白鳳院綾乃エリザベスの艦隊が古泉艦隊の側面から接触し、不意を突かれた古泉艦隊は艦隊の統率を失ったまま反撃に転ずることも無く全滅してしまったらしい。
「申し訳ありません。横から襲ってくるなんて、完全に油断してました」
 笑みを浮かべながら平身低頭謝る古泉だけど、当然ながらハルヒはカンカンである。
「こうなったらやっぱり1対1の勝負しか無いわね。いったいどこに隠れてるの、山本洋子!」
 1対1の勝負って言ったって、敵の大将は山本洋子じゃなくてコンピ研の部長だぞ。しかし、ハルヒはそんなことにお構いなく、長門に命じて山本洋子艦隊の所在地探索に全力を投入させた。いや、それよりコンピ研の部長を探し出して叩いた方が簡単なんじゃないかという俺の常識的な意見は当然ながら無視されたのは言うまでも無い。

《つづく》

涼宮ハルヒの憂鬱 Episode03(限定版) KABA-1504
涼宮ハルヒの憂鬱 Episode03(限定版) KABA-1504



涼宮ハルヒの迷宮 怪盗キッドへの挑戦(後編)

2006年06月24日 | アニメ
 その時、再び携帯に着信があった。今度は対策本部にいる長門からである。
『キョン、ハルヒからの連絡が切れた』
 切れたというより、ハルヒが連絡しなくなったという方が正確だろう。
「ハルヒならまだ展示室にいるはずだ。モニターで様子がわからないか?」
 俺はハルヒがどんな状況か長門に確認してもらおうとした。
『さっきの停電の最中にカメラが破壊された。ここから展示室のことはわからない』
 長門のところからではハルヒの状況はわからないらしい。やっぱり、俺が行ってハルヒを助けてやるか。
「今から展示室に行ってハルヒの様子を見てくる」
 俺はそう言って持ち場を離れることを長門に伝えようとしたのだが……
『それはダメ。怪盗キッドがそっちに向かって逃走中』
「何だって!? 先輩と古泉は?」
 キッドが展示室から逃走を始めたんなら先に朝比奈さんや古泉と接触する可能性が高いはずだ。
『朝比奈みくるはすでに敗退。古泉一樹は現在接触中と思うけど、時間の問題』
 長門の判断では古泉に勝ち目は無いらしい。
『ハルヒは私が見てくる。キョンは予定通りにキッドを捕まえて』
 そう言って長門は通話を切った。ハルヒのことは長門に任せて、俺は覚悟を決めて怪盗キッドを待ち構えることにした。

 ハルヒが俺に指示した持ち場は、美術館の屋上だった。
「怪盗キッドの逃走パターンで多いのが気球、またはハングライダーでの逃走よ。高いビルならそのまま窓から飛び出して逃げていくって可能性もあるけど、この市立美術館じゃそれは無いわ。空からの脱出経路を選ぶなら必ず屋上に来るはずよ。だから、展示室から屋上に向かうのに通る可能性の高いここと、ここにみくるちゃんと古泉くん、そして最後の屋上にキョンが待ち構えているの。我ながら完璧な作戦ね!」
 ハルヒの作戦にはひとつ知名的な欠陥があった。待ち構えていたからってキッドを捕らえられるとは限らないこと。だいたいSOS団に肉弾戦向きのメンバーなんかいない。宇宙人やら未来人やら超能力者を集めてくるより先に屈強な格闘家でもメンバーにするんだったな。
 長門の情報では朝比奈さんはすでに突破されたみたいだけど、大丈夫だろうか? 持ち場に着くときにいざとなったら相手にならずに逃げるように言っておいたのだが……それに、ハルヒはキッドが変装してる可能性が高いって言ってたけど、いったいどんな格好で現れるんだ? 知ってるやつ意外は全員怪しいと見なすしかないぞ。
 俺はそんなことを考えながら、キッドが来るのを待っていた。
 しばらくして、階段のドアから1人の人影が飛び出してきた。
「ハ、ハルヒ?」
 それは展示室から通信の途絶えたハルヒだった。
「キョン、ここに怪盗キッドが来たでしょ?」
 怪盗キッド?
「いや、ここへはまだ……」
「そんなはずは無いわ! あたしは展示室からあいつを追い掛けて来たんだから!」
 ハルヒは俺の言葉が信じられないのか、にらみつけるように言った。
「まさか、キョンに化けたキッドじゃないでしょうね!」
 やれやれ、2回も正体を疑われるのか、俺は。
「あんたがキッドじゃ無いなら、さっさと本物のキッドを探しなさい! 絶対にここに逃げ込んできたんだから……」
 俺はハルヒに責め立てられるようにキッド探しを始める破目になった。ここにキッドが来ていないのは本当なんだがなぁ……
 その時だった。
「にーちゃん、探す必要はあらへんで!」
 屋上スペースの端の暗闇の中から色黒の学生服が現れた。服部である。そして例の小学生も一緒だ。
「お姉さんが来るまで、誰も屋上には来なかったからね」
 小学生がそう言った。
「そんなこと無いわよ。あたしはちゃんとキッドを追って……」
 ハルヒは珍しくうろたえた様子だった。
「じゃあ、言うてみぃ。その怪盗キッドはどんな姿しとるんや?」
 服部の質問にハルヒは詰まった。
「怪盗キッドといったら、白いタキシードにシルクハットのマジシャン衣装に決まってるじゃない!」
 ハルヒはそう言い返した。確かにもっともだ。しかし、俺はそのハルヒの答えに何か違和感を感じた。
「確かに一般的なキッドのイメージはせやろ。しかしなぁ、他人に化けて宝石を盗み出して逃走してる最中のキッドがその変装を解いてわざわざ目立つ格好で逃げると思うか? 俺やったらそんなことは絶対にせぇへん」
 そうだ。俺は服部の言葉で思い出した。俺はいったいどんな変装をしたキッドが逃げてくるのかさっきまで気になってたんだ。
 そこにまた携帯の着信があった。発信者は、目の前にいるはずのハルヒである。
『キョン、もうちゃんとキッドを捕まえたんでしょうねっ!』
 携帯の向こうのハルヒの声はいつにもまして怒り狂っていた。
『あたしにこんな屈辱を味わわせたキッドなんか、絶対に許さないんだからっ!』
 大声で怒鳴りまくるハルヒの声に俺は携帯を少し遠ざけながら、目の前にいるハルヒを見た。
「怪盗キッド……」
 そうだ。目の前にいるハルヒこそがキッドが変装した姿に違いない。
「そうだ、観念しろ。怪盗キッド!」
 服部の横にいた小学生が飛び出してきて、腕時計か何かでハルヒの姿をした相手に狙いを定めた。
「ばれちゃしょうがないか」
 そう言ってハルヒの姿をした怪盗が一瞬身を翻すと、そこにはタキシードにシルクハット、それにマントを身にまとった白尽くめで、モノクルを付けた正真正銘の怪盗キッドの姿があった。いや、いったいどうやってハルヒの格好から早変わりしたのか、それは問わないことにしよう。問えばややこしくなるから。
『キョン、聞いてるの!』
 携帯の向こうで本物のハルヒが怒鳴ってる。
「うるさい。いま取り込み中だ!」
 俺はそう言ってハルヒを黙らせようとした。
『そこにキッドがいるのね? いいこと、キョン。あたしがキッドをとっちめてやるから、それまで絶対に逃がすんじゃないわよっ!』
 ハルヒは通話を切った。どうやらこっちにやってくるつもりらしい。しかし、これでしばらくは静かになる。
 さっきから狙いを定めてる小学生から間合いを取るようにじわじわと下がっている怪盗キッドだが、それを逃さないようにと服部が反対側に回り込もうとしている。俺だって黙って見ているわけには行かない。たとえキッドを逃がさなくても捕まえたのが服部たちだということになったら、ハルヒの不機嫌な顔が思い浮かぶ。
 俺もキッドの様子を伺いながら間合いを詰めようとした。その時だった。
「レディース・アンド・ジェントルマン!」
 キッドはそう言ってマントを広げた。
「イッツ・ショータイム!」
 キッドが何かを床に投げ付けたかと思うと、一瞬にして辺りは白い煙に包まれ、俺の目は痛くなって目を開けていられなくなった。
「くそっ、催涙弾だ!」
 小学生が叫んでいる。
「キッドが逃げるぞ! 追えるか、服部?」
「ダメや。俺も目ぇやられてもうた」
「大丈夫さ。ヤツの隠してたハングライダーには発信機を付けて置いた。下に降りて地上から追うぞ!」
「わかった、工藤」
 服部と小学生はそういって下に降りていくようだった。俺も2人を追おうとしたのだが、白い煙を思い切り吸ってしまってむせこみ、息が出来なかった。目から涙をボロボロ流しながらどうにかふらふらと階段までたどり着いたが、そこでハルヒたちと出会った。

 催涙弾のガスを大量に吸い込んでしまった俺は、救急車で病院に運ばれた。生命に別状は無かったが、刺激され腫れ上がった涙腺や鼻の粘膜が元に戻るまで、しばらく涙もろく鼻水が止まらない状態になってしまった。
 案の定、キッドを取り逃がしてしまったことでハルヒはカンカンだったが、逃げてきたキッドがハルヒの格好をしてた原因を問い詰めようとすると、あまりうるさく言わないようになった。
 後から長門に聞いたところでは、概ね次のような状況だったらしい。

 俺との連絡の最中に服部にキッドの変装だと疑われて展示室から連れ出されたハルヒは、そこで服部に化けていたキッドに眠らされてしまったらしい。そしてキッドは変装を服部からハルヒに変え、ハルヒの予想した通りの逃走経路を経て逃げてきたということだった。
 ちなみに朝比奈さんはキッドがやってくると聞いて、持ち場から逃げ出してしまい不戦敗。古泉はハルヒの姿を見て相手がキッドだとは気付かずに素通りさせてしまったということだ。
 長門は俺との連絡の後、展示室へハルヒの様子を見に行く途中で眠らされてるハルヒを発見し、どうにかして叩き起こしたらしい。で、目覚めたハルヒがとった最初の行動が、ニセモノのハルヒを目の前にした俺への電話だったということだ。
 あの時、服部と小学生がキッドを追っていったはずだが、キッドが逮捕されたというニュースが流れなかったところを見ると、彼らも追跡に失敗したのだろう。ただし、キッド自身も犯行には失敗していった。なぜなら彼が奪っていったサファイアはニセモノだったからだ。
「誰にも知られないようにニセモノと入れ替えておいたらキッドだって気付かないとハルヒは言ってた」
 どうやら最初に展示室を覗いた時にハルヒが思いつきで言ったことを長門が実行していたらしい。
「でも、宝石は無事でもキッドが捕まえられなかったから失敗」
 長門はそう言っていたが、ちなみに摩り替えておいたニセモノは本物とまったく同じ組成を持つ人工サファイアだという。しかし、それってニセモノと言えるのか?
 後日、キッドが返しに来たニセモノが本物と同じ展示ケースに入っているところを美術館の職員が発見し、はたしてどっちが本物でどっちがニセモノかわからなくなって騒ぎになったというが、俺たちには関係ないことだった。

「無い。無い……どこの新聞にも無いわっ!」
 昼休みに文芸部室に響き渡るハルヒの声。あの事件から毎日のように続いている日課のようになっていた。
「こんなに新聞があるのに、どうしてどこにも乗ってないのよっ!」
 ハルヒは新聞紙に当り散らし、一枚一枚丸めて周囲に投げ散らかした。いったい誰が掃除をするんだ?
「怪盗キッドだって用も無いのに、毎日毎日予告状を出してくるわけはないだろ」
 俺はそう言いながら、放って置いてもどうせ俺の仕事に押し付けられるんだろうとハルヒの投げ散らかした新聞紙を回収してゴミ箱に捨てた。
「でも、一刻も早くリベンジしてあの怪盗をとっ捕まえてやらないと、この煮えくり返るあたしの腹の虫が納まらないのよっ!」
 ハルヒは自分がキッドの逃走に利用されたことが特に許せないと怒っていた。何はともあれ、これでしばらくの間はハルヒが退屈を弄ぶことは無さそうだ。

(了)

【次回予告】
 復讐の男が帰ってきた。4人の少女を助っ人に引き連れて。
「SOS団の諸君、また会えて光栄の至りだ」
 逃げ惑う朝比奈さん、散ってゆく古泉……多大な犠牲を省みず突進するハルヒ。宇宙にこだまする男の笑い声。
「射手座よ、私は帰ってきた!」
 次回『涼宮ハルヒの突撃 それゆけ!宇宙戦艦スズミヤ・ハルヒ(前編)』に、レディー・ゴー!

涼宮ハルヒの憂鬱 Episode02(限定版) KABA-1503
涼宮ハルヒの憂鬱 Episode02(限定版) KABA-1503

名探偵コナン「銀翼の奇術師」 UPBV-1008
名探偵コナン「銀翼の奇術師」 UPBV-1008