ただただ、素晴らしかったとしか言いようがありませんでした。
最終日、駆け込みで鑑賞出来て良かった・・・。
私は若冲を見るのは初めてです。
いえ、正しく言えばこれほどの画家ですから、どこかで目にしたことはあるのでしょうが、「若冲を鑑賞する」と銘うって足を運ぶのは初めてです。
9時前から並んで開場を待ちました。先頭の人は何時にきているのでしょう。
お好きな方は、かなり熱狂的にお好きなようなので、この静かに見える行列は実は熱い想いを秘めている、特異な一団です。
見る間に列が長くなってゆき、いつしか、周りの人の静かで熱い想いが伝染して、私の期待も高まってきます。
期待を高め過ぎて、失敗するということもありますが、なんの!私ごときの想像力をはるかに超えた高い域の世界の展開に、呼吸とまばたきを忘れました。
鑑賞しながら、若冲というのはバラ寿司に似ているな、と思いました。(卑近な例えで失礼。)
バラ寿司というのはご存知のとおり、赤身や白身の魚、イクラ、胡瓜、沢庵等、好きなものを賽の目に切り、食材の色取りを楽しみ、混ぜて、口のなかで渾然一体となった味を楽しむ寿司ですが、大胆な構図、美しい色彩、緻密な技、偏執的とも言える完成度、これら全てが調和して押し寄せて来る、そんな味がするのです。
さらに、その味わいの中で、画家の描いていて楽しくてたまらん、という気持ちが伝わってきます。
しかし、美しい色彩の掛け軸より、私の心を捉えて離さなくなったのは、墨で描かれた作品でした。
緻密な線や点で仕上げる技術や根気(根気は才能のうち)もすごいけれど、一気に引かれた線の、その味わい、特に花鳥人物図屏風の人物のアウトラインの美しさには深いものがありました。
この線一本で、侘びもさびも、この人物の心の豊かさ、旅(と勝手に決めています)の寂しさ、楽しさ、みんな表しているような気さえします。
勿論、鶴図屏風の鶴の身体のなめらかな線も忘れることが出来ません。
うちのジイサンはこれが一番気に入ったようでした。
そして、たくさんある中でプライスさんが、ひとつあげるよと言って下さるのでしたら、私は鯉魚図をいただきます。(笑)
この、モダンな構図、たまりません。
雑誌の記事に「今やっと日本が若冲と恋におちる」というくだりがありましたが、私もその一億分のひとりに加わりました。
あっ、うちのジイサンも、家へ帰ってきてからも「まだアタマがぼーっとする」と言ったくらいだったので、もう一人追加です。
・・・というわけで興奮のるつぼにありましたので、思わず買っちゃいました・・・。
一体、いつ、どこで着る・・・?
しかも若冲の素晴らしさに比べてこんな写真ですみません。