蝉しぐれ藤沢周平文芸春秋このアイテムの詳細を見る |
駅前の本屋で文庫本を購入。
この作品が映画化されて10月1日から公開されるとテレビで遣っていたので、どんなもんだろと遂々買ってしまった。
本屋のおじちゃん(と云っても多分私より若いな)の話だとこの本も売れているがテレビの影響で「秘太刀馬の骨」も売れているらしい、次回はそっちを買ってみるか。
追記
旅に持って行き、電車の中や休憩中に読んで10月3日に読み終わった。
舞台は藤沢周平の作品に度々登場する海坂藩(東北の架空の藩)
下級武士の牧助左衛門の養子となった文四郎は隣家の娘ふくに淡い恋心を抱く。
城下を襲った野分で五間川の洪水から稲田を守ろうと働く養父の姿を目の当たりにして養父を強く敬うようになる。
藩の世継ぎ争いに巻き込まれた助左衛門は切腹、最後の別れの日父は「わしを恥じてはならん」と文四郎に言葉をかける。
切腹の日、遺骸を引き取り大八車を牽き、人々から白い目で見られている文四郎を手伝ってくれたのは道場仲間の杉内道蔵だった。きつい上り坂で往生しているところへ隣家の娘ふくが現れ文四郎の横で大八車の梶棒を黙って牽いた。
牧家は家禄を減らされ古くて狭い長屋への転居を命じられる。
道場の先輩で父と共に切腹させられた矢田作之丞の妻女・淑江(布施鶴之助の姉)も長屋で暮らしており、文四郎はその妖しいまでの美しさに心惹かれるものがある。
或る日、江戸に奉公に出ることになったふくが挨拶に来る。折悪しく文四郎が不在で、ふくは文四郎に会えぬまま旅立ってしまう。
1年半後、父に切腹を命じた主席家老の里村が、文四郎の処分を解く。家禄が元に戻され、出仕はまだだが郡奉行支配・郷方見回りとなる。
江戸の藩邸に奉公に出ていて、藩主の手が付いて身篭ったふくは、世継ぎ争いの陰謀で流産する。
文四郎は、道場主の石栗弥左衛門から、秋の奉納試合に勝てば、秘剣村雨の技を授けると伝えられる。
奉納試合に勝った文四郎は秘剣村雨を、石栗弥左衛門の嘗ての門人・加治織部正(前藩主の弟)の元で伝授される。
父の死から4年、文四郎は漸く郷方廻りとして働きはじめ、そこで事件の真相を知り、村役人の藤次郎等が稲田を救ってくれた恩を忘れず助左衛門の助命嘆願をしていたことを知る。
再び藩主の御子を身篭ったふくは密かに国元へ帰り、欅御殿で出産する。
だが、里村家老の一派は、母子の命を狙っている。
その里村から、文四郎は呼び出され、反対派の陰謀から守るために、欅御殿からふくの御子をさらって来いと命じられる。
里村の罠だと知りつつ、ふくと御子の命を救うために、文四郎は親友・小和田逸平、布施鶴之助と欅御殿に向かう。
欅御殿でふくの警護役・磯貝主計と対策を立てていると突然里村派の賊が襲ってきた。
ふくを藤次郎の家に逃がして、文四郎らは、磯貝主計とともに、乱入する賊に立ち向かい撃退する。
藤次郎の家から舟で五間川を下り城下に入る。里村派と対抗する横山家老に身を寄せようとするが里村派の見張りが居り屋敷に近づけない。
文四郎は加治織部正に、陰謀の全てを語りふくと御子を託す。
文四郎ひとり、里村の屋敷に向かい、座敷の里村の前で刀を一閃させる。
驚愕する里村の前の机の脚が切り倒されている。
嘗て切腹させられた父達や文四郎が手に掛けた死者に代わって一言恨みを言いたかったのだ。
文四郎は横山家老から論功行賞の沙汰を受けた、30石の加増だった。
領外追放になった里村は文四郎を逆恨みし、刺客を放ったと与之助が知らせてくれた。
誰が刺客か解らぬ日々が続いたが、文四郎を襲って来たのは意外な人物。
秘剣村雨で刺客を倒す。
そして20年近くの歳月が流れる。
郡奉行となった文四郎へ「お目に掛かりたい」との手紙が届く、差出人の名は無いが文四郎にはふくからだと判る。
馬を飛ばしてふくの滞在先へ急ぐ文四郎、ふくが江戸へ発つときに逢えなかった後悔が蘇る。
殿様の没後1年、出家を控えたふくが、生涯でただ一度の逢瀬の時を得る。
二人は思い出を語りあい、ふくが問いかける「文四郎さんのお子が私の子で、私の子どもが文四郎さんのお子であるような道はなかったのでしょうか」
二人は結ばれ、そして静かに分かれて行く。
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