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『裏窓』

2007年07月08日 00時07分39秒 | 映画レビュー
原題:REAR WINDOW
製作年度:1954年
上映時間:113分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート 、グレイス・ケリー 、レイモンド・バー 、セルマ・リッター 、ウェンデル・コーリイ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
カメラマンのジェフ(J・スチュワート)は足を骨折し、ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのアパートで療養中。身動きの取れない彼にとって退屈しのぎの楽しみは、窓から見える中庭と向いのアパートの住人たちを眺める事だけ。だが、その中で、セールスマンの夫(R・バー)と激しい口論をしていた病床の妻の姿が見えなくなった事に気づいた。セールスマンの様子を窺う内に、ジェフはその男が女房を殺したのではないかと推測、恋人のリザ(G・ケリー)と看護人ステラ(T・リッター)の協力を得て調査を始めるのだが……。



コメント:
本作はのぞき団長のジェフを始め恋人のリザと看護人ステラによる「裏窓のぞき探偵団」の活躍を描いた作品である(笑)人間の”のぞきたい”という欲望をコミカルに、そしてスリリングに描いた傑作だ。

それにしてもこの大胆な設定には驚いた。裏窓から見える隣人の全てがひとつのセットで、その隣人の部屋を覗き見のようになめ回すカメラワークがすばらしい。まさに観客をジェフと同じ覗き魔に仕立て上げたまま、ストーリーが進行していくのである。人間は皆”のぞきたい”という欲望を持っているもの。ヒッチコックはその人間の心理を巧く利用して、見事な名作を世に残したと言えるだろう。

また人物設定も本作の見ものだ。仕事で足を骨折し、ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのアパートで療養中のジェフ。そしてその脇には最初はのぞきを反対しつつも、殺人だと聞くと”野次馬根性”丸出しになるリザとステラ。
また隣人には、いつも作曲に苦悩しているポピュラー音楽の作曲家、なぜかいつもテラスで寝ている犬好きの中年夫婦、いつも違う男を家に連れてくるバレリーナの卵、耳の遠い女性彫刻家、病床の妻とそれを看病している大男、いつもブラインドを閉めている新婚らしきカップル、オールド・ミスの女性・・・。それぞれの生活パターンをのぞく映像は、なんだか見てはいけないものを見てしまった感覚に陥り、ドキドキ感を超えた罪の意識をも感じさせられるほどのリアルなシーンになっているのだ。

中盤からは、ジェフが殺人らしき現場を目撃したことで素人探偵団による証拠の調査が展開される。リズやステラの勢いのある調査には感心させられるものの、あまりに勝手な行動が目立ち、ついには殺人犯に調査がばれてしまう。この犯人にばれたときの視線、そしてアパートまで忍び寄る足音。ラストで一気に恐怖の展開を見せ付けるところがいかにもヒッチコックらしい演出である。ジェフによるカメラのフラッシュ攻撃はあまりに無駄な抵抗に過ぎず、一歩ずつ襲ってくる犯人の様子は、本作の一番の見せ場になっている。

近年、現実でもおぞましい事件が多発しているだけに本作で描かれる犯罪はリアルに感じる部分も多々あった。やはり人間には知らない方がいい事実もあるし、知ることによって誰かの役に立てることもあるのだということを思い知った。

内容としてはあまりいいものではないが、”のぞき”というなんだか妙に欲望を満たしてくれる作品であった。ヒッチコックのアイディアと才能を堪能することのできるので一度は観て損はない作品だと言えるだろう。


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