製作年度:2006年
上映時間:121分
監督:生野慈朗
出演:山田孝之 、玉山鉄二 、沢尻エリカ 、吹石一恵 、尾上寛之 、田中要次
オススメ度:★★★★★
ストーリー:
川崎のリサイクル工場で働く青年、武島直貴。積極的に話しかけてくる食堂の配膳係・由美子とも打ち解けることなく、人目を避けて生きる彼にはある秘密があった。兄・剛志は、弟を大学に行かせるため学費欲しさに盗みに入った邸宅で、誤って人を殺してしまったのだ。無期懲役で服役している剛志からは毎月手紙が届いていた。しかし、それが元でリサイクル工場でも兄のことが明るみとなると、直貴は工場を後にする。やがて、大好きなお笑いでプロになる夢を抱き、徐々に頭角を現していく直貴だったが…。
コメント:
近年の映画(特に戦争映画)では、人を殺めることを正当化している(正当化しているように見える)作品が多い。この手の作品は、たとえそういうつもりがなくても、演出ひとつで観客にそう感じさせるものができてしまうという難しさがあるといえるだろう。人を殺してしまうという罪の重さを、社会的観点や家族の立場を通して描いた本作。決してラストはハッピーエンドで終わらせることなく、多少の希望は見えるにしろ、最後まで殺人者としての罪を重さを痛烈に描ききっているといえる。
原作者の東野圭吾の作品は『白夜行』しか見たことがない。それもドラマのみである。『手紙』も『白夜行』も殺人事件が絡んでいるためかなり暗い内容だ。普段あまりドラマにはまらない僕だが、この『白夜行』には病み付きのように毎週テレビに釘付けだった。なんというか…それまで人間の”闇の部分”をここまで鮮明に描いた作品には出会ったことがなく、これを見て自分の中の”ダークサイド”が呼び覚まされるような異様な気分で鑑賞していた(原作はもっとダークらしいが…)。
そして『手紙』でも久々に同じような感覚に陥ったのだ。まあ一番の要因といえば主演の山田孝之の演技が大きいといえる。正直『手紙』と『白夜行』では内容に共通点はあまり存在しない。だが山田孝之のこの暗い演技が妙にリアルで怖く感じる。普段からこんな暗い性格なんじゃないだろうか?と疑ってしまうほどだ。一言で言ってしまうと、彼は主人公の”武島直貴”そのものになりきっているということである。お笑い芸人のシーンでも、コントなかなかうまいなぁと思わせつつ、武島直貴の暗い部分もちゃんと演じているところがすごい。彼はただの芸人を演じているのではなく、武島直貴が夢見る芸人を見事演じているシーンだといえるのだ。
僕が本作で一番心に残っているシーンは、吹越満が演じる被害者の息子を武島直貴が訪問して会話をするシーン。ここでやり取りされる会話にはとても説得力があった。たとえ加害者が刑務所で罪を償っていようとも、被害者にとってはなんの慰めにもならない。被害者にとって、加害者から送られる手紙は怒りを彷彿させてしまうものに過ぎず、加害者の存在すら罪に思えてしまう。それは加害者の弟武島直貴にとっても同じことが言えるのだ。加害者の弟であるというだけで社会からは大きな差別を受け、まともな人生を送ることが出来ない。だがある人からは「それは受けて当然の差別」と言われてしまう。なんとも理不尽な扱いが直貴を直撃し、どうしようもない感情に晒されてしまう。
本作は、被害者・加害者という社会的立場をとてもストレートに描いた作品である。殺人という行為がどれだけ多くの人を悲しませるか。たとえどんな理由があろうとも、人を殺すという行為は決してやってはいけないということを『手紙』を通じて考えさせてくれるだろう。
上映時間:121分
監督:生野慈朗
出演:山田孝之 、玉山鉄二 、沢尻エリカ 、吹石一恵 、尾上寛之 、田中要次
オススメ度:★★★★★
ストーリー:
川崎のリサイクル工場で働く青年、武島直貴。積極的に話しかけてくる食堂の配膳係・由美子とも打ち解けることなく、人目を避けて生きる彼にはある秘密があった。兄・剛志は、弟を大学に行かせるため学費欲しさに盗みに入った邸宅で、誤って人を殺してしまったのだ。無期懲役で服役している剛志からは毎月手紙が届いていた。しかし、それが元でリサイクル工場でも兄のことが明るみとなると、直貴は工場を後にする。やがて、大好きなお笑いでプロになる夢を抱き、徐々に頭角を現していく直貴だったが…。
コメント:
近年の映画(特に戦争映画)では、人を殺めることを正当化している(正当化しているように見える)作品が多い。この手の作品は、たとえそういうつもりがなくても、演出ひとつで観客にそう感じさせるものができてしまうという難しさがあるといえるだろう。人を殺してしまうという罪の重さを、社会的観点や家族の立場を通して描いた本作。決してラストはハッピーエンドで終わらせることなく、多少の希望は見えるにしろ、最後まで殺人者としての罪を重さを痛烈に描ききっているといえる。
原作者の東野圭吾の作品は『白夜行』しか見たことがない。それもドラマのみである。『手紙』も『白夜行』も殺人事件が絡んでいるためかなり暗い内容だ。普段あまりドラマにはまらない僕だが、この『白夜行』には病み付きのように毎週テレビに釘付けだった。なんというか…それまで人間の”闇の部分”をここまで鮮明に描いた作品には出会ったことがなく、これを見て自分の中の”ダークサイド”が呼び覚まされるような異様な気分で鑑賞していた(原作はもっとダークらしいが…)。
そして『手紙』でも久々に同じような感覚に陥ったのだ。まあ一番の要因といえば主演の山田孝之の演技が大きいといえる。正直『手紙』と『白夜行』では内容に共通点はあまり存在しない。だが山田孝之のこの暗い演技が妙にリアルで怖く感じる。普段からこんな暗い性格なんじゃないだろうか?と疑ってしまうほどだ。一言で言ってしまうと、彼は主人公の”武島直貴”そのものになりきっているということである。お笑い芸人のシーンでも、コントなかなかうまいなぁと思わせつつ、武島直貴の暗い部分もちゃんと演じているところがすごい。彼はただの芸人を演じているのではなく、武島直貴が夢見る芸人を見事演じているシーンだといえるのだ。
僕が本作で一番心に残っているシーンは、吹越満が演じる被害者の息子を武島直貴が訪問して会話をするシーン。ここでやり取りされる会話にはとても説得力があった。たとえ加害者が刑務所で罪を償っていようとも、被害者にとってはなんの慰めにもならない。被害者にとって、加害者から送られる手紙は怒りを彷彿させてしまうものに過ぎず、加害者の存在すら罪に思えてしまう。それは加害者の弟武島直貴にとっても同じことが言えるのだ。加害者の弟であるというだけで社会からは大きな差別を受け、まともな人生を送ることが出来ない。だがある人からは「それは受けて当然の差別」と言われてしまう。なんとも理不尽な扱いが直貴を直撃し、どうしようもない感情に晒されてしまう。
本作は、被害者・加害者という社会的立場をとてもストレートに描いた作品である。殺人という行為がどれだけ多くの人を悲しませるか。たとえどんな理由があろうとも、人を殺すという行為は決してやってはいけないということを『手紙』を通じて考えさせてくれるだろう。