シネブログ

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『デス・プルーフ in グラインドハウス』

2007年09月01日 18時50分35秒 | 映画レビュー
原題:Quentin Tarantino's Death Proof
製作年度:2007年
上映時間:113分
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:カート・ラッセル 、ロザリオ・ドーソン 、ローズ・マッゴーワン 、シドニー・ターミア・ポワチエ 、ゾーイ・ベル 、マイケル・パークス
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
テキサス州オーステインの人気DJ、ジャングル・ジュリアは気の置けない仲間たちとバーへ繰り出し、女の子だけの会話に花を咲かせていた。そんな彼女たちを、ドクロマークの不気味な車を駆る顔に傷のある謎の中年男、スタントマン・マイクが秘かにつけ回していた…。14ヵ月後、テネシー州で映画の撮影に参加していたスタントウーマンのゾーイ。彼女は空き時間を利用して、仲間たちとある計画を実行する。それは、売りに出されていた憧れの車、映画「バニシング・ポイント」に登場した70年代型ダッジ・チャレンジャーに試乗しスタントライドを楽しむこと。さっそくボンネットに乗り、危険なスタントを始めるゾーイ。やがてそんな彼女たちを、あの男スタントマン・マイクが、新たな獲物に見定め襲いかかるのだったが…。



コメント:
最初に言っておくが、本作は映画として文句なしのおもしろさだ!!

ガーリーな8人のバッドガールズによる”セックス”や”恋愛”に対するどうでもいい無駄話で始まる本作。いきなりタランティーノの得意とするセリフ回しが炸裂。『レザボアドッグス』を彷彿されるそのシーンで一気にタランティーノ・ワールドへと引きずり込まれてしまった。

そんな本作の一番の見所は、8人の女とデス・プルーフ(耐死仕様)の車で襲ってくる殺人鬼スタントマン・マイクが見せる最高にスリリングなカーチェイスだろう。殺人でしか自分の欲望を満たすことができないスタントマン・マイクを演じるカート・ラッセルが、見事役にはまっていて最高に渋い演技を見せている。彼の本性はラストに判明するのだが、そのギャップが実におもしろい設定なのだ。

前半で殺されてしまう4人の女。
後半で復讐に転じる4人の女。

最初は悲惨だが、最期は爽快。
まさに”女の女による女のための映画”がここに集約されているのだ。
恐怖から笑いへと全ての要素が詰め込まれた映画、鑑賞すればその意味はきっとわかるはず。
「悩むならまずは観ろ!!」と言っておきたい。

そして今回のプロジェクトの本髄とも言える「グラインドハウス」。「グラインドハウス」とは60~70年代、B級映画ばかりを2~3本立てで上映していた劇場のことをいう。同プロジェクトとして9月22日に公開されるロバート・ロドリゲスの『プラネット・テラー in グラインドハウス』も楽しみで仕方がない。

とりあえずこのプロジェクトを立ち上げたということが本作の成功に繋がったひとつの要因だと言えるだろう。使い古しのフィルムに付いた傷、リールのダブりや飛びが当時のいい雰囲気を醸し出し自らがタイムスリップしたような感覚に襲われる。タランティーノの映画オタクぶりが功を奏したと言わざるを得ない。こういった試みをしてくれる監督は世界を探してもあまりいない気がするのだ。新感覚な作品に出会わせてくれたタランティーノにここでも感謝。

残念なのが『デス・プルーフ in グラインドハウス』と『プラネット・テラー in グラインドハウス』が2本同時に公開されなかったことだ。アメリカでは本編を短縮して同時に公開したらしい。せっかく「グラインドハウス」と付いているのだから一度に2本立てという贅沢を味わいたかった。


最後に、今日は久々に映画館でイラつく客に遭遇してしまったので愚痴をひとつ。

とにかく鑑賞中によくおしゃべりする女で、しかもその女がしゃべるタイミングが
「なんでこんなに映像が荒れてるの?」と同伴の男に聞いているのだ。
これはグラインドハウスの再現でわざとそういう手法を施しているんですけどね。
しかも映画が始まる前にそれについての説明がちゃんと表示されたんですけどね。
あの女は一体何を観にきたんでしょうか?そう思うのは勝手だけど、上映中にしゃべるのだけはやめて欲しかった…。

これから鑑賞される方はこういう間違いがないように気をつけましょう(笑)

『市民ケーン』

2007年09月01日 12時46分58秒 | 映画レビュー
原題:CITIZEN KANE
製作年度:1941年
上映時間:119分
監督:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ 、ジョセフ・コットン 、ドロシー・カミング 、エヴェレット・スローン 、アグネス・ムーアヘッド
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
新聞王ケーンが、“バラのつぼみ”という謎の言葉を残して死んだ。新聞記者のトンプソンは、その言葉の意味を求めて、生前のケーンを知る人物にあたるが……。



コメント:
BFI(英国映画協会)が10年毎に全世界の映画批評家の意見を集約して世界映画史上作品ベスト10を選出しているが、この作品は1962年から2002年の40年間連続第1位に選出されているという。また、AFI(米国映画協会)も米国製作映画ベスト100の作品中第1位として選出しているらしい…。

世界中からそんなにすばらしい評価を受けている映画なら誰でも一度は観てみたくなることだろう。だが僕の感想としては「一体この映画のどこがすばらしいんだ!?」というのが正直なところである。はっきり言って僕の年代からすれば、本作に対しての評価が悪くなってしまうのも仕方ないことなのかもしれない。画質は白黒だし現在となっては当たり前のような映像や演出の連続。はっきり言って退屈である。

だが当時の技術からすればこれらは斬新かつ芸術的なものだったのだろう。

ディープフォーカス、ローキー照明、豊かな質感、前景と後景との極端な対比、逆光照明、天井付きの屋内セット、側面からの照明、極端なクローズアップと並列された叙事的なロングショット、めまいを起こしそうなクレーンショット・・・・・・・。

正直、映画検定4級しか持っていないような素人(←これ僕のことね^^;)がこんな技術を聞いてもさっぱりわかるはずがない。実際どのシーンでこれらの技術が使われているのか全く意識していなかったし、映画を楽しむ上で普段考えることではないので感じ取るのはなかなか難しいものだ。世界のベスト10とかベスト100という評価は、あくまで映画界に精通した人たちが勝手に決めているもので、観た人全てがそう評価できるものではないということを認識しといた方がいいだろう。

映画というものは”見て”感じ取れる”何か”が大事であり、それに伴う技術などは豆知識として後から知っておけばいいものなのだ。残念ながら僕は本作を鑑賞したことで特に大きな感動は受けることはできなかったが、後付で本作が映画界に与えた多大なる影響を知識として得られたことは、今後映画を楽しむに当たって良いきっかけになった作品だと言える。

オーソン・ウェルズという当時25歳の若き天才がいたおかげで今の映画界があるということも心に刻んでおこうと思う。

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』

2007年09月01日 01時06分58秒 | 映画レビュー
原題:THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE
製作年度:1981年
上映時間:125分
監督:ボブ・ラフェルソン
出演:ジャック・ニコルソン 、ジェシカ・ラング 、ジョン・コリコス 、マイケル・ラーナー 、アンジェリカ・ヒューストン 、クリストファー・ロイド
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
1930 年、ロサンジェルスのハイウェイ沿いにあるガソリンスタンドの安食堂。ここにひとりの流れ者がやって来る。食堂の女房の体に魅せられた男は、そこで働くことにした。やがて二人は情事を重ねるが食堂の主人はまったく気づかない。そして二人はついに、保険金目当てで主人を殺す計画を立てる……。



コメント:
『郵便配達は二度ベルを鳴らす 』(The Postman Always Rings Twice) は1934年に出版された、ジェームズ・M・ケインの小説で、過激な性の暴力の描写が話題になりこれまで3度映画化されている。

1942年 監督・ルキノ・ヴィスコンティ  主演・マッシモ・ジロッティ  クララ・カラマイ
1946年 監督・テイ・ガーネット     主演・ジョン・ガーフィールド ラナ・ターナー
1981年 監督・ボブ・ラフェルソン    主演・ジャック・ニコルソン  ジェシカ・ラング

これだけ何度も映画化されていれば比べ甲斐があるというものだが、残念ながら僕は今回の1981年版を観るのが初めてである。いろんなサイトで過去の作品について調べてみると、フィルム・ノワール最盛期の傑作と知られているのが1946年版だとか。個人的にはこっちの作品を観たいと思うのだが、先に知ったのがたまたま1981年版だったので、過去の作品についてはいつかの楽しみにしておきたいと思う。

さて本作の感想だが、原作が不倫、殺人、詐欺がテーマの過激な内容という割には、さほど驚くようなシーンは見当たらなかった(単に僕の感覚がマヒしているのかも…)。なぜなら内容よりも主演二人のルックスと演技がすばらしくて、そちらばかりに目移りしてしまったからだ。特にジャック・ニコルソンの眼つき顔つきときたら、人妻を奪ってそのまま旦那を殺してしまうという役にはあまりにもはまり役であった。

そして、おそらく本作の一番の問題シーンは、キッチンで二人の男女が絡み合う過激なシーンだろう。初めはフランク(ジャック・ニコルソン)の欲望によるレイプさながらの絡みで始まるが、その刺激に触発されたコーラ(ジェシカ・ラング)も欲望を抑えられず彼の全てを受け入れる。まさに理性を無くした野獣二人が合いまみれる姿が映し出されるのだ。

確かにこのシーンは過激でインパクトのあるものだ。この先の二人の運命を考えてもなかなかリアルで、本作で描かれる突発的な行動が生んだ情事という流れを考えると、あって当然のシーンだったと言える。だけど宣伝文句にするほどのものではないのでホントあまり期待しない方がいいだろう(笑)

フランクとコーラがニックを殺害してからの展開だが、どのエピソードもあまり重厚感がなく呆気に取られてしまった。これから二人が人生の堕落を味わうという展開なのに、殺人までのシーンが盛り上がりすぎて後半一気に冷めた感じだ。二人の複雑な感情が絞りきれてなくて、いまいち感情移入しにくくなっていたのが残念で仕方がない。まあそれでもラストはアメリカン・ニューシネマを彷彿させるような衝撃の展開で終わるので何かいろいろと考えさせられる作品だと言える。

結果的に本作は興行的にも成功を収めている。僕はいつも思うのだが、どうして人間はこういった情事を描いた作品が好きなのだろうか?やっぱりみんなどこかでこういう出来事を望んでいる?ありそうでない話だから意外とみんな入って行き易いのだろう。僕も鑑賞しながらいろいろ想像してしまう性質なんだけどね…って新婚野郎がこんなこと言ったらダメだな、ヨメに怒られる(笑)