◆「スタバトマーテル」
スタバトマーテル=哀しみの聖母。
才能にも美貌にも恵まれているのに、本番で歌えない、りり子。そして、自分のために犠牲になった母親の束縛から逃げられない、天才版画家の大地。そんな二人のラブストーリ。うん、ミステリー色もあるけど、私はラブストーリーに読んだ。が、欲求不満も残った。
結局、リリ子の歌えない理由、つか、それを乗り越えようとする姿勢はなく(心情的にはそれも致し方ないと思えるのだけど)束縛される大地の必然性もない(理由としてはあるけれど、それで納得しろというのも、無理ではないかと思う) 曖昧さが、読了後にいつまでもまとわりつく。
スタバトマーテル、大学時代に私も歌った。
もしかすると、あの切なさ、手を伸ばしてもどうしても、届かないもどかしさ、悲しみ、そんなものを歌を通して知っているから、それを通奏低音に使ってるゆえに、↑のように思うのかもしれない。
…音楽を素材に使うのも難しいね。