『ミッキーマウスの憂鬱』
松岡圭祐 著
新潮文庫、2008年
あまりにもすごいタイトルに衝動買いしました。
いえ、最初は『ブラックジャックによろしく』て漫画に本物のブラックジャックが出てこないと同じたぐいのネーミングかな...と話半分に手に取ったのですが、どっこいこの本は本当にミッキーマウスが出てきます。しかも舞台裏の。
この作品の舞台は某舞浜の超有名テーマパーク...って、感想書く私が自粛しても空しくなるくらいおもいっきし「東京ディズニーランド」て明言しとります。
そもそも出だしの第一語からして「ジャングルクルーズ」...いいのかオイ。
そもそもディズニーというのは版権にうるさいことで有名なところです。
ハロウィーンの仮装準備を進めるべくオーダーメイドのコスプレ専門店に問い合わせたところ、「ディズニーキャラは版権がうるさいので作れないんです」と言われてしまったくらい。
う~、たとえたった2日間のためであろうと、この私が手作り感丸出しの素人コスプレ着るなんて死んでもプライドが許せない...って今日はその話題じゃないんだってば(笑)。
ただでさえ版権問題にシビアなディズニーだというのに、あろう事かこの作品はディズニーランドで働くバイト君が主人公で、バックステージの描写がもりもりと出てきます。
うわわわ、ホントにいいのかオイ。「オリエンタルランド」を「オリエンタルワールド」と言ったり、ショーやパレードの名を申し訳程度に変えたりしたところで、私にゃ「焼け石に水」という諺しか思い浮かびませんぞ。
そりゃ描写がどこまで本当かは分りません。じっさい、私が一部筋から聞いた情報と少なからず異なっているあたりを見ても、ここに描かれていること(の多く)はフィクションなのでしょうね。
しかしそんなことはどうでもよい。重要なのはこの作品がべらぼうに面白いという、その一点に尽きます!!!
主人公の後藤青年は今日からめでたくディズニーランドの準社員になったバイト君です。
しかしこの後藤君、あ~、ぶっちゃけそうとうイタめです。
でもこういうタイプ、確かにディズニー就職志望の若者の中に紛れ込んでそうなキャラではあるな(笑)。
一見同じ「ゲストに夢を与えたい!」って理想に燃えて就職したように見えても、後藤青年みたいな若者は純粋にディズニーを愛する人々とは明らかに違いますね。
じつは私もそういう人をディズニーの従業員の中に見出したことが何度かあります。
爽やかな笑顔を浮かべているし親切なんだろうけど、どうも笑顔も親切も押し付けがましい。子供を見ると「ボク/ワタシは○○なのカナァァ~~???」なんて口調になってしまうタイプの人々です。
う~むぅ、純粋なディズニー愛と何かが違う...と思っていたら、後藤青年を見てよく分りました。こういう人たちってディズニーそのものではなく「夢を与える自分」に酔っちゃってるタイプなんでしょうな。
この後藤青年もランドに遊びに来た経験はたったの一回だそうです(笑)。
後藤君はそのイタさ故、何度も空気を読まない口出しを繰り返して状況を引っ掻き回したりムダな叱責を食らったりしています。
しかしこの口出し体質が思わぬ活躍につながるんですから世の中分りません。
後藤君に限らず、ディズニーの表・裏に登場する人物像がものすごくカリカチュア的で面白いですね。
第一にオリエンタル「ワールド」正社員の面々。それも重役ではなく、大したことない下っ端の方が偉そうに振舞ってるというアリガチな人物像を、やり過ぎなくらい皮肉たっぷりに描いてます。
こういう人間は世の中のどんな集団にもいると思うんだけど、ディズニーの正社員のキャラクター、リアリティありすぎです。あすこの社員にはマジでこういうキャラいるんじゃないかしら。もう彼等を色眼鏡抜きでは見られなくなりそう(笑)。
もう一組、小説前半のシンデレラ城のシーンに出てくる子供!!というより親子!!!
いるいるいる~~~。てか、ディズニーランドで見たことある~~(笑)。
こういう人達はディズニーへの愛がないからマナーが守れなくなっちゃうのかなあ(※愛の有無に関わらずマナーを守るのは人間として常識では?ほかのゲスト、特に礼儀正しい親子連れに対してとても失礼だ)。
ディズニーに行って何が辛いって、こういう人たちを見るのが一番辛いです。
多分作者の方もそういうゲストをいろいろ目撃されたんでしょうね。親が注意しないのをいいことに横暴さを増す子供の描き方も容赦ないけど、それに対する父親のリアクションに含蓄を感じます(笑)。あえてモンスターペアレントに描いてないところがいいですねえ。ほとんどイソップ寓話のようです。
これだけ登場人物を含みタップリに描いていながら、ミッキーは裏でもちゃんとヒーローです。
詳しくは書けない(「ネタバレになる」のと「禁句に触れなくちゃならなくなる」ため)けれど、オンステージのミッキーだけ見ているよりさらに惚れそうなくらいカッコよすぎます。
まさかディズニー側との協定で「好き勝手書いてもいいけどミッキーだけはカッコ良く書いてね」とか取り決められてるんじゃないかと勘ぐりたくなる勢いです。
まず私がポリネシアンテラスや朝練で注目した「ミッキーのプロ意識の高さ」がしっかり描かれ、それだけで私のような職人好き・プロ好きは充分グッときます。
そのうえ、中盤以降ディズニーリゾートを揺るがしかねない大事件(の内容はやはりネタバレと禁句の使用を避けるため自粛)が起こると、ミッキーはやはり骨の髄まで(※婉曲表現)ヒーローだったということが明らかに!!!
ひたすら保身に走り醜いエゴをさらす正社員たちを後目に、誰の指示もうけずに正義感溢れる行動を取り、主人公・後藤青年と一緒にディズニーを危機から救うのです。
最初この作品は私のような黒いディズニーファン向けの作品であり、純粋なファンの人にはお勧めできないかな~と思って読んでいたのですが、衝撃的な(というより身も蓋もない)描写にめげずに読み進んでいけば、カッコいいミッキーやキャストたちの頑張りに触れ、よりいっそう「ディズニーはいい!!」と思える感動の大団円を見ることができます。
ストーリーを紹介するのが難しいほど身も蓋もない禁句で溢れかえっているので(なんせストーリーの鍵を握るのがミッキーの着ぐ..........いや、やはり禁句に手を出すのはやめておこう)、この感動を味わいたい方はぜひご自分の目でお確かめください。
「あり得んッ!!」と絶叫しつつも「バックステージが本当にこんなんだったらいいな、少なくともミッキーは骨の髄まで(※婉曲表現)ヒーローに違いない」と考えれば、読書も次回のディズニー行きも数倍楽しくなりそうです。
松岡圭祐 著
新潮文庫、2008年
あまりにもすごいタイトルに衝動買いしました。
いえ、最初は『ブラックジャックによろしく』て漫画に本物のブラックジャックが出てこないと同じたぐいのネーミングかな...と話半分に手に取ったのですが、どっこいこの本は本当にミッキーマウスが出てきます。しかも舞台裏の。
この作品の舞台は某舞浜の超有名テーマパーク...って、感想書く私が自粛しても空しくなるくらいおもいっきし「東京ディズニーランド」て明言しとります。
そもそも出だしの第一語からして「ジャングルクルーズ」...いいのかオイ。
そもそもディズニーというのは版権にうるさいことで有名なところです。
ハロウィーンの仮装準備を進めるべくオーダーメイドのコスプレ専門店に問い合わせたところ、「ディズニーキャラは版権がうるさいので作れないんです」と言われてしまったくらい。
う~、たとえたった2日間のためであろうと、この私が手作り感丸出しの素人コスプレ着るなんて死んでもプライドが許せない...って今日はその話題じゃないんだってば(笑)。
ただでさえ版権問題にシビアなディズニーだというのに、あろう事かこの作品はディズニーランドで働くバイト君が主人公で、バックステージの描写がもりもりと出てきます。
うわわわ、ホントにいいのかオイ。「オリエンタルランド」を「オリエンタルワールド」と言ったり、ショーやパレードの名を申し訳程度に変えたりしたところで、私にゃ「焼け石に水」という諺しか思い浮かびませんぞ。
そりゃ描写がどこまで本当かは分りません。じっさい、私が一部筋から聞いた情報と少なからず異なっているあたりを見ても、ここに描かれていること(の多く)はフィクションなのでしょうね。
しかしそんなことはどうでもよい。重要なのはこの作品がべらぼうに面白いという、その一点に尽きます!!!
主人公の後藤青年は今日からめでたくディズニーランドの準社員になったバイト君です。
しかしこの後藤君、あ~、ぶっちゃけそうとうイタめです。
でもこういうタイプ、確かにディズニー就職志望の若者の中に紛れ込んでそうなキャラではあるな(笑)。
一見同じ「ゲストに夢を与えたい!」って理想に燃えて就職したように見えても、後藤青年みたいな若者は純粋にディズニーを愛する人々とは明らかに違いますね。
じつは私もそういう人をディズニーの従業員の中に見出したことが何度かあります。
爽やかな笑顔を浮かべているし親切なんだろうけど、どうも笑顔も親切も押し付けがましい。子供を見ると「ボク/ワタシは○○なのカナァァ~~???」なんて口調になってしまうタイプの人々です。
う~むぅ、純粋なディズニー愛と何かが違う...と思っていたら、後藤青年を見てよく分りました。こういう人たちってディズニーそのものではなく「夢を与える自分」に酔っちゃってるタイプなんでしょうな。
この後藤青年もランドに遊びに来た経験はたったの一回だそうです(笑)。
後藤君はそのイタさ故、何度も空気を読まない口出しを繰り返して状況を引っ掻き回したりムダな叱責を食らったりしています。
しかしこの口出し体質が思わぬ活躍につながるんですから世の中分りません。
後藤君に限らず、ディズニーの表・裏に登場する人物像がものすごくカリカチュア的で面白いですね。
第一にオリエンタル「ワールド」正社員の面々。それも重役ではなく、大したことない下っ端の方が偉そうに振舞ってるというアリガチな人物像を、やり過ぎなくらい皮肉たっぷりに描いてます。
こういう人間は世の中のどんな集団にもいると思うんだけど、ディズニーの正社員のキャラクター、リアリティありすぎです。あすこの社員にはマジでこういうキャラいるんじゃないかしら。もう彼等を色眼鏡抜きでは見られなくなりそう(笑)。
もう一組、小説前半のシンデレラ城のシーンに出てくる子供!!というより親子!!!
いるいるいる~~~。てか、ディズニーランドで見たことある~~(笑)。
こういう人達はディズニーへの愛がないからマナーが守れなくなっちゃうのかなあ(※愛の有無に関わらずマナーを守るのは人間として常識では?ほかのゲスト、特に礼儀正しい親子連れに対してとても失礼だ)。
ディズニーに行って何が辛いって、こういう人たちを見るのが一番辛いです。
多分作者の方もそういうゲストをいろいろ目撃されたんでしょうね。親が注意しないのをいいことに横暴さを増す子供の描き方も容赦ないけど、それに対する父親のリアクションに含蓄を感じます(笑)。あえてモンスターペアレントに描いてないところがいいですねえ。ほとんどイソップ寓話のようです。
これだけ登場人物を含みタップリに描いていながら、ミッキーは裏でもちゃんとヒーローです。
詳しくは書けない(「ネタバレになる」のと「禁句に触れなくちゃならなくなる」ため)けれど、オンステージのミッキーだけ見ているよりさらに惚れそうなくらいカッコよすぎます。
まさかディズニー側との協定で「好き勝手書いてもいいけどミッキーだけはカッコ良く書いてね」とか取り決められてるんじゃないかと勘ぐりたくなる勢いです。
まず私がポリネシアンテラスや朝練で注目した「ミッキーのプロ意識の高さ」がしっかり描かれ、それだけで私のような職人好き・プロ好きは充分グッときます。
そのうえ、中盤以降ディズニーリゾートを揺るがしかねない大事件(の内容はやはりネタバレと禁句の使用を避けるため自粛)が起こると、ミッキーはやはり骨の髄まで(※婉曲表現)ヒーローだったということが明らかに!!!
ひたすら保身に走り醜いエゴをさらす正社員たちを後目に、誰の指示もうけずに正義感溢れる行動を取り、主人公・後藤青年と一緒にディズニーを危機から救うのです。
最初この作品は私のような黒いディズニーファン向けの作品であり、純粋なファンの人にはお勧めできないかな~と思って読んでいたのですが、衝撃的な(というより身も蓋もない)描写にめげずに読み進んでいけば、カッコいいミッキーやキャストたちの頑張りに触れ、よりいっそう「ディズニーはいい!!」と思える感動の大団円を見ることができます。
ストーリーを紹介するのが難しいほど身も蓋もない禁句で溢れかえっているので(なんせストーリーの鍵を握るのがミッキーの着ぐ..........いや、やはり禁句に手を出すのはやめておこう)、この感動を味わいたい方はぜひご自分の目でお確かめください。
「あり得んッ!!」と絶叫しつつも「バックステージが本当にこんなんだったらいいな、少なくともミッキーは骨の髄まで(※婉曲表現)ヒーローに違いない」と考えれば、読書も次回のディズニー行きも数倍楽しくなりそうです。