舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

五輪エンブレム騒動からフラ界のパクリ問題を考える

2015-09-04 05:51:03 | ダンス話&スタジオM
「今日は早いなぁ♪まだ宵の口だわ♪(※午前2時)」とか思ってうだうだしていると当然のように3時半を過ぎてしまう筆者でございます。
さあ、今日も日の出とデッドヒートをかましつつ書くわよ!


スタジオは今週から新曲に入りまくっております。
週前半にフラ、後半にオリエンタルダンスの新曲が相次いでスタートします。
全然ジャンルが違うので混同する心配はありませんが(笑)、作り手にとって2曲同時はなかなかハードです。
〆切に追われる作家さん漫画家さんの気持、痛いほどわかるッ
巨匠・鳥山明画伯がかつて「週間連載はおろしたてのパンツのようにきつい」とおっしゃってたのもうなずけます。


私達は二人三脚で振付やフォーメーションを作ります。
協力して制作にあたるというよりはガチンコバトルに近いかも!?(笑)
疲れてたり、なかなか良いアイディアが浮かばなかったりするとそうなっちゃいますね~。
幸い、今回はわりかしサクサクと進んだので至って平和裡に振付が出来上がり、完成した物を見た四代目にも「かっこいー」と褒められて良かった良かった。

ついでに四代目も振付を作り始めました(見出し画像参照)。
我々が振付の為に稽古場を占領していた時は隅で大人しくアヒルを並べてフォーメーションを作っていましたが、スペースが空いた途端にこれだよ。
しかも振付を作りつつ観客に拍手を強要するというたいへん俺様な振付家です。
き……キミねえ、振付ってのはもっと日陰の、地道な作業なのだよ。振付の段階で喝采を浴びようなんてお門違いってもんだ。


ってな流れで今回の東京五輪エンブレムの件です。
まったくとんでもない事になりましたね。


そもそも件のパクリエンブレムが素敵か否かというのは別の話なのでおいといて(笑)、およそ「モノを生み出す人」として最もやっちゃいけない事をやっちゃいましたね、S野さん

とりあえずS野さんは今のところ五輪エンブレムに関してはパクリである事を認めてないようですが、こんだけ「余罪」がボロボロ出てきちゃうともうプロとしてマズいです。失格です。
百歩譲ってアレ自体が本当にパクリでないとしても、余罪がある限り採用される資格無しとすべきでしょう。


この件をみてもホンット思うよね。
「仕事に長けている人」と「仕事を取るのに長けている人」は完全に、絶望的に別物であるという事を。
私の人生、このバカげた現実を突きつけられては心底ウンザリさせられる事の繰り返しです(笑)。

だからこの騒動をきっかけに、「仕事を取るのが上手いからといって、仕事の実力が十分とは限らない」そして「著作物をパクるのはれっきとした犯罪である」という事がもっと世間に浸透して欲しいと願わずにいられません。



特にフラ業界になっ(爆)。



まず「仕事の実力」と「仕事を取る力」の話から。
世の中には「裏では苛めっ子なのにやたら先生に好かれる子供」とか「同性から見るとロクでもないのにやたらモテる人」「実力以上に上司の評価がいい人」というのが必ず存在します。
芸能界を見てても、本当に面白い芸人さんや本当に上手い役者・ミュージシャンが生き残るかといったら決してそうじゃない。
そんな事は誰もが子供の頃からさんざん見てきたというのに、こと自分の専門分野以外の領域になると、「本当に実力ゆえに売れているのか?」というのがわからなくなるのです。

たとえば「伝統文化」や「新たな美容・健康法」の担い手としてテレビで引っ張りだこになる人がしばしば出てきますね(こう書いただけで何人かの方々の顔が思い浮かぶはずです)。
その人のステージや展覧会、著作などが出れば飛ぶように売れる(そういえばいつだったか人気が出過ぎてダブルブッキングで問題になった方も…いえ、それ以上は申しますまい)。

ところが、その人についてその分野に身を置く人に聞いてみると、「あんなのは紛い物だよ!」「この分野の事などまるでわかってない」と一刀両断される事も少なくありません。
売れっ子に対するヤッカミで一部の人が言ってるのかと思いきや、誰に聞いても同じ意見。
ああそうなのか……と思いつつも、自分の専門外の分野では、本人をみて判断する事が出来ないのはもちろん、人の意見を聞いてもいまいちピンと来ない。
まあ、それが「見る目が無い」ってことなんですから、仕方ないかもしれません。


ただし、これが「一視聴者」の範囲を超えて「自分もやってみよう」「友達/家族に勧めてみよう」という段階になれば話は別です。
その売れっ子さんがホンモノであるか否かは大変な死活問題になって来るのです。

例えば何か伝統芸能の分野で売れている人がいたとしますね。
ネームバリューに惹かれてその人に習いたいと思い、その人の名を冠した教室に入ります。

しかしフタを開けてみれば、売れっ子さん本人は名前を貸しているだけで一度も顔を出したためしすらない。
または、一流と信じて一生懸命習っていたのに、いざ自分が知識や技術を身につけてみたらその人はちっとも一流でなかった事がわかったり、他の流派の人達に自慢げに話してみたら失笑されてしまったり……。
「見る目」を持たないまま安易に飛びつけば、誰にでも起こりうる事です。

そしてフラでもこれは起こりえます。というより、今現在も全国津々浦々で起きている事なのです。


これを避ける方法は「見る目を養うこと」ただこの一点に尽きます。
とりあえず「ハワイらしいフラ」とそうでないのの区別がつくようにする事は必須です。その為にはハワイの人たちのフラをとにかく沢山見るのが肝要ですが、これはハワイへ飛んだり高額なコンサートをハシゴしたりせずとも、無料の動画を観まくるだけでかなりのところまで可能なので、是非とも実践する事をおすすめします。
3ケタを数えるくらいフラの動画を観ていれば(全部観なくたって冒頭の1分くらいでもいいのです)、おぼろげながら「ああいうのが『ハワイっぽいフラ』なのか」というのが見えて来るはずです。

少なくとも、看板だけで判断するのは即刻止めるだけでも随分違います。
フラ教室の看板ってのはまあ、学歴みたいなもんです。人間的な素晴らしさや仕事の優秀さは決して学歴と比例しないものですし、逆にどれほど高学歴でもダメな人はいます(笑)。
どんな御大層な看板(=学歴)をチラつかされても「ふーん、そう(右から左へ受け流す~)」位のノリで良いと思います。

あと「立派なトロフィー」もそうですね。何の判断材料にもなりゃしません。
ウチにある私の賞状やトロフィーの中で一番立派な見てくれをしているのは高校の弁論大会で優勝したときの盾です。マンモス高校とはいえしょせん学内の話なうえ、その日の私は高熱を出しておりとてもまともにスピーチ出来たとは言えない状態で貰ったような代物ですが、それでも派手に金メッキされた立派な盾だから賞自体も何だか凄そうに見えるんですよね(笑)。

要するに、「賞の実態がどんなものであろうと、飾り立て方次第でいくらでも立派に見せられる」と、そういう話です。
世界じゅうから視線が注がれる五輪のエンブレムでさえ、あんなパクリ作品がまかり通ってしまうのですから、「賞を獲った」「選ばれた」というだけでは何の証拠にもならないのです。


…と、おりよく五輪エンブレムの話に戻ってきた所で、パクリ問題に話題を移しましょう。

以前から繰り返し書いておりますように、ダンスの振付もれっきとした著作物です。
たとえばフラにおいて、社交ダンスのアマルガメーションのような「一般的に決められ流布している振付」というのはただの一つも存在しません。
これはフラを学ぶすべての方に必ずお知り置き頂きたい事実です。
もしあなたの先生が「この振付は一般的に使われているものだ」とか言ってたらその人は「先生」ではありません。即座に胡散臭いモノを見る目で見て下さい。


フラの振付において「正規ルート」と言えるのは以下の3つです。

(1) その先生(クム)自身が振り付けたもの。

これは最も確かな正規ルートです。但し、フラの振りをつける為にはそうとうな知識と技術を要しますから、その辺をテキトーにやってしまっている先生の場合は……う~ん……え~と………(笑)。

日本人がフラの振りをつける事に対する意見はさまざまにあると思います。
また、「クム」(せいぜいアラカイ)以外の人間が振りをつける事に関しても、意見が分れる事でしょう。
これはクムによって、または系統によってまったく考え方が違いますので、自分のクムの考え方が自分にとっての絶対的な正義だ、と考えるしかありません。
そして、自分と異なる系統の人が自分と意見を異にしているからと言って、それを否定する事は決して出来ません。その辺がフラの難しい所よね。

同じように、そもそもクムとはどういう人なのか(どうしたらなれるのか)とか、ウニキのシステムなどについても、何が絶対的に正しいというのは存在しません。ホンットに千差万別ですもん。
おそらく今後も統一される事は無いでしょう。っていうか統一はどう考えても無理です。
まあ、逆に言えば、「この資格さえ持ってれば絶対ホンモノ!」というのは存在しないという事になりますので、そういう薄っぺらい自己アピールをして来る先生は一括して胡散臭い目で見てオッケーと言えます(笑)。


おっと、話がそれました。振付けの正規ルートの話題に戻ります。


(2) 自分のクムから授けられたもの。

ハワイのクムの振付を、そのクムに師事している指導者が日本で教える、というのも正規ルートといえます。

ただね………この正規ルート、かなりの地雷でもあるんだ………。

見る目が未完成な段階において陥りやすい間違いの一つに、「振付が同じなら全く同じ踊りになる」と思い込んでしまうというのがあります。

もちろん、「本当の意味で」そのクムに師事している方が教える分には何ら問題はありません。
つまり、振付を仕入れるだけではなく、踊り方までそのクムとシンクロしているのであれば良いのです。
「本当の意味であのクムの弟子なんだなあ」と思える方の踊りは、たとえクムが一緒に踊っていなくても、そのクムの姿が重なって見える、あるいはそのクムと同じ香りがするものです。

しかし、振付を仕入れただけではこの状態にはなりません。というか、並んで同じ振付を踊っていてもちっとも「師と弟子」に見えないという凄惨な事故もこれまでにたびたび見て参りました(爆)。
そういうケースの場合、「振付が同じ」という事で完結してしまってるんでしょうね。そして指導者がそうだと、生徒さんも推して知るべし……。


(3) ワークショップで習ったもの。

特定のクムではなく、様々なクムやプロダンサーのワークショップで習った曲を教えるのも正規ルートと言えましょう。
ただしこれは「そこで習ったものを教える事が許されている場合のみ」に限られます。
たとえば特定のクムと専属契約を結んでいるのに他の人から習ったものをレッスンで教えたらマズい事になりますね。
あと、指導者と一般受講者で値段が異なるワークショップにおいて、一般人のフリをして安く受けといてそれを人に教えたらこれまたマズいです(笑)。

ちなみに、ごく個人的な意見を言うなら、ワークショップは決して振付仕入れ会ではないと思います。
その先生の踊り方・教え方の特長とか、ハワイらしさのエッセンスとか、そういうものを学ぶ場だと私は捉えています。

少なくとも、ワークショップで習ってきた振付をレッスンで使用する先生は、すでに自分のスタイルが完成されている事が必要です。
揺るぎない「自分のフラ」が無いと、違う人に習う度に踊りが変わり、不安定なフラになってしまうからです。


ワークショップの振付の問題点は、それが日本人によって踊られた際、正規ルートなのかパクリ(映像や他団体のパフォーマンスから盗んだ)なのか判別しづらいという事です。
クムの中にはメリモで使ったのと同じ振付をそのまま教える方も結構いらっしゃいます。気前が良いというべきか、まあどうせ映像からパクられるくらいならワークショップで教えちゃおうという判断なのか……。
もちろん自分の振付をどう扱おうとそれは振付者の自由であり権利です。その人が良いと認めたのならワークショップで教えたって良いし、ステージで踊らせても構わないと思います。

問題は、どうやって正規ルートかパクリかを見分ける事ですね。
ハッキリ言って、これは踊りを観ればわかると思います。
他人の映像などから不正にパクった場合、歌詞の意味を理解して動きとリンクさせるという肝心な土台作りがスッポリ抜けていますので、必ず踊りのどこかが変になります。
きちんと習っている人であれば、その辺りが決してテキトーにはならないはずです。

特に酷いケースとしては、元ネタが難しすぎるので振付を間引いたとか、元ネタの映像でたまたまアップになっていた人が間違えていたのをそのままパクっちゃったとかいう話を実際に聞いた事がありますので(笑)、不正なパクり方をすれば絶対にどこかでボロが出る。これは厳然たる事実です。


そして、どのような手段で得たものであれ、あっちからパクって、こっちからパクって、パクリの振付のみで形成されているフラは完全に腐っています

フラは土台作りが何より大切な踊りです。特定のクムを師と仰ぎ、そのクムのメソッドに則って系統だったスタイルを学ぶ事で身につけていく踊りなのです。
自分のクムのスタイルは、自分のフラの根幹をなすものです。根っこの無いフラはもはやフラではありません。
色んな所からパクってきたものを継ぎ合わせたところで、せいぜいフランケンシュタインにしかなれないのです。


ロバート・カジメロ様は私達に問いかけます、「あなたの先生は誰ですか?」と。
その問いに誇りをもって答えられる人だけが、真の意味でフラを踊る事が出来るのです。





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ひっさしぶりに長々と語ってしまったぜ!失礼致しました。
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