京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

桜のかさね

2021年03月24日 | 展覧会
細見美術館で開催中の特別展「日本の色ー吉岡幸雄の仕事と蒐集」へ足を運んだ。


染色史家・染色家として知られる吉岡氏は2019年に亡くなられた。氏に関連して掲載される記事を読むことで、源氏物語など王朝文学に登場する色をよみがえらせようとされていたことに私自身の関心はあった。かといって染色にこれという知識があるわけではない。
「源氏物語を原文で読み、色の記述箇所にはおびただしい数の付箋を貼り、自分の考えを書き込んでいた」と、この展覧会を監修された河上茂樹氏との対談(新聞掲載)の中で三女の吉岡更紗さんが振り返っておられた。
日本の伝統の色、かさねの色目はいつも歳時記を通じて目にしていたが、やはり写真より一見したい。きれいだなあで終わりそうだけど、「王朝文学の色」という言葉が誘ってくれている。

「平安時代は衣服の色の重なり『襲(かさね)の色目』に美を見出し、『桜の襲』のように植物名がよく使われた。情緒的な美を衣服に反映させて楽しんだのです」「当時、中国では織りが中心でしたが、日本は自然を手本にしたやさしい色の組み合わせを楽しんだ。…十二単は重そうに見えますが、平安朝の絹は薄くて軽く、重ねると色が透けて美しく見えたのです。例えば濃い紅に白を重ねて桜に見せるような。(幸雄さんは)その透明感ある色彩感覚を再現しようとしたのだと思います」(河上)

この「桜のかさね」の色合い。何とも言えない上品さで、柔らかな優しさだ。
二十歳の光源氏は、紫宸殿で催された桜の宴でこの桜のかさねを身につけ、詩を作り、舞を舞い、賞賛を得た。ちょっと有頂天に? 興奮冷めやらずでつい後宮あたりをそぞろ歩くが、藤壺との逢瀬はかなわなかった。その帰り、朧月夜と出逢う…。そんなことが「花宴」の巻に描かれていく。

紅花、山梔子、蓼藍(たであい)、黄檗(きはだ)、紫草(紫根)、刈安、矢車(やしゃ)、蘇芳(すおう)、日本茜、檳榔樹(びんろうじゅ)、胡桃、安石榴(ざくろ)が染料として展示されていた。

若者の姿が多く、袴姿もちらほらの岡崎界隈。左手に京都市勧業館を見て、琵琶湖疎水べりの桜も美しい。

平安神宮の大鳥居前に架かる慶流橋が赤く見える。



コメント (2)
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