カナダ人の小説家、モンゴメリが書いた「赤毛のアン」はとても有名です。
「赤毛のアン」は田舎に住む少女アンの成長を追った話ですが、
この話の中にとても印象に残っている一言がありました。
物語の主人公である赤毛のアンは、生後三か月で両親を亡くしており、
孤児院で生活しておりました。
ある日、年老いた兄妹は力仕事を手伝ってもらうため、
孤児院から若い男の子を引き取ることにしました。
しかし、何かの手違いで引き取られる子は男の子ではなく、
赤毛の女の子が来てしまいました。その女の子がアンです。
アンは引き取ってくれる嬉しさにこころを弾ませますが、
どうやら欲しいのは自分ではなく男の子だったらしい、と知ると、
夢見心地から覚め、一気に現実に引き戻されます。
「あたしをほしくないんだ。
男の子じゃないもんで、あたしをほしくないんだ。
いままでだれもあたしをほしがった人はなかったんだもの。
あんまりすばらしすぎたから、
ながつづきしないとは思っていたけれど。
あたしをほんとに待っててくれる人なんかないってことを
知ってるはずだったんだわ。
ああ、どうしたらいいんだろう?」
兄マシュウは気の弱い性格からどうしていいのか分かりません。
妹のマリラは現実的な女性です。
働き手として男の子が欲しかったので、アンを孤児院に返して、
再度男の子を要求しようとします。
ためらう兄マシュウに対し、妹マリラはきっぱりとこう言います。
「マシュウ、まさかあの子(アン)をひきとらなくちゃならないと
言うんじゃないでしょうね。
置いとけませんよ。
あの子(アン)がわたしらに、何の役に立つというんです?」
赤毛のアンは窮地に立たされました。
お金もない、才能もない、容姿もそんなにかわいくない。
まるで取柄の無いように映る、孤独な少女アンにとって、
何の役に立てるのか、言葉が出ません。
しかし、兄マシュウは赤毛のアンを救う一言を言うのです。
「わしらのほうで、あの子(アン)に、なにか役に立つかもしれんよ」
孤児院から人を引き取るのだから、その人にどんな役に立ってもらおうかと
その事しか頭になかった妹マリラでしたが、
思いがけないその言葉に色々悩んだ後、
赤毛のアンを家に置いておくことにします。
兄マシュウの中で、
相手は何の役に立つのだろう、ではなく、
どうやったら自分は相手の役に立てるだろうか、と発想の転換が起こったのです。
兄マシュウのやさしさが、少女に対する憐みが、
赤毛のアンを救ったのでした。
エゴ(損得勘定)のこころではなく、利他的のこころで
人を見る大切さに気付かされた一言でした。
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