やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

あなたといると人のこころが分かるのよ

2024年03月13日 | 小曽根俊子

ぼくが好きな人を二人あげるとしたら、やなせたかしさんとショパンです。

 

二人に共通しているのは、「詩人」という事です。

 

やなせさんは、絵本作家でもありますが、詩を書くし、

ショパンは「ピアノの詩人」と言われ、言葉なき詩を美しいメロディーで表現します。

 

ぼくの好きな人は芸術に関する人が多いのですが、

アンデルセン、夏目漱石、シェリー、ウィーダなど本業の傍ら、

詩を書く人がたくさんいます。

 

これはひとえに、詩というものが、作りやすく、相手に伝わりやすい

という手軽さによるものもあると思います。

 

そんな詩人の中でも、ぼくが好きな詩人は小曽根俊子さんです。

彼女の詩は、素直で、やさしくて、真実味があります。

 

彼女について書いた本「トッコはわたぼうしになった」では、

脳性麻痺の障害を持って生まれた小曽根俊子さんの半生を描いています。

 

 

小曽根俊子さんは手足が不自由で、言語障害があります。

理解のある両親の決断で、一般の小学校へ通います。

 

ある日、お母さんが小曽根さんを車椅子に乗せ、登校している際、

 

「あんな体で学校なんか行くことないのに。」

「うちの子は、五体満足でよかった。」

 

と心の無い言葉が聞こえてきたり、

 

「大変ね、可哀想に。」と言葉では言っても、

近寄ってきて、まるで珍しい動物を見るような目で

ジロジロ見る人などがいました。

 

そうかと思うと、本当に心配してくれて「偉いね。今日も頑張るんだよ。」

と声を掛けてくれる人もいます。

 

小曽根さんのお母さんは

 

「あなたを連れて歩いていると、

 人のこころというものが本当によく分かるのよ。」

 

と言いました。

 

学校の友人達は皆やさしく接してくれて成長していきますが、

中学生の頃、自我が目覚めると、

周りの心無い批判や目線が気になり、

自分自身の存在が嫌いになって、登校拒否になり、

自殺も考える危険な時期がありました。

 

部屋にこもって、詩を書く事が出来たので、

どうすることも出来ないやるせない思いを詩にしてはきだします。

 

「空の虹は消えるけど」(抜粋)

 

悲しみを数えてくらす人には

希望の光は見えないだろう

 

空の虹は消えるけど 

心の虹はいつまでも消えはしない

小さな愛と夢 今わたしにも見える

 

やさしいひとことが わずかでもいい

人にぬくもりを伝えられるなら

心をこめて呼びかけてみよう

さびしいあなたに

 

心無い人の心無い言葉に苦しみましたが、詩によって救われ、

次第に詩の素晴らしさが評価されるようになり、

新聞に掲載されたり、やなせたかしさんの雑誌「詩とメルヘン」でも

取り上げられるようになりました。

 

そんな中、小曽根俊子さんの詩を見て、

命が救われた方から手紙が届きました。

 

「私は自分の病気が一生治らないと知った時、死のうと思いました。

 これまでに3~4回自殺を図りましたが、家の人に見つかり失敗しました。

 私の気持ちを分かってくれる人は、この世の中にいないと思いました。

 でも、小曽根俊子さんの詩集の中には、わたしと同じ苦しみ、悩みがありました。

 そして、きっと私の周りにもたくさんあるはずの

 小さな喜びと、小さな幸福がありました。

 今まで悲しみに溺れていたから、美しいものに気が付かなかったんですね。

 ありがとう。俊子さん。もう自殺はしません。

 だからあなたも生きて下さい。」

 

 

みずからの運命に失望し、将来に絶望した小曽根さんは、

詩という芸術によって救われ、

その詩を見た、他の人も小曽根さんのこころの詩によって救われていきます。

そして、やなせたかしさん自身も辛い人生を歩まれた方であり、

やなせさんの雑誌によって、二人は出会い、二冊の詩集を出すことになります。

 

「うちの子は、五体満足でよかった。」と言った人はまさにエゴの象徴です。

 

三重苦の人で有名なヘレン・ケラーは次のような言葉を残しています。

 

「世の中には一切れのパンも食べられない人がいるのに、

 なぜ神に、今日も明日も十分に食べるパンを与えよ、と

 祈れるのでしょうか」

 

人は結局、人の事はどうでもよくて

自分の身の事だけを案じます。

ある程度仕方が無い反面、やはり自分の事だけでなくで、

人の事も気遣ってあげられるやさしい人を目指したいものです。

 

最後に小曽根俊子さんの詩を載せます。

 

「愛は藍色」

 

息をいっぱいすいこんで

愛という字を書きました

墨をいっぱいふくませた

筆を握って書きました

 

すべての音が消えました

すべての事を忘れました

 

ふるえてゆがんだひと文字は

精一杯のわたしです

今 あることのしるしです

 

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2 コメント

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たったひとつの ()
2021-02-04 16:17:51
うまくはなりませんでしたが ピアノに関わっていた時代があり

ショパンはすきでした
旋律がすうっとなじんでくる感じがあって

やなせさんのことも 近年 じんわりと包まれているように


人間不信の側面をいつの頃からかもち
関わりたくないという思いと それでもどこかで
あきらめたくない 自分自身に対しても
複雑な氣持ちをかかえて 存在を消してしまいたくなる

そんな時も ぎりぎりのところで

ことのはをつかんでいたのかもしれません

詩とよべるものかどうか ただ なにかを指先で
観じていなければおかしくなりそうで

そうして かすかに光を

ともだちや たいせつなひとのおかげで
どうにかいきている いま
ひととしてのあたたかさをうしなわず
ことのはを紡いでいけたらとおもいます

愛は藍色 だと 私も感じます

さまざまな愛が 浸透して 混じりあい
独特の色合いに染まる くるくると変化して
刹那の藍が生まれる ひとつとして同じもののない

それは命につながるのだと

文がまとまらなくてすみません

かたちに すこしでもなればと書かせていただきました
返信する
コメントありがとうございます。 (ブログ管理人)
2021-02-04 19:43:26
コメント頂きありがとうございます。
ブログを始めてから初めてコメントを頂きました。

ぼくの頭の中にある事が、ブログを介して、
樹さんまで届いた事がとても嬉しいです。
ブログを始めて良かったです。

樹さんのコメントの
「さまざまな愛が 浸透して 混じりあい
 独特の色合いに染まる くるくると変化して
 刹那の藍が生まれる ひとつとして同じもののない」
の部分に共感しました。

世の中には十人十色の個性を持った人が生きていて、それぞれの人生を歩んでいく中で、
喜びや悲しみを知って、
そして愛の重要性に気付いて、
こころが変わっていく。

そこから次世代に命のバトンをつないでいく。
それが人生なんだと思います。

コメントありがとうございました!

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