やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

やなせたかしさん特集 その6

2021年08月21日 | やなせたかし

やなせたかしさんの詩をご紹介します。

これは「詩とメルヘン」というやなせさんが編集長として発刊していた雑誌の

最初のページに載っていた詩です。(恐らく…)

人生はなかなか思うように生きられません。

時間やお金や仕事や人間関係などを含め、

理想と現実のギャップはどうしようもありません。

やなせさんのモットーである「人生はよろこばせごっこ」

の精神がよく表れた詩だと思い、

ますますやなせさんを人間的に尊敬しています。

詩の後に私の作曲したピアノ曲を載せておきます。

興味がある方はぜひお聴きください!

↓やなせさんの詩です↓

 

疲れたひとをやすませたい
さびしいひとをなぐさめたい
悲しいひとをほほえませたい
でも
どうやって
どうすれば
そんな大それたことが出来るだろう
じぶんでさえもボロボロで
もうくじけそうと思うのに
まして他人のことにまで
お節介ができるはずがない
しかし 私はなにかしたい
ひとの心をよろこばせたい
なぜなら 打ち沈みがちな人生で
それが 私のよろこびだから
ところで あなたは…

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やなせたかしさん特集 その5

2021年08月21日 | やなせたかし

やなせたかしさんの詩になります。

やなせさんはみんな大好きアンパンマンの生みの親として

広く認知されていますが、

その人生は苦難の連続でした。

やなせさんが小さい頃、父は死に、母はやなせさんと弟を捨て再婚、

弟は成人してから戦死して、やなせさんは天涯孤独となります。

そして69歳でアンパンマンがヒットするまで、

「何のために生まれて、何をして生きるのか」

というアンパンマンマーチの歌詞の言葉を自問自答しながら

生きてこられました。

若くして成功する人もいますが、

やなせさんのように苦労が続いた人生だからこそ分かる事もある。

何よりそんな壮絶な人生からあの

朗らかなアンパンマンが生まれたかと思うと

何か感慨深いものがあります。

詩の最後の神様へのお願いのところの部分は

何故か共感出来ますね。

無理だと分かっていても、無神論者であっても

神様に泣きつきたい時もある。

人生は過ぎさってから分かることの方が多いような気がします。

やなせさんの詩です。

 

【人生は砂糖入りのコーヒーじゃない】

かなしみがあり
よろこびがあり
くるしみがあり
それがいりまじってほろにがい


人生は砂糖入りのコーヒーじゃない
この苦さもまた人生の味と
それは承知しているのですが
やはりにがすぎる
つらすぎる
涙の味が強すぎる
がまんしなくてはいけない
こらえるのが本当だ


いまはつめたい氷雨の夜でも
明日はおもいがけない晴天かもしれない
でも、すこしながすぎる
このコーヒーはにがすぎる
くるしみがながくつづきすぎる
このままおしまいのような気がする


無神論者のくせに
図々しくて申し訳ないのですが
恥をしのんでいいます
「神さま
ぼくは
疲れました
せめて
もういちど…
でもやっぱりやめておこう」

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やなせたかしさん特集 その4

2021年08月20日 | やなせたかし

やなせさんの詩です。

命について、人生について考えさせられます。

やさしさって何だろう。

うまく生きるって何だろう。

正しさってなんだろう。

時に人は、簡単なことさえも分からなくなって、

小さい子供のように泣きながら、

それでも大人の仮面をかぶって生きていくものなんですね…

 

【高速道路の鳩】

私が
あなたを愛したのは
あなたの胸のそこにある
だれよりやさしい心です

でも
やさしい心とは
なんでしょう
あなたは高速道路で
あそんでいた鳩をよけそこない
ガードレールにぶつかって
死んでしまった

鳩を殺せばよかったのよ
鳩をころして
あなたが
生きればよかった

いったい
のこされた私は
どうなるの
これから
私はどうすればいいの
私は
とても泣きながら
鳩に石をぶっつける

私が
あなたをにくむのは
生まれながらに
もっていた
だれより
やさしい心です

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やなせたかしさん特集 その3

2021年08月19日 | やなせたかし

やなせさんの詩の紹介です。

この詩はやなせさん自身を投影しているかのような内容で、

69歳でアンパンマンのアニメがヒットするまで

苦労されたやなせさんの思いがあるような気がします。

最後の言葉がだんだん少なくなっていって、

~なのさ、という感じはどことなく太宰治のような感じを受けました。

味わい深い詩で、とても好きな詩です。


【老眼のおたまじゃくし】

山のうえの古い池に
おじいさんのおたまじゃくしが
住んでいた
もうとてもとしをとっていて
ひどい老眼になっていた
なにもかもみんなぼやけて見えた
さざ波もすいれんも散る花も
なにもかも

山のうえの古い池の
おじいさんのおたまじゃくしの
ひとりごと
ずいぶんながく生きてきた
ひどい老眼になったけど
おでこにしわがよってきたけど
いつまでもかえるにはなれないで
このままさ

山のうえの古い池に
おじいさんのおたまじゃくしが
住んでいる
子どもの心そのままで
ひどい老眼なんだけど
かえるになれないおたまじゃくしは
ふなの子や水すましなにもかも
なかよしさ

かえるに
なれない
おたまじゃくしは
それでも
しあわせだったのさ

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やなせたかしさん特集 その2

2021年08月19日 | やなせたかし

やなせさん特集という事で、やなせさんの詩を紹介していきます!

ぜひ、の詩はやなせさんのきれいな子供のこころと、

その中にある「ひとらしさ」の定義が曖昧になっている現代へ向けた

問いかけのような詩です。

 

幸福、の詩は、巷であふれている、

幸福だと思えばいい、不幸と思えばすべて不幸だから、という

個人の感情や気持ちを排除して、

とにかく機械的、合理的、教科書的な精神論への

アンチテーゼ的作品でもあると思います。

 

ぼく個人的には、

物事は見方や受取り方によって

幸・不幸が分かれるという事も大いにあるとは思いますが、

やはり大好きな人が亡くなれば悲しいし、

叩かれれば痛いし、

褒められれば嬉しいし、

そういう感情は感情のままで大事なのではないかと思います。

ブルーハーツの歌詞に

「叫ばなければ やりきれない思いを

 ああ 大切に 捨てないで」

とありますが、共感しています。

 

【ぜひ】

ぜひ 犬に生まれてみたかった
うれしいとき ちぎれるほど
しっぽをふってみたかった

ぜひ 花に生まれてみたかった
春になったら美しく咲いて
風にゆれてみたかった

ぜひ 鳥に生まれてみたかった
つばさをひろげて海をこえて
自由に とんでみたかった

しかし ぼくはひとに生まれた
ひとがひとらしく生きるには
どういう風にすればいいのだろう
ぜひ ぼくはそれが知りたい
ぜひ ぼくはそれが知りたい
ぜひ ぜひ ぜひ

【幸福】

幸福なんだと おもうとき
すべて なんでも幸福で
不幸なんだと おもうとき
すべて なんでも不幸です
たとえば 私が こうやって
今たよりなく生きていて
ノートひろげて泣きながら
「さみしい私」と かくことも
それも つまりは
幸福の一種なのでありますね

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