やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

「マッチ売りの少女」における理想と現実

2021年01月30日 | アンデルセン

正しさや、幸せの判断はとても難しいです。

見方によって、答えが変わってくるからです。

 

物事の見方を3通りに分けてみます。

 

目に見える事で判断する見方と、

目に見えない事で判断する見方と、

目に見える事と目に見えない事の両方で判断する見方です。

 

現代社会は科学の進歩により物資文化が発展している事から、

目に見える事のみで判断する見方が多いような気もします。

例えば、収入や外見や学歴や人脈や地位などです。

 

その反対に、目に見えない事のみで判断する見方が良いかというと、

こちらも目に見えない以上、判断基準があいまいな所があり、

正しい判断を付けづらい点があります。

愛や優しさ(人のこころ)や、死後の世界などは身近な存在でありながら、

その実態はまだ科学的に解明されていないからです。

 

目に見える事と、目に見えない事の両方の視点から判断する見方が良いのですが、

人間の考え方はつい偏ってしまうものです。

 

アンデルセンの有名な童話「マッチ売りの少女」の話では、

どのような見方がされているでしょうか。

 

 

ある年の大晦日の日、雪が降って寒い通りを、

貧しい少女が裸足で歩いています。

周りの家という家からご馳走の美味しそうな匂いと、

暖かそうな部屋、楽しそうな会話が聞こえてきます。

少女はマッチを売らないと、自分の父親に殴られてしまうので、

マッチを売るまでは家に帰れません。

 

しかし、マッチは売れず、誰も少女の事を気に掛ける人はいませんでした。

寒さのあまり、少女はマッチに火を付けると、

その火の中にストーブやご馳走が見えました。

マッチに火を付ける度に色々な物が見えたのですが、

その中に既に亡くなっているおばあさんの姿がありました。

そのおばあさんはこの少女を唯一可愛がってくれたおばあさんです。

 

マッチの火が消えてしまうと同時におばあさんも消えてしまいます。

おばあさんの所へ行きたいと無我夢中ですべてのマッチに火を付けて、

火の中に現れたおばあさんを自分のそばに引き留めたかったのです。

 

「おばあさん!わたしも、一緒に連れていって!」

 

火の中のおばあさんは少女を腕に抱き、

二人は光と喜びに包まれながら、天国へ昇りました。

その次の日、町の人たちは通りで死んでいる少女の事を発見し、

「この子は温まろうとしたんだね。」と言いました。

そして、誰一人、この少女が光に包まれて、

おばあさんのいる天国に行った事は知りませんでした。という話です。

 

 

このマッチ売りの少女は

現実的に見たら、不しあわせな少女です。

理想的に見たら、しあわせな少女です。

 

目に見えるものしか分からないのが人間ですから、

町の人たちが、この少女が天国に行ったという事は知りません。

しかし、目に見えない事が分かったのなら、

天国に行ったのだから幸せだね、という事になります。

 

一説によれば、この話にはアンデルセンの母親が深く関係しています。

 

アンデルセンの母親が、まだ少女だった頃、

極貧のために、一人で町へ出されて物乞いをさせられていました。

しかし「どうかお恵みを」と言うことも出来ず、

黙って手を出すことも出来ないで、ただ橋の下で泣いていたそうです。

この母親は極貧の為に、読み書きは出来ませんでしたが、

とても働き者で、アンデルセンをとても可愛がり、

「おまえは王子様みたいに幸せなんだよ。」と言って育てました。

とても愛のある、やさしい人だったのです。

 

アンデルセンは素直で純粋な心の持ち主です。

アンデルセンのこころの中に、この母親のやさしさを忘れませんでした。

 

貧しくても、学問が出来なくても、

苦労を知って、人の苦しみが分かってあげられて、

人に優しい母親によって育てられたので、

この「マッチ売りの少女」の物語が書けたことと思います。

 

「マッチ売りの少女」がしあわせなのか、不しあわせなのかは分かりませんが、

物事の見方として、

目に見えない事もとても大事な判断基準だという事です。

 

アンデルセンの母親のように、

自分が苦労しても、それを人に圧しつけるような人にならず、

人にはやさしく出来るような人になりたいと思います。

先祖代々受け継いできた、負のスパイラルを自分で止めて、

次の世代には、明るくて、愛のある生き方をして欲しいなと思いました。

 

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