黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

ノロウイルスによる胃腸炎について

2014-11-06 09:38:11 | 健康・病気
ノロウイルスって何?
ノロウイルスによる胃腸炎とは、どんな病気だろうか。
1.昔からある病気で、新聞報道以外でも、学校や幼稚園、保育所などで今流行しているウイルス性胃腸炎の一種です。ロタウイルスと共にウイルス性胃腸炎を起こす代表的なウイルスです。検査法の進歩により、短時間で検査できるようになったため、すぐ判り、感染力が強いため、騒がれているのですが、重症化することは少ないです。
2.特徴は、インフルエンザと同じく、自己規制的なウイルスで、ある程度体内で繁殖すると、繁殖を止めてしまうため、滅多に重症化せず、治ってしまうのですが、その為、かかった人がウイルスをまき散らすため、感染が広がるのです。吐き続け、脱水にならない限りと、余程免疫力が低下していない限り、死んだり、重症化することはありません。 その理由は、生存本能から、かかった人が死ぬと自らも死んでしまい、子孫を残せないから、適度に繁殖を止めて次の人へ移って、効率的に種族を増やしていくのです。最近は、変異しているとも言われています。
3.ロタウイルスとは違い、ノロウイルスは、幼児期には軽度から中等度の下痢を起こし、乳児には重症の病気を起こさないと言います。主として年長児と成人に集団発生の胃腸炎を起こす最も一般的な原因です。集団の約三分の一がかかることが多いようです。免疫が2年以上は持続しないので、効果がなくなり、再感染します。それはインフルエンザと同じく、変異と関係あるようです。
4.症状は
 ノロウイルスは潜伏期間が短く(12時間)(別説では18~72時間)、嘔吐(吐くこと)と嘔気(はきけ)と腹痛が主症状であることが多い。下痢は起きる時も起きない(約半分くらい)ない時もある。嘔吐は成人より小児に多く、半数は37.5℃以上の微熱が出る。頭痛、筋痛も一般的。病気の期間も短く、普通は1~3日間(24~48時間)で一過性です。その為、症状や発生の仕方が食中毒によく似ているため間違えられることも多い。食中毒ではなく、ウイルス性胃腸炎です。症状と流行状況によって、ウイルス性胃腸炎は診断できます。効く薬はなく、治療には関係ないので検査は希望でします。
5.治療
 第一は脱水症の予防と治療が目的です。栄養状態の悪い人は、第二が栄養状態の維持です。普通の健康な子どもや成人は、嘔吐下痢の治療で、重症の脱水を防ぐことで十分です。
 ノロウイルスに効く抗ウイルス剤はないし、抗生物質も効果がありません。吐き気止めの薬や下痢止めの薬は、有効と証明されていないし、副作用の危険もあります。乳酸菌製剤類(ビオフェルミン、ミヤBMなど)は、重症度を軽くし、病気の期間を短くすることが認められています。
6.食事療法
 嘔吐や下痢が始まったら、何も飲ませずに、すぐに胃をからっぽにし、最低3~4時間から、吐き気がおさまらなければ5~6時間、胃を休ませること。
それによってほとんどの人(99%)は、吐き気がおさまり、口から水分を飲むことができるようになります。吐き気がおさまらなければ、おさまるまで待ちましょう。のどが渇いても飲ませてはいけません。ナトリウムなどの塩分が多くグルコースを含む経口補液剤OS-1(病院と薬局で市販されている)により、腸からの水分吸収が促進されると言いますが、軽い場合は水(子どもは湯冷ましがよい)やお茶類で充分です。ポイントは、吐き気がおさまるまで飲ませないことです。早期に飲食を止めても、軽い脱水で済み、吐き気が収まってから飲ませると、回復します。吐き続けて脱水がひどくなってからでは、点滴するしかありません。多くの医師は、吐いても飲ませなさいと指導するので脱水が進行します。
コーラ、ソーダ類、清涼飲料、果汁、スポーツドリンク、イオン飲料などの塩分が少なく高濃度の糖分などは、嘔吐下痢がひどい子どもには飲ませてはいけません。
吐き気がおさまったら、水分補給は、6~8時間かけてゆっくり行ないます。少量を、回数を多く飲ませると吐かずにすみます。私はしませんが、初期に点滴をするのは、飲まないでいる時間をとれ、飲むことができるようになるからです。しかし、水分だけやうすめたミルク(私はうすめることを勧めません)だけを12時間以上続けると、ある程度の塩分や糖分が必要になるからよくありません。母乳は、吐かなければ飲ませてよいです。回復すると、まずのどが渇きますが、回復していなくても、脱水があるとのどが渇きますから、それで脱水がある程度あれば、点滴をします。嘔吐がなく、下痢がある程度おさまってきたら、お腹がすきます。始めは、甘い飲み物やあめをなめさせて我慢させるのですが、もっと回復すると我慢できなくなりますから、食事へ進めます。固形食は、果物特にリンゴやバナナから始め、ヨーグルト、野菜などへ進め、さらに炭水化物(おかゆやおじや、パン、うどん、じゃがいも、)や赤身の肉などへ進めます。脂肪を含む食品や単糖の多い食品(市販のジュースや炭酸飲料)は避けた方がよいです。
7.予防
 適切な手洗い(水か石鹸で十分)と隔離により、集団発生を防ぐことができます。胃腸炎ウイルスは効率よく感染するために変化していて、衛生的な社会でも感染します。
 家では、隔離することはありません。抵抗力の落ちた人だけが感染します。赤ちゃんは、別室に隔離して下さい。
便や吐いた物を扱う時は、病院や保育所、幼稚園、学校、飲食業などの場合は、手袋で処理した方が安全です。家では、処理後よく手洗いをすること。幼小児や高齢者では、適切な手洗いをしないことも多いし、その手で直接食べ物をつかんで食べたり、手や指をしゃぶったりすることで、感染しやすい。
 消毒は効果なく、吐いた物や下痢便がついたものは、よく洗い流すこと。消毒液の効果はないので、洗って日に干すことがよい。日光消毒が、一番効果があります。
8.感染経路
 便に汚染された食物や水の摂取を介して、人から人への感染です。汚染された手からもうつります。水を介した感染性胃腸炎の一般的な原因であり、養護ホーム、観光船、学校やサマーキャンプなどの施設での流行の原因である。
原因は、汚染された水、氷、氷菓子、貝(特にカキ)や甲殻類、サラダ(緑黄野菜)類、粉砂糖をかけたケーキやチョコレート菓子などが多いようです。
便へのウイルスの排泄は、発病後2~3日間で終わります。下痢が治るまでは、保育所、幼稚園、学校に行ってはいけません。空気感染は、文献上はありません。しかし、便からのウイルスの排泄も、下痢がおさまってからも1~3週間続くと言う報告もあります。
9.胃腸炎と呼ばれていますが、胃の粘膜の変化はなく、胃の働きが落ちて胃の中に食べ物が残り、小腸へ出て行くことが遅れることは判っています。そのために吐きます。結腸(大腸)の粘膜の変化も観察されていません。
 小腸では、主として小腸上部がおかされ、小腸の絨毛の粘膜細胞が消化と吸収の働きをしているのですが、この細胞が選択的に破壊されて、腸管の水分と電解質を分泌する細胞が残り、その結果、水分の吸収と分泌のバランスがくずれて下痢となります。二次的には乳糖の吸収不良や炭水化物の吸収障害も生じます。だから嘔吐さえ止まれば、水分を飲むことによって脱水を防ぐことができます。(ネルソン小児科学、ハリソン内科書より)