12月4日に山梨県立博物館(笛吹市御坂町)の秋季企画展「甲州食べもの紀行」に農閑期の充電と体力づくりに励んでいる甲府の桃農園の担い手(YK)を誘って行って来ました。中央高速バスの御坂で待ち合わせて車で10分ぐらいで到着。敷地が広く緑の豊かな平屋のりっぱな建物です。 展示場は写真撮影ができないため写真が少なくて申し訳けありません。参考までにこの「甲州食べもの紀行」をクリックするとホームページがご覧になれます。展示内容で興味深いのは、山梨は三方を山に囲まれ、海に面していないのに実にさまざまな種類の海の幸が食されていたことです。土器や魚の骨の出土、今も県庁所在地では静岡市に次いでマグロの世帯当たり消費量全国2位というマグロ好きであることからも伺えます。駿河湾、伊豆半島で水揚げされた塩や海産物を「中道往還」・「駿州往還」の陸運と「富士川水運」の水運で運ばれていました。
生魚以外にも塩漬けや醤油漬けの保存加工を施されて1昼夜で持ち込んでいました。中道往還は駿河国(静岡県)と甲斐国(山梨県)を結ぶ街道で富士山の西を通り本栖湖、精進湖を抜けて甲府市(旧東八代郡中道町)の右左口宿(ウバクチジュク)を経過する街道のようです。景色もよさそうで街道歴史探訪に訪ねて見たい気がします。
そのほかに眼に止まったのは武田信玄の食生活を知る婚礼の時の9つの食膳の模型、南アルプスの山中にある早川町奈良田集落の焼畑農業による雑穀栽培の歴史、ブドウやモモなどの「甲斐八珍果」と言われた果物の起源など出土品や文献、考古資料、ビデオによって探り、江戸時代に甲州を旅して詳細な記録を残した絵師の歌川広重、荻生徂徠ら先人の紀行文から甲州人の食文化を学ぶところが少なくない展示でした。
昼食は館内のレストラン「キッチンぶどう畑」で季節・数量限定のため予約を入れて山梨県産食材づくしの「甲斐御膳」を注文しました。 このレストランは「企業組合ワーカーズコレクティブ パク ぱく」という名称で主婦が事業資金を出し合って立ち上げた新しい事業形態のお弁当・総菜のお店です。甲斐御膳は郷土料理のほうとう、甲州地鶏の蒸し焼き、身延のゆばと三富のさしみこんにゃく、200年の歴史を持つ竜王の八幡芋(さといも)、米粉、そば粉、きな粉を練った戦国時代の携帯保存食の兵糧丸、豆類で最も大きい北杜の花豆、デザートのゆず風味のぎゅうひとキウィーです。食材の良さと手間をかけているので納得の味と価格1280円でした。
ほうとうと並ぶ甲州名物の伝統食に「煮貝」があります。駿河湾でとれたアワビを加工し、醤油漬けにして樽に入れ、馬の背に乗せて運んだところ、馬の体温と振動で醤油がアワビに程よく染み込んで、甲府に着くころにちょうど良い味に仕上がった伝えられています。私はまだ食べたことがないので分かりませんが どんな食べものなのでしょうか? 参考までに煮貝の元祖とも言われているお店「みや与」のホームページです。
地域の伝統食は食文化そのもです。農と食は地域の文化の伝承でもあることをもっと認識して次代の子どもたちに食と人とのかかわりの大切さを伝えることが必要だと思います。先人の知恵と工夫に学ぶところは少なくありません(写真をクリックする拡大します)