今では非常にコンパクトな手のひらに乗るようなモーター付の「星空雲台」なるものを、カメラ三脚に取り付けて星座の写真撮影を楽しむ人達が増えています。
ビクセン ポラリエ ・・・ TOAST Pro
地球の自転により動いていく星をモータ回転により追いかけて、その間シャッターを開けっ放しにしてかすかな光を蓄積する。
これは、まだフィルム全盛だった時代でも同じことでした。
(ガイド用望遠鏡をのぞき、常に接眼鏡の十字線にガイド星が来るようモータをON,OFFします。 S53年当時)
それより前にはまだモータも付いて無くて、ハンドルを少しずつ手で動かして星を追いかけなければなりませんでした。
おまけにフィルムの感度は低く、この手動ガイド作業を長時間(何十分も)続けました。(ちなみにわたしはモータ付きでした。)
当時持っていた タカハシ システム90赤道儀
(赤道儀・・・望遠鏡を載せる台で、回転軸の一つを天の北極に向ける事により天体を追尾しやすくできています。これに対して水平および垂直方向にしか向きを変えられないものを経緯台といいます。)
苦労したのに現像したフィルムを見ると見事に星が流れていてがっかりしたものです。
そんな訳でいつのまにか望遠鏡一式も押入れの中に・・・
・・・・そして30年が経過し、高画素・高感度のデジタルカメラの時代になっていました。
タカハシ90S赤道儀はふたたび陽の目を見る事になりました。
再び星の写真を撮るべくガイド撮影を始めたのですが、以前と違うのはデジタルカメラの感度が高く数分間シャッターを開きっぱなし(バルブ撮影といいます)にすれば暗い星まで見事に写ってくれます。
短時間(数分)となれば、わざわざガイド望遠鏡を覗いていなくても、モータにおまかせでもいけるのではと考えました。
露出の間はなにもしないでおまかせということで、 ”ノータッチガイド ”と呼びます。
ノータッチガイドで重要なものは、『モータの回転精度』と『極軸合わせの精度』です。
(極軸合わせ とは・・・天の北極(地球の自転軸の中心)の方向に望遠鏡の回転軸を向けること)
・モータの回転精度は0.1%以下で、数分間なら十分許容できる誤差と判断しました。
・極軸合わせの精度についても、内蔵された極軸望遠鏡により誤差2′の据付精度が得られるとあります。
ただ問題は、取説を無くしたため極軸望遠鏡のパターンに書かれた二重円の年度が不明だったのです。
(二重円を基準に北極星を導入し、真の北極に合わせます。)・・・その時の北極星の位置は星座早見盤などを使って調べます。
(タカハシより送っていただいた取説は既に後期のパターンに変わっていました。)
90S後期のパターンは3重円で、外側より 1985・2000・2015年となっていました。
電話でも問い合わせたのですが、明確な返答はありませんでした。
そこで推測として 外側1985年、内側2000年 と仮定する事にしました。
広角レンズから標準レンズまでは、ノータッチガイドによる”星の流れ”はわかりませんでした。
ところが中古で購入した望遠ズームレンズでは
「北アメリカ星雲付近」(はくちょう座) EF70-200mmF2.8(f=200mm) 2008. 8. 9 240sec×9枚 タカハシ90S赤道儀
星が”北から南”に流れており、この流れのため円では無く、楕円に写っています。
星の流れは40分間に9画素ほどで、問題は南北方向に流れているという事は極軸が合っていないのでは?と考えました。
ネットであちこち調べたところ、90S赤道儀の初期の極軸望遠鏡のパターンを知る事ができました。
正しくは 外側1975年、内側1985年 推測は本来の北極より 5′もずれていました。
このただしい極軸設定で撮影してみると
「はくちょう座γ星付近」 EF70-200mmF2.8(f=200mm) 2008.10. 3 240sec×8枚 タカハシ90S赤道儀
南北方向の流れは無くなりましたが、今度は”西から東”へ35分間で18画素ほど星が流れています。
あたかもモータ回転スピードが少し速いかのようです。
その後も同じ傾向のガイド結果が続いていましたが、無謀にも購入した20センチ反射望遠鏡(ビクセンR200SS)でのノータッチガイド撮影にも挑戦しました。
「はくちょう座網状星雲(西側)」 R200SS反射鏡筒(f=800mm) 2009.9.17 120sec×20枚 タカハシ90S赤道儀
焦点距離が4倍にも延びたため、露光時間を2分に短縮し、星の流れを抑えています。
ここでも南北方向が安定しているのに、西から東への流れが目立ちます。(やはりモータスピードが速い?)
その後、20センチ反射を搭載するには90S赤道儀には無理があるという事で、
中古のタカハシEM-200USD赤道儀を購入しました。
搭載加重を含め、90S赤道儀とは1段格が上という事でおおいに期待しました。
「M108 & M97」(おおぐま座) R200SS反射鏡筒(f=800mm) 2010.4. 8 210sec×10枚 EM-200USD赤道儀
コンポジットのおかげで、なんとか星が丸くなっていますが、個々の星像はひどくぶれています。
特に東西方向(赤経方向)が激しく上下しているのは、EM-200のギヤ周期(ピリオディックモーション)が8分なのですが、露出時間3分半+インンターバル30sec(計4分)の周期が重なったためと思われます。
赤道儀が変わったにも関わらず、相変わらず西から東への流れの傾向があります。
(ピリオディックモーション・・・モータ回転をウオームギヤで減速させて回転軸に伝えているのですが、この時に各ギヤの歯車の形状から周期的な進み、遅れが発生する事をいいます。)
念のため おなじ夜にEM-200でノータッチガイドしたものをお見せします。(インターバル 30sec)
「M51」(りょうけん座) R200SS反射鏡筒(f=800mm) 2010.4. 9 210sec×26枚 EM-200USD赤道儀
今度は極軸合わせの精度が良かったのか南北方向の流れはほとんどありません。
東西方向(赤経方向)は同じ傾向で、皮肉な事にピリオデイックモーションによる遅れの1/2周期と赤経の進み傾向が打ち消しあって、星像がほぼ一個おきに改善されています。(今回も見事に西から東に流れています。)
より古い90S赤道儀でもピリオディックモーションはありましたが、こんなにひどくはありませんでした。
機械的精度は昔の方が優れているようです。(昔のほうが優秀な職人さんがいた?)
その後、ピリオディックモーション周期と、露出のタイミングを合わせて波を平準化できないかとためしましたが、現実的には無理でした。(タイミングの時間管理が困難だった!)
赤道儀が変わっても、なぜ赤経(東西)方向の進み傾向が変わらないのか不明でしたが、EM-200のノータッチガイドの能力は期待を裏切るものでした。
『 かくなる上は、EM-200USDの持つ、”オートガイド ”機能を使うしかないか!』
につづく
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木製帆船の製作記事でも書いた方が楽なんですが・・・
雲上(くもがみ)
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ビクセン ポラリエ ・・・ TOAST Pro
地球の自転により動いていく星をモータ回転により追いかけて、その間シャッターを開けっ放しにしてかすかな光を蓄積する。
これは、まだフィルム全盛だった時代でも同じことでした。
(ガイド用望遠鏡をのぞき、常に接眼鏡の十字線にガイド星が来るようモータをON,OFFします。 S53年当時)
それより前にはまだモータも付いて無くて、ハンドルを少しずつ手で動かして星を追いかけなければなりませんでした。
おまけにフィルムの感度は低く、この手動ガイド作業を長時間(何十分も)続けました。(ちなみにわたしはモータ付きでした。)
当時持っていた タカハシ システム90赤道儀
(赤道儀・・・望遠鏡を載せる台で、回転軸の一つを天の北極に向ける事により天体を追尾しやすくできています。これに対して水平および垂直方向にしか向きを変えられないものを経緯台といいます。)
苦労したのに現像したフィルムを見ると見事に星が流れていてがっかりしたものです。
そんな訳でいつのまにか望遠鏡一式も押入れの中に・・・
・・・・そして30年が経過し、高画素・高感度のデジタルカメラの時代になっていました。
タカハシ90S赤道儀はふたたび陽の目を見る事になりました。
再び星の写真を撮るべくガイド撮影を始めたのですが、以前と違うのはデジタルカメラの感度が高く数分間シャッターを開きっぱなし(バルブ撮影といいます)にすれば暗い星まで見事に写ってくれます。
短時間(数分)となれば、わざわざガイド望遠鏡を覗いていなくても、モータにおまかせでもいけるのではと考えました。
露出の間はなにもしないでおまかせということで、 ”ノータッチガイド ”と呼びます。
ノータッチガイドで重要なものは、『モータの回転精度』と『極軸合わせの精度』です。
(極軸合わせ とは・・・天の北極(地球の自転軸の中心)の方向に望遠鏡の回転軸を向けること)
・モータの回転精度は0.1%以下で、数分間なら十分許容できる誤差と判断しました。
・極軸合わせの精度についても、内蔵された極軸望遠鏡により誤差2′の据付精度が得られるとあります。
ただ問題は、取説を無くしたため極軸望遠鏡のパターンに書かれた二重円の年度が不明だったのです。
(二重円を基準に北極星を導入し、真の北極に合わせます。)・・・その時の北極星の位置は星座早見盤などを使って調べます。
(タカハシより送っていただいた取説は既に後期のパターンに変わっていました。)
90S後期のパターンは3重円で、外側より 1985・2000・2015年となっていました。
電話でも問い合わせたのですが、明確な返答はありませんでした。
そこで推測として 外側1985年、内側2000年 と仮定する事にしました。
広角レンズから標準レンズまでは、ノータッチガイドによる”星の流れ”はわかりませんでした。
ところが中古で購入した望遠ズームレンズでは
「北アメリカ星雲付近」(はくちょう座) EF70-200mmF2.8(f=200mm) 2008. 8. 9 240sec×9枚 タカハシ90S赤道儀
星が”北から南”に流れており、この流れのため円では無く、楕円に写っています。
星の流れは40分間に9画素ほどで、問題は南北方向に流れているという事は極軸が合っていないのでは?と考えました。
ネットであちこち調べたところ、90S赤道儀の初期の極軸望遠鏡のパターンを知る事ができました。
正しくは 外側1975年、内側1985年 推測は本来の北極より 5′もずれていました。
このただしい極軸設定で撮影してみると
「はくちょう座γ星付近」 EF70-200mmF2.8(f=200mm) 2008.10. 3 240sec×8枚 タカハシ90S赤道儀
南北方向の流れは無くなりましたが、今度は”西から東”へ35分間で18画素ほど星が流れています。
あたかもモータ回転スピードが少し速いかのようです。
その後も同じ傾向のガイド結果が続いていましたが、無謀にも購入した20センチ反射望遠鏡(ビクセンR200SS)でのノータッチガイド撮影にも挑戦しました。
「はくちょう座網状星雲(西側)」 R200SS反射鏡筒(f=800mm) 2009.9.17 120sec×20枚 タカハシ90S赤道儀
焦点距離が4倍にも延びたため、露光時間を2分に短縮し、星の流れを抑えています。
ここでも南北方向が安定しているのに、西から東への流れが目立ちます。(やはりモータスピードが速い?)
その後、20センチ反射を搭載するには90S赤道儀には無理があるという事で、
中古のタカハシEM-200USD赤道儀を購入しました。
搭載加重を含め、90S赤道儀とは1段格が上という事でおおいに期待しました。
「M108 & M97」(おおぐま座) R200SS反射鏡筒(f=800mm) 2010.4. 8 210sec×10枚 EM-200USD赤道儀
コンポジットのおかげで、なんとか星が丸くなっていますが、個々の星像はひどくぶれています。
特に東西方向(赤経方向)が激しく上下しているのは、EM-200のギヤ周期(ピリオディックモーション)が8分なのですが、露出時間3分半+インンターバル30sec(計4分)の周期が重なったためと思われます。
赤道儀が変わったにも関わらず、相変わらず西から東への流れの傾向があります。
(ピリオディックモーション・・・モータ回転をウオームギヤで減速させて回転軸に伝えているのですが、この時に各ギヤの歯車の形状から周期的な進み、遅れが発生する事をいいます。)
念のため おなじ夜にEM-200でノータッチガイドしたものをお見せします。(インターバル 30sec)
「M51」(りょうけん座) R200SS反射鏡筒(f=800mm) 2010.4. 9 210sec×26枚 EM-200USD赤道儀
今度は極軸合わせの精度が良かったのか南北方向の流れはほとんどありません。
東西方向(赤経方向)は同じ傾向で、皮肉な事にピリオデイックモーションによる遅れの1/2周期と赤経の進み傾向が打ち消しあって、星像がほぼ一個おきに改善されています。(今回も見事に西から東に流れています。)
より古い90S赤道儀でもピリオディックモーションはありましたが、こんなにひどくはありませんでした。
機械的精度は昔の方が優れているようです。(昔のほうが優秀な職人さんがいた?)
その後、ピリオディックモーション周期と、露出のタイミングを合わせて波を平準化できないかとためしましたが、現実的には無理でした。(タイミングの時間管理が困難だった!)
赤道儀が変わっても、なぜ赤経(東西)方向の進み傾向が変わらないのか不明でしたが、EM-200のノータッチガイドの能力は期待を裏切るものでした。
『 かくなる上は、EM-200USDの持つ、”オートガイド ”機能を使うしかないか!』
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