今年4月に発行された光文社新書。
これまでの地域再生の取り組みは失敗の歴史。
なぜ失敗してきたのか?
本当に必要なものは何か?
6名の方の講義と、
それぞれの方と飯田泰之准教授との対談で
構成されています。
内容の一部をご紹介しましょう。
詳しくは本書をご確認ください。
(「再生」とは)
飯田泰之:
本書では、「地域における平均所得が向上すること」
をもって「再生」と呼ぶ。
地域の平均所得向上は文化や伝統、コミュニティといった
より広義の地域再生にとって「必要条件」に等しい。
これがあればあらゆる意味で地域が再生するわけではないが、
これがなければ地域再生どころか地域の存続すら危うい。
<多田コメント>
その地域に、所得の向上、つまり収入を得られる仕事があるか否か、
ということが最重要であることには同意です。
ただし、「平均」所得と定義してしまうと、
地域のすべての方の所得が変化なしでも、たったひとり
所得が急増すれば、地域の「平均」所得は上昇します。
それをもって、地域再生が達成されたと言えるのかは
疑問が残ります。
(従来型の振興策はインフラ整備だった)
従来の行政施策は、
インフラ整備によって工場立地や新規店舗開業を可能にする、
というビジョンでした。
工業団地などを造成すれば、あとは自然と工場や新規店舗が
やってくるだろうという考えかた。
しかし、このような手法が有効なのは、
その地域に工場や店を建てたいという潜在的な投資需要が
豊富にある場合に限られます。
地域や日本全体で人口が増加している状況ならば、
このような方針でも一定の合理性があったかもしれませんが、
現在の日本はそのような状況ではありません。
<多田コメント>
昔と今では、社会状況がまるで異なっているのに、
昔の戦法のまま取り組んでも、
うまくいなかいということですね。
そもそもの前提を、よく確認しなくてはなりません。
(地方はシャッター街でもなぜ困らないのか)
木下斉:
日本の商業活性化のためには相続課税と、
休眠中の事業資産への課税を強化すべき。
資産を放置していることが合理的になる環境を変えないと、
結局「動かないのが得」になってしまう。
シャッター通りのまま商店街を放置しても
生活に全く困らない人たちは、地方における資産家の象徴。
川崎一泰:
日本では特別措置の減免が多すぎて、
地価上昇と固定資産税収増にあまり相関がない。
宅地にしておけば固定資産税が6分の1になるなら、
ボロボロでも壊さずに残しておくのが当たりまえ。
飯田:
空き家だけでなく商売していない店舗も適用外にしないといけない。
保有コストを負う形にしないと中心商店街は歯抜けになる。
林直樹:
現役世代の流入を図るときに、
もともとの住民の存在そのものが高いハードルになることがある。
商店街で新しい人が新しい商売を始めることを既存店舗が喜ばない。
コミュニティが密なので、よそ者を寄せ付けないケースがある。
(地方自治体は増税するインセンティブが無い)
財源の不足分は地方交付税で補てんされる。
かつては都市が稼いで地方に分配する構図だった。
それが崩れ、国も地方も(国債により)将来世代からの前借に依存。
「地域間移転」から「世代間移転」に変わっている。
そのつけは将来世代が払うことになる。
(過疎地の高齢者は困っていない)
林:
過疎地の高齢者も、いわば主産業は年金ですから、
とくに困っていない場合もある。
困っていないので将来を見据えた改革には消極的で、
成り行き任せの個別対応ばかりになってしまうことも。
飯田:
現状維持と先送りが短期的に最適解であった時代は、
ある時点を境に反転してしまった。この認識は重要。
林:
それに気づいていないですよね。
特に研究者は視野が狭いので、
今までの過疎がかなり恵まれた過疎だったことに
気づいていない人が多い。
(自治体の行動)
飯田:
基礎的自治体では最大の財源が地方交付税であることが多い。
自治体の価値を上げるよりも中央とのパイプ作りの方が高収益なら、
合理的に考えるなら地域振興に資源投入すべきでない、
ということになる。
その結果、アリバイのような活性化策という面もある。
熊谷俊人:
地方交付税制度そのものが悪いというよりは、
国がものすごく細かいレベルまで全国一律のサービスを設定し、
その財源を確保することが暗黙の前提となっている。
財源の9割が交付税という自治体も存在しますが、
これは果たして「自治」体なのかどうかと疑問に思う。
飯田:
自治体としてお金を集めることをほとんどやらず、
もらったお金を使うことが主な仕事になってしまうと、
人材育成の面でも問題が大きい。
お金を稼がないと、まちおこしのセンスも育たない。
結果として、
国からお金が下りてくる地域振興が大好きなってしまう悪循環。
<多田コメント>
地域おこしが失敗するパターン。
「お金を稼ぐこと」ではなく、いかに行政から「補助金をもらうこと」が
地域おこしの目的になってしまうと、やがて失敗します。
それは、
地方自治体と地域活動との関係であり、
同時に、地方自治体と国との関係でもあったのですね。
国が「地方創生」といってお金をばらまくほど、
逆に地方は自分で稼ぐ力を失う、という構造でしょうか。
失敗の本質が見えた気がしました。
これまでの地域再生の取り組みは失敗の歴史。
なぜ失敗してきたのか?
本当に必要なものは何か?
6名の方の講義と、
それぞれの方と飯田泰之准教授との対談で
構成されています。
内容の一部をご紹介しましょう。
詳しくは本書をご確認ください。
(「再生」とは)
飯田泰之:
本書では、「地域における平均所得が向上すること」
をもって「再生」と呼ぶ。
地域の平均所得向上は文化や伝統、コミュニティといった
より広義の地域再生にとって「必要条件」に等しい。
これがあればあらゆる意味で地域が再生するわけではないが、
これがなければ地域再生どころか地域の存続すら危うい。
<多田コメント>
その地域に、所得の向上、つまり収入を得られる仕事があるか否か、
ということが最重要であることには同意です。
ただし、「平均」所得と定義してしまうと、
地域のすべての方の所得が変化なしでも、たったひとり
所得が急増すれば、地域の「平均」所得は上昇します。
それをもって、地域再生が達成されたと言えるのかは
疑問が残ります。
(従来型の振興策はインフラ整備だった)
従来の行政施策は、
インフラ整備によって工場立地や新規店舗開業を可能にする、
というビジョンでした。
工業団地などを造成すれば、あとは自然と工場や新規店舗が
やってくるだろうという考えかた。
しかし、このような手法が有効なのは、
その地域に工場や店を建てたいという潜在的な投資需要が
豊富にある場合に限られます。
地域や日本全体で人口が増加している状況ならば、
このような方針でも一定の合理性があったかもしれませんが、
現在の日本はそのような状況ではありません。
<多田コメント>
昔と今では、社会状況がまるで異なっているのに、
昔の戦法のまま取り組んでも、
うまくいなかいということですね。
そもそもの前提を、よく確認しなくてはなりません。
(地方はシャッター街でもなぜ困らないのか)
木下斉:
日本の商業活性化のためには相続課税と、
休眠中の事業資産への課税を強化すべき。
資産を放置していることが合理的になる環境を変えないと、
結局「動かないのが得」になってしまう。
シャッター通りのまま商店街を放置しても
生活に全く困らない人たちは、地方における資産家の象徴。
川崎一泰:
日本では特別措置の減免が多すぎて、
地価上昇と固定資産税収増にあまり相関がない。
宅地にしておけば固定資産税が6分の1になるなら、
ボロボロでも壊さずに残しておくのが当たりまえ。
飯田:
空き家だけでなく商売していない店舗も適用外にしないといけない。
保有コストを負う形にしないと中心商店街は歯抜けになる。
林直樹:
現役世代の流入を図るときに、
もともとの住民の存在そのものが高いハードルになることがある。
商店街で新しい人が新しい商売を始めることを既存店舗が喜ばない。
コミュニティが密なので、よそ者を寄せ付けないケースがある。
(地方自治体は増税するインセンティブが無い)
財源の不足分は地方交付税で補てんされる。
かつては都市が稼いで地方に分配する構図だった。
それが崩れ、国も地方も(国債により)将来世代からの前借に依存。
「地域間移転」から「世代間移転」に変わっている。
そのつけは将来世代が払うことになる。
(過疎地の高齢者は困っていない)
林:
過疎地の高齢者も、いわば主産業は年金ですから、
とくに困っていない場合もある。
困っていないので将来を見据えた改革には消極的で、
成り行き任せの個別対応ばかりになってしまうことも。
飯田:
現状維持と先送りが短期的に最適解であった時代は、
ある時点を境に反転してしまった。この認識は重要。
林:
それに気づいていないですよね。
特に研究者は視野が狭いので、
今までの過疎がかなり恵まれた過疎だったことに
気づいていない人が多い。
(自治体の行動)
飯田:
基礎的自治体では最大の財源が地方交付税であることが多い。
自治体の価値を上げるよりも中央とのパイプ作りの方が高収益なら、
合理的に考えるなら地域振興に資源投入すべきでない、
ということになる。
その結果、アリバイのような活性化策という面もある。
熊谷俊人:
地方交付税制度そのものが悪いというよりは、
国がものすごく細かいレベルまで全国一律のサービスを設定し、
その財源を確保することが暗黙の前提となっている。
財源の9割が交付税という自治体も存在しますが、
これは果たして「自治」体なのかどうかと疑問に思う。
飯田:
自治体としてお金を集めることをほとんどやらず、
もらったお金を使うことが主な仕事になってしまうと、
人材育成の面でも問題が大きい。
お金を稼がないと、まちおこしのセンスも育たない。
結果として、
国からお金が下りてくる地域振興が大好きなってしまう悪循環。
<多田コメント>
地域おこしが失敗するパターン。
「お金を稼ぐこと」ではなく、いかに行政から「補助金をもらうこと」が
地域おこしの目的になってしまうと、やがて失敗します。
それは、
地方自治体と地域活動との関係であり、
同時に、地方自治体と国との関係でもあったのですね。
国が「地方創生」といってお金をばらまくほど、
逆に地方は自分で稼ぐ力を失う、という構造でしょうか。
失敗の本質が見えた気がしました。