踊る小児科医のblog

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タミフルと新型インフルエンザ(院内報より)

2007年01月26日 | こども・小児科
● インフルエンザの治療薬「タミフル」副作用報道のまとめ

 昨年のインフルエンザ流行時に、タミフルを服用した年長児が錯乱状態になってベランダから飛び降りて死亡するなどの報告があり、これがタミフルの副作用として報道されました。実は、インフルエンザの合併症として錯乱が比較的多くみられることは知られているため、昨年の治療状況と合併症の有無についてあらためて調査したところ、タミフル投与と錯乱症状との因果関係は認められないという結果が出ました。

 納豆ダイエット騒ぎとは少し違いますが、ある事象B(錯乱や体重減少)とそれに先行するAという行為(薬や納豆)があった場合に、AがBの原因であるという結論にすぐには結び付かないはずのですが、マスコミも国民も安易な三段論法に陥りやすいことに注意が必要です。ただし、今後もタミフルの副作用や耐性化などには注意しながら使っていく必要があることに変わりはありません。

 もちろん、全員がタミフルを服用しなければいけないわけではなく、使わずにそのまま様子を見ることはできます。1歳未満の子には「慎重投与」となっています。漢方薬の「麻黄湯」はインフルエンザの発熱期間を短縮させることがわかっています。咳などの症状に対しては、それぞれ対症薬を用います。解熱剤は全体の経過には影響しないので、使いすぎに注意が必要です。

● 新型インフルエンザ対策と普通のインフルエンザ対策

 鳥インフルエンザがまた国内で発生しました。今のところ人から人へ感染する新型インフルエンザは世界中で検出されていませんが、流行するのは時間の問題であり、パンデミックに備えた対策指針も出されています。通常のインフルエンザでは多くて年に1万人程度の超過死亡が確認されていますが、パンデミックでは60万人以上に上るものと予測されています。

 対策の詳細はここには書けませんが、流行の段階に応じて、患者隔離や流行拡大を防ぐための周囲の人へのタミフル投与から始まり、流行が拡大すれば、学校や企業、交通機関、娯楽施設などの活動を制限または停止して、人の移動や接触を最小限にし、家庭には2週間程度の食料の備蓄を求めています。ワクチンは全国民には間に合わないので、接種の優先順位が決められます。

 一方、毎年のインフルエンザ流行では、ワクチンは毎年実施されていますが接種率は高くありません。学校は出席停止にはなるけれど、早めに登校させようとする家庭が多く、職場では熱があるのに出勤したという話を耳にするなど、インフルエンザ対策の基本が出来ていない状況にあります。そんな中で、新型インフルエンザの時だけ流行拡大を防ぐことが出来るとは思えません。どちらのインフルエンザも、考え方は同じなのです。

(院内報 2006年12月・2007年1月号より)

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