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二人の巨匠監督夢の対決!? 「金星怪獣の襲撃 新・原始惑星への旅」

2010-06-30 15:10:06 | 特撮・モンスター映画
予告通り、B級映画紹介のラッシュで行きます(^^;)ああ、書いていて楽しい。

映画において、アメリカ人という連中は、非常に我が儘です。アメリカ映画を他国で吹き替え上映すると
「名優○○の声を別人に差し替えてしまうなんて、どこのブラックジョークだい」
と失笑するくせに、その逆は吹き替えが当然、と来ております。それだけならまだいい方で、最近はどうか知りませんが、昔は他国映画となると撮り足し・再編集をしてアメリカ人を主人公にすえた別映画にしてしまうのが当然のように行われていました。日本映画で初めてアメリカのメジャー系配給で全土で上映されたのは「ゴジラ」なんですが、これも当然のように撮り足し・再編集が行われ、大幅に雰囲気の異なる映画となってしまいました。ある意味トンデモ映画になっちゃっているので、その違いを楽しんでもらおうと思ってか、その海外版は「怪獣王ゴジラ」のタイトルで逆輸入、日本で上映されたこともあります。ちなみに「ゴジラはビキニ環礁沖の水爆実験の影響で眠りから目覚め、放射能を帯びた」と推測するシーンはバッサリカットされていたりする辺り、さすがアメリカと思います。

今回取り寄せた「金星怪獣の襲撃 新・原始惑星への旅」も元々は旧ソ連の映画「火を噴く惑星」をベースに撮り足し・吹き替え・再編集を行った映画ですが、それを行い、自らナレーションまで入れたのがピーター・ボグダノヴィッチ。「金星怪獣の襲撃」が1968年ですから、5年後の1973年に、名作「ペーパー・ムーン」を撮った監督さんです。それ以前はこんなしょぼいことをしていたんですね~。

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ただ、実はこの作品、原作の「火を噴く惑星」の2度目のアメリカ映画化だったりします。いくら海外映画を再編集するのが普通に行われているアメリカだって、一つの映画を2回再編集して上映し直すのは普通やらないでしょう。こういうセコいことをやらせるのが、アメリカ映画界のプロデューサーの中でも悪名高きロジャー・コーマン。ただ、ピーター・ボグダノヴィッチもその下で映画の作り方を学んだのは事実でしょうし、彼以外にも「ターミネーター」や「アバター」のジェームズ・キャメロンもロジャー・コーマン傘下の出身と言うことを考えると、いくら「安易」「便乗」「低予算」とこき下ろされる映画ばかり作っても(もっとも酷く言われるのはプロデュースした映画の方で、自分で監督を務めた映画は結構面白いものも多い)生き残り続けられた理由が伺えます。

話を戻して、「火を噴く惑星」の一度目のアメリカ映画化作品「原始惑星への旅」が1965年。

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「金星怪獣の襲撃」を販売しているWHDジャパンの公式サイトによると、一回目の編集を手がけたのは、これまた1972年に名作映画「ゴッドファーザー」を撮る名監督、フランシス・F・コッポラ! 

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つまり、「火を噴く惑星」をまたいで「ゴッドファーザー」と「ペーパー・ムーン」の両監督の対決が実現していた、ということになるのです。なんという偶然。
・・・と、なれば面白いのですが、わたしの手元の資料によると、「金星怪獣の襲撃」をピーター・ボグダノヴィッチが手掛けたのは間違いないようなんですが、「原始惑星への旅」はフランシス・コッポラではなく、カーティス・ハリントンというあまり有名でない人が編集したようなのです。実際、「原始惑星への旅」は推論するに宇宙ステーションからの指示をする部分をアメリカ人の俳優に差し替え、音声を吹き替えて多少の編集を行った程度にしか見えず、大作を撮るような凝り性の監督が手掛けたとは思えません。正直「何もしなくても良かったのでは」と思うくらい。
ならばフランシス・コッポラの名はどこから来たのかと言うと、別の旧ソ連映画「大宇宙基地」を撮り足し・再編集して「太陽の彼方の戦い」に作り直したのがフランシス・コッポラらしいのです。これがゴッチャになったのではないかと思われます。これをやらせたのもやっぱりロジャー・コーマン。撮り足しにはオリジナルには無い怪獣同士の対決シーンがありまして、明らかにオス型とメス型と思われる二大下品怪獣が下劣極まりない格闘をするんだそうです。残念ながら日本語版は発売されたことありません。是非出して欲しいものです。

さて、「金星怪獣の襲撃」ですが、タイトルからして新しい怪獣シーンの追加でもあるかと思いきや、登場する金星怪獣は「原始惑星への旅」と全く同じ。人間大のトカゲ・人食い植物ほとんど動かないアパトサウルス・彫刻に掘られた姿も登場する翼竜~だけで、むしろ登場時間は短くなっているほどです。追加されたのは、前作では、その存在が彫刻があることやどこからともなく聞こえてくる声・ラストシーンの水たまりに映る姿などで間接的に確認できる程度だった金星人の登場シーン。金星=ヴィーナスと言うことで、全員水着みたいな格好の金髪美人の姿だったりします。おそらく前作ではなぜ金星人は出てこなかったのか、主人公たちと接触しなかったのかと聞いてきた人がいたのでしょう。それを踏まえた上で、金星人を登場させ、そっちの視点から描くことにした、いわば文字通りのリメイク、作り直しをはかったのが本作と思われます。
金星人たちは偶像崇拝の種族。本編ではわずかしか登場しないプテラノドンとその彫像を"テラ"と呼び、神とあがめ、神を殺した(そんなシーン元から無いですが)主人公たちを侵略者と定め、祈りによって火山を噴火させ、あるいは洪水になり兼ねないほどの大雨を降らせ(たつもりになって)主人公たちを殺そうとします。ですが、噴火に襲われたのはプテラノドンと戦ったのとは別のグループの方ですし、大雨も本格化する前にさっさと主人公たちは惑星からの脱出に成功、結局何を出来なかったのです。すると、金星人は「守護神テラは負けた、偽物の神だった」と言いだし、みんなで一斉にテラの彫像に石をぶつけ出します、壊れるまで。ヒドい。で、代わりに引っ張ってきたのが、主人公たちに溶岩の中へ置き去りにされたロボット。黒こげのボロボロになっていたのが海へ流されてきたのを拾って新しい神に据えてストーリーは終わり。なんか「偶像崇拝するやつらはアホだ」という欧米人の高飛車な態度が感じられてしまいます。そういう映画を撮った監督だ、ということを頭の中に入れて「ペーパー・ムーン」を見ると、またひと味違って見えるのかも知れません。

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なお、残念なことに画質は酷く悪いです。「原始惑星への旅」が、まぁこんなもんだろう、程度の画質だったのに対して「金星怪獣の襲撃」の画質はボロボロ。多分VHSビデオをマスターにして修正を行ったものと思われます。

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