関心

反対方面に向かう電車が、人身事故で止まっていた。いつもより遅い時間に家を出たのだが、いつもと同じ時間に出たとしても、遅れていたのだろうと思いながら、定刻より少し遅れて来た電車に乗り込んだ。

「復旧に相当時間がかかる」というアナウンスに、途中駅での様子を思い浮かべていると、電車はポイントで進路を変え、いつもとは違うホームに到着した。
いつものホームのその隣では、周囲の視線を遮るためか、シートで囲いが作られていた。

その駅を出るとき、思わず一瞬、去っていく駅のホームに向かって手を合わせた。どうなっているのかわからずに失礼だったと、その瞬間の後に思った。
事故なのか、それとも自らそこに至ろうとしたのか… いずれにしても痛ましい。

その先、着く駅ごとに後続の電車が止まっていた。車内には少なからぬ人々が席を埋めていた。迂回ルートはいくらでもあるだろうに、彼らは彼らなりにその時間を享受していたのかもしれない。

乗り換えた電車の床に出来た影は、色違いの模様を描いていた。それは、太陽光だけでなく様々な方向からの光によるものだった。

人の持つさまざまな面は、自分の努力だけでは表に出ない。もしかしたらその方が、今見えている面より多いのかもしれない。

僕自身、誰かに光を当てるほどの力を持ってはいない。けれども、人への関心は持ち続けていようと思う。