野田地図(NODA MAP)第十一回公演 『贋作・罪と罰』
劇場:Bunkamura シアターコクーン
脚本/演出:野田秀樹
出演:松たか子,古田新太,段田安則,宇梶剛士,美波,野田秀樹 他
彼の演劇ネタは、ストーリーだけではバレないなんて考えもあり、以下一切隠してません。
客席の中に据えられた四角の舞台、それを45度(ダイヤ型)に配置し。出番でない役者たちは、舞台下の余白に置いた椅子に掛けて待つ。すべてを晒す形で、展開される芝居。
舞台上には、何本かの棒と椅子。控える役者たちがたてる効果音(←すごい緊張感)によって、棒は扉になど。さまざまなものに、次々と姿を変える。
時代は江戸時代末期、幕末の混乱の世。立派だった父のように生きるのだと育てられた、三条英(はなぶさ)。江戸開成所塾生として、切れる頭脳と強い信念に基づく行動力を持つ。だが、生活の貧窮はなんともし難く。ある日、金貸しの老婆の殺害計画を実行する。不測の事態は、老婆の妹に目撃されたこと。あきらかな、予定外の殺人を犯し。彼女は罪の意識には苛(さいな)まれつつも、成し得てこその思想を捨て去ることができないでいる。
塾生仲間の才谷梅太郎が、彼女の変化に気付く。暴力によらぬ倒幕・無血革命を信念とする彼は。日本を憂うのと同じ基準で、好きな女子を心配する。日本を良い方に向けたいのと同じ熱意で、彼女を屈託なく笑わせたいと願う。祖国を愛するということは、娘を愛することなのだと言ったのは。つかこうへい氏だったけ。湿度が高めの才谷の(←古田氏ならでは)親愛の情が、彼女の警戒心を崩していく。
英は、罪を責め悔やんでいてさえも。まなざしは濁らず、佇まいは真っ直ぐだ(←松氏ならでは)。償うべき罪の存在を認めながらも、牢の開く日は待てないと。通そうとする勝手な論理も、涼やかだ。才谷は、英を許している。牢の開く日を待つのは俺なのだと言う。そうやって、許されて。英は、自分を許してはいけないことに気づく。大政奉還、江戸開城。才谷の言葉どおり、彼女には、恩赦だか大赦だかがもたらされ。けれど、もはや彼女はそれを急(せ)いてはいない。解かれても、罪を一生の荷として生きていくことを決意している。
彼女に疑いの目をむける刑事役の段田氏が、あいかわらず、すっと(←語彙不足)していらして嬉しい。勤皇の志士役の右近氏は、あいかわらず、ちとうさんくさい(←やっぱり不足)。歪んだ愛を押し付けながら、破綻をむかえる役の宇梶氏と。憎んでも、殺す手段をとらない妹役の美波氏のお二人が。サイドストーリーを、とても大切に演じていらしたのが良く。あと。古田くんのアドリブに、舞台下でひっそり笑う野田さんが見られて。得した気分に。
ラストシーン。雪が舞台に降り積もる。雪が覆い隠すものを、見て。雪を踏みしめる足音を、聴いて。提示される命題を、改めて考える。これは、しっかり言葉にしておかねば。
「人は、人を殺してはいけない」
劇場:Bunkamura シアターコクーン
脚本/演出:野田秀樹
出演:松たか子,古田新太,段田安則,宇梶剛士,美波,野田秀樹 他
彼の演劇ネタは、ストーリーだけではバレないなんて考えもあり、以下一切隠してません。
客席の中に据えられた四角の舞台、それを45度(ダイヤ型)に配置し。出番でない役者たちは、舞台下の余白に置いた椅子に掛けて待つ。すべてを晒す形で、展開される芝居。
舞台上には、何本かの棒と椅子。控える役者たちがたてる効果音(←すごい緊張感)によって、棒は扉になど。さまざまなものに、次々と姿を変える。
時代は江戸時代末期、幕末の混乱の世。立派だった父のように生きるのだと育てられた、三条英(はなぶさ)。江戸開成所塾生として、切れる頭脳と強い信念に基づく行動力を持つ。だが、生活の貧窮はなんともし難く。ある日、金貸しの老婆の殺害計画を実行する。不測の事態は、老婆の妹に目撃されたこと。あきらかな、予定外の殺人を犯し。彼女は罪の意識には苛(さいな)まれつつも、成し得てこその思想を捨て去ることができないでいる。
塾生仲間の才谷梅太郎が、彼女の変化に気付く。暴力によらぬ倒幕・無血革命を信念とする彼は。日本を憂うのと同じ基準で、好きな女子を心配する。日本を良い方に向けたいのと同じ熱意で、彼女を屈託なく笑わせたいと願う。祖国を愛するということは、娘を愛することなのだと言ったのは。つかこうへい氏だったけ。湿度が高めの才谷の(←古田氏ならでは)親愛の情が、彼女の警戒心を崩していく。
英は、罪を責め悔やんでいてさえも。まなざしは濁らず、佇まいは真っ直ぐだ(←松氏ならでは)。償うべき罪の存在を認めながらも、牢の開く日は待てないと。通そうとする勝手な論理も、涼やかだ。才谷は、英を許している。牢の開く日を待つのは俺なのだと言う。そうやって、許されて。英は、自分を許してはいけないことに気づく。大政奉還、江戸開城。才谷の言葉どおり、彼女には、恩赦だか大赦だかがもたらされ。けれど、もはや彼女はそれを急(せ)いてはいない。解かれても、罪を一生の荷として生きていくことを決意している。
彼女に疑いの目をむける刑事役の段田氏が、あいかわらず、すっと(←語彙不足)していらして嬉しい。勤皇の志士役の右近氏は、あいかわらず、ちとうさんくさい(←やっぱり不足)。歪んだ愛を押し付けながら、破綻をむかえる役の宇梶氏と。憎んでも、殺す手段をとらない妹役の美波氏のお二人が。サイドストーリーを、とても大切に演じていらしたのが良く。あと。古田くんのアドリブに、舞台下でひっそり笑う野田さんが見られて。得した気分に。
ラストシーン。雪が舞台に降り積もる。雪が覆い隠すものを、見て。雪を踏みしめる足音を、聴いて。提示される命題を、改めて考える。これは、しっかり言葉にしておかねば。
「人は、人を殺してはいけない」
年明けには行きますよ、コクーン。
たのしみっ!!
しかし最後のひとこと...
普遍性のある言葉でありながら 実にタイムリーなひとことですね。
ようこそ~。
野田さんのところのお芝居は、「演劇が好き!」という新鮮な(原点の)空気がいつもあって、すごく刺激されます。
ぜひぜひ楽しみに、行ってらっしゃいませ♪
TB返しお願いしますね。http://blog.goo.ne.jp/pika1214/e/ed98f01da4c6db4f45241580ddcaf001
>湿度が高めの才谷...ってなんかそうだよな~と思ってしまいました。私が今回一番気に入ったのはやはり古田氏でした。
今回で野田秀樹の作品もいけそうなのがあると思えたので、次も作品を選びつつ観にいこうと思っています。歌舞伎も書いてくれてるらしいし...楽しみ~。
コメントありがとうございますー。お返事が遅くなってしまって、ごめんなさい。
で、また、トラックバックが飛ばないんですね。残念! こちらからは、あとでうかがいますねー。
『贋作 桜の森の満開の下』が歌舞伎になるんですか!?
この演目は野田作品の中で一番のお気に入りなので、すっごい楽しみです!!
いえいえ、こちらこそお返事が遅くなっております。
時代背景の転換についての考察は、なるほどなぁです。
ただ、あの時代はたしかに殺戮がくりひろげられていたでしょうけど。その直前までの太平楽な世を思うと、決して日常ではなくて、やはり大変な事だったと思うのです。あの時代だからこそ、問うことに意義があるのかな、なんて思います。
(時期遅れなネタなので、こっちで感想を書いてみました♪)
お返事コメントとTBありがとうございますm(_ _)mそこで今日もう一度TBをしてみたら今日はうまく飛んでくれました。なかなか難しいもんですね。
野田歌舞伎の第3弾ですね。楽しみにしてようっと。
どういうことなんでしょうかね~。トラックバック。。
とりあえず、無事に生還(笑)できましたので。また、ちょこちょこ更新していきたいと考えてます。
ぴかちゅうさんの記事も、楽しく読みすすめているところです☆