持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

鈍獣

2005-06-27 00:49:40 | 演劇:2005年観劇感想編
2004年パルコ劇場上演 『鈍獣(どんじゅう)』 
脚本:宮藤官九郎
演出:河原雅彦
出演:生瀬勝久、池田成志、古田新太、西田尚美、乙葉、野波麻帆


実は。宮藤氏に縁がないままに、ここまで来ている。信じられない、と責められる。友には、「このまま一生かかわらずに行けばぁ?」などとからかわれつつ。テレビ放映分のビデオを貸借。49回岸田國士戯曲賞受賞作。演者は、生瀬・池田・古田。括りようによっては、自身のなかの男優ベスト3。これ以上の出会いの作品はない。

処女作を書き上げた直後、姿を消した小説家の凸川(でこがわ)。彼の足跡をたどるうち、担当編集者の静は、ホストクラブ「スーパー・ヘビー」に行き着いた。店長、常連客、店長の愛人、ホステスの話から、それまで知られなかった凸川の姿が浮かび上がり――。
一幕、二幕ともに。なぜか、始まりはキオスクのシーン。笑わせる導入(←面白すぎるから)。本編に特に関連しないところが、より笑える。編集者のインタビュー内容が、舞台上で演じられて物語は進む。いじめられっ子だった凸やん。それでも懐く凸やん。その関係は、大人になっても変わることはなく。ただ、違っているのは。凸やんが、筆という力を持つことと、作家という地位を確立していること。

過去の悪事を書き暴かれて、焦る地元のホストクラブの店長に古田氏。江田の幼馴染みで子分格の、クラブの常連客に生瀬氏。いくら疎まれても追い払われても、「もう、おしまい(閉店?)」と来店する作家の池田氏は。温厚でありながら、心の機微に鈍く。この鈍さが、殺意を生んでいく。毒薬にも鈍く、何度殺害を図られても死にもしない。おそらく客席は。異様な殺意が膨れ上がっていく恐怖感と。感情を逆撫でし続ける、鈍獣が生み出す恐怖感に支配されていただろう。

感情を。どこかしら軽く扱う手法と、少し放り出すような終わり方が。クドカンの持ち味なのかな。ラストシーンが、最初のシーンにつながるやり方は。間違いなくもう一度見たくなる。
最後に。何度も繰り返されてきたはずの、池田氏の台詞に戦慄を覚え。最後の最後の。西田嬢の涙で、救い上げてもらう。
女優陣は、厳選された感があり。全員適役だったと思う。男性陣の配役は。すべてローテーションしても成立すると思われて。それを想像するのも、また楽しい。

ホラーは苦手。『こどもの一生』を観たときに。あまりの怖さに。この先、二度とホラーは見ないと誓った。『Vamp Show』を観たときに、誓いを破ったことを後悔した。この人たちがホラー物に燃えるのは重々承知なので。テレビで正解。ほんとに、まぁ、楽しそうに演じていらっしゃる。DVD発売中。でも、クリアな映像は怖いので(笑)。これきりにしよう、やっぱり。