持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

阿修羅城の瞳(1/2)

2005-05-19 18:11:49 | 映画
『阿修羅城の瞳』
原作:中島かずき(劇団☆新感線)
監督:滝田洋二郎
出演:市川染五郎,宮沢りえ,樋口可南子,小日向文世,渡部篤郎,内藤剛志 他


舞台初演が1987年。熱望する声が絶えなかったのに、2000年まで再演されることのなかった伝説の舞台。初演を終えて退団された女優さんの存在が大きく。いのうえひでのり氏が、封印してしまったのだと聞いていた。そんな為か、古い(失礼)新感線ファンのこの作品に対する思い入れには格別なものがある。

「阿修羅目覚める時、逆しまの天空に不落の城浮かび、現し世は魔界に還る」
阿修羅は少女の姿で人間界に現れる。自身を斬る者を得て、その瞬間の恐怖や憎しみを素に若い娘に成る。娘として、この世でもっとも強い男に恋をしたとき。その衝動を素に阿修羅王として転生する。
舞台は3時間半。市井に生息する鬼ども。その鬼を狩るもの。あらゆる登場人物が生き生きと動き、壮大なストーリーを完成させる。そこに貫かれる「鬼殺しの出門」と「闇のつばき」の悲恋。映画では。この二人の恋愛に焦点があてられ、2時間にまとめられている。

出門役には。再演、再々演を務めた市川氏。この役は、彼でなければ納得できなかったと思う。彼の生成する歌舞伎の空間は、伝統芸能に育った者にしか出しえないものだ。演出が、見得をきるなどの舞台芝居を意識し、そのままの雰囲気を伝えようとしているので。なおそう感じるのだと思う。

つばき役には、宮沢氏。つばきから阿修羅への転生の解釈は、女優さんによって大きく変わる部分。可憐な若い娘が非情な鬼になる。または。闇の頭目が鬼を治める貫禄の王になる。彼女のつばきは、恋を物語る映画にふさわしかったと思う。人の心をもたない阿修羅となり、狂おしく愛した出門に刃を向ける。そのときに浮かべる表情が。本気で闘えることが、愛しくてならないと微笑んでいて。無邪気すぎる笑みが、邪気の塊に感じられて。美しいだけに、観ているのが苦しくなるほどだった。

賛否両論な映画だと思う。続けるかどうか迷ったけど、続けます。