持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

解夏

2005-05-01 00:35:58 | 映画
プレミアムステージ 『解夏』
原作:さだまさし
脚本/監督:磯村一路
出演:大沢たかお,石田ゆり子,富司順子,松村達雄 他


苦しみを描く映画をみるのは少し辛い。息がつけなくなって。こういうとき、流れを断ち切るCMが、ありがたく思えたりするから勝手だ。

日々くもりの増える視界に、焦燥の時を過ごす隆之。恋人の陽子と、故郷の長崎を記憶に焼き付けようと歩き始める。
寺に縁の老人が静かに語る。失明することへの恐怖の期間が「行」で、その「行」の終わりが失明だと。修行僧は、結夏(けつげ)の日に集まり、行を終えた解夏(げげ)の日に再び発つのだという。

愛する人が苦しむとき。果たしてそばに寄り添っていられるかと考える。「なんでも話して」と哀願したい気持ちはあっても。話されたその言葉を、どの気持ちで受け止めて、どの心で返せばいいのだろう。
逆に。苦しむ側だったとき。大切に思う人にどこまで頼ることができるかとも考える。一緒に苦しませたくはない。好きな人には笑っていて欲しい。でも独りでいるのは寂しすぎる。

思いの方向が。ふたり同じだというだけで。もうこれは奇跡だ。お互いの心を抱きしめ合えるのは幸せだ。こんな不幸の中でさえ。
解夏のとき。隆之が言う。乳白色に染まる視界に、薄く残る陽子に。とても穏やかに言う。その、「泣くな」が胸にしみる。