12月3日MIXI友達のRIBERTEさんのモーターグライダーで大利根飛行場から調布のプロペラカフェまで昼食しに行った。
調布飛行場の係官曰く、そんな理由では飛行は認められません。許可されるのは非常時と給油、機体整備だけです。
プロペラカフェとマリブクラブを運営するエアロテック社は元来、整備会社なんで「それでは整備でお願いします。駐機はエアロテック・ハンガー前でお願いします」。
係官曰く、入れるならいいですが、ハンガー前というのはありません。何番スポットに入ってください。
ということになって、着陸してからもややこしくなった。これは飯食うぐらいでハンガーに入れるのはズーズーしいとひるんだのが間違いで「ハンガーに入れる」というのが正解である。
帰りは草地の関宿滑空場に着陸、、、ぬかるみに入り込んで手押しの破目に!
久しぶりの係留作業で斜陽になった。
◇佐久間です。本日の朝飯会で甲村さんから「従来の航空工学は間違っているという意見がある」という私のインプットに関心があるとのコメントをいただきましたので、下記にその原典を紹介させていただきます。
専門的で理解しにくい方もおられるかも知れませんが、世界の航空界ではコペルニクス的な発想の逆転が起こりつつあるということだけはご理解ください。
もっとも、航空後進国のわが国ではこのことを理解できる航空の専門家はほとんどいないでしょう。
残念ながら、我が国の航空工学者のほとんどは、このような発想を理解できないまま、一蹴するはずです。
しかし、私は以前から講演などで「航空機の操縦は原発の運転と同じ」と話してきましたが、この「発想の逆転」と源を同じにするものです。
今後、航空の安全の考えをがらりと変えることになるかも知れません。
前置きはさて置き、先ずは一読してみてください。そして、世界と日本の技術者のレベルの差を実感してみてください。
わかりにくい点があれば朝飯会でご質問ください。
飛行機が空を飛ぶメカニズムは「ベルヌーイの定理」 (翼表面では気流の流れが速くなり、それが揚力を生む) で説明できるというのが、定説だ。しかし、デービッド・アンダーソンは従来の航空力学は間違っていると主張する。
この記事は英ニューサイエンティスト誌 2001 年 5 月 5 日号に掲載された『Taking Flight』を翻訳・転載したものです。このほかの同誌転載記事のバックナンバーはこちらでご覧いただけます。
* ----------------------------------- *
飛行機はなぜ空を飛ぶのか。航空工学の教科書に従えば、「ベルヌーイの定理」で説明できる。翼表面では気流の流れが速くなり、それが揚力を生むという。だが、フェルミ研究所の物理学者デービッド・アンダーソンは、流体力学による解説を一蹴する。
飛行機はニュートンの運動の法則で説明できるというのが彼の持論だ。自ら操縦桿を握るアンダーソンは、共著『飛行を理解する』Understanding Flight (マグローヒル社刊) で飛行の謎に迫る。これまでの航空力学がまちがいだとすると、パイロットは勉強し直さなければならないのだろうか。ダイアナ・マーチンデールがインタビューした。
●流体力学による説明は神話にすぎない
NS: 『飛行を理解する』を書いたきっかけは?
学校で教わったことの過ちを突き止めるのに、25 年かかりました。真実がわかっても、相変わらず「航空神話」が幅を利かせていました。これまでの飛行理論を崩すために、スコット・エバーハートと共著で『飛行を理解する』を書いたのです。
流体力学による説明はほとんど神話のようなものであるのに、長いこと信じられてきました。NASA (米航空科学局) のサイトにも堂々と掲載されているくらいです。
NS: では、あなたはどのように説明を?
とても簡単です。飛行機は力の反作用で飛んでいるのです。翼が空気を押し下げ、その反作用で空気が翼を押し上げる。それだけです。ニュートンの運動の法則ですよ。私たちの本では、数学的な計算を捨てて、物理的に飛行を解説しています。航空学の本は、おいしいジュースを絞った後の果肉だけが載っている。私たちはジュースを絞り直しました。
NS: なるほど。従来の飛行原理を教えてください。
これまでは「ベルヌーイの定理」に則って考えられてきました。飛行機が飛んでいるときは、飛行機の上部の気流は、下部の気流よりも速い速度で流れています。ベルヌーイの定理によると、流体の速度が速いところは、圧力が低く負圧となります。だから翼の下面に比べ上面が負圧となり、揚力によって翼が浮くというわけです。
NS: その説明はまちがいなのですか。
問題は 2 つあります。まず、この定理では翼の形が問題になりますが、形は揚力を決めるうえで最も関係のないことです。もし翼の形が大事だとしたら、逆さ飛行はできないことになりますよね。
第 2 に、ベルヌーイの定理では、なぜ翼の上面の気流が速く流れるかを説明していません。そこには力が関係しているのです。それを説明するのはニュートンの運動の法則であって、ベルヌーイの定理ではありません。
NS: ワシントン大学の学生だったときに、ベルヌーイの定理を学んだでしょう? そのときは誤りを指摘しなかったのですか。
しませんでした。まちがっているとは思いましたがね。卒業後は、ロスアラモス研究所や CERN (欧州原子核研究所)、フェミニ研究所で高エネルギーの研究を続けてきました。私は発明家で、視覚的な認知力にはすぐれていると思います。しかし、翼が浮くメカニズムを聞いても、イメージが浮かびませんでした。確かに試験には合格し学位はもらいましたが、揚力については最後まで理解できませんでした。翼がどうして浮かぶのかを、とにかく解明したかったのです。
●ライト兄弟は幾度もの失敗から飛行を学んだ
NS: 航空工学では、ベルヌーイの定理もニュートンの第3の法則 (作用反作用の法則) も、揚力を説明するものだとしています。どちらも正解ではだめなのですか。
この 2 つはまったく異なる定理です。ベルヌーイの定理を用いるのは、航空学的な発想です。航空学の専門家はコンピュータシミュレーションを利用するからです。
気流が翼の周りをどのように回るかをシミュレーションし、ベルヌーイの定理を応用して翼の上面と下面の圧力差を計算する。それが揚力を決定するというのです。
確かにそうです。しかし、それは計算上のことで、物理的な説明にはなりません。
ベルヌーイの定理は計算には役立ちますが、揚力を説明していることにはならないのです。
NS: ではライト兄弟はどうなのでしょうか。彼らもベルヌーイの定理を利用したはずですが。
いいえ。もしそうなら、彼らが作った飛行機はあのような形をしていなかったで
しょう。彼らは幾つもの失敗から学んだのです。
NS: 彼らは翼の曲率を幾度も変更して、最適な揚力を得たときに飛行に成功しました。
ええ、そうです。でも彼らの飛行機をよくご覧なさい。翼の下面がありません。
ライト兄弟の初期のプロペラ機やグレン・ハモンド・カーチスの飛行機は、曲線の板を組み合わせたものにすぎませんでした。彼らは実験から多くを学んだのです。飛行機の設計に影響を与えているのは、計算ではなく、経験です。重力も問題だし、燃料タンクをどこに置くかでも異なります。まずそうした要素を考慮したうえで、翼の形が決まるのです。
NS: 飛行はニュートンの運動の法則に基づいているとしたら、飛行機のデザインを変えたほうがいいのでしょうか。
いいえ。もし私が翼を設計するとしたら、やはり航空工学のエンジニアの助けを借りるでしょう。彼らには揚力を計算するだけの知識がありますからね。パイロットが飛行機を飛ばしているわけではありません。
NS: 理論が飛行機の設計や操縦に影響しないなら、あなたの主張が正しいかどうかは大した問題ではない気がします。
それでは、「真実は本当に必要なのか」と言っているのと同じですよ。ベルヌーイの定理を用いるのは誤りであり、飛行という現象を理解する妨げになっているのです。人間が独力で立っているように、翼は仕事をせずに浮いているという見方がほとんどです。専門用語を使えばあれこれと解説できますが、要はベルヌーイ派は揚力は仕事を必要としないと考えている。ニュートンの運動の法則を用いた私の説明は、これまでの定説に再考を迫るものです。
●「何かを教えないことと、誤りを教えることは違う」
NS: まちがった理論を広めたのは誰なのですか。教科書ですか。
そうですね。飛行理論の古典となっているジョン・アンダーソンの『飛行の基礎』(1978年) は素晴らしい本ですが、翼が浮く理由は説明していない。気流が翼の上面速く流れると言っているだけで、どうしてそうなるかは説明していません。正しく説明している本もありますが、結局ベルヌーイの定理が当てはまると結論づけています。裸の王様に逆らうのが恐いのでしょう。一部の人にとっては宗教の教義みたいものですから。
NS: 少し大げさすぎやしませんか。教科書に量子力学が載っていないからといって、教師たちが古典だけを重んじているわけではないでしょう。
それはその通りですが、誤った量子力学を教えているわけでもない。何かを教えないということと、誤りを教えることは違います。ベルヌーイの定理はとても簡単なので、誰もが納得しやすい。3 分で人々を納得させることができます。しかしそれでは揚力は説明できないのです。
NS: 航空工学の技術者にあなたの説を披露しましたか。
おおむね好意的な反応です。2 年半ほど前に、スコット・エバーハートと一緒に
「スポーツ飛行」という雑誌に記事を書きました。それを読んだワシントン大学航空学部の教授が、航空工学のエンジニアはぜひこの記事を読むべきだと評しました。その後私は、イリノイ工科大学や米連邦航空局 (FAA) で、講演しています。話を聞くと、誰もが納得してくれます。なかには認めようとしない人もいましたが、たいていは飛行がやっと理解できたと喜びます。そうした人はベルヌーイの定理を喜んで破棄するでしょう。
NS: あなたは飛行の免許も持っているそうですが。
ええ。よく妻と一緒に、セスナ 182 を操縦したものです。免許を取ったのは、自分で飛行というものを理解しようと思ったからです。飛びながらあれこれ考えましたよ。操縦訓練をしたことは、最高の投資でした。
NS: もしベルヌーイが生きているとしたら、彼を納得させることができると思いますか。
(18世紀に生きた) 彼は、飛行機については何も知りません。しかし実際に飛行機を見たら、私の意見に賛成してくれるでしょう。話をすることができたら、納得させる自信はあります。エンジニアや物理学者を納得させることもたやすいですよ。教育を受けた人で、私の説明を受け入れない人はいませんね。
『飛行を理解する』 (マグローヒル社)
曲を描く翼の上面を流れる気流は、下面よりも速く流れていることは、よく知られている。ベルヌーイの定理によれば、流速の速いところは遅いところよりも空気の圧力が低くなる。つまり、翼の下面は上面より圧力が高く、その圧力差によって翼が上に押し上げられるという。
しかしデービッド・アンダーソンに言わせれば、ベルヌーイの定理は、なぜ翼の上面の流速が速くなるのかを説明していない。それに、ベルヌーイの定理が飛行を正しく説明しているとしたら、飛行機は逆さ飛行ができないことになる。平面である翼の下部は、曲面を描く上部よりも圧力が高くなるというのがベルヌーイの定理だからだ。飛行機が逆さになったら、平面が上になり、地上に落下してしまう。
では、いったい何が揚力を決定しているのだろうか。それはニュートンの運動の法則だと、アンダーソンは言う。コアンダ効果と呼ばれるものだ。コアンダ効果とは、空気といった粘性の流体は流れている物体の表面に粘り着く性質があることをさす。だから、曲面を描く翼の上面を空気が流れると、側面をなぞって下向きに向かう。
空気が下に向かうと、翼は空気に力をかける (ニュートンの慣性の法則)。する
と、それと同じだけの力の反作用が起き、揚力が生まれる (ニュートンの作用反作用の法則)。力の大きさは空気が偏向する大きさに比例する (ニュートンの運動の方程式)。
翼の形は揚力には無関係だというのが、アンダーソンの考えだ。大事なのは迎え角(気流が翼に当たるときの角度) だという。迎え角が増えたり、速く飛んだりすると、より多くの空気が下に押され揚力が増すという。
この考えを、他の専門家はどうみているのだろう。『飛行の基礎』の著者であるメ
リーランド大学のジョン・アンダーソンは、「彼らの説明は正しい」と言う。「ただし、基本理論というわけではない」
ジョン・アンダーソンの揚力の理論は、ベルヌーイの定理を用いて説明できる。
アンダーソンは曲を描く翼の縁を、ベルヌーイの言う水道管の首になぞらえる。水道管の細くなった部分では水が速く流れるように、曲面を描いた翼の縁の周りでは気流が速くなる。ベルヌーイの定理を応用すると、気流が速いと翼にかかる圧力が低くなる。翼の上面が曲面になっていれば、そこで揚力が生まれるというわけだ。
調布飛行場の係官曰く、そんな理由では飛行は認められません。許可されるのは非常時と給油、機体整備だけです。
プロペラカフェとマリブクラブを運営するエアロテック社は元来、整備会社なんで「それでは整備でお願いします。駐機はエアロテック・ハンガー前でお願いします」。
係官曰く、入れるならいいですが、ハンガー前というのはありません。何番スポットに入ってください。
ということになって、着陸してからもややこしくなった。これは飯食うぐらいでハンガーに入れるのはズーズーしいとひるんだのが間違いで「ハンガーに入れる」というのが正解である。
帰りは草地の関宿滑空場に着陸、、、ぬかるみに入り込んで手押しの破目に!
久しぶりの係留作業で斜陽になった。
◇佐久間です。本日の朝飯会で甲村さんから「従来の航空工学は間違っているという意見がある」という私のインプットに関心があるとのコメントをいただきましたので、下記にその原典を紹介させていただきます。
専門的で理解しにくい方もおられるかも知れませんが、世界の航空界ではコペルニクス的な発想の逆転が起こりつつあるということだけはご理解ください。
もっとも、航空後進国のわが国ではこのことを理解できる航空の専門家はほとんどいないでしょう。
残念ながら、我が国の航空工学者のほとんどは、このような発想を理解できないまま、一蹴するはずです。
しかし、私は以前から講演などで「航空機の操縦は原発の運転と同じ」と話してきましたが、この「発想の逆転」と源を同じにするものです。
今後、航空の安全の考えをがらりと変えることになるかも知れません。
前置きはさて置き、先ずは一読してみてください。そして、世界と日本の技術者のレベルの差を実感してみてください。
わかりにくい点があれば朝飯会でご質問ください。
飛行機が空を飛ぶメカニズムは「ベルヌーイの定理」 (翼表面では気流の流れが速くなり、それが揚力を生む) で説明できるというのが、定説だ。しかし、デービッド・アンダーソンは従来の航空力学は間違っていると主張する。
この記事は英ニューサイエンティスト誌 2001 年 5 月 5 日号に掲載された『Taking Flight』を翻訳・転載したものです。このほかの同誌転載記事のバックナンバーはこちらでご覧いただけます。
* ----------------------------------- *
飛行機はなぜ空を飛ぶのか。航空工学の教科書に従えば、「ベルヌーイの定理」で説明できる。翼表面では気流の流れが速くなり、それが揚力を生むという。だが、フェルミ研究所の物理学者デービッド・アンダーソンは、流体力学による解説を一蹴する。
飛行機はニュートンの運動の法則で説明できるというのが彼の持論だ。自ら操縦桿を握るアンダーソンは、共著『飛行を理解する』Understanding Flight (マグローヒル社刊) で飛行の謎に迫る。これまでの航空力学がまちがいだとすると、パイロットは勉強し直さなければならないのだろうか。ダイアナ・マーチンデールがインタビューした。
●流体力学による説明は神話にすぎない
NS: 『飛行を理解する』を書いたきっかけは?
学校で教わったことの過ちを突き止めるのに、25 年かかりました。真実がわかっても、相変わらず「航空神話」が幅を利かせていました。これまでの飛行理論を崩すために、スコット・エバーハートと共著で『飛行を理解する』を書いたのです。
流体力学による説明はほとんど神話のようなものであるのに、長いこと信じられてきました。NASA (米航空科学局) のサイトにも堂々と掲載されているくらいです。
NS: では、あなたはどのように説明を?
とても簡単です。飛行機は力の反作用で飛んでいるのです。翼が空気を押し下げ、その反作用で空気が翼を押し上げる。それだけです。ニュートンの運動の法則ですよ。私たちの本では、数学的な計算を捨てて、物理的に飛行を解説しています。航空学の本は、おいしいジュースを絞った後の果肉だけが載っている。私たちはジュースを絞り直しました。
NS: なるほど。従来の飛行原理を教えてください。
これまでは「ベルヌーイの定理」に則って考えられてきました。飛行機が飛んでいるときは、飛行機の上部の気流は、下部の気流よりも速い速度で流れています。ベルヌーイの定理によると、流体の速度が速いところは、圧力が低く負圧となります。だから翼の下面に比べ上面が負圧となり、揚力によって翼が浮くというわけです。
NS: その説明はまちがいなのですか。
問題は 2 つあります。まず、この定理では翼の形が問題になりますが、形は揚力を決めるうえで最も関係のないことです。もし翼の形が大事だとしたら、逆さ飛行はできないことになりますよね。
第 2 に、ベルヌーイの定理では、なぜ翼の上面の気流が速く流れるかを説明していません。そこには力が関係しているのです。それを説明するのはニュートンの運動の法則であって、ベルヌーイの定理ではありません。
NS: ワシントン大学の学生だったときに、ベルヌーイの定理を学んだでしょう? そのときは誤りを指摘しなかったのですか。
しませんでした。まちがっているとは思いましたがね。卒業後は、ロスアラモス研究所や CERN (欧州原子核研究所)、フェミニ研究所で高エネルギーの研究を続けてきました。私は発明家で、視覚的な認知力にはすぐれていると思います。しかし、翼が浮くメカニズムを聞いても、イメージが浮かびませんでした。確かに試験には合格し学位はもらいましたが、揚力については最後まで理解できませんでした。翼がどうして浮かぶのかを、とにかく解明したかったのです。
●ライト兄弟は幾度もの失敗から飛行を学んだ
NS: 航空工学では、ベルヌーイの定理もニュートンの第3の法則 (作用反作用の法則) も、揚力を説明するものだとしています。どちらも正解ではだめなのですか。
この 2 つはまったく異なる定理です。ベルヌーイの定理を用いるのは、航空学的な発想です。航空学の専門家はコンピュータシミュレーションを利用するからです。
気流が翼の周りをどのように回るかをシミュレーションし、ベルヌーイの定理を応用して翼の上面と下面の圧力差を計算する。それが揚力を決定するというのです。
確かにそうです。しかし、それは計算上のことで、物理的な説明にはなりません。
ベルヌーイの定理は計算には役立ちますが、揚力を説明していることにはならないのです。
NS: ではライト兄弟はどうなのでしょうか。彼らもベルヌーイの定理を利用したはずですが。
いいえ。もしそうなら、彼らが作った飛行機はあのような形をしていなかったで
しょう。彼らは幾つもの失敗から学んだのです。
NS: 彼らは翼の曲率を幾度も変更して、最適な揚力を得たときに飛行に成功しました。
ええ、そうです。でも彼らの飛行機をよくご覧なさい。翼の下面がありません。
ライト兄弟の初期のプロペラ機やグレン・ハモンド・カーチスの飛行機は、曲線の板を組み合わせたものにすぎませんでした。彼らは実験から多くを学んだのです。飛行機の設計に影響を与えているのは、計算ではなく、経験です。重力も問題だし、燃料タンクをどこに置くかでも異なります。まずそうした要素を考慮したうえで、翼の形が決まるのです。
NS: 飛行はニュートンの運動の法則に基づいているとしたら、飛行機のデザインを変えたほうがいいのでしょうか。
いいえ。もし私が翼を設計するとしたら、やはり航空工学のエンジニアの助けを借りるでしょう。彼らには揚力を計算するだけの知識がありますからね。パイロットが飛行機を飛ばしているわけではありません。
NS: 理論が飛行機の設計や操縦に影響しないなら、あなたの主張が正しいかどうかは大した問題ではない気がします。
それでは、「真実は本当に必要なのか」と言っているのと同じですよ。ベルヌーイの定理を用いるのは誤りであり、飛行という現象を理解する妨げになっているのです。人間が独力で立っているように、翼は仕事をせずに浮いているという見方がほとんどです。専門用語を使えばあれこれと解説できますが、要はベルヌーイ派は揚力は仕事を必要としないと考えている。ニュートンの運動の法則を用いた私の説明は、これまでの定説に再考を迫るものです。
●「何かを教えないことと、誤りを教えることは違う」
NS: まちがった理論を広めたのは誰なのですか。教科書ですか。
そうですね。飛行理論の古典となっているジョン・アンダーソンの『飛行の基礎』(1978年) は素晴らしい本ですが、翼が浮く理由は説明していない。気流が翼の上面速く流れると言っているだけで、どうしてそうなるかは説明していません。正しく説明している本もありますが、結局ベルヌーイの定理が当てはまると結論づけています。裸の王様に逆らうのが恐いのでしょう。一部の人にとっては宗教の教義みたいものですから。
NS: 少し大げさすぎやしませんか。教科書に量子力学が載っていないからといって、教師たちが古典だけを重んじているわけではないでしょう。
それはその通りですが、誤った量子力学を教えているわけでもない。何かを教えないということと、誤りを教えることは違います。ベルヌーイの定理はとても簡単なので、誰もが納得しやすい。3 分で人々を納得させることができます。しかしそれでは揚力は説明できないのです。
NS: 航空工学の技術者にあなたの説を披露しましたか。
おおむね好意的な反応です。2 年半ほど前に、スコット・エバーハートと一緒に
「スポーツ飛行」という雑誌に記事を書きました。それを読んだワシントン大学航空学部の教授が、航空工学のエンジニアはぜひこの記事を読むべきだと評しました。その後私は、イリノイ工科大学や米連邦航空局 (FAA) で、講演しています。話を聞くと、誰もが納得してくれます。なかには認めようとしない人もいましたが、たいていは飛行がやっと理解できたと喜びます。そうした人はベルヌーイの定理を喜んで破棄するでしょう。
NS: あなたは飛行の免許も持っているそうですが。
ええ。よく妻と一緒に、セスナ 182 を操縦したものです。免許を取ったのは、自分で飛行というものを理解しようと思ったからです。飛びながらあれこれ考えましたよ。操縦訓練をしたことは、最高の投資でした。
NS: もしベルヌーイが生きているとしたら、彼を納得させることができると思いますか。
(18世紀に生きた) 彼は、飛行機については何も知りません。しかし実際に飛行機を見たら、私の意見に賛成してくれるでしょう。話をすることができたら、納得させる自信はあります。エンジニアや物理学者を納得させることもたやすいですよ。教育を受けた人で、私の説明を受け入れない人はいませんね。
『飛行を理解する』 (マグローヒル社)
曲を描く翼の上面を流れる気流は、下面よりも速く流れていることは、よく知られている。ベルヌーイの定理によれば、流速の速いところは遅いところよりも空気の圧力が低くなる。つまり、翼の下面は上面より圧力が高く、その圧力差によって翼が上に押し上げられるという。
しかしデービッド・アンダーソンに言わせれば、ベルヌーイの定理は、なぜ翼の上面の流速が速くなるのかを説明していない。それに、ベルヌーイの定理が飛行を正しく説明しているとしたら、飛行機は逆さ飛行ができないことになる。平面である翼の下部は、曲面を描く上部よりも圧力が高くなるというのがベルヌーイの定理だからだ。飛行機が逆さになったら、平面が上になり、地上に落下してしまう。
では、いったい何が揚力を決定しているのだろうか。それはニュートンの運動の法則だと、アンダーソンは言う。コアンダ効果と呼ばれるものだ。コアンダ効果とは、空気といった粘性の流体は流れている物体の表面に粘り着く性質があることをさす。だから、曲面を描く翼の上面を空気が流れると、側面をなぞって下向きに向かう。
空気が下に向かうと、翼は空気に力をかける (ニュートンの慣性の法則)。する
と、それと同じだけの力の反作用が起き、揚力が生まれる (ニュートンの作用反作用の法則)。力の大きさは空気が偏向する大きさに比例する (ニュートンの運動の方程式)。
翼の形は揚力には無関係だというのが、アンダーソンの考えだ。大事なのは迎え角(気流が翼に当たるときの角度) だという。迎え角が増えたり、速く飛んだりすると、より多くの空気が下に押され揚力が増すという。
この考えを、他の専門家はどうみているのだろう。『飛行の基礎』の著者であるメ
リーランド大学のジョン・アンダーソンは、「彼らの説明は正しい」と言う。「ただし、基本理論というわけではない」
ジョン・アンダーソンの揚力の理論は、ベルヌーイの定理を用いて説明できる。
アンダーソンは曲を描く翼の縁を、ベルヌーイの言う水道管の首になぞらえる。水道管の細くなった部分では水が速く流れるように、曲面を描いた翼の縁の周りでは気流が速くなる。ベルヌーイの定理を応用すると、気流が速いと翼にかかる圧力が低くなる。翼の上面が曲面になっていれば、そこで揚力が生まれるというわけだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます