元ろう協会長のWさんからメールがきた。
互いの自宅の中間地点にあるファミレスで会うことにした。
「悪いけど、私的通訳をお願いしたい。一日、休みをとって、つきあってもらえませんか?」
わかりました。
「遠方から転居してきたろう者がいる。いろいろ、わけありでね」
公的な手話通訳者派遣制度では対応できない内容、というわけですね。
「そう。内容もそうだし・・・」
さらに、何か?
「手話通訳者が大嫌い、という人なんだ」
えー!? 気が重いな・・・
約束の日。
Wさんが運転する車に、依頼者のJさんと一緒に同乗し、数か所を回った。
日没に近い時間に、ようやく終わった。
W「Jさん、手話通訳者に来てもらって、よかったやろ?」
J「そうだな、Wさんが推薦するだけのことはある。この地域の手話通訳者はレベルが高いな」
W「わしらの地域のレベルが高いんやない。たいしが特別なんや」
褒め方も、褒めるタイミングも、絶妙である。
だから、Wさんの頼みは断れないんやろな。