【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

菅さん、ちょっと話が違うのでは “2つの条件”は遵守を

2010年08月31日 07時56分18秒 | 第175臨時国会(2010年7月)ねじれ

[画像]総理大臣・民主党代表の菅直人さん(民主党ホームページ・一部トリミングさせていただいきました)

 総理で民主党代表の菅直人さんは30日夜、首相公邸に鳩山由紀夫さんの訪問を受けて、民主党代表選への立候補を表明している小沢一郎さんとの話し合いによる選挙回避について、1時間、話しました。

 総理大臣を務めた宮澤喜一さんが、政権政党の党首は基本的には話し合いによる選出が望ましいということを、生前述べておられて、そのときは意味が分からず、逆に僕は反発を感じました。しかし、今では宮澤さんの言っていたことの意味が分かります。今回のように凪の定期選挙ならば、基本的には、できるだけ話し合いが望ましいと考えます。例えば、総選挙直前かつ選挙情勢は我が党が劣勢、というタイミングなら、複数候補が争う方がいいでしょう

 菅さんと鳩山さんは並んで記者団のインタビューに答え、鳩山さんは、「小沢、鳩山、菅および参院議員会長の輿石東氏トロイカ体制の原点に立ち戻ることが重要だ」との趣旨を述べ、菅さんは“原点に立ち戻る”という表現は使わなかったものの、「基本的な考え方に異存はない」と述べました。総理は、野党時代のトロイカ+1の体制に軸足を戻す、ととれる立ち位置を示したことになります。

 この発言には、ちょっと待った!と言いたい。私は、6月4日に選出された菅内閣は、当選10回の菅総理の下に、7回生の岡田外相、6回生の仙谷由人官房長官、枝野幸男民主党幹事長、玄葉光一郎・政調会長兼国務大臣、前原誠司国土交通大臣、5回生の野田佳彦財務相ら野党・民主党を支えてきたホープがぶら下がる格好で、日本を前に進める内閣だと思っていました。

 6月2日の鳩山首相辞任表明の直後に代表選立候補を表明した菅さんは、翌日、態度を保留していた岡田外相を訪ね、①党と内閣の権力を一元化する、②政治とカネの問題がない民主党らしさを取り戻す--という“2つの条件”を約束したことで、岡田さんから支持を取り付け、当選への流れをつくりました。

 この“2つの条件”が、政策調査会の復活、党資金の透明化という目に見える成果につながったわけです。そして、この“2つの条件”は、人事面での「脱小沢」を意味しています。岡田さんは6月3日、菅選対のメンバーとして電話がけに取り組み、経済政策面で菅候補に難色を示した一回生議員に、「この代表選は政策ではなく、“脱小沢体制”を構築することが争われる選挙なんだよ」と述べ、政策よりも、クリーンで政調のある民主党をつくりなおすことが最優先の論点だとし、そのうえで、「菅直人がベストだ」と説得しました。いずれにしろ、政策に関して、一回生議員が外相にモノ申すというその構造こそが、民主党らしさであり、多くの国民が民主党に期待している姿に違いありません。

 第22回参院選の結果があったとはいえ、ここでトロイカ復活、なかんずく、小沢一郎さんの表舞台への復帰は、国民が民主党にのぞむ「らしさ」を台無しにしてしまう可能性が極めて高いと言わざるをえません。

 きょう(31日)の午後、すなわち代表選告示日(9月1日)の前日ということになりますが、きょうの午後にも菅さんと小沢さんの会談がセッティングされるようです。ここで小沢さんを幹事長や官房長官などおカネに携わるポストに付けることを約束することは、民主党らしさを失うことになります。

 人事面でひとつ参考になるのは、6年前の与党・自民党です。7月の第20回参院選で、結党49年目にして初めて国政通常選挙第2党に転落した小泉純一郎首相は、党役員改選を9月まで引っ張って、安倍晋三幹事長を幹事長代理に降格し、後任に他派閥から武部勤・元農相を起用して「サプライズ」「小泉劇場」と喧伝され、参院選敗北という事実が吹っ飛ばしました。

 これにならい、菅民主党も枝野幹事長に幹事長代理になってもらい、幹事長にはサプライズ人事というのもあり得るのではないでしょうか。小沢さん・鳩山さんに近い人物を起用しても、政権党の役員は自然に執行部寄りになるものです。それと、民主党は現在、“革命後の反動”につきものの不安定な状態にあります。なので「お坊ちゃん育ち」の政治家を起用しないと、党内にはオカネをめぐる不信感がくすぶり続けます。例えば、慶應ボーイの前官房副長官の松野頼久さんや、ラ・サール中・高出身で大和銀行社員として現金を見慣れた経験がある川内博史さんを幹事長に起用すれば、「サプライズ」のうえ、小鳩系も、主流派も納得できるのではないでしょうか。

 また、小沢反乱軍は少しオカネに困っているようすがうかがえ、歴史に例えると、西南戦争の前に、西郷さんの弟子が倉庫から弾薬を盗んでしまい、西郷南洲が賊軍のそしりを覚悟して立たざるを得なかった状況に似ています。そこで、菅内閣が続く限りという条件で、報償費から一定のキャッシュを小沢さんに提供するという折衷案も、ベストではありませんが、ベターかもしれません。幹事長や官房長官などをやられるよりは、そういった案も、不安定な時期ですから、いたしかたないかもしれません(-_-)。

 老獪な菅総理のことですから、小沢さんの立候補を断念させたうえで、9月1日以降に何とかうまく立ち回ることを期待しています。それができないのなら、ガチンコ対決です。いずれにしろ、菅さんが勝つと予想します。その後、小沢グループから衆院10~20人程度、参院10人以内の範囲内での離党ならば、やむを得ないと考えますが、新党のメンバーはしきりに民主党議員を食事に誘うでしょうから、政務が安定しなくなります。やはり、話し合い決着が望ましいでしょう。「もはやトロイカではない」とは言いません。「もはや小鳩ではない」です、菅さんは必要です。そして、菅さんの下で前に進もう、と思うのです。年齢と心の若さは違います。僕は、菅直人の突破力にかけたいのです。

[参考 岡田克也さんの6月7日付ブログ

(引用はじめ)

鳩山総理が辞任されました。大変残念なことですが、次の総理を選ばざるを得ないということになり、私は、菅さんを支持することを明らかにいたしました。

テレビなどでもすでにご存じのように、その際に、私が申し上げたことは2つです。

1つは、国家の最高権力者である首相(民主党代表)は、政府に対する権力者であるだけではなくて、やはり、民主党に対しても最高権力者でなければならない。権力の二重構造は、民主主義の基本的な考え方に反する。したがって、そういったことはないようにしてもらいたいということです。

そして、もう1つは、鳩山さんが言われた民主党らしさ。特に、政治とカネの問題など、これから、より民主党らしさが前面に出るような総理であり、民主党代表であってもらいたい。この2点を申し上げて、菅さんを支持することを明らかにさせてもらいました。(後略)

(引用おわり)

小沢氏不出馬も=菅・鳩山氏、「トロイカ」復活で一致―きょう4者会談・民主代表選(時事通信) - goo ニュース

 9月1日告示の民主党代表選を前に、菅直人首相と鳩山由紀夫前首相は30日夜、首相公邸で会談した。小沢一郎前幹事長の出馬回避に向け、首相と鳩山両氏に小沢氏も含めた「トロイカ」に輿石東参院議員会長を加えた体制を重視して、政権を運営していくことで一致した。小沢氏は首相との会談に応じる見通しで、出馬の方針撤回、対決回避の可能性が出てきた。

 同日夜の会談を受け、鳩山氏は小沢氏サイドに首相と会うよう要請。小沢氏周辺は、鳩山、輿石両氏も加えた4氏が31日に会談する方向となったことを明らかにした。「挙党態勢」の確立を求める小沢氏は、首相の意向を直接確認した上で、出馬の是非を最終判断するとみられる。

 30日の首相と鳩山氏の会談は午後8時から約1時間行われた。この中で鳩山氏は、野党時代に小沢、輿石両氏も含めた4氏で党運営に当たった「トロイカ体制の原点に立ち戻ることが重要だ」と、トロイカ復活を求めた。首相も「基本的な考え方に異存はない」と同意した。

 終了後、鳩山氏は記者団に、小沢氏の代表選出馬に関し「あすの(首相と小沢氏の)会談内容で決められる」と語った。首相は、記者団に「トロイカ」体制下での小沢氏の役職に関し「ポストとかは一切話していない」と強調。枝野幸男幹事長や仙谷由人官房長官を代える可能性については「具体的なことは話していない」と述べた。

 これに関連し、小沢氏の側近議員の一人は「不出馬もあるかもしれない」と、出馬見送りの可能性に言及。別の側近は、仙谷、枝野両氏が交代するとの見通しを示した。仙谷氏は、対決回避の可能性について「未知数の部分が相当ある」と記者団に語った。 



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